医療において輸液療法は大変重要な位置を占めています。これは入院患者さんの多くに輸液が行われていることからも明らかです。患者さんの高齢化が進んでいる現代において輸液の重要性はますます大きなウエイトを占めていくでしょう。それに伴って、水・電解質・酸塩基平衡異常を伴う患者さんの診療におけるナースの役割も重要なものとなってきます。正しい技術を身につけ適切に処置が行えるようにしておきましょう。
1、ミキシングとは
ミキシングとは、輸液や注射剤等の薬剤を混合することです。ミキシングは日常的にナースの手によって行われ患者さんに投与されていますが、混合時の感染、注射器具の使い回しによるウイルス感染を防ぐために徹底した衛生管理が求められます。現在はディスポの注射器具が使用されているため、管理がしやすくなっていますが、注射器や針、バイアル等の扱い方には十分注意が必要です。
2、ミキシングの目的
ミキシングは、経口摂取が不可能もしくは不十分な場合、生体が必要とする水分・電解質、栄養の供給を行うためにいくつかの薬剤を混合させてから投与するために行います。また、感染やその予防目的で使用する抗生剤等の溶解・混合もありますね。ミキシングする際にはどの患者さんに対して何の薬剤をどれだけの量配合するのか、どんな目的で使用するのかをきちんと把握した上で指示票と照らし合わせながら間違えのないよう行う必要があります。
3、ミキシングに必要な技術と手順
いくつかの薬剤を混合する、抗生剤・抗真菌剤などを溶解する際には感染、針刺しによる事故に十分注意する必要があります。
3-1、ミキシングの手順
ミキシングを開始する前に、手洗い・マスクの着用、処置台の整理整頓をしておきます。処置台の上は感染予防のためアルコールや消毒用エタノールで綺麗にしておきましょう。
■注射指示書の確認をする
指示書を確認する際には事故防止のため6つのRを念頭に一つ一つ確認していきます。
~6つのRとは~
・正しい患者(Right Patient)
・正しい薬剤名(Right Drug)
・正しい時間(Right Time)
・正しい投与経路(Right Route)
・正しい量(Right Dose)
・正しい目的(Right Purpose)
①薬剤を準備する際は1患者1トレーとし、 他患の物と一緒にならないよう注意する。
②必要物品を準備する。
→シリンジ、輸液セット、注射針、アルコール綿
③手洗いをしっかり行い手袋を装着する。
④患者氏名、注射指示箋、薬剤を確認しバイアルやアンプルから薬剤を吸い、輸液パックにミキシングする。
・抗生剤や抗真菌剤をミキシングするときは溶解液をシリンジに吸いバイアルのゴム栓の中央部に垂直に注射針を刺して注入する。
・注射器を抜く際には注入した薬剤と同量になるよう空気を抜く。
・泡立たないよう輸液バッグを軽く上下させて攪拌する。
⑤輸液パックに適切な輸液セットをつなぐ。
⑥ミキシングした点滴薬はトレーに入れて指示箋と共に患者さんのところへ持っていけるよう準備しておく。
引用元:NURSING
4、ミキシング時の注意点とコツ
抗生剤や混合輸液を作る際に大切なことは、作ろうとしているものが指示書とあっているのか、量は間違っていないか、患者氏名は合っているかどうかを注意深く確認することです。大人と小児では投与量が全く異なるため、大変重要となります。グラムなのかミリグラムなのか、またその薬剤は末梢のルートからいくものなのか、中心静脈等のルートから投与されるものなのか、どのくらいの時間をかけて投与するのか・・・ひとつずつ目と声出し確認で誤薬を防止しましょう。特に末梢血管からの投与は静脈炎や薬液の漏れによる発赤・腫脹・疼痛が起こりやすいため注意が必要です。指示書を確認する際には末梢血管から投与しても大丈夫なものであるかも考えながら準備ができると良いでしょう。
また、ガラス製アンプルを開栓する際には手を切ったりすることがあるため注意が必要です。割れたアンプルの破片が薬液に混ざってしまうこともあるので気を付けましょう。
輸液バッグのゴム栓に針を刺す際の注意点としては、垂直に針が刺さるようにしなくてはなりません。斜めに注射針が挿入されるとゴム栓が削り取られて「コアリング」という現象が起こる可能性があるためです。コアリングによりゴム栓が混入した薬液が患者さんの体内に入ってしまう危険性があるため刺入部の位置を確認しましょう。
まとめ
ミキシングは私たち看護師が患者さんに薬剤を投与する前に行う重要な作業です。様々な種類の薬を正確に混合・溶解し感染や誤薬防止に努めなければなりません。業務が忙しい中での輸液準備、仕事に慣れてきた頃にミスが発生しやすいため、常に最新の注意を払って作業するよう心がけましょう。また、ミキシング時の細菌感染や注射器具の共有によるウイルス感染を防ぐため衛生環境に注意すること、使用した針の処分にも注意が必要です。日頃からミキシング時のダブルチェック・声出し確認をしっかり行い安全な投薬を提供できるようにしていきましょう。