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PES方式についての看護診断や看護問題・計画の立案方法

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PES方式看護

看護師が患者を理解する上で、必要不可欠な看護過程。患者の病態や状態から考えられる問題を導き、実践的な看護計画に展開していくことです。今回は、ゴードンの提唱したPES方式についてまとめました。

 

1、PES方式 とは

1-1、看護診断とは

患者の病態やおかれている状態を包括的に観察・分析して、患者にとって必要な看護を提供することを看護過程と言います。そして看護診断というのは、看護過程の中のプロセスの1つです。病気やその状態ごと診断ラベルがあり、標準的な看護目標や計画があります。そこからより具体的で個別的な看護問題、看護目標、看護計画の立案に発展させていきます。看護診断は、病気そのものを治療する医師とは別に、看護独自の問題を見つけその解決にあたるために考えられてきたものです。

 

<看護診断の提唱者とその定義>

提唱者 発表年 定義
ゴードン 1976年 看護婦(師)がその教育と経験によって扱うこと

ができ、かつそのように免許が与えられている顕

在的・潜在的健康問題の記述

北米看護診断協会議,

協議団の看護理論家

グループ

1978年 統合体としての人間の諸パターンを示す一群の経験や観察から得られた指標を要約した簡潔な節または語句
米国看護婦協会

(ANA),

1980年 診断とは,感知されている困難ないし必要に名前をつけることによって客観化し、その問題を解決するための行為を推測し,実際に行うにあたっての基盤としようとする最初の作業である

出典:看護診断は教育にどんな影響を与えるか(日本看護研究学会雑誌Vol.14 NO.2|松木光子|1991)

 

1-2、 ゴードンによるPES方式とは

どの看護診断の定義を採用するかは、各医療機関や看護大学(専門学校)の方針によりますが、どれが正しくてどれが間違いというものではありません。今回は、この中でも一番古いゴードンの定義した看護診断の方法である「PES方式」について学びましょう。

 

<ゴードンのPES方式>

PES方式では、P・E・Sをそれぞれこのように定義しています。

P:problem 看護診断=健康上の問題
E:etiology 関連因子=問題の原因または病因
S:signs & symptoms 診断指標=一群の徴候と症状

このようにゴードンは、P(看護診断)・E(関連因子)・S(診断指標)によって看護問題を導く方法を提唱しました。この方法に従って看護過程を展開していくことで、患者の全体像をつかんでアセスメントすることができ、どのような問題を掲げて具体的なケア計画を立案すればよいかわかるようになります。

 

2、PES方式 看護診断

ゴードンの提唱したPES方式においては、「11の健康機能パターン」として11の領域からアセスメントを展開していきます。看護師であっても、ついつい疾患や病態生理といった身体面だけに目が向けられてしまいがちで、精神・社会面においても患者の全体像をとらえるのは、非常に難しいですね。そこで、この11の健康機能パターンを使うのです。これに沿って一つずつ個々の患者を検討することで、最終的に全体像をとらえられるようになるのです。

 

<ゴードンの11の健康機能領域>

領域 アセスメントする内容
1 健康知覚、健康管理

 

健康状態(既往歴)、受診の経緯、健康認識、コンプライアンス、病気の受け止め状況、

飲酒・喫煙習慣、運動習慣、服薬状況、身長・体重(BMI)

2 栄養、代謝 食習慣、食事内容、食事制限の有無、嗜好品、偏食、食欲の有無、体重(BMI)、悪心・嘔吐、腹満の有無、バイタルサイン(体温)
3 排泄 排尿回数・尿量・尿性状、排便回数・便性状、緩下剤の使用有無、膀胱留置カテーテル挿入の有無、腹満・腸蠕動音、ADL、ドレーンからの排液の有無、感染徴候の有無
4 活動、運動 ADL、麻痺の有無・程度、移乗の状態・介助の程度、安静度、入院前の運動習慣
5 睡眠、休息 睡眠時間、睡眠の質、睡眠薬使用の有無、

熟眠感(睡眠への満足度)、日中の活動状態、

安静度

6 認知、知覚 意識レベル、脳血管疾患の既往の有無、認知症の有無、理解度、疼痛の有無・程度、鎮痛薬の使用有無、不安の有無、表情、

聴力・視力・味覚・触覚・知覚の感覚器障害の有無

7 自己知覚、自己概念 性格、家族構成、社会的責任、病気の受け止め方
8 役割、関係

 

家族構成、職業・階級、キーパーソン、経済状況、面会者の有無・関係
9 性、生殖

 

年齢、家族構成、妊娠・出産回数、月経周期、年齢による身体の変化、更年期障害の有無
10 コーピング、ストレス耐性 仕事・日常生活でのストレス、入院環境、

ストレスの発散方法、相談相手の有無

11 価値、信念 宗教、人生観、価値観、仕事

 

患者からの情報や、実際の看護介入を行った結果などの看護記録は、SOAPで記載するのが一般的です。

一時的なことや急変時などは、一時的な問題(T)として経時記録で記載していきます。SOAPで患者の言動(S)や様子(O)、それに対するアセスメント(A)をして、看護診断に基づいてプラン(P)立案となります。

<SOAPでの記載方法>

S:Subject 主観的情報
O:Object 客観的情報
A:Assessment アセスメント
P:Plan 計画
T:Temporary Problem 一時的問題

 

3、PES方式の看護問題

実際にPES方式では、どのように看護診断をして問題を挙げて計画を立案していけばよいでしょうか?胃癌術後で食事摂取量の少ない患者がいたと仮定して、具体的な問題を立案してみましょう。

 

3-1、看護診断

P・E・Sをまずそれぞれ上げてみましょう。

P:看護診断(健康上の問題)

栄養摂取消費バランス以上:必要量以下

E:関連因子(問題の原因または病因)

胃癌術後

S:診断指標(一群の徴候と症状)

1日の必要な栄養を摂取することができない

 

3-2、看護目標(アウトカム)

次に上のP・E・Sに基づいて、具体的な目標を立てます。 ポイントは、評価しやすく、具体的にすることです。抽象的な目標では、目標設定日に行う評価の基準があいまいになってしまいます。

・〇月×日までに、食事が全量摂取できる

・〇月×日までに、採血データ(TP、Alb等)が正常範囲内になる

 

3-3、看護計画

そして最後に、看護目標を達成するための具体的な計画を立案していきます。

O-P

1、食事摂取量、食事形態

2、水分出納、浮腫の有無

3、体重の変化

4、バイタルサインの変化

5、悪心・嘔吐の有無

6、腹満の有無

7、排便状況

8、食欲の有無

9、薬剤の有無

10、採血データ(TP、Alb等)

11、病気・治療の受け止め方

12、家族の協力

T-P

1、患者の希望や食欲・状態に応じた食事形態を、医師・管理栄養士と連携して決定する

2、必要時、経口経腸栄養剤で、不足する栄養を補う

3、医師の許可を得て、患者家族に希望する食べ物を持ってきてもらう

4、3でも不足する場合は、更に経静脈栄養を検討する

5、一度にたくさん摂取することが困難な場合、分食とする

6、食事摂取状況や疼痛・嘔気の有無などを、日誌に記録してもらう

E-P

1、オペ後の総称治癒のためにも、栄養が必要であることを説明する

2、経静脈栄養と経腸栄養の違い、経腸栄養の重要性を説明する

3、患者家族に、退院後まで見据え、管理栄養士より栄養療法を指導する

4、食事形態や量について希望がある場合は、変更できることを説明する

 

まとめ

看護過程や看護診断という言葉を聞くと、どうしても難しくとらえてしまう方が多いのではないでしょうか。学生時代のトラウマから、記録に苦手意識を持っている人もいることでしょう。しかし、看護診断はどの方式を採用するにしても、患者を理解して表在化もしくは顕在化した問題を導き、その問題を解消するためのケア計画を立案するという点では同じです。この機会に苦手意識を払拭し、その患者ごとの個別の看護過程を展開できるようになっていただきたいですね。

 

参考文献

看護診断は教育にどんな影響を与えるか(日本看護研究学会雑誌Vol.14 NO.2|松木光子|1991年)

PES 方式を用いた看護診断の分析(群馬県立医療短期大学紀要第11巻 91~100|田村文子 樋口友紀|2004年)


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