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急性期の看護|看護目標と看護師の役割、看護過程の特徴と実習

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急性期の看護

救急者や容体が急変した患者さんなど、状態が悪化した方を急性期と言います。これは、慢性期の病院や精神科病棟の患者さんでも当てはまることで、看護師として働いていくうえで避けられない看護の分野となります。

 

1、急性期とは

一般的には以下のような状態の総称と定義されています。

・患者の病態が不安定な状態から、治療によりある程度安定した状態に至るまで。

・疾病や外傷など急性発症した疾患や慢性疾患の急性増悪の治療を目的とし、一定程度の改善まで、医師・看護師・リハビリテーション専門職員等が中心となって行う医療のこと。

その中で看護師としての役割は、大きく重要なものとなっています。

 

2、急性期患者の特徴

急性期の状態は、患者さんが普段の状態から逸脱した状態になっており、心身ともに負担が大きくなっています。また、その周りにいる家族や友人などの身近な人にも大きな影響を与える時期です。急激に変化する中で身近の人の精神的ケアや患者の背景を探る手段を探しながら治療を進めていかなくてはなりません。ただドクターの指示を待っていては、後手を踏んでしまいます。先に考えられることを準備したり、予測しておくことで体が反応しやすくなります

 

3、急性期の看護における目標

■生命優先

急性期の場合は、第一に優先とされる事項です。生命に直結する、循環、呼吸、脳を優先的に治療ができるように介助していく必要があります。災害現場や救急では、とても重要なことです。

■悪化予防

急性期では、症状が進行していく段階ですので悪化が予想されますが、その悪化を遅くする事もできます。この悪化を予防するには、検査データを読み取る知識や患者さんの顔色、バイタルサイン、家族からの情報から問題がないか気を張り巡らせる事が必要です。そして、その情報をもとに医師への報告が大切となります。

■安楽への援助

急性期の状態でくると、疼痛や呼吸苦、精神的苦痛など多くの痛みを伴っていることが多くあります。このような状態から早く抜け出したいとの思いから病院にきています。このような状態を把握し、薬剤、体位調整、傾聴など適切に判断した上でそれにあった看護を提供していく必要があります。そのため、薬剤の知識やフィジカルアセスメントの知識、ボディーメカニクス、精神ケアを熟知している必要があります。

■合併症の予防

疾患や外傷によって合併症が予測できるものは、その準備をすることで慌ただしい中でも適切な処置に繋がり合併症を最小限に抑えることができます。

また、入院中に看護師が未然に防げる合併症もあります。感染症に至っては、スタンダードプリコーションの徹底やADLの低下を緩やかにするなど病気以外での合併症の予防も大切です。

■日常生活援助・社会的支援

外傷や疾患によっては、以前の日常生活に戻るのが難しいことがあります。そのような時に看護師は他職種との連携が必要です。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー、栄養士などと連携が必要となります。そのようなメンバーがいない場合には、看護師がこれらの職種を補わないといけません。これらの職種は、日常生活をこなしていくうえでとても重要な職種です。再発予防をするためにも入院時から退院に向けて、元の日常生活に近い状態で戻すために取り組んでいく必要があります。

■心理支援

急性期だと心理的代償は大きく、不眠、不安、恐怖、生理学的反応、過覚醒、感情や感覚の麻痺、せん妄などが見られます。これは一過性である事が多いですが、看護師が心理ケアをしっかりやることで社会から逸脱し過ぎないように歯止めをかける必要があります。心理ケアを実施することで、治療への積極性が変化してしまいます。特にリハビリの分野では顕著に現れるため心理ケアをしっかり行うことは非常に大切なことなのです。

■家族援助

身近な人達にも受傷者と同様の精神症状になり、身体的症状が現れることがあります。受傷した本人だけではなく、周りの家族にも心理ケアは必要となってきます。

特に大きな障害が起きた場合は、ショック症状が大きくなるために積極的な介入が必要です。家族へのケアとしては、基本は傾聴です。救急など受傷直後の場合は、治療の妨げになることもあり離されることがあります。その時は、定期的にどのような処置をしてどのような状態なのかを報告することが大切です。待たされている家族や身近な人達は、大きな不安で何もできない無力感の中で待ち続けることしかできない状況です。それに気づく事が大切なのです。また、受傷の原因が自分にあるのではないのかと自責の念にとらわれる事がありますので、バタバタしている状況の中でも家族へのケアは重要となってきます。

 

4、急性期での看護師の役割とは

急性期での看護師の役割は多岐に渡ります。急性期病院では、入院時から退院時まで全てをサポートしていかなくてはなりません。

■来院時:どのような状態で来たのか、患者さんの背景や治療状況、受傷原因、家族の状態など多くの情報を取得します

■入院:今後の治療の流れ、キーパーソンの把握、予想される退院先の調整、家族の状態、治療情報の提供、患者さんの治療の介助、リハビリの開始

■退院:退院先の情報、家屋の状態、キーパーソンの協力、社会資源の活用

これらにかかわる人と調整し、患者さんを取り囲む状況と環境を整える必要があります。これを急性期では、早期に取り組まないと間に合わなくなり入院期間が長くなってしまうなど患者本人に悪影響になってしまいます。

 

5、急性期の看護過程

■アセスメント

救命するためにどのような疾患なのか、バックグラウンドがあるのか、身体状況や精神状況はどうなのかをアセスメントします。急性期の段階では救命が優先となることが多い為に精神状況を後回しにする事が多いですが、患者さんや身近の人の協力がなければを検査ができないだけではなく治療もできない状況になってしまいますので注意が必要です。

■診断

NANDAと言われる北米看護診断協会が看護診断の基準を打ち出して多くの病院に取り入れられたり教科書として使われることがあります。これを元に看護診断を下してもいいのですが、実際の現場では、そのような時間はないために経験と知識で問題点を診断していく必要があります。どのような治療計画がでたかのよってこれから起きることや検査することを予測していきます。その中で問題となりそうな事や現在問題となっていることに対して診断を下していきます。救命の前にリハビリや家族の状態を把握する余裕がない時もあります。まずは、患者さんの救命を行います。

■計画

診断に対してどのような看護を行うと問題が解決できるのかを計画立てることにあります。この時に漠然とした計画を立ててしまうと評価ができないことになるために指標をしっかりと示す事が大切です。

■実施

計画を立てたことを実際の現場で修正をしながら行っていきます。

■評価

患者さんが計画を実施したことでどのように変化したのかを評価しますが、評価も具体的に示す事が大切です。次はどのようにしていくべきかを結論付けることで、またアセスメントがしやすくなります。

 

6、急性期における実習とそこからの学び

急性期病院での実習では、治療がコロコロと変わる上に様々な検査を行い、結果によっては次の治療が変更になることが多くあります。学生のうちは、先が読めなく経験が少ないために、患者さんの望む看護を提供することが遅れてしまい実習が終了してしまうこともあります。そのようなことがないように事前に疾患の学習をしていき、必要な検査を受けた場合にどのような結果がでたらどのような看護を提供したらいいのか、次の検査もスムーズにできるようにこれからの流れを患者さんと把握することで、患者さんが不安になる前に接することができます。

人は、事前に用意周到にされていると安心できるものであります。実習で身近にいる存在ですので先回りしていくことが大切となります。この急性期の実習が終わると知らない間に成長しています。あまりにも多い勉強量や忙しい看護師の視線から耐えながら過ごす期間は、看護以外の面でも精神的に鍛えられます。本で見て覚えるよりも体験することがとても大切です。

 

まとめ

厚労省は、今後の急性期のあり方を変化させようとしています。医療費が増大していく中で、急性期、慢性期、在宅、リハビリのみと多くの分類を作り、入院や治療に対する費用を抑えていくことが決まっています。

急性期でも社会入院やリハビリでの入院など、多くの受け皿が実際には存在していましたが、今後は本当に救命に必要な医療を提供できるシステムが構築されていくことでしょう。

 

参考文献

看護診断は教育にどんな影響を与えるか(大阪大学医療技術短期大学部 松木光子|1991)

中医協DPC評価分科会(中央社会保険医療協議会|2012/12/07)

全日本病院協会

こころの情報支援センター

障害の「受容過程」について(本田哲三、南雲直二|1992/3/10)

医学書院 成人看護学(小松浩子、井上智子、麻原きよみ、内布敦子、雄西智恵美、安酸史子、吉田千文|2014/01)

NANDA-I看護診断 定義と分類 2015-2017 原書第10版(T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美|2015/03)


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