EBNを用いた看護|根拠に基づいた看護の大切さと実施するまでの過程
日々の看護を振り返ってみた時、患者に提供されている看護はあなたの昔からの経験や病院の慣習に基づいて実施されている場合がありませんか?毎日の看護に、EBN(エビデンスベースドナーシング)の考えをプラスすることで、より患者が安全に、そして患者や看護師にも満足感をもたらす看護ができるかもしれません。「根拠に基づく看護」とは、いったいどのような看護の仕方を言うのでしょうか?ここで少しいつもの看護を振り返り、さらに質の高い看護ができるようEBNの考え方を勉強してみましょう!
1、EBN(エビデンスベースドナーシング)とは
臨床医学では、「Evidence-Based」という考え方が重要視されており、日々の私たちの看護にも適応されています。EBN(エビデンスベースドナーシング)はその名の通り「根拠に基づく看護」を指しますが、これは看護手順書や専門書、テキストからの知識よりも、看護研究から得られた確かな知識に基づくケアの重要性を意味しています。
2、EBNの実践と大切さ
私たちが日々勉強のために活用しているテキストや専門書は、著者の経験に基づいた考えが記載されており、エビデンスが十分でないときもあります。それをそのまま吸収し臨床で実施してしまうと、間違ったケアを提供しインシデントを起こしかねません。看護師は臨床での経験による多くの知識を持っていますが、それが科学的知識かといえばそうではありません。看護研究による確かな科学的知識と、日々の経験値を結びつけることによって、より質の高いケアを行うことができます。私たちが日々提供している看護技術は、すでにエビデンスがあるものと、そうではないものあるのでエビデンスがもとめられます。そして患者に提供するために最善のエビデンスを選択するために最も大切なのは、患者のニーズであり、そのニーズに応じた最善のエビデンスを選択し、ケアを実施していきます。患者にケアが提供されるまで、以下の表のような過程をたどることになります。EBNを実践するためには、患者のニーズを知り、そこから看護師の経験と最善のエビデンスを組み合わせ、提供していくことが大切です。
出典:格差の解消 エビデンスから行動へ(国際看護師協会|2012)
3、的確な看護判断と適切な看護技術を提供するためには
3-1、科学的知識と観察に基づき看護技術の必要性を判断し実施する
最新の患者の情報をもとに患者に適した方法を考えます。そしてケアを実施する直前にもその必要性を考え、全身状態を観察し、実施できるかどうかをアセスメントします。
このとき、適した方法の選択や実施可能か否かの判断は、看護技術の知識のみならず、対象者の病態を考慮するための基礎的知識が必要となります。そして実施の過程でも、実施しながらの患者の心身の情報を素早くキャッチして、必要に応じて方法を変更する柔軟性が求められます。実施後は効果と副作用の有無を判断します。
3-2、看護技術の正確な方法を熟知し実施する
多くの病院では、安全管理を専門に担う部署を置き、事故やヒヤリハットから様々な場面での事故発生の危険性について分析し、事故が発生した場合の対処をマニュアル化し、迅速で的確な対応ができるような仕組みを作っています。安全確保をすることが組織的な取り組みを中心とした活動であるなら、看護技術のリスクを想定して正確に実施することは私たち看護師に求められる努力事項です。患者に痛みを負わせる、侵襲があるような採血や点滴を実施する場合は、血管に正確に刺すことだけではなく、もしも刺入部を誤った場合に起こる神経損傷や、薬液を注入された場合の副作用の出現などのあらゆるリスクを予想して、それらが実際に起こっていないかどうかを確認しながら実施すると同時に、万が一それらが出現した場合の対処を考えながら実施しなければいけません。
3-3、患者の将来を考えた看護技術を選択する
ヘンダーソンは看護の独自の機能について以下のような言葉を残しています。
「正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる」ように対象者が行動するのを助けること |
出典:看護の基本となるもの|日本看護協会出版会(ヴァージニア・ヘンダーソン|湯槇ます・小玉香津子訳|p79,2006)
患者は自身の状態や、回復につなげるために自分でできることを知りたいと願っており、自分が受ける処置や看護についても同様で、どのように実施されるのか、何か自分が協力できることはないかと思うし、また知る権利があります。看護師の役割は、患者自身が、他者の援助を得なくとも行動できるように援助することであると言えます。例えば、大腿骨頸部骨折の術後の患者で、まだ足の腫れが引かず靴を履くのに時間がかかる状態だとします。その患者にトイレに連れて行ってほしいと言われたとき、日々の業務に追われて忙しいからと、患者の靴を看護師が履かせるのはどうでしょうか。患者が家でどういう生活に戻っていくのか、自分で靴を履けるようになって歩けるようになるのがゴールなのであれば、看護師は靴を履かせないという判断をするのが良いといえるでしょう。一時的な助けを提供するのではなく、患者が将来的に自立して行動できるようになるための方法を考慮して援助方法を変えていく必要があります。
3-4、患者にとって安全安楽な看護技術を提供する
看護技術に必要なものは安全だけではなく、安楽も同様に必要です。ナイチンゲールの看護覚え書には、
「皮膚をていねいに洗ってもらい、すっかり拭ってもらった後の病人が解放感は生命力を圧迫していた何ものかが取り除かれて生命力が解き放たれた兆候のひとつである」 |
出典:看護覚え書改訳第6版|現代社(フロレンス・ナイチンゲール|湯槇ますほか訳|p159-160,2000)
と記されています。清拭の技術は生命力を圧迫しているものを取り戻すこと、つまり安楽をもたらしていることを意味しているといえます。看護技術は安楽をもたらすことを前提として提供され、たとえ痛みを伴う注射の手技一つであっても、その痛みを最小限にするようにもたらされなければいけません。
3-5、正確に記録し評価する
看護計画に基づき行ったケアの記録を残す目的として、
①適正な看護を行ったことへの証明
②ケアの根拠の明治 ③医療チーム間、患者・看護師間の情報交換 ④病状や医療提供の経過および結果に関する情報提供 |
以上を残し、実施後にどのような効果があったかを評価し正確に記録を行います。
まとめ
患者にケアを提供するとき、ついついルーチンになりがちですが、業務に慣れてきたからこそ、一歩立ち止まり、自分が行っているケアは科学的な知識に基づいたものかどうか考えながら実施できるといいですね。経験値が、すべて科学的知識に基づいたものかといえば、決してそうではないはず。エビデンスが十分でないケアは、ときにインシデントの原因になりかねません。患者のニーズに合わせた最善のエビデンスを選択し、自分の経験値と結びつけた最善のケアが患者に提供されるよう、経験値とともに科学知も向上させていきましょう。
参考文献
格差の解消 エビデンスから行動へ(国際看護師協会|2012)
EBNの重要性(岩手県立大学看護学部エビデンスベース看護情報センター)
基礎看護技術Ⅱ基礎看護学3|株式会社医学書院(任和子|p4-7,2013/02/01)