食道癌は消化管に発生する癌の中で、大腸癌に次いで頻度の高い癌で、比較的進行が早い傾向があると言われています。食道癌は胃・大腸がんに比べ命に影響を及ぼす可能性がより高い癌であり、早期発見と治療が望まれます。
ここでは食道癌について説明します。実際のケアに生かせるようしっかりと学習していきましょう。
1、食道癌とは
食道とは咽頭から胃をつなぐ長さ約25cm、太さ2~3cm、厚さ4mmの管状の臓器で、食べ物を輸送する働きをしています。
食道の内側は粘膜で覆われており、粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層で構成されています。
食道癌は、この粘膜の表面にある重層扁平上皮に発生することが多く、日本では食道癌の90%以上が扁平上皮癌で、その約1/4が食道の下部に発生しています。
欧米では、癌細胞が腺腔を形成する腺癌が増加しており、欧米の食道癌の60~70%を占めています。
食道癌は初期症状がないことが多く、癌が進行するにつれ食道がしみたり、つかえるような感覚や体重減少、胸痛や背部痛、咳、血痰、声がかすれる(嗄声)などの症状が出現します。
2、食道癌のステージ
ステージ(病期)とは癌の進行度を表すもので、癌の壁深達度(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)によりステージが決定されます。
■食道癌のTNM分類
T
(深達度) |
T1a
T1b T2 T3 T4 |
癌が粘膜内にとどまっている
癌が粘膜下層にとどまっている 癌が固有筋層にとどまっている 癌が外膜にまで達している 癌が外膜をを越え、周辺組織に広がっている |
N
(リンパ節転移) |
N0
N1 N2 N3 N4 |
リンパ節転移なし
第1群リンパ節(原発巣に最も近いリンパ節)に転移している 第2群リンパ節(より広範囲のリンパ節)に転移している 第3群リンパ節(遠いリンパ節)に転移している 第4群リンパ節(さらに遠いリンパ節)に転移している |
M
(遠隔転移) |
M0
M1 |
遠隔転移がない
遠隔転移がある |
■食道癌のステージ
NM因子
T因子 |
N0 | N1 | N2 | N3 | N4 | M1 |
T1a | 0 | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | IVa | IVb |
T1b | Ⅰ | Ⅱ | Ⅱ | Ⅲ | IVa | IVb |
T2 | Ⅱ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅲ | IVa | IVb |
T3 | Ⅱ | Ⅲ | Ⅲ | Ⅲ | IVa | IVb |
T4 | Ⅲ | IVa | IVa | IVa | IVa | IVb |
3、食道癌の治療
食道癌の治療はステージによって決定され、治療には内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法があります。
4、食道癌患者の看護問題
食道癌は進行するにつれ、食欲不振や嚥下時疼痛、嚥下障害などの症状が出現します。誤嚥による合併症や経口摂取困難による低栄養状態を引き起こす可能性があります。
また、手術侵襲が大きいため術後合併症(無気肺、肺水腫、肺炎などによる呼吸不全など)を起こしやすく、循環動態が不安定になる場合があります。放射線療法や化学療法を受ける場合は、副作用を引き起こすことが考えられます。
いずれの場合も、患者は疾患や治療、予後などに不安を抱いている事が多く、患者の精神的ストレスが増強している事が予測されます。
5、食道癌患者における観察ポイント
食道癌患者における観察のポイントとして、合併症の有無、呼吸·循環の状態、副作用の有無、精神的状態などが挙げられます。
■合併症の有無
嚥下の状態、栄養状態、呼吸器への影響などに注意し観察を行いましょう。合併症の早期発見·予防に努めましょう。
■呼吸·循環状態
術後、循環動態が不安定になりやすいため、呼吸状態、循環状態の観察が重要となり、合わせて呼吸·循環の管理が必要となります。
■副作用の有無
放射線療法や化学療法では、粘膜障害や悪心·嘔吐、下痢などの副作用が発現する場合があります。症状·兆候の有無に注意し観察していきましょう。
■精神的状態
患者は様々な心理的過程にあり、患者によって疾患や治療に対する受け止め方は異なります。患者や家族が病気をどのように受け止めているか、また精神的ストレスの有無により、治療や患者のQOLに影響を与える可能性がありますので、個々の患者が置かれている環境を含め、患者の精神的状態を把握することが重要なポイントとなります。
まとめ
食道癌は早期発見・早期治療が重要となりますが、初期症状がないことが多く気づかないうちに病状が進行しているケースもあります。病状の進行に伴う合併症や、術後合併症、治療に伴う副作用などに注意し観察・ケアをしていくことが大切です。また、患者の精神的状態にも配慮し、患者に寄り添ったケアを提供していきましょう。