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ベンチュリーマスク(インスピロン)の看護|適応や原理・仕組み・使い方と酸素濃度の流量

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ベンチュリーマスク看護

ベンチュリーマスクは酸素濃度を調節し、安定した濃度の酸素を患者に投与できる酸素投与法のことです。またインスピロンとはベンチュリーマスクのことで、インスピロン社から出ており、加湿機能が付いたインスピロンネブライザーをインスピロンとも臨床現場で呼ぶことがあります。

ベンチュリーマスクの基礎知識や適応、原理や仕組み、流量と酸素濃度、使い方、看護のポイントをまとめましたので、看護をする時の参考にしてください。

 

1、ベンチュリーマスク(インスピロン)とは

ベンチュリーマスクとは、高流量システムに分類される酸素投与器具の1つで、患者に投与する酸素濃度を正確に設定できることが特徴です。

ベンチュリーマスク(インスピロン)とは

出典:酸素療法 | 呼吸ケア | コヴィディエンアカデミア | 医療関係者の皆様へ | コヴィディエン

鼻カニュラや酸素マスク、リザーバーマスクでは、酸素の流量は設定できるものの、濃度までは設定できません。

それに対して、ベンチュリーマスクではダイリュータ部分で酸素流量と濃度を調節することができるので、患者の1回換気量に左右されることなく、吸入の酸素濃度が24~50%と安定した酸素を供給することができるのです。

ベンチュリーマスク(インスピロン)とは

出典:高流量システム|酸素療法|製品情報|日本メディカルネクスト株式会社

ベンチュリーマスクのダイリュータは6色に分かれていて、それぞれ設定する酸素濃度を使い分けます。

酸素濃度
青色 24%
黄色 28%
白色 31%
緑色 35%
桃色 40%
オレンジ色 50%

インスピロンネブライザーはベンチュリーマスクの機能に、ネブライザー機能が付いたもので、酸素投与と同時に十分な加湿をすることができるという特徴があります。

インスピロンは日本メディカルネクストという医療機器メーカーのブランド名ですので、正しくはネブライザー付ベンチュリー装置やネブライザー式酸素供給装置と言います。ただ、臨床現場では、「インスピロン」や「インスピロンネブライザー」と呼ぶことがほとんどです。

 

2、ベンチュリーマスクの適応

ベンチュリーマスクは吸入酸素濃度が調整できますので、COPDなどのⅡ型呼吸不全の患者への酸素投与に適しています。

日本呼吸器学会によると、呼吸不全の患者は動脈血の酸素分圧が60mmHg以下になることを呼吸不全と定義していて、二酸化炭素分圧が45mmHg以下をⅠ型呼吸不全、45mmHgを超える場合をⅡ型呼吸不全と分類しています。

Ⅱ型呼吸不全の場合、酸素が入ってこないだけでなく、二酸化炭素が出ていかずに体内に溜まってしまいます。Ⅱ型呼吸不全の患者に高濃度の酸素を投与してしまうと、どんどん二酸化炭素が体内に溜まりCO2ナルコーシスを発症するリスクがあります。

ベンチュリーマスクは吸入する酸素濃度が24~50%と調節できるので、Ⅱ型呼吸不全の患者に酸素を投与しても、二酸化炭素が溜まりにくいというメリットがあるのです。

インスピロンは、ベンチュリーマスクの効果+加湿効果がありますので、Ⅱ型呼吸不全の患者の中でも、痰の粘稠度が高く喀出が困難な人など、十分な加湿が必要な患者が適応となります。

 

3、ベンチュリーマスクの原理・仕組み

ベンチュリーマスクは、ベンチュリー効果を生み出すことで、酸素と空気を混合させて、設定した酸素濃度を作り出しています。

ベンチュリー効果とは、出口を小さくして勢いよく酸素を流してジェット気流を作ることで、ジェット気流の周りを陰圧にして、空気を引き込む原理です。

ベンチュリーマスクの原理・仕組み

出典:酸素療法 | 呼吸ケア | コヴィディエンアカデミア | 医療関係者の皆様へ | コヴィディエン

この空気を引き込む量はダイリュータの穴の大きさによって変わります。6種類あるダイリュータを付け替えることで、引き込む空気量を調節して、一定の酸素濃度を維持することができるのです。

 

4、ベンチュリーマスクの酸素濃度・流量

ベンチュリーマスクやインスピロンは、患者への酸素濃度を調整でき、安定した酸素濃度を供給できるというメリットがあります。

ただ、このメリットは、供給ガス流量が30リットル/分を保っていることが前提となっています。これよりも供給ガス流量が低下してしまうと、設定した酸素濃度よりも実際に供給する酸素濃度は低くなってしまいます。

成人は1秒間に約500mlの空気を吸い込みます。この1秒間の吸入量を1分間に換算すると30リットルになります。

ベンチュリーマスクからの供給ガス流量が30リットル/分を下回ると、しっかり呼吸するためにはベンチュリーマスクからの供給ガスだけでは足りないので、マスクの周囲にある空気を吸い込むことになります。

ベンチュリーマスクの供給ガス流量が30リットル/分以上だったら、供給ガスだけで呼吸を十分にすることができます。

でも、30リットル/分未満の場合、呼吸するためには供給ガス+周囲の空気が必要になるので、結局はベンチュリーマスクの設定酸素濃度より吸入酸素濃度低くなってしまいます。

ただ、医療施設の通常の酸素流量計の最大流量は15リットル/分ですので、30リットル/分の供給ガス流量を流すためには、空気を15リットルは混ぜなければいけません。

空気には酸素が21%含まれていますので、100%酸素15リットルに空気を15リットル混ぜると、最大酸素濃度は60%となります。

でも、最大流量が10~12リットル/分の流量計も多く、ダイリュータは50%までしかないので、実質的な最大酸素濃度は50%となるのです。

ベンチュリーマスクの酸素濃度・流量

出典:酸素療法 | 呼吸ケア | コヴィディエンアカデミア | 医療関係者の皆様へ | コヴィディエン

この酸素流量とダイヤル目盛りの交差する数字が30以上の設定だと、設定どおりの酸素濃度を供給することができます。

 

5、ベンチュリーマスクの使い方や看護

ベンチュリーマスクをつけている患者の看護をする時には、使い方と看護のポイントを確認しておきましょう。

 

■ベンチュリーマスクの使い方

ベンチュリーマスクの患者の看護をする時には、酸素の流量と濃度が指示通りの設定になっているか、マスクは顔に密着しているかどうかを確認しましょう。

酸素流量の目盛りを確認することはもちろんですが、ベンチュリーマスクのダイリュータは色も確認してください。インスピロンの場合は、目盛りが見えにくいことがありますので、注意が必要です。

また、ベンチュリーマスクで使用するマスクと一般的な酸素マスクは種類が違います。ベンチュリーマスクの場合は、呼気が逃げやすいようにマスクの穴が大きくなっています。間違って一般的な酸素マスクをつけると二酸化炭素がこもってしまいますので、注意しましょう。

ヒーターによる加湿をしているインスピロンの場合は、蛇管内に結露が発生しますので、必ずウォータートラップをつけなければいけません。

ウォータートラップに水がいっぱいになったり、蛇管の中に水が溜まっていると、供給ガス流量が低下しますので、ウォータートラップの水は適宜破棄してください。

また、インスピロンの加湿のための水が少なくなったら、注ぎ足しをせずに、新しいものと交換するようにしましょう。注ぎ足しをしながら使用していると、雑菌が繁殖し、感染源になる危険性があります。

 

■ベンチュリーマスクの看護のポイント

また、ベンチュリーマスクの適応となる患者はCOPDなどのⅡ型呼吸不全であることが多いので、CO2ナルコーシスを発症するリスクが高いです。そのため、血液ガスデータと共に、頭痛や振戦、傾眠などの症状の有無を観察する必要があります。

CO2ナルコーシスの看護については、「CO2ナルコーシス患者の看護|観察項目と具体的なケアのポイント」を参考にしてください。

また、ベンチュリーマスクは供給ガス流量が多いため、話しにくかったり、食事をしにくいというデメリットがあります。

そのため、コミュニケーション方法や食事などの工夫をして、精神的なストレスを最小限にする看護を行いましょう。

 

まとめ

ベンチュリーマスクの基礎知識や適応、原理・仕組み、酸素濃度・流量、使い方、看護のポイントをまとめました。

ベンチュリーマスクは酸素濃度を調節でき、安定した濃度で供給できるので、CO2ナルコーシスのリスクがある患者に適応となる酸素投与法です。

ベンチュリーマスクの看護をするためには、原理や仕組み、酸素濃度と流量をきちんと知っておく必要がありますので、少しややこしいですが、しっかりと理解して、看護に活かすようにしましょう。


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