頭痛を訴える患者は、とても多いです。看護師は患者の頭痛の訴えを、「たかが頭痛」というスタンスで聞いてはいけません。頭痛の原因をアセスメントし、頭痛を緩和させるケアをしていく必要があるのです。頭痛の原因と看護計画、看護ケアをまとめました。頭痛の患者を看護する時の参考にしてください。
1、頭痛の原因
頭痛は、一次性頭痛と二次性頭痛に分類できます。
・一次性頭痛=基礎疾患がない頭痛
・二次性頭痛=他の疾患が原因で起こる頭痛
そして、一次性頭痛と二次性頭痛には、様々な原因1)があります。
一次性頭痛 | ・片頭痛 ・緊張性頭痛・群発頭痛・三叉神経・自律神経性頭痛・その他の一次性頭痛 |
二次性頭痛 | ・頭部外傷による頭痛
・頭頚部血管障害による頭痛 ・非血管性頭蓋内疾患による頭痛 ・物質またはその離脱による頭痛 ・感染症による頭痛 ・ホメオスターシス障害による頭痛 ・顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面痛 ・精神疾患による頭痛 |
日常生活を送っている中で起こる頭痛は、一次性頭痛の片頭痛や緊張性頭痛などが多いですが、入院生活を送っている患者の場合、片頭痛や緊張性頭痛などのいわゆる「一般的な頭痛」だけでなく、二次性頭痛が原因である可能性を考慮しなければいけません。
2、頭痛の看護計画
頭痛の看護計画は、その頭痛の原因によって異なりますが、ここでは片頭痛や緊張性頭痛など一次性頭痛の疼痛を緩和するための看護計画をご紹介します。
①急性疼痛
看護目標 | 頭痛が緩和して、良眠できる |
OP(観察項目) | ・バイタルサイン ・頭痛の程度(NRSなどのペインスケールを用いて)・頭痛の種類(ズキズキ、締め付けられる痛みなど)・頭痛の出現時間やタイミング・頭痛の前兆の有無・随伴症状の有無 ・検査データ ・食事量 ・言動や表情 ・睡眠状況 |
TP(ケア項目) | ・医師の指示に基づいて鎮痛薬を用いる
・安楽な体位をとってもらう ・訴えを傾聴する ・温罨法や冷罨法を行う ・気分転換を図る ・リラックスできるような環境整備を行う |
EP(教育項目) | ・頭痛が出現したり、増強したらすぐに伝えてもらうように指導する
・痛みが強い時には鎮痛薬を使えることを伝えておく ・痛みを我慢する必要はないことを指導する |
もし、頭痛に伴って、不眠の症状が強いようなら、説明した「急性疼痛」に加えて不眠を看護問題として挙げて看護計画を立案すべきです。
また、頭痛が原因でセルフケア不足が起こっている場合は、セルフケア不足を解消するための看護計画を立案してください。患者の頭痛が二次性頭痛であることがわかっている場合は、頭痛の原因となっている疾患に焦点を当てて、看護計画を立案していく必要があります。
疾患別に、次の記事も参考にして看護計画を立案すると良いでしょう。
・くも膜下出血の看護計画|原因・症状・治療などの看護課程と看護問題
・頭蓋内圧亢進の看護|原因と症状、治療における観察項目と看護計画
・髄膜炎の看護|発症機序と種類、患者に対する予防・観察・ケア
頭痛の緩和ばかりに気を取られずに、患者の状態に合わせて、看護計画を立案していくことが重要です。
3、頭痛の看護ケアの4つのポイント
頭痛の看護をする時には、次の4つのポイントに気を付けてケアをしていきましょう。
①原因を決めつけずにあらゆる可能性を考慮する
患者から頭痛の訴えを聞いたら、原因を決めつけてはいけません。あらゆる可能性を考慮しながら、アセスメントしていく必要があります。いつも頭痛を訴えてくる患者の場合、「どうせ片頭痛だろう」、「また不定愁訴か」のように思いがちです。
ただ、次のような可能性もあるのです。
・廊下を歩いていた時に誰にも見られていない中で転倒して頭部を強打した
・髄膜炎を発症している ・くも膜下出血を起こしていた ・副鼻腔炎を発症している |
だから、原因を決めつけずに、バイタルサインをチェックして、しっかりアセスメントをしていかなくてはいけません。
また、鎮痛薬の飲み過ぎで慢性的な頭痛を起こしている可能性もありますので、それまでの鎮痛薬の服薬歴もチェックしておきましょう。頭痛を軽く見て、看護師が「どうせ片頭痛か緊張性頭痛」と決めつけてしまうと、患者の命に関わる重大な疾患を見逃してしまうかもしれません。そのため、「たかが頭痛」と思わずに、しっかりとアセスメントして、医師に報告する必要があります。
②訴えをしっかり傾聴する
頭痛のケアをする時には、患者の訴えをしっかり傾聴しましょう。慢性的な頭痛はストレスが関係していることが多いです。もしかしたら、患者は入院生活にストレスを感じていたり、治療方針に不安を感じていて、そこから頭痛を発症しているのかもしれません。
訴えを傾聴するだけで、患者のストレスや不安の解消につながりますし、何に対してストレスや不安を感じているのかがわかるので、より良いケアができるようになります。また、患者の訴えを聞くことで、一次性頭痛ではなく、実は二次性頭痛で、重大な疾患の早期発見につながることもあるのです。だから、頭痛の看護ケアをする時には、まずは患者の訴えに耳を傾けなければいけません。
③安静にしてもらう
頭痛の患者には安楽な体位を取らせるようにしましょう。頭痛を緩和するには、安静にすることが大切です。安楽な体位、頭痛が緩和する体位は人それぞれ違いますので、患者の希望を聞きながら、体位交換用のクッションなどを用いて、その患者にとって一番楽な体位を取らせるようにしましょう。
また、音や光の刺激で頭痛が悪化することがあります。特に、片頭痛は光や音の刺激が頭痛の引き金になることがありますので、可能な範囲で病室を暗くして、静かな環境を作るなどの環境整備をして看護していきましょう。
④緊張性頭痛は温罨法、片頭痛は冷罨法
片頭痛や緊張性頭痛は、ストレスが頭痛を発症させたり悪化させたりする要因になりますので、頭痛の患者にはリラックスできるような看護ケアをしていく必要があります。そのため、アロママッサージをしたり、手浴・足浴などのケアで頭痛を緩和させるようにしましょう。
また、リラックスのためのケアと言えば、温罨法が思い浮かぶと思います。緊張性頭痛の場合は温罨法が有効ですが、片頭痛の場合は温罨法をすると逆効果になり、冷罨法の方が疼痛を緩和させる効果があるので注意が必要です。緊張性頭痛はギュウギュウと締め付けられるような痛み、片頭痛はズキズキとした脈打つような痛みが特徴です。
出典:頭痛 (医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院)
緊張性頭痛は脳の血管が収縮することで起こる頭痛で、片頭痛は逆に拡張することで起こる頭痛です。そのため、緊張性頭痛は温罨法で温めて、リラックスさせて脳の血管を拡張させると、頭痛を緩和させることができます。
逆に、片頭痛は冷やして血管を収縮させることで、頭痛を緩和させることができるのです。患者に頭痛の痛みの種類を聞いて、温罨法と冷罨法のどちらが良いかを判断すると良いでしょう。
まとめ
頭痛の原因と看護計画、看護ケアのポイントをまとめましたが、いかがでしたか?頭痛は様々な原因が隠れていることがありますので、原因を決めつけることなく、あらゆる可能性を考えてアセスメントしていきましょう。また、忙しい中でも患者の訴えに耳を傾け、しっかり傾聴して看護ケアに活かしていくようにしてください。
参考文献
1)慢性頭痛の診療ガイドライン2013 頭痛一般(株式会社医学書院|日本神経学会、日本頭痛学会|2013年5月15日)