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脳性麻痺の看護計画|定義、原因、特徴と看護過程、看護問題

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脳性麻痺看護

脳性麻痺とは、妊娠中から生後4週以内に脳が損傷したことで運動障害が起こる疾患のことです。脳性麻痺は患者1人1人、それぞれ症状や合併症、障害の程度が異なりますので、個別性を重視して看護をしていく必要があります。

脳性麻痺の定義や原因、特徴、看護過程・看護問題・看護計画をまとめました。

 

1、脳性麻痺の定義

脳性麻痺とは生後4週以内に脳の損傷が原因で、運動や姿勢に異常が生じる病気です。厚生労働省の脳性麻痺研究班は脳性麻痺を

受胎から生後4週以内の新生児までの間で生じた、脳の非進行性病変に基づく、永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常である。その症状は満2歳までに発現する。進行性疾患や一過性運動障害、また将来正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外する

と定義しており、この定義を踏まえると、脳性麻痺は次の4点が重要なポイントであると言えます。

・妊娠中から生後1か月の間に脳に障害が起こったこと

・脳の障害が進行性のものではないこと

・脳性麻痺とは運動障害を指すこと

・一過性のものではないこと

脳性麻痺というと、てんかんや知的障害、視覚障害などを合併することが多いですが、脳性麻痺と診断する場合には、これらの神経障害の合併は問いません。

また、脳の障害やそれによる運動障害が一過性ではなく、永続的に続くことが、脳性麻痺のポイントになります。

 

2、脳性麻痺の原因

脳性麻痺は妊娠中から生後4週までに脳に障害が起こることが原因ですが、その障害が起こる原因は、出生前(妊娠中)と周産期(分娩時)、出生後の3つの時期に分けることができます。

 

■出生前

・脳内構造の形成異常(脳神経細胞の遊走障害)

・脳梗塞

・頭蓋内出血

・脳室周囲脳軟化症(低出生体重児)

・サイトメガロウイルス感染症

・トキソプラズマ感染症

・母体の栄養障害

・放射線障害による脳髄発達障害

 

■周産期

・新生児仮死

・分娩時の脳出血や脳外傷

 

■出生後

・脳外傷

・中枢神経感染症(脳炎や髄膜炎)

・重症黄疸による核黄疸

 

これらの原因によって、脳に障害が起こり、脳性麻痺が発症するのです。

 

3、脳性麻痺の特徴

脳性麻痺は、その特徴によって5つに分類することができます。

 

■痙直型

脳の錐体路を中心とした部分に障害が出ることで、筋肉が硬直して、持続して縮んだ状態が続きます。視覚障害や斜視を合併することが多いという特徴があります。

・片麻痺=体の片方のみに障害が現れます。脚は膝や股関節が伸びきらないため、尖足歩行になりやすく、腕は掌で支える姿勢がとりにくくなります。

・四肢麻痺(両麻痺)=四肢麻痺は、独歩が可能な状態から座位が取れない状態まで障害の程度の幅が広いという特徴があります。また、四肢麻痺は各関節を伸ばしきれないため、関節拘縮が起こりやすいことも特徴の1つです。

 

■アテトーゼ型

アテトーゼ型は脳の錐体外路を中心とした障害で、不随意運動が症状の特徴です。不随意運動があるために、運動の調節や協調、コントロールがうまくできません。

不随意運動が主症状ですので、関節拘縮は起こりにくく、知的障害の合併はそれほど多くありません。

ただ、顔面の筋肉の不随意運動により、発語や発声などの言語障害や咀嚼・嚥下障害、流涎などの症状が現れることが多いです。

 

■失調型

小脳や大脳皮質の平衡を調節する神経経路に障害が起こることで、筋肉の衰弱やふるえ、バランスのとりにくさ、運動の不安定性などが症状に現れます。

また、イントネーションには抑揚がなく、話し方がゆっくりであることも、失調型の特徴の1つです。

 

■強剛型(固縮型)

強剛型は錐体路の障害で四肢の屈曲・伸展、どちらにも筋肉の緊張が生じることが特徴です。そのため、四肢の関節を伸ばす時も曲げる時も筋肉に緊張が起こるので、歯車のようにカクカクとした動きになるのが特徴です。

 

■混合型

混合型は、今まで説明した4つの脳性麻痺の型が2つ以上合わさったもので、混合型の多くは痙直型とアテトーゼ型が混ざったものになります。混合型の場合は、混合しているどちらか一方の型が強く出ていることがほとんどになります。

 

3-1、脳性麻痺の特徴的な合併症

脳性麻痺は運動障害ですので、運動障害以外の合併症がなくても、「脳性麻痺」と診断されます。ただ、脳性麻痺は運動障害以外に合併症を生じることが多いのです。

・精神発達障害(知的障害)

・てんかん

・視知覚認知障害

・視覚障害

・聴覚障害

脳性麻痺は知的障害やてんかんを合併することが珍しくありません。また、見たものを正しく理解できない視知覚認知障害も、脳性麻痺に多い合併症です。

視覚障害は大脳皮質盲(目に問題はなくても脳が情報を受け取ることができないために見えない)が起こったり、斜視や眼振が起こることがあります。

 

4、脳性麻痺の看護過程

脳性麻痺の患者は、運動障害のほかにも知的障害やてんかんなどの合併症を持っていることが多いのでので、合併症にも目を向けて看護をしていく必要があります。

ただ、脳性麻痺の患者はどのような運動障害があるのかなど運動障害の程度は個人差が大きいですし、どのような合併症があるのかや家族状況によっても、看護問題は変わりますので、患者個人の状態に合わせて、看護過程を進めていかなくてはいけません。

また、脳性麻痺の患者は自宅療養することが多いですので、退院後に自宅で家族が看護することも踏まえて、看護過程を進めていくようにしましょう。

 

4-1、脳性麻痺の看護問題

脳性麻痺の看護問題を考えていきましょう。ここでは、脳性麻痺の代表的な看護問題を挙げていきますが、先ほども説明したように、脳性麻痺の患者の看護問題は1人1人異なりますので、ご紹介する看護問題を参考にしながら、患者個人に合わせた看護問題を考えるようにしてください。

 

■関節拘縮のリスクがある

痙直型や強剛型の脳性麻痺の患者は、筋肉の硬直から関節がきちんと伸びずに、関節拘縮を起こすリスクがあります。

関節拘縮を起こすと、ADLが低下しやすいので、関節拘縮が起こらないように看護介入していきましょう。

 

■誤嚥のリスクがある

脳性麻痺の患者は顔面の不随意運動から、咀嚼障害や嚥下障害が起こることが多いため、誤嚥を起こすリスクがあります。

誤嚥が起こると、誤嚥性肺炎を起こし、命にかかわることがありますので、誤嚥を起こさないようにケアをしていく必要があります。

 

■セルフケア不足

脳性麻痺の患者が入院すると、点滴や治療などを行うために、行動が制限され、自宅で療養している時よりも、ADLが低下してセルフケア不足になることがあります。

入院中にADLが低下すると、退院後の自宅療養で家族の負担が増えますし、患者のQOLが低下しますので、セルフケア不足にならないようにケアしていきましょう。

 

■生活環境の変化への不適応を起こす

普段、自宅で療養していていて、知的障害がある脳性麻痺の患者が入院すると、環境の変化に適応することができず、パニックになることがあります。

看護師は脳性麻痺の患者が環境の変化にできるだけスムーズに適応できるように、ケアしていく必要があります。

 

4-2、脳性麻痺の看護計画

脳性麻痺の看護計画を先ほどの看護問題に沿って、立案していきましょう。

 

■関節拘縮のリスクがある

看護目標 関節拘縮を起こさない、悪化させない
OP(観察項目) ・脳性麻痺の症状

・ADLの状態

・関節可動域

・筋力、筋緊張の状態

・拘縮の有無

・麻痺側

・他動運動時の関節の疼痛の有無、表情

TP(ケア項目) ・良肢位を保つ

・更衣や清潔ケア、体位交換などのケアの時に、関節を動かす

・他動運動の前には関節を温める

EP(教育項目) ・家族に他動運動をするように説明する

・良肢位を保つことの重要性を説明する

・拘縮が起こることのリスクを伝える

 

関節拘縮の看護に関しては、「拘縮の看護|原因と種類ごとの特徴および介助者が可能な援助」も参照してください。

 

■誤嚥のリスクがある

看護目標 嚥下がスムーズに行えて、誤嚥が起こらない
OP(観察項目) ・咀嚼の状態

・嚥下の状態

・食事や水分の摂取量

・食事の形態(とろみやキザミの有無)

・食事中の体位

・食事介助の必要性の有無

・食事中の呼吸状態

・流涎の量

TP(ケア項目) ・食事介助を工夫する

・家族からの情報を得て、食事内容を工夫する

・食べやすい体位を整える

・むせこみや咳嗽が見られたら、いったん食事を止める

・すぐに吸引できるように、食事前に用意してく

EP(教育項目) ・食事中にむせこみがあった時の対処法を指導する

 

嚥下障害の看護は「嚥下障害のある患者の看護|看護目標と看護計画(OP・TP・EP)」を参考にすると良いでしょう。

 

■セルフケア不足

看護目標 ADLを維持することができる
OP(観察項目) ・脳性麻痺の症状

・ADLの状態
・入院によるADLの制限の有無

TP(ケア項目) ・障害の程度、ADLの状態に応じて、できるだけ自力でセルフケアできるように働きかける

・全面的に介助するのではなく、できることはやってもらう

・家庭での介助方法を家族から聞いて、病棟でも同じように実施する

・生活パターンに合わせた規則的な生活を送れるようにする

EP(教育項目) ・介助のポイントなどを家族に指導する

 

■生活環境の変化への不適応を起こす

看護目標 入院前と同じような生活パターンで過ごすことができる
OP(観察項目) ・脳性麻痺の症状

・知的障害の有無や理解度

・言動や表情

・食事の摂取量

・睡眠状況

・同室の患者との関係

TP(ケア項目) ・家庭での生活パターンを把握する

・日課表を作り、それに基づいて行動する

・患者との信頼関係を作る

・ほかの患者とのかかわりを支援する

・現在の状況や病棟の構造などを理解できてるかを確認する

EP(教育項目) ・家族に必要時は付き添ってもらうように伝える

 

まとめ

脳性麻痺の定義や原因、特徴、看護過程・看護問題・看護計画をまとめました。脳性麻痺は運動障害が主症状ですが、知的障害やてんかんなどの合併症が現れることが珍しくありません。

また、1人1人症状や合併症が異なりますので、患者の状態に合わせた看護をしていくようにしましょう。

 

参考文献

拘縮の看護|原因と種類ごとの特徴および介助者が可能な援助

嚥下障害のある患者の看護|看護目標と看護計画(OP・TP・EP)


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