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めまい(眩暈)の看護|症状や原因・看護問題・看護計画とそのケア

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めまい看護

めまいはとても不快な症状であり、日常生活に支障が生じる原因となります。めまいは原因と発生機序によって分類されており、何かしらの疾患の症状として出現する障害です。ここでは、看護に生かすために発生機序と原因からめまいについて詳しく知り、看護問題と計画について解説します。

 

1、めまい(眩暈)とは

めまいは回転性眩暈に伴う異常な感覚のことをいい、安静にしていても周囲が回って見える、または、右から左に動いて見えるという錯視体験のことをいいます。めまいを感じると、視覚的にも平衡感覚的にも違和感を感じ、周囲と空間が一致しないような強い不快感を感じます。

普段、人間の体は、平衡感覚を保つために、視覚、前庭迷路(内耳)由来の平衡覚、固有感覚(深部感覚)、表在感覚の体性感覚系からの情報を使って、眼球運動や四肢体幹の運動、自律神経活動を中枢神経系で統合・制御することによって保たれています。

平衡感覚を保つために重要なものに、前庭迷路とそのネットワークからなる前庭系があります。前庭迷路とは、内耳にある平衡系の受容器のことで、耳石器と半規管からなっています。

めまい(眩暈)とは

(出典:稲垣耳鼻咽喉科医院

 

耳石器は、卵形嚢と球形嚢からなっている直線加速度のセンサーで、加速度や重力をとらえます。この卵形嚢と球形嚢は、平衡斑にあって直交する位置に存在します。体の傾きなどを含む直線加速度刺激によって、耳石膜と結合した感覚細胞の毛束の偏位が生じて、直線的な体の運動に関する情報を中枢神経系に伝達します。

半規管は前半規管と後半規管、外半規管の3つからなっている角加速度センサーで、回転などの動きをキャッチします。半規管の感覚細胞は、半規管膨大部の膨大部稜にあります。膨大部稜の感覚細胞上のクプラというゼラチン質のものが、角加速度刺激によって偏位して感覚細胞の毛束の偏位が生まれ、体の回転に関する情報を中枢神経系に伝達します。このような末梢の知覚センサーから神経伝達によって中枢神経系に伝わった情報が、その過程で情報間に矛盾が生じすことでめまいが自覚されると考えられています。

 

2、めまいの原因

めまいの原因として、平衡感覚を保つための末梢神経系からの情報伝達の過程に矛盾が生じ、平衡感覚の異常が意識されることがあります。その末梢神経系からの情報伝達過程の矛盾が生じる場所や原因によって3つの種類に分けられます。

 

2−1、耳が原因のめまい

内耳にある半規管はリンパ液にみたされ、体が動くとリンパの流れが変わり、その動きから体がどの方向へ動いているのかを捉えています。半規管は3つの半円形の管があり、それぞれが90度の角度で作られています。この3つの半規管によって様々な方向の動きを捉えることができるのです。耳石器には炭酸カルシウムの小さな結晶が感覚器の上にあり、体に重力や遠心力が加わると結晶が動いて体の傾きや重力、加速度を捉えています。

このような半規管や耳石器、または、その感覚を伝達する前庭神経に障害があるとめまいが生じます。急性期のめまいは回転性のものが多いですが、慢性化すると浮遊性のめまいとなることもあります。耳が原因のめまいには、耳鳴りや難聴、耳閉感があり、めまいが回復するとこのような症状も軽快します。耳が原因でめまいを起こす疾患には、メニエル病、前庭神経炎、突発性難聴、聴神経腫瘍などがあります。

耳が原因のめまい

(出典:梅華会耳鼻咽喉科クリニック

 

2−2、脳が原因のめまい

脳が原因のめまいは、耳鳴りなどの耳の症状を伴いません。また、耳が原因のめまいよりも、めまいの程度は軽いことが多いです。脳が原因のめまいには、顔や手足のしびれ、力運動失調、手の震え、ものが二重に見えるなどの神経症状があります。耳が原因のめまいは繰り返すことが多い傾向にありますが、脳が原因のめまいは初めて経験する症状であることが多いのです。脳が原因でめまいを起こす疾患には、脳梗塞、脳出血、椎骨脳底動脈循環不全、てんかん、良性発作性頭位変換性眩暈があります。

 

2−3、その他のめまいの原因

起立性低血圧は脳循環の一過性の低下によって起こるものですがめまいを自覚し、症状が強いものは失神となることもあります。血管迷走神経反射によって起こるめまいもありますが、これは不安障害や精神疾患による身体症状として診断されることもあります。

 

3、めまいの看護問題

めまいの症状が出ている患者さんにとって、日常生活の援助や症状を緩和することは、とても重要な看護ケアとなります。そのためあげられる看護問題としては、次の通りです。

 

①聴力障害・めまい症状による苦痛

②生活行動に制限がある

③転倒・転落の危険がある

④栄養摂取障害

⑤再発の不安がある

 

4、めまいの看護計画

上記に挙げた看護問題についての計画を立案します。

 

①聴力障害・めまい症状による苦痛

■看護目標:症状が発生せず苦痛が軽減できる

■観察項目(OP)

・めまいの程度

・聴力障害の程度(聞こえの程度、耳鳴り)

・耳閉塞感、聴力過敏、自声強調、複聴の有無と程度

・苦痛の訴え、内容

■ケア項目(CP)

・聴覚障害、聴力障害の程度や訴え程度に合わせて、部屋や話し方を考慮する

・めまいが起こっているときは、静かに刺激がないような環境にする

・必要時、医師に報告し、医師の指示に基づいて与薬する

■教育項目(EP)

・症状があるときは遠慮なく伝えるように説明する

・症状が出現する傾向を一緒に分析し、自分でわかったことは伝えるように説明する

・症状が出現しやすい刺激を避けるように説明する

 

②生活行動に制限がある

■看護目標:可能な範囲でセルフケアができる

■観察項目(OP)

・めまいを出現、悪化させる体位

・めまい出現時の体動可能範囲、程度

・環境

■ケア項目(CP)

・生活行動のできる範囲を把握し、セルフケアできるように援助する

・ベッド周囲の環境整備

・食事、整容、排泄のセッティング

■教育項目(EP)

・症状が出現しているときは、遠慮せず援助を求めるように説明する

・症状が出現しているときは、安楽な体位を取るように説明する

 

③転倒・転落の危険がある

■看護目標:転倒・転落せずに安全安楽に経過できる

■観察項目(OP)

・体動するときの状況(めまいの出現の有無、ふらつきの有無)

・体動可能な範囲

・ベッドサイドの環境

■ケア項目(CP)

・ベッドサイドの不要なものを片付ける

・転落しないように、ベッド柵を使用する

・歩行時、必要なら見守りまたは、車椅子を使用する

・食事、整容、排泄のセッティングと介助

■教育項目(EP)

・症状があるときは安静にするように説明する

・症状出現時は遠慮なく伝えるように説明する

・体動するときはゆっくり、焦らず行うように説明する

・歩行時、立位時に邪魔にならないように環境を整備するように説明する

 

④栄養摂取障害

■看護目標:状況に合わせて栄養を摂取することができる

■観察項目(OP)

・嘔気・嘔吐の有無

・食事・水分摂取量

・尿量・尿比重

■ケア項目(CP)

・症状が緩和できるような環境を配慮する

・食事摂取困難時医師へ報告し、必要であれば医師の指示に基づいて点滴を施行する

・吐物は速やかに片付ける

・食べやすいものに食事内容を変更する

・食べやすい体位の保持

・水分摂取を促す、または、水分摂取しやすいように考慮する

■教育項目(EP)

・症状出現時は無理に摂取しなくても良いことを説明する

・食べられない、水分を取れないときは遠慮なく伝えるように説明する

 

⑤再発の不安がある

■看護目標:症状の出現の予防や出現時の対処方法がわかり、不安が軽減できる

■観察項目(OP)

・退院後の生活状況(仕事、睡眠時間、行動パターン)

・不安の有無、程度

・症状出現時の対処方法、予防方法の理解度

■ケア項目(CP)

・めまいが出現したときの対処方法の理解度を確認する

・訴えを傾聴し、対処方法を一緒に考える

■教育項目(EP)

・ストレスや不規則な生活を改め、生活のリズムを整えるように説明する

・症状出現時は安静にしたり、無理に動かなように対処方法を説明する

・症状を誘発する原因について説明する

・大きな音が鳴るような場所は避けるように説明する

 

まとめ

めまいは症状の不快感があり、日常生活動作にも影響するために、看護師の関わりはとても重要なものとなります。めまいの原因と発生機序、めまいを誘発する要因について理解することで、患者さんのめまいの出現と再発の不安を軽減することができます。症状の緩和と日常生活動作の援助、そして、症状が軽減後の再発や不安については看護の力が左右するものなので、しっかりと理解して関わるようにしましょう。

 

参考文献

『標準的神経治療:めまい』神経治療学28巻2号(2011)|日本神経治療学会

特集:めまい – vertigo, dizziness or else?Clinical Neuroscience 30(1):2012

「第117回日本耳鼻咽喉科学会総会臨床セミナー」慢性めまい治療における精神疾患への対処-Barany学会の心因性めまい新分類を中心にー 堀井新著 日本耳鼻咽喉科学119(2016)

疾患別看護過程 (2012)|井上智子・佐藤千史編集


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