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PVC(VPC)が出た時の対応は?焦らず5つのポイントを確認し、もしもに備えよう

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病棟でモニター管理をしていると、循環器の患者でなくてもアラームの鳴ることがあります。PACやPVCは全く珍しいものではありませんが、では、いざモニター上にPVCと表示されたら、何をどう判断して行動したらよいのでしょうか?PVCがどんな状態であるかがわかると、みるべきポイントと備えておくべきことがはっきりしてきますよ。

 

1、心室期外収縮(PVC・VPC) とは

期外収縮というと「たかが期外収縮」と思ってしまいがちですが、PAC(APC)とPVCではその危険度は全く異なります。PVC:premature ventricular contractionはVPCともいわれ、心室に異所性の興奮が起こることで、予定されるタイミングよりも早くに収縮が起こる状態です。異所性に興奮の起こる場所が、A(atrial=心房)かP(ventricular=心室)かに注目してください。もし異所性の興奮の起こっている場所が心室で、それが頻発したり連発する場合や心筋梗塞(AMI)など基礎疾患を有する場合には、「たかが期外収縮」とは言えず、命に関わることもあるのです。

 

PVCには単発かどうかによって危険度が異なり、それを重症度によって分類したものにLown(ラウン)分類というものがあります。

<心室期外収縮の重症度分類 >

Grade0:期外収縮なし

1:散発性(1 時間 30 個未満)

2:多発性(1 時間 30 個以上)

3:多形性(多源性)

4a:2 連発

4b:3 連発以上

5:RonT型

 

ここで大切なことは、この分類を覚えることではありません。大切なことは、頻発・連発しているかどうかです。逆に言うと、単発で出ているときの危険度はさほど高くありません。

なぜ頻発していることが危険になるのかというと、Grade5のRonT型を起こすと、そこから致死的不整脈である心室頻拍(VT)に移行するリスクが高くなるからです。RonT型とは、T波の終わりに期外収縮のR派が重なったもので、一つ前の興奮から短時間で興奮してしまう(連結期が短い)と、T波は心室の再分極相にあたり電気的に不安定なため、そこからVTに以降する危険性が高いことがわかっています。近年ではLown分類そのものの意義は薄れてきていますが、「規則性がなく連結期が短く頻発しているPVCは危険」という認識をもつことが重要です。

また、アメリカのミシガン州テクムゼーという地域に住む住民に1959年から行った調査研究によると、PVCの認められた群のほうが認められなかった群よりも将来的に冠動脈疾患の罹患率が高くなると報告されました。(冠動脈疾患のリスクファクタ―である高血圧・喫煙・コレステロール・耐糖能などの冠危険因子で調節した後も同様の結果であったと報告されています。)PVCはたかが期外収縮といっても、生命予後に関わる不整脈であるということがお分かりいただけたでしょうか。

 

2、心室期外収縮(PVC)の心電図

PVCは、「心室が異所性の興奮を起こした状態」ですが、これはどういうことでしょうか。本来は洞結節から始まった興奮が房室結節を経由してプルキンエ線維を流れ、最終的には扇が開くように心筋全体に興奮の広がるはずが、心室内のまったく別の場所を起源として勝手に興奮電動が始まってしまった状態です。これを心電図で表すと、下のような波形になります。

 

心室期外収縮

引用:日本臨床検査医学会

 

この波形を見ると一目瞭然ですが、PVCでは本来のQRS波形と全く異なり、幅広い形をしています。房室結節を通っていないためQRS波に先行するP波はなく、QRS波に続くT波は下向きのいびつな形をしています。PVCはその興奮の発生源によって形が異なりますので、複数の形が存在する場合にはそれだけ異所性興奮を起こしている場所が多いことを意味し、非常に不安定で危険な状態です。上の心電図ではPVCは単発ですが、もしこれが頻発した場合は3連発以上で心室頻拍(VT)が発生したことになり、特にRonT型ではVTへの移行リスクが高くなります。

 

心室頻拍

引用:日本臨床検査医学会

 

心室頻拍(VT)は一つ一つの波形が大きな山を形成していますが、これには非常に大きなエネルギーを使います。エネルギーが枯渇するにつれこの山は小さくなり、次第に心室細動(VF)となり、最後には完全にエネルギー切れの状態になって心静止(ASYS)となります。単体では怖くないPVCも、時と場合によっては命に関わる重症不整脈となりえるのです。

 

3、心室期外収縮(PVC)症状

心室期外収縮(PVC)に限らず、心房粗動(AFL)や発作性上室性期外収縮(PSVT)・発作性心房細動(Paf)などの不整脈においても、自覚症状は患者個々によって全く異なります。冷汗をかいて血圧が下がりショック状態を呈することもあれば、「なんかドキドキします」程度のことまであります。糖尿病患者では心筋梗塞を発症していても神経障害のために痛みに気づかない、もしくは「なんとなく胃が痛い」程度のこともありますので、自覚症状だけで重症度を判別するわけにはいきません。

看護師は胸部症状を訴える患者に対しては、まず十二誘導心電図を取りましょう。心電図は全くの無害でコストほとんどかからない検査にして、非常に大きな診療上の材料となりますので、循環器病等勤務者でなくともすぐにとれるようにしておきたいものです。近くに心電計がない場合でも、脈を自分で触知すればリズムが異なることに気が付くでしょう。

 

4、心室期外収縮(PVC)の看護

心室期外収縮(PVC)を起こした場合、無症状や単発のものであれば必ずしも治療は必要ありません。基礎疾患を有しない場合には生活習慣の改善を指導したり、動悸などの症状がある場合には抗不整脈薬の投与を行うこともあります。しかし、血圧低下など循環動態の変調をきたした場合や心筋梗塞などの急性期に伴う場合には、緊急対応を要します。

AHA(アメリカ循環器学会)では、重症不整脈のうち心室細動(VF)と心室頻拍(VT)を起こしている患者が意識なく脈拍の触知もできない場合には、すぐに効果的な胸骨圧迫からの心肺蘇生を開始し、除細動を行うようにガイドラインを作成しています。また、同じVTでももう少し状態がよく、血圧低下や冷や汗などの循環動態の変調はあるものの意識があって頸動脈が触知できる場合には、除細動よりもエネルギー量を少し抑えた(同期下)カルディオバージョンを行うべきと推奨しています。

看護師はモニターを装着中の患者にPVCが出現したら、冠動脈疾患を起こす可能性を常に頭の隅においておくことが大切です。そして、PVCはPVCでもQRS波形の種類や発生の頻度・連結期間などに注目し、どれくらいその患者のリスクが高いか予測しておくかどうかで、心室頻拍(VT)に移行した際の初動体制は変わります。

 

<モニターのアラームが鳴ったら・・・この5つを確認すべし!>

①アラームの理由は何か?(電極はずれ、ノイズ、不整脈など)

②期外収縮の場合、原因は心室性なのか上室性なのか?

③PVCの形は1種類か、それとも複数あるのか?

④PVCの間隔は近いか、比較的離れているのか?

⑤基礎疾患に何があるか? (特に生活習慣病の有無)

 

この5つを確認し、危険なPVCであると判断される場合には、自分の勤務帯で急変するかもしれないと気を引き締めましょう。危険性を認識していれば、頻回にモニターチェックと患者のもとを訪室することができます。更に「心室頻拍(VT)や心室細動(VF)を起こしたら、誰に何を報告してどう対応すべきか」と頭の中でシミュレーションしておくと、もしものときにすぐに行動に移すことができるでしょう。

 

まとめ

PVC一つをとっても、その患者の現病歴や現在の循環動態・意識レベル・自覚症状によって必要とする看護は異なります。看護師に求められることは、早期に異常へ気づいて心電図をとり、不整脈・冠動脈疾患の有無を確認することにあります。やるべきことがわかると、怖さも少し和らぐのではないでしょうか。

 

参考文献

診療群別臨床検査のガイドライン 2003(日本臨床検査医学会|2003年11月)

心室期外収縮による心機能評価と予後の予測(JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 No. 4|秋山俊雄|2014年)

病気がみえる vol.2 循環器(MEDIC MEDIA|2017年)


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