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シスター・カリスタ・ロイの看護理論|適応モデルを用いた看護過程

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ロイの看護理論

看護理論とは看護に対する知識や考え方を体系化し理論付けたもので、看護実践の基礎となるものです。看護における理論は、ナイチンゲールの「看護覚え書」からはじまり、V・ヘンダーソンの「看護の基本となるもの」、ドロセア・E・オレムの「オレムのセルフケア不足論」、シスター・カリスタ・ロイの「ロイの看護論」など多くの理論化が様々な看護理論を展開しています。ここでは、シスター・カリスタ・ロイの看護理論を取り上げ説明していきたいと思います。

 

1、シスター・カリスタ・ロイとは

シスター・カリスタ・ロイは、アメリカの著明な看護理論家の一人で、1939年にカルフォルニア州のロサンゼルスで生まれ、1963年24歳で看護学士号、1966年27歳で看護学修士号、1973年34歳で社会学修士号、さらに1977年38歳の時に哲学で博士号を取得しています。

ロイは自ら看護師として働いた経験から、人間の回復力と心身の変化に対応する適応力の素晴らしさに気付き「適応力を促進させること」が看護の役割であると考え、理論を確立していきます。

 

2、ロイの看護論

ロイの看護理論は「適応モデル」で、以下の表の2つの仮説(科学的仮説、哲学的仮説)が適応概念の基本となっています。

 

表1

科学的仮説

1.物質やエネルギーのシステムは、複雑な自己組織の高いレベルまで進歩向上する。

2.意識と意味は人と環境の統合によって成立する。

3.自分自身と環境に対する認識は、思考と感情に根づいている。

4.人間はその意思決定によって創造的過程の統合に対して責任を持つ。

5.思考と感情は人間の行動の成立と媒介となる。

6.システムの相互作用には、受容、防護、相互依存の促進が含まれる。

7.人間と地球は共通のパターンを持ち、補完的な関係にある。

8.人間と環境の受容は人間の意識の中でつくられる。

9.人間と環境の意味の統合は適応を生じる。

哲学的仮説

1.人間は世界および神との相互関係を持つ。

2.人間が持っている意味は宇宙の最終地点の収束に根づいている。

3.神は森羅万象の中に身近なものとして存在し、創造物の共通の目的である。

4.人間は気づき、悟り、信仰という人間の創造の力を活用する。

5.人間は宇宙を継承させ、維持させ。変容させる過程に対して責任をもつ。

ロイ看護適応看護理論入門より引用

 

2-1、ロイの看護論の特徴

ロイは人間を生理的様式、自己概念様式、役割機能様式、相互依存様式の4つのシステムのより環境に適応していく生物と定義しています。

 

生理的様式

身体の基本的な作用に基づくもので、酸素、栄養、運動と休息、感覚、体液と電解質、内分泌などの機能が挙げられます。

 

自己概念様式

身体的自己と人格的自己から成り、個人の身体に対する受け止め方や自己の信念、感情の表現などを指します。

 

役割機能様式

個人の社会的立場やそれに基づく役割の遂行などを指しています。

 

相互依存様式

愛や尊敬、価値など他者との関わりを指し、それらを与えたり、受け取ったりする意思や能力などが含まれます。

 

人間はこの4つのシステムにより、内的・外的刺激(インプット)に対して、行動(アウトプット)を起こし適応していくとしています。また、人間の目標として成長、生殖、生存、円熟を挙げており、これに対する反応(行動)として適応的反応と非効果的反応があり、人間の適応的反応を促進させ非効果的反応を抑えることが看護であるとしています。

 

3、ロイの看護過程

看護師は4つのシステムの中で、患者がどの程度効果的に適応しているか、その程度非効果的反応を示しているかを決定するために、看護過程を活用する必要があります。また、看護過程を用い、患者が確実に適応できるよう援助し、適応を促進することが看護の目標と考えられています。ロイの適応モデルによる看護過程は6つの段階(行動のアセスメント、刺激のアセスメント、看護診断、目標設定、介入、評価)で構成されています。

成されています。

 

 

①行動のアセスメント

4つの適応様式に基づき、それぞれの様式ごとにどのような行動が見られるかをアセスメントし患者の抱える問題を抽出していきます。

②刺激のアセスメント

刺激には焦点刺激(その人にとって最も直接的な刺激)と関連刺激(その他のすべての刺激で、焦点刺激により引き起こされる行動に寄与する)、残存刺激(現状では測定不能な信念、態度、経験などに影響を与える要因)があり、3種の刺激についてアセスメントを行います。

③看護診断

最も関連のある刺激と行動との関連を陳述します。

④目標設定

その患者に期待される適応行動として表現します。

⑤介入

刺激の調整や適応レベルを高めるよう援助していきます。

⑥評価

介入の効果について評価・判断します。

 

3-1、ロイの看護モデルを用いた事例

患者:72歳 女性 夫と二人暮らし

診断名:右大腿骨警部骨折

既往歴:特になし

現病歴:屋外で転倒し受傷。観血的整復固定術目的で入院。現在、牽引療法により患肢の安静を保持しています。「痛くて身体を動かすのがつらい」「元通りに歩けるようになるのかしら」「今まで大きな病気なんてしたことなかったのに」「家のことが心配で」との訴えが聞かれています。

バイタルサイン:BP188/80mmHg、P80回/分、R20回/分、KT36.8℃

検査データ:WBC7800/mm3、RBC420×104/mm3、Hb14.0g/dl

S/Oデータ 刺激 看護診断
生理的様式 O:BP188/80mmHg、

P80回/分、

R20回/分、KT36.8℃

 

 

S:痛くて身体を動かすのが辛い

 

骨折による痛みにより、血圧の上昇を引き起こしている。環境変化や手術への不安による血圧の上昇が考えられる

 

痛みと牽引療法により身体活動が制限されている

痛みや精神的ストレスによる血圧の上昇

 

 

 

痛みと治療に伴う活動量の低下

自己概念 S:今まで大きな病気はしたことがなかったのに

 

S:元通りに歩けるようになるのかしら

初めての入院・手術により不安や教師新がある

 

疾患への理解不足による手術や、生活への不安

入院手術による不安と恐怖

 

 

疾患への理解不足による不安

役割機能様式 S:元通りに歩けるようになるのかしら

 

O:夫と二人暮らし、女性

S:家のことが心配で

入院生活による生活への不安と役割の変化がある 入院、生活環境の変化による不安と役割変化
相互依存 O:夫と二人暮らし、女性

S:家のことが心配で

 

疾患や役割変化に伴う信頼関係の喪失への不安 役割変化に伴う信頼関係の喪失

 

以上のアセスメントにより、患者の問題点を抽出し看護の目標を設定していきます。また、その目標に沿った援助提供し、行った援助に対してどのような効果が得られどのような反応が見られたかを評価し、さらに適宜フィードバックしていく必要があります。

 

まとめ

看護理論は看護実践のもとになるものです。なぜそうするのか、なぜそれが必要か、その「なぜ」が根拠であり、看護理論となります。ロイの適応モデルの他にも、様々な理論や看護に対する考え方がありますが、患者が直面している問題や起こりうる問題を予測して看護を提供していくということには変わりはありません。

看護理論は難しいと思われることが多いと思います。今はぼんやりとした理解であっても、経験を重ねるうちに、理解が深まっていくものなのかもしれませんね。

 

看護過程の1つ「アセスメント」ゴードン等の書き方と事例


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