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経管栄養法の看護|経管栄養の種類や手順、看護計画について

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経管栄養 看護

経管栄養は、口から食事を摂ることができない、もしくは十分な摂取量でない場合に、口や胃などに留置したチューブから高カロリーの栄養剤を注入する栄養療法の一つです。高齢社会の我が国において、経管栄養は脳血管疾患や高齢者の栄養を支える重要な栄養療法であり、必須の看護技術となっています。今回は栄養療法の分類、経管栄養の種類、実際の注入手技を順に学び、経管栄養を行っている患者への看護計画を立案します。

 

1、経管栄養とは

人間は通常、口から食物を摂取することで栄養を補給します。しかし、高齢者や脳血管疾患患者のように、食べる・嚥下するという機能を喪失してしまうと、口から栄養を摂取することができません。また、消化器疾患による急性期や術後は、消化管の安静や創部の離開を防ぐため、一時的に絶食にすることがあります。

これらの十分に経口摂取のできない状態にある患者の栄養管理をすることを、栄養療法と言います。栄養補給の選択基準として下の図で説明されていますので、こちらがわかりやすいでしょう。

引用:栄養の基礎知識(株式会社大塚製薬工場)

 

栄養補給をどのように行うかは、消化機能が保たれているかどうかで経静脈栄養と経腸栄養に選択肢が分かれ、経腸栄養の具体的な方法の一つが経管栄養となります。経管栄養にもいくつかの方法があるため、更に選択肢は枝分かれしていきます。大きく分類すると、栄養療法の種類は下のようになります。

 

<栄養法の分類>

経腸栄養(EN) 消化管機能が保たれている場合 → 経管栄養
経静脈栄養 消化管機能が保たれていない場合 → 中心静脈栄養(TPN)

→ 末梢静脈栄養(PPN)

 

2、経管栄養法の種類

経腸栄養のうち、経口で嚥下することが困難な患者に対して行うのが経管栄養です。(経腸栄養には栄養剤を経口摂取する方法も含みますが、今回は省略します。)経管栄養は、管をどこから消化管に挿入するかによって3つの方法があります。

 

<経管栄養法の種類>

経鼻胃管栄養法 鼻から胃へチューブを挿入する
胃瘻栄養法 内視鏡を使用して腹壁と胃壁との間にカテーテルを通す瘻孔を造る
腸瘻栄養法 内視鏡を使用して腸壁と胃壁との間にカテーテルを通す瘻孔を造る

 

通常、4週間以内の短期使用が目的であれば、侵襲の少ない経鼻胃管栄養法を選択します。口腔や咽頭の手術後は、手術創の安静を保つためにこの方法を選択します。経鼻胃管栄養法は手軽で侵襲の少ないことがメリットですが、抜けやすいというデメリットもあります。

 

経鼻経管栄養法は、鼻から胃まで細いチューブを挿入します。体格によって違いますが、チューブの長さはおよそ45~55㎝です。術後や狭窄がある場合を除いては看護師が挿入することも可能ですが、気管への誤挿入や正しい位置に挿入されずに栄養剤を注入してしまうと気道に栄養剤が注入されて誤嚥性肺炎の原因となることがあるため、現在では医師が挿入し、挿入後にはレントゲンで位置確認する医療機関が多くなりました。

 

逆に、脳血管疾患による後遺症などの長期使用の場合には胃瘻栄養法を行うことが一般的で、胃癌術後や胃の萎縮や変形のある場合は胃瘻増設ではなく、腸瘻を増設します。胃瘻は固定方法によって、胃内固定に「バルーン型」「バンパー型」、体外固定に「ボタン型」「チューブ型」と種類があり、チューブの交換は種類に応じて適宜交換が必要になります。

(胃瘻増設の手技や種類については、医療法人医誠会 城東中央病院胃瘻増設のしくみと胃瘻のチューブの種類についてが参考になります。)

 

3、経管栄養法の看護技術・手順(速度・注意点)

栄養剤の注入方法は、基本的には経鼻も胃瘻・腸瘻も同じです。今回は栄養剤を注入する都度チューブの位置を確認する必要がある、経鼻経管栄養法で手順をお伝えします。

 

<栄養剤の注入方法>

①患者氏名と栄養剤の種類、投与量を確認する。

②栄養剤は低温だと腸管を刺激して下痢や腹痛を起こし、高温だと消化管が炎症してしまうため、37度前後に温める。

③栄養剤をイルリガードル(イリゲーター)に入れ、不要な空気を消化管に入れないため管の先端まで満たし、点滴台(患者より1mほどの高さ)にセットする。

④患者の体位をファウラー位(挙上できない場合は右側臥位)にする。

⑤正しい位置に挿入されているか確認する。

・ステートを胃部にあて、シリンジで空気を入れた音を確認する

・シリンジを引いて、胃液を確認する

⑥経管栄養のチューブを接続する。

⑦クレンメを開いて開始する。

注入速度の目安:1回の注入(200~400ml)を60~90分かける

(嘔吐や下痢のある場合などは、患者の状態により調整する)

医師より指示のある場合は、指示の時間で落ちるように調整する。

⑧注入開始後は、呼吸状態や嘔吐の有無など患者の状態を観察する。

⑨栄養剤の終了後はチューブ内の細菌繁殖と閉塞予防のため微温湯を注入し、チューブの中に栄養剤が残らないようにする。

➉注入後、30ほどはファウラー位を保つ。

 

*内服薬は微温湯で溶かし、⑨の微温湯を流す前に注入してチューブ内に残らないようにする。

*胃瘻・腸瘻の場合は、栄養剤を注入する前にカテ―テルを解放し、胃液や前回注入した栄養剤が貯留していないか確認してから注入を開始する。(⑤挿入部位のチェックは不要)

*瘻孔周囲の皮膚が栄養剤や消化液が漏れて皮膚損傷を起こすことがあるため、注入前後で観察する。

 

4、経管栄養法の看護計画

経管栄養は、経鼻・胃瘻・腸瘻のどの方法をとっても、誤嚥性肺炎のリスクが存在します。今回は、共通する誤嚥性肺炎リスクで看護計画を立案・検討していきます。

 

4-1、経管栄養法の看護問題・看護目標

看護問題:誤嚥リスク状態

看護目標:経管栄養による誤嚥を起こさない。肺炎の徴候がない

 

4-2、看護計画

O-P

①バイタルサインのチェック

②注入前後での呼吸状態(肺雑音、喘鳴、痰の性状と量)の変化

③意識レベル(患者の訴え)

④口腔内の状況

⑤基礎疾患(経管栄養法に至った理由)、嚥下障害の程度

➅嘔吐の有無と程度

⑦腹満の有無と程度

⑧採血データ

⑨画像データ(胸部レントゲン、胸部CT)

 

T-P

①注入時はファウラー位を保ち、注入後もできるだけファウラー位、困難な場合は30~40度のギャジアップを維持する。(それも困難であれば、右側臥位とする)

②注入に合わせて①の体位がとれるよう、体位変換を調整する

➂口腔内を清潔に保つ(口腔清拭を行う)

④喀痰喀出が困難な場合、注入前に喀痰吸引を行う

⑤注入時・注入後に咳嗽や痰がらみの多い場合は、1回の注入量・時間を医師と検討する

⑥注入前に腹満がみられる場合は、シリンジで排気してから栄養剤を注入する

 

E-P

①患者・家人に、経管栄養の必要性を説明する

②患者・家人に、経管栄養による誤嚥のリスクを説明する

➂注入の1回量や時間を調整するため、患者が会話可能であれば嘔気や呼吸困難など、注入後に不快な症状がある場合は訴えるよう説明する

④患者・家人に、誤嚥を予防するため、注入後も30分間はファウラー位をとるように指導する

 

まとめ

消化器疾患だけでなく、高齢社会の現代では経管栄養による栄養療法は必要不可欠な医療となっています。在宅で経管栄養を行う場合には、経管栄養導入後は早期より家人へ指導が必要となることもあります。そのため、看護師は経管栄養に関する正しい知識と、エビデンスに基づいた技術を確実に身につけることが求められます。

 

参考文献

経管栄養と中心静脈栄養(国立がん研究センターがん情報サービス|2006/10/1)

PEG(胃ろう)造設と交換について(医療法人医誠会城東中央病院)

経腸栄養(EN)(株式会社大塚製薬工場)

経管栄養管理マニュアル(医療職者用)(大垣市民病院)


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