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清拭の看護 |清拭の目的と手順、看護計画と観察項目について

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清拭看護

人間が日常生活を送る上で大切なことの一つに入浴やシャワー浴といった清潔保持があげられます。しかし、突発的な怪我や病気等により自分で清潔を保持することが難しくなることがあります。そのような時に入浴の代替えとして個人に合わせた方法で行えるのが清拭です。清拭には全身清拭・部分清拭の二つの選択肢があるので、その時々の状況に合わせてケアが行えます。また、足浴や手浴といった方法もありますのでしっかりアセスメントを行い、適切なケアを提供していきましょう。

 

1、清拭とは

清拭とは、入浴できない患者に対して行う身体の清潔を保持するためのケアであり、皮膚の機能を円滑に保ち、血液循環を良くする、爽快感を与える等の効果があります。また、シャワー浴や入浴に比べエネルギー代謝が低く患者さんの負担を少なく行えるというメリットがあります。

 

2、清拭の看護目的と目標

清拭は何のために行うのでしょうか?清拭における上記に記述した効果以外には褥瘡の早期発見や他の皮膚トラブルにおける早期の対処が可能かつこれらの予防に繋がります。子供から高齢者まで、様々なADLの患者さんがいるため、それぞれの患者さんに合った対応をすることで清潔を保つことのほかに、リラックス効果や患者さんとの関係の構築、患者さんの思いや悩みを知る機会ともなり得るのです。しかしながら、全ての患者さんが清拭に対して前向きであるわけではありません。ケアに伴う疲労感、羞恥心、苦痛を最小限にできるような対応をしていかなくてはなりません。

ケアをスムーズに進めていくためにも日頃から患者さんとの関わり方、それぞれに合ったアプローチの仕方を身につけておく必要があります。

 

2-1、目的

清拭を行う際にはしっかりとした目的を持って行う必要があります。

・全身の観察

・感染予防

・皮膚機能を円滑に保ち、血液循環を良くする

・皮膚の表面の細菌、汚れを落とし清潔に保つ

・褥瘡の早期発見と対応

・発疹、オムツかぶれ、Baカテーテルや点滴等による皮膚トラブルの有無・早期発見

・患者さんの残存機能をできる限り使うことで自立やADLの向上につなげる

・リラクゼーション効果

・医療者と患者さんとのコミュニケーションと関係構築の機会

 

2-2、目標

以下のようなことを心掛けて行いましょう。

・ケアに伴う苦痛や疲労感を最小限にする

・相手は心を持った人間であり、性別を問わず羞恥心があることを考慮し対応する(声がけ、要望を聞くなど)

・日々の清潔ケアにより患者さんのQOLが保てる

・皮膚トラブルの新たな発生・悪化を予防する

・異常の早期発見により適切な処置が行える

・一日をベッド上で過ごす患者さんの気分転換となり前向きな闘病生活への手助けとなる

 

3、清拭の看護計画

一人一人の患者さんに合った計画を立て、清拭を行う際の不安や精神的な苦痛を軽減しましょう。

 

■観察項目

・全身状態の観察

・皮膚の状態を知る

・発赤・発疹

・褥瘡の有無

・浮腫の有無

・乾燥・掻痒感

・創部の状態(オペ後、褥瘡等がある患者)

・出血の有無と程度

・腹部症状(腹満感、張り等)

・ドレーンやバルーンカテーテル、点滴等の刺入部及びその周囲の皮膚の状態

・患者さんの表情や訴え

・痛みの有無や程度

・ベッド上とその周囲の環境;皮膚トラブルの原因となるようなものが身体の下やベッド上に置かれていないか確認する。

 

4、清拭の方法と手順

清拭のやり方は各施設により多少違いはありますがここでは基本的な清拭の看護技術の手順と方法を紹介します。まずは清拭を行う前に患者さんのバイタルサインチェックをし、これから行うケアについて説明・同意を得ましょう。

 

4-1、下準備

室温を調整します。22〜25℃程度が良いとされていますが個々に合わせて調整した方が良いでしょう。また、拭いた部分は冷えやすいので冬は特に気を配りましょう。カーテンを引いてプライバシーを保護します。

 

4-2、必要物品を揃える

これらを用意して行ないます。

・タオル2〜3枚

・フェイスタオル

・ガーゼ(陰洗用)

・陰洗ボトル

・着替え

・バケツ2個 (55〜60℃程度のお湯を用意する)

・ピッチャー (差し湯用に75℃程度のものと水の2つ)

・バスタオル、タオルケット

・石鹸

・ディスポの手袋、エプロン

・必要に応じてオイル、ローション、パウダー等

 

4-3、手順

①着衣を脱がしタオルケットやバスタオルで全身を覆います。寒気を感じさせないよう上半身、下半身と分けるといいでしょう。

 

②湯で絞ったタオルは患者さんに触れる前に自分の腕の内側に当てて暑すぎないか確認してから始めましょう。

 

③身体の上部から下部に向かって拭いていきます。

顔→頸部→上肢・腋窩→胸部→腹部→下肢→後頭部・背部・腰部・臀部→陰部

 

④寝衣を着せ整える;特に背部や脇、シーツやタオルのシワをしっかり伸ばす

 

⑤掛け物を戻す

 

⑥病床環境を整える

 

⑦物品を片付ける

清拭の看護(頭、上半身、腕)

清拭の看護(背中)

清拭の看護(足)

出典:全身清拭(いまさら聞けない看護技術)

 

5、清拭時の注意点

食事の前後1時間やリハビリなど体力が消耗しているような時間帯は避けます。その日の患者さんの体調により、部分清拭に切り替えることも必要です。また、浮腫があるまたは皮膚の弱い患者さんに対しては優しく圧をかけすぎないように拭きます。

シワや皮膚が重なっている部分は発赤や褥瘡の原因となりやすいのでしっかり広げて拭き乾燥させるようにしましょう。必要に応じてパウダー等を使うと良いと思います。

石鹸清拭の場合は、掻痒感や発赤の原因となりますので石鹸が残らないようしっかり拭きとり乾燥させましょう。

不安や苦痛のある患者さんには適宜声を掛けながらケアを進めましょう。

 

まとめ

清潔を保持することは人間の基本的生活の中でも大変重要な項目の一つです。清潔が維持できなければ感染の原因となるだけでなく、異常の発見の遅れにも繋がり、命にも関わるような事態を引き起こしかねません。

特に麻痺や知覚鈍麻がある患者、高齢者においては羞恥心や基本的機能の衰えから異常の発見が遅れがちです。この為、日頃からのコミュニケーションも重要となってきます。ベッド上での生活を余儀なくされている患者さんが残存機能を維持しつつQOLの向上を目指した関わりができるよう個々に合わせたケアを心がけていきましょう。

 

参考文献

聖拭の総合的文献レビュー(宍戸穂、矢野理香)

全身清拭援助時の安楽を測定する試み : 冷感,爽快感 ,疲労感と影響する要因について(北海道大学 加藤圭子)


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