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【輸血の看護技術まとめ】手順、観察、認定看護師、副作用

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輸血

輸血は移植の1つとして考えられているため、看護師は患者さんの命を守るために様々なことに留意しなければいけません。特に、起こりうる副作用や合併症の種類や対処法に関する深い知識を持っておく必要があります。

輸血に関して不安な点があるという看護学生や看護師の方は、適切かつ迅速な輸血ができるよう、最後までしっかりお読み頂き、輸血に関して自信が持てるよう深い知識を身につけてください。

 

 

1、輸血とは

輸血とは、血液成分を体内に入れる臓器移植の一つであり、血中の細胞成分や蛋白成分が減少した時、また機能が低下した時に、その成分を補充し臨床症状の改善を図る目的で行われます。日本輸血・細胞治療学会により、以下のような輸血療法の原則が定められています。

 

1、補充療法であり、根本的治療ではない

2、ヒト血液(同種の細胞)を入れることは臓器移植と同様の医療行為である

3、必要な血液成分のみを使用することが原則である

4、治療目標を設定し、補充量と補充間隔を決め、臨床症状・検査値から有効性を評価すること

5、輸血を安全に行うためには実施管理体制の整備、輸血実施手順書を遵守すること

 

 

1-1、輸血用血液の種類

輸血時には、患者さんの病態によって特定の成分が入った血液製剤を使用します。輸血用血液製剤には「赤血球製剤」「血漿製剤」「血小板製剤」「全血製剤」があります。

以前は、採血されたままの「全血製剤」が主流でしたが、不必要な成分を輸血することで循環器への負担がかかるため、赤血球や血漿など必要な成分だけを輸血する手法が今や一般的となりました。

また、特定の患者さんには「血液凝固第VIII因子製剤」「アルブミン製剤」「免疫グロブリン製剤」から成る血漿分画製剤が用いられます。

 

≪血液製剤≫

種類 使用環境 使用用途
赤血球 保存温度:2~6℃有効期間:採血後21日間 出血および赤血球が不足する場合や、機能低下による酸素欠乏のある場合に使用されます。
血漿 保存温度:-20℃以下有効期間:採血後1年間 出血または出血傾向により複数の血液凝固因子の欠乏がある場合に使用されます。
血小板 保存温度:20~24℃有効期間:採血後4日間 血小板数の減少もしくはその機能低下による出血または出血傾向にある場合に使用されます。
全血 保存温度:2~6℃有効期間:採血後21日間 大量出血などにより、全て成分が不足する状況下で、赤血球と血漿の同時補給が必要な場合に使用されます。

 

 

≪血漿分画製剤の種類≫

血漿分画製剤は、血漿中に含まれる血液凝固因子やアルブミン、免疫グロブリンなどのタンパク質を抽出・精製したものです。有効期間が長く、輸送や保存が簡便というメリットがあります。

 

種類 使用環境 使用用途
血液凝固因子製剤 保存温度:10℃以下有効期間:2年間 血友病など、血液中の血液凝固第VIII因子が不足している場合や、早急な止血が必要な場合に使用されます。
アルブミン製剤 保存温度:室温有効期間:2年間 事故などにより、大量の出血がありショック状態に陥った時や、熱傷、肝臓病、腎臓病などの治療に使用されます。
免疫グロブリン製剤 保存温度:10℃以下有効期間:2年間 B型肝炎ウイルスを含む血液による針刺し事故後の発症防止や、B型肝炎撲滅のための母子間感染の予防のために使用されます。

 

 

 

2、輸血の準備

輸血を実施する患者さんに対し、看護師は同意書の取得や血液検査、血液製剤の請求など、実施に際する準備をしなければいけません。医療機関によっては準備の手順や方法が異なる場合がありますが、以下の手順・方法が主となっています。

 

①輸血同意書を取得する

輸血を必要とする患者または、手術に際して出血が予想される患者に輸血の必要性を説明した後、同意書に署名してもらいましょう。その後、同意書はカルテに保存し、コピーを患者さんに渡してください。

 

②血液検査を実施する

輸血同意書が得られた後、患者さんの血液型を検査するために採血を行います。異なる時期に2回採血を行います。取り違えリスクを回避するために、2回分の検体を1回の採血で提出しないようにしてください。

 

③血液製剤を請求する

血液検査により適合する血液が判明した後、必要な血液製剤を請求します。請求時期は医療機関によって異なりますが、赤血球製剤(投与開始1~72時間前)、血漿製剤(投与開始0~24時間以内)、血小板製剤(投与開始3から72時間以内)となります。

 

④受取・搬送・保管を行う

緊急時には検査室から直接受け取り、緊急時でない場合はメッセンジャー便などで受け取ります。この際、以下の項目をしっかりと確認してください。

患者氏名、血液型、製造番号、クロスマッチの検査結果、放射線照射の有無、必要血液の種類と単位数、有効期限、外観の異常の有無

 

また、適正温度を保ち破損を防止するために、輸送には血液製剤専用運搬バッグを使用し、受取後は出来るだけ早く輸血を行ってください。

 

≪適切な運搬・保管方法≫

血液製剤の種類 適正温度 適正使用法
赤血球製剤 4~6℃ 保冷剤を入れて運搬。製剤が直接触れないように注意すること。
血漿製剤 -20℃ 保冷剤を入れて運搬。衝撃を与えないように注意すること。
血小板製剤 20~24℃ 常温で運搬すること。

 

 

⑤輸血を実施する

輸血実施前に必ず複数の医師または看護師で以下の項目をしっかり確認してください。

患者氏名、血液型、製造番号、クロスマッチの検査結果、放射線照射の有無、必要血液の種類と単位数、有効期限、外観の異常の有無

 

 

 

3、輸血の手順

輸血の実施は看護師が担当します。必要物品を揃えた後、適切な手順で正確に輸血するようにしてください。輸血に必要な物品と実施手順は以下の通りです。

 

≪輸血実施に必要な物品≫

・輸血同意書

・血液型判定

・交差試験適合票

・必要に応じた血液パック

・輸血関係伝票

・輸血セット

 

≪輸血の手順≫

①血液パックを左右上下に振り、内容物を混和する。

②差し込み口を露出させる。

③輸血セットを準備し、クレンメをしっかり閉じる。

④輸血針のキャップを外し、血液パックに差し込む。

⑤点滴スタンドに血液パックを吊り下げる。

⑥点滴筒を指でゆっくり押しつぶして話、筒内に半分程度まで血液を満たす。

⑦クレメントを徐々に緩め、筒の先まで血液を導く。

⑧穿刺し、輸血を行う。(最初の10~15分間1ml/分、その後5ml/分)

⑨輸血開始後、副作用出現の有無を確認する。

⑩輸血開始から15分後にバイタルサイン測定を行う。

⑪30分間隔で患者さんの状態を観察する。

 

 

4、輸血に際する注意点

輸血というのは主に他人の血液を体内に入れるため、徹底した安全管理が必要です。輸血中の事故を防ぐために、また輸血後の病状管理を徹底するために、以下の事項に留意してください。

 

・輸血同意書を確認する。

入室時には、患者さんの同意書を確認し、トラブルを確実に予防すること。

 

・徹底したダブルチェックを行う。

輸血の受け渡し時や受領した輸血を実施する際には、「患者氏名」「血液型」「製造番号」「クロスマッチの検査結果」「放射線照射の有無」「必要血液の種類と単位数」「有効期限」「外観の異常の有無」などを、複数名でしっかりと確認すること。追加輸血が必要な場合も都度ダブルチェックを行うこと。

 

・保管法を厳守する。

使用までに時間がある場合には、製品ごとの温度・管理方法で保管し、他の患者と共有する場合には取り違えないよう、しっかりと管理すること。

 

・副作用の出現を観察する。

アレルギー反応やショック症状、血液型不適合など、輸血開始後5分間は患者の側から離れず、注意深く観察を行い、異常があった場合には直ちに輸血を中止すること。また、輸血開始後15分経過した時点でも再び入念に観察し、その後も適宜観察をすること。

 

・看護記録を書き綴る。

実施した輸血の種類や輸血量、開始・終了時刻、副作用の有無など、輸血に際した看護記録を細かく書き綴ること。

 

 

≪事故が起こりやすい状況≫

・大量・多種類の輸血を使用する手術

・外回り看護師が何度も交代する手術

・緊急手術

・術中に急変事態が起きた手術

・口頭により指示を受けている

・複数の患者の血液製剤を持ち込んでいる

・出血に伴う多重課題がある

・被覆されているため身体の観察制限がある

・全身麻酔と薬剤により副作用の発見の遅れがある

 

 

5、輸血の副作用

体内に他人の血液が混入することで、必然と多くの副作用が存在します。また、管理ミスによる事故も多数報告されているため、看護師は細心の注意を持って観察しなければいけません。以下に代表的な副作用・合併症を紹介します。

 

≪即時型≫

病名(発症時期) 症状 概要
ABO不適合(輸血開始直後~数日) 発熱、悪寒、腹痛、胸痛 、穿刺部位の熱感、疼痛 、浮腫 、息切れ など 血液製剤や患者の取り違えにより起こる人為的ミス。血液中の抗体を破壊することで、重篤になるケースが多い。
アナフィラキシー(輸血後10分以内) チアノーゼ 、血管浮腫、皮膚の高潮、腹痛、喘息症状、頻脈、血圧低下 など 体内に異物(他人の血液)が侵入したことで、強い抗体反応の結果により生じるショック症状。軽度の場合には、輸血関連急性肺障害に似た症状であるため注意が必要。
輸血関急性肺障(輸血後1~2時間以内、あるいは6時間以内) 呼吸困難、低酸素症 、両側肺水腫、血圧低下 など 抗白血球抗体と白血球との抗原抗体反応により補体が活性化され、好中球が肺の毛細血管に損傷を与えることで発症する。敗血症、肺炎、急性膵炎など、重篤になりやすい。
輸血関循環過負(輸血後6時間以内) 呼吸困難、頻脈、血圧上昇 など 輸血の容量負荷により起こる心不全。輸血関連急性肺障害と似た症状であるが、比較には血圧の「低下・上昇」を参考にすると良い。
細菌感染(輸血後4時間以内) 発熱、悪寒、頻脈、嘔気、背部痛、血圧上昇、血圧低下 など 血液製剤の不適切な管理・保管によってパック内で細菌が繁殖し、輸血時に感染する。菌血症やエンドトキシンショックなどがある。

 

≪遅発型≫

病名(発症時期) 症状 概要
輸血後移植片対宿主(輸血後1~2週間) 発熱、紅斑、下痢、肝機能障害、汎血球減少症 など 輸血後に体内でリンパ球が増殖し、増殖したリンパ球が組織を攻撃することにより起こる。
ウイルス感(輸血後数か月~) 発熱、悪心、腹痛、肝障害、リンパ節腫大、体重減少など、各感染症の症状 血液製剤内に存在するウイルスにより感染。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、HTLVなど、さまざまな感染症が存在する。

 

 

 

6、症状別にみる対処法

上記の各副作用が発症した際、慌てることなく医師の指示のもと、適切に対処する必要があります。遅発型の場合には術中に発現しませんが、即時型の場合、一刻を争う事態になるケースが多々あるため、迅速かつ適切な対処が不可欠です。

 

 

6-1、即時型

 

・ABO不適合

輸血開始直後に「発熱」「悪寒」「腹痛」「胸痛」「穿刺部位の熱感」「疼痛」「浮腫」「息切れ」など、さまざまな症状が一挙に発現する場合、ABO不適合の可能性が高いと言えます。患者の血液型と血液製剤の血液型の組み合わせによって、治療法は異なりますが、基本的には以下の手順に沿った治療が行われます。

 

 

①輸血を中止

②針は残したまま接続部で輸液セットを新しいセットに交換

③乳酸リンゲル液をつなぎ、最速で点滴

④導尿

⑤10mlヘパリン採血を行い、血液型を再検

⑥酸素吸入(場合によっては挿管)

⑦ラクテックを大量に急速輸注

⑧ドパミン投与(3-5μg/kg/分)

⑨ソルメドロール1000mgを静注

⑩ヘパリン5000単位、その後10000単位/日で持続静注

⑪ハプトグロビン10000単位で持続静注

⑫ラシックスなど利尿剤を投与(1ml/kg/時を確保)

 

 

・アナフィラキシーショック

輸血後、数分~30分以内に「呼吸困難」「全身紅潮」「血管浮腫」「血圧低下」などのショック症状がみられる場合は、アナフィラキシーショックと考え、以下の手順に沿って治療してください。

 

① 直ちに輸血中止

② バイタルサインのチェック

③ 気道確保、O2投与

④ 気道狭窄にはエピネフリン0.3mgを注射

⑤ 大量の輸液

⑥ドーパミンなどの昇圧剤の投与

⑦ ステロイド、抗ヒスタミン薬の投与

⑧ 気道狭窄が続く時はアミノフィリン (5mg/kg) を投与

 

 

・輸血関連急性肺障害

輸血後、6時間以内(多くは1~2時間)に「呼吸困難」「発熱」「血圧低下」「低酸素血症」などの症状が発現する場合には、輸血関連急性肺障害(TRALI)が疑われます。

 

① 直ちに輸血中止

② 治療開始時に患者血液を採取

(抗HLA抗体、抗顆粒球抗体などの検索のため)

③ 気管内挿管、酸素投与、機械的人工呼吸

④ 昇圧剤投与

⑤ 輸液

⑥ステロイドの投与

 

 

・輸血関循環過負

輸血開始後、6時間以内に「呼吸困難」「チアノーゼ」「頻脈」「血圧上昇」などの症状が発現する場合、過剰輸血や休息輸血による輸血関連循環過負担(TACO)の可能性が考えられます。

 

①輸血中止

②酸素投与

③利尿剤の投与

④座位に体位を変更

⑤瀉血を行う(250ml程度)

 

 

・細菌感染

輸血開始後、4時間以内に「発熱」「悪寒」「頻脈」「嘔気」「背部痛」「血圧上昇」「血圧低下」などの症状があり、ABO不適合や輸血関連急性肺障害(TRALI)ではない場合、血液製剤による細菌感染が疑われます。

細菌感染が認められる場合には、輸血を中止し、患者血液培養 と製剤残余 の細菌培養 を行い、抗生剤投与を開始します。

 

 

6-2、遅発型

 

・輸血後移植片対宿主

輸血後、1~2週間後に「発熱」「紅斑」「下痢」「肝機能障害」「汎血球減少症」などの症状が発現する場合には、輸血後移植片対宿主症(輸血後GVHD)の可能性が高いと言えます。

出現時期には多くの場合、すでに重篤であるため死に至るケースが少なくありません。対処法としては、免疫抑制剤やステロイドの継続投与や増量、パルス状投与により改善がみられる場合があります。

 

 

・ウイルス感染

輸血後、数か月~十数年の間に「発熱」「悪心」「腹痛」「肝障害」「リンパ節腫大」「体重減少」などの症状が発現する場合には、B・C型肝炎やHIVなどのウイルス感染の可能性が高いと言えます。

各感染症に応じた治療法を実施しますが、B型肝炎は核酸増幅検査、C型肝炎はHCVコア抗原検査、HIVはHIV抗原検査など、各種検査を必ず実施するようにしてください。

 

 

7、輸血に関する認定資格

看護師の認定資格として日本看護協会が様々な分野で認定を行っていますが、輸血に関しては日本輸血・細胞治療学会を中心とした計5学会が2012年に「臨床輸血看護師」の認定制度を導入しました。輸血は移植の一種と考えられ、副作用や合併症が伴いやすいため、安全な輸 血に寄与することのできる看護師の育成を目的として制定され、年間約150人の看護師が試験に合格し、認定を受けています。

 

≪認定対象≫

・看護師免許を保有していること

・輸血治療を行っている施設の看護師であること

・輸血分野において3年以上の臨床経験を有していること

・所属長と輸血責任医師の推薦を得えていること

 

≪認定までの道のり≫

①各書類(受験申請書、推薦書など)の提出

②資格審査合格後、事前講習会を受講

③筆記試験を受験

④合格後、指定研修施設で研修

⑤研修後、審査次第で認定取得

 

 

まとめ

輸血は副作用・合併症が発症しやすく、重篤になるケースも多々あります。患者さんの命を守る施術が、反対に命を奪う施術になってしまう可能性があるということを忘れないでください。

医療事故を起こさないよう、血液製剤はしっかりと確認・管理・保存し、副作用や合併症に迅速に対処できるよう、集中的な観察を行いましょう。患者さんの命を守り、より良い治療が行えるよう、まずは輸血に関する不安材料がゼロになるまで知識を深めてください。

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