心電図への苦手意識を抱いている方は多いのではないでしょうか。しかし、心電図はあらゆる場面で必要な検査であり、患者の状態をいち早く把握するための重要な手段のひとつです。
まずは、心電図の基本的な知識を身につけ、理解を深めていきましょう。
1、心電図の波形と名称
心電図とは、心臓の電気的興奮の時間的変化を記録したもので、P波、QRS波、T波、U波で表され、電極に向かう興奮は上向き(陽性波)に、遠ざかる興奮は下向き(陰性波)に記録されます。
心臓の電気的刺激は、房結節から出され、右房、左房、房室結節、ヒス束、プルキンエ線維、心室へと伝わります。
・P波:心房の興奮を示す波形
・QRS波:心室の興奮を示す波形
・T波:心室の興奮(脱分極)の終了時に生じる波形
・PQ間隔:P波のはじまりからQ波までを言い、刺激が
洞結節から心室に伝わるまでの時間を示します。
・QT間隔:Q波の終わりからT波の始まりまでを言い、
心室の興奮から興奮が終わるまでの時間を示します。
・RR間隔:R波の頂点と、次のR波の頂点までの長さで、
これにより心拍数を計算することができます。
2、心電図の判読ポイント
心電図は、年齢や性別、体格などの影響により個人差がありますが、それぞれの波に異常がないこと、波の間隔が一定であること、また波の間隔が一定で不整がないことが正常であると言えるでしょう。
心電図は調律、間隔、電気軸、回転、波形などにより判別されます。
■調律
調律とはリズムのことで、心臓の調律は洞結節により支配されています。①すべてのP波の次にQRS波が見られる②すべてのQRS波にP波に先行している③Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ誘導でP波が陽性である、これらすべてを満たす状態を洞調律(サイナリズム)と言い、それ以外は不整脈とみなされます。
心拍数の正常値は、安静時で60~100回/分ですが。性別や年齢、精神状態、環境などの条件により変動します。
■間隔
通常、心電図の記録は25mm/秒で送られ、1mm刻みの方眼紙になっています。1mm=0.04秒とし間隔を計算することができます。
上室性の不整脈では、房室結節以下の興奮伝導が正常のためQRS幅が狭く、心室性の不整脈では、刺激伝導路を介さずに伝導するため、QRS幅が広く変性が見られます。
■電気軸
電気軸とは、電気的変化のベクトルのことで、四肢誘導のうちいずれか2つの誘導を選び、それぞれのQRS振幅を用いて算出します。
■回転
回転とは水平面における電気軸の指標で、心臓を足側からみて、右回りの回転を時計方向、左回りの回転を反時計方向と言います。また、R波とS波の振幅比がほぼ1となる誘導を移行帯といいます。
■波形
波形により様々な変化をとらえることができます。
・P波:P波は心房性の変化をとらえやすく、Ⅱ、V1などで観察します。
・QRS波:QRSの増大は脚ブロックを示します。
・R波:R波の増高は右室肥大、後壁梗塞、WPW症候群などで見られます。
・Q波:異常Q波は心筋梗塞に特徴的な所見ですが、心筋炎や心室肥大などでも見られます。
・ST部分・T波:ST部分やT波の異常は、心筋虚血をきたす疾患で見られます。
・U波:U波の増高は高K血症、陰性U波は左室肥大や左前下行枝の虚血の際に見られます。
3、心電図装着時の看護と観察時の留意点
心電図検査を実施する場合は、静かな環境で行えるよう調整し、正しい位置に電極を装着しましょう。また、環境や精神的状態が心電図に影響を与える可能性もあるため、患者の不安の軽減や環境への配慮が必要となります。
心電図により、患者の状態を把握することができます。異常な波形や不整脈等の有無に注意し観察し、異常が認められた場合は、ただちに医師に報告しましょう。
まとめ
心電図で重要なことは、異常な状態に気づけるかどうかです。そのためには、まず正常な心電図を知ることが大切です。さらに、疾患により特徴的変化が見られることがありますので、そのそれぞれの疾患における心電図変化の特徴をしっかりと把握しておきましょう。