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低ナトリウム血症の看護|低ナトリウム血症の症状と求められる看護計画

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低ナトリウム血症

ナトリウム(Na)・カリウム(Ca)・カルシウム(K)・マグネシウム(Mg)などの電解質は、身体の機能の維持や調節などを担っており、体内である一定の範囲内で保持されています。中でもナトリウム濃度が下がってしまう低ナトリウム血症は、臨床上最もよくみられる電解質異常です。低ナトリウム血症は命に関わることもありますので、しっかり勉強しておきましょう。

 

1、低ナトリウム(Na)血症とは

1-1、低ナトリウム血症の定義と種類

電解質を理解するには、水と電解質が細胞の内側と外側でどのように行き来しているかがわからないといけません。

人間の体の60%は、電解質や栄養素を含む水分で構成されており、この水分を「体液」といいます。そしてこの体液を分布している場所の違いから「細胞内液」と「細胞外液」に分けられています。(比率は細胞内:細胞外=40:60)

細胞内と細胞外をしきっているものは細胞膜とよばれる半透膜で、この膜は水を通過させることはできますが、ナトリウムやカリウムなどのイオンは通過させにくい特徴があります。そのため、もしどちらかの濃度が高くなってしまった場合には、水が移動することで、お互いの濃度を等しくしています。

もし細胞外のナトリウムが濃くなってしまった場合には、細胞内から水を引き寄せて薄くすることで、細胞外液のナトリウム濃度を下げるのです。

ナトリウムは細胞外液にある主用な陽イオンです。細胞内液にも陽イオンであるカリウムが存在しますが、体内の浸透圧はナトリウムによって90%が決まります。ナトリウムは他にも、血圧の調整や神経・筋肉の刺激伝導・酸塩基平衡の調節を行う役割を担っています。

ナトリウムは血清中において135~147mEq/ℓという狭い範囲の中で調節されていますが、何らかの原因によって135 mEq/ℓ以下になった場合を低ナトリウム血症といいます。

低ナトリウム血症は、原因によって3つのタイプに分けられます。

 

➀高浸透圧性低ナトリウム血症=高張性

マンニトールやグリセロールなどの細胞膜を通さない高張液を輸液した場合や、糖尿病による高血糖のときに起こります。これは、実際にナトリウムが少ないのではなく、浸透圧が高くなってしまった細胞外液を薄めるために、細胞内から細胞外へ水が移動して起こります。

 

➁正常浸透圧性低ナトリウム血症=等張性

浸透圧は正常でも、高度な高脂血症や血清中の異常蛋白が増加した場合に生じるもので、「偽性低ナトリウム血症」と言われます。

 

➂低浸透圧性低ナトリウム血症=低張性

➀と➁が偽性低ナトリウム血症とすると、これが真の低ナトリウム血症です。しかし、この場合も必ずしもナトリウムが低いとは限りません。この低浸透圧性低ナトリウム血症は、細胞外液量の量によって更に3つに分けることができます。

 

a.細胞外液量の減少(細胞外液が足りない)

b.細胞外液量正常(純粋に水の量が多い)

c.細胞外液量の増加(浮腫性の疾患)

 

これらの低ナトリウム血症をわかりやすく分類したものが、独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院・リウマチ膠原病科の低ナトリウム血症の診断に載っています。

頭を整理するためにも、参考にするとよいでしょう。

低ナトリウム血症は、単純にナトリウムそのものが少ないだけではなく、水が深く関与していることが理解できたでしょうか?

 

1-2、低ナトリウム血症の症状

低ナトリウム血症を起こすと、下記の症状が現れます。重度になると、意識レベルの低下をきたし、死亡することもあります。

 

■低ナトリウム血症の症状

・食欲低下      ・頭痛

・嘔吐        ・全身倦怠感

・易刺激性      ・傾眠

・人格変化      ・痙攣

・意識障害      ・昏睡

 

低ナトリウム血症の症状には様々なものがあり、人格変化など、一見低ナトリウムによるものとは思えないものもあります。細胞外液の濃度が低下すると、浸透圧の差によって細胞外から細胞内に水が移動します。これが脳細胞で起こることによって、脳浮腫をきたします。このため、上に挙げたような神経学的な症状が出現するのです。つまり、低ナトリウム血症の症状=脳浮腫の症状と言えるのです。

 

これらの症状は、血清ナトリウム値が低下するに連れ重度になり、また低下する速度が速い(急性)ほど強く表れます。逆に、慢性的に低ナトリウム血症が進行した場合は、無症状のこともあります。

血清濃度によるそれぞれの症状をまとめたものが、下の図です。

低ナトリウム血症の看護

もし何らかの疾患が低ナトリウム血症の原因としてあるなら、その症状も併せて観察しましょう。例えば心不全による水分過多が原因の場合なら、頻脈や息切れ、心電図異常、胸部レントゲンでの心胸比の異常がみられます。

 

1-3、低ナトリウム血症を引き起す疾患と原因

低ナトリウム血症は、上に挙げた➀~➂の分類において➂低浸透圧性低ナトリウム血症がもっとも臨床上多く、➀高浸透圧性低ナトリウム血症と➁正常浸透圧性低ナトリウム血症は特殊な病態です。低浸透圧性低ナトリウム血症を引き起す疾患と原因を、細胞外液の量別に挙げてみましょう。

 

a.細胞外液量の減少 →ナトリウムの喪失を引き起す原因

腎性:利尿薬・低アルドステロン症・塩類喪失性腎症

腎外性:嘔吐・下痢・熱傷

b.細胞外液量の増加→水分の過剰を引き起こす原因

心不全・腎不全・ネフローゼ症候群・肝硬変

c.細胞外液量正常

 

■SIADH(ADH不適合分泌症候群)・甲状腺機能低下症・副腎機能低下症・水中毒

SIADHは、抗利尿ホルモン(ADH)を適切に分泌できない病態ですが、これを引き起こす病気には腫瘍・髄膜炎・脳出血などの中枢神経疾患、肺炎や肺結核・COPDなどの胸腔内疾患、悪性腫瘍、薬剤性などがあります。これらの基礎疾患を有する患者に上記の症状が現れたら、低ナトリウム血症の可能性を視野に入れる必要があります。

 

2、低ナトリウム血症の看護計画

低ナトリウム血症は原因によって治療が異なります。原因となる薬剤が特定されていれ

ば中止します。水中毒による多飲が原因であれば、水分制限を行います。原因疾患がある場合は、その治療と並行してナトリウムの補正を行います。

ごく軽度のナトリウム低下であれば、食事からの塩分摂取だけで補正することができます。入院中であれば、お粥に塩をかけたり梅干しを追加することで対応します。

食事からの摂取が困難な場合や食事だけでは補正できない場合には、経腸栄養や点滴からナトリウムを投与します。原因疾患にもよりますが、低ナトリウム血症の看護は観察・薬剤管理・安全管理が柱となります。

 

■看護計画

O-P 1、水分出納に関する観察

➀飲水量・経口摂取量(塩分摂取量)

➁尿量(留置カテーテルを挿入し、正確な尿量を測定する)

➂ドレーンからの廃液量

➃嘔吐・下痢の有無

➄体温・発汗の有無

➅体重

2、バイタルサイン・全身の観察

➀バイタルサイン

➁呼吸状態

➂浮腫

➃意識レベル

3、各種データ

➀血清ナトリウム値、その他採血データ

➁尿浸透圧、尿比重

➂胸部レントゲン

➃心電図

 

T-P 1、輸液管理・服薬管理

➀1日のトータル輸液量

➁1時間あたりの輸液量(急速な補正は脳へのダメージが強い)

➂確実な内服(患者に合わせた服薬管理)

2、安全管理

➀危険なものを周囲におかない

刃物類・内服薬・消毒薬など

➁静脈ルートや膀胱留置カテーテルの自己抜去防止

場合によっては家人付き添いや、ミトンなどの使用も検討する

➂ベッドからの転落予防

ベッド柵の適切な使用・ベッドの高さ調節・ベッド周囲にマットを敷く

離床センサーの使用など

 

E-P 1、患者への指導

➀水分制限の必要性

➁IN/OUTチェックの必要性

➂病態の説明

2、家族への説明

➀患者の理解が得られない場合、家族へ説明する

➁必要時、抑制の承諾を得る

 

低ナトリウム血症の患者への看護は、ただ採血データだけを追うことではありません。

こちらナトリウム異常時の看護師の果たす役割(引用元:箕面市立病院)も大変参考になりますので、一読してみてください。

 

まとめ

低ナトリウムと言っても、原因が違えば治療も違います。塩分の経口摂取だけではなく、積極的な治療を必要とする場合には指示通りの輸液・内服管理、全身の観察が必要です。その際、原因薬剤の中止や変更による変化はないかも併せて観察しましょう。また、低ナトリウム血症の症状は脳浮腫の症状であることを頭におき、意識レベルの観察や患者の安全を確保できるように環境を整えることも、重要な看護です。


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