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貧血症状を訴える患者の観察項目と看護計画・ケアのポイント

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貧血

近年では極端なダイエットを行ったり、偏食や頻繁な外食、特にファストフード、そしてインスタント食品の流行などで、栄養が偏って貧血症状を訴える人が多くなっていますが、医師の診断や治療が必要とは考えない場合が多く、症状が悪化して初めて病院へ受診するケースがほとんどです。

貧血にはさまざまな種類があり、それぞれで観察項目や看護が異なるため、原因に応じたケアを実施していくことが重要となります。以下に貧血の概要や原因、症状に加え、観察項目や看護ケアについてご説明します。

 

1、貧血とは

貧血とは一般的に、血液中のヘモグロビンが不足して、身体全体に運ばれる酸素量が減少する、いわゆる酸欠状態のことを指します。重度になると昏睡状態になる場合もあります。

立ちくらみやめまい等、貧血とよく似た症状を呈する脳貧血は、起立性低血圧症と呼ばれるもので、ヘモグロビンの量とは関係なく、急に起き上がったり立ち上がったりした時に血圧が下がって起きるもので、横になっている時には正常な血圧を示します。原因も異なり、降圧剤や血管拡張剤、利尿薬などを使用している場合や、寝たきり生活が長かったりする場合が挙げられます。

また、若い人では自律神経障害、高齢者では心臓や血圧調整機能の衰えによる場合もあります。貧血も脳貧血も、血液中の酸素が不足した結果ですが、脳貧血が脳の酸欠であるのに対して、貧血は身体全体の酸欠と言えます。

貧血らしい症状を訴える患者さんは、採血して赤血球とヘモグロビンの量を確かめます。正常時の血液中のヘモグロビン量が基準値より低くなると(男性の場合:ヘモグロビン量13.0g/㎗以下、女性の場合:12g/㎗以下)貧血と診断されます。

 

2、貧血の主な原因と種類

原因は色々ありますが、一番多いのは「鉄欠乏性貧血」で、ヘモグロビンの合成に必要な鉄分が不足することにより、身体全体に酸素を運ぶヘモグロビンの量と働きが低下した状態を指します。鉄分の不足は、偏食や過度のダイエットで摂取量が足りない場合、女性では妊娠・授乳中に必要な量が摂取できていない場合、そして十分な鉄分は摂れているのに吸収できない場合があります。

また、事故や手術による大量の失血や、女性では月経や出産による急性失血性貧血、子宮筋腫、子宮内膜症などによる慢性失血性貧血、男女を問わず胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃腸の癌などにより長期的に少量ずつ体内で出血している慢性失血性貧血も、血液が失われる結果ヘモグロビンが足りなくなります。

貧血にはこの他に赤血球の産出に不可欠なビタミンB12や葉酸が不足する「ビタミン欠乏性貧血」、ビタミンや葉酸の量は足りているのに、吸収に必要な内因子が不足して吸収できない「悪生貧血」、骨髄機能の低下により赤血球の産出能力が低下する「再生不良性貧血」、赤血球の寿命が短かったり壊されてしまう「溶血性貧血」などがあります。

また、他の貧血と同様の症状が出ますが、原因が血液でなく感染症や膠原病、腎臓や肝臓の疾患、ホルモンに関係する内分泌疾患などが原因となる貧血は、二次性貧血あるいは「続発性貧血」と呼ばれています。

 

3、貧血の症状

一概に貧血と言っても、原因によって異なる症状が出るので、原因を確定することが重要となります。一般的な貧血の症状としては、下記があげられます。

 

1.   めまいがしたり、くらくらする。

2.   疲れやすい、手足が冷える。

3.   顔色が悪く、爪が薄く反り返っていて、色が白っぽい。

4.   瞼の裏が白っぽい。

5.   朝起きるのが辛く、首や肩が重たい。

6.   動くと息切れしたり、胸に痛みが出る。

7.   頭痛がする。

8.   抜け毛が多い。

9.   舌炎や口角炎がある。

 

これらの他に貧血の種類によって特徴的な症状があります。

 

貧血の種類 特徴的な症状
鉄欠乏症貧血 氷を食べたくなる氷食症
ビタミン欠乏性貧血 身体の痛み、感覚の鈍り
悪生貧血 知覚麻痺、精神症状
再生不良性貧血 傷などの出血が止まりづらい、血尿、
溶血性貧血 黄疸、脾臓の腫れ
二次性貧血 疾患によりさまざま

 

4、貧血で入院する患者の観察項目

上記のように、貧血の症状を訴える患者には、単に鉄分やビタミン等が不足しているだけで、不足分を補給すれば完治する患者、補給しても吸収できない患者、貧血が他の病気の兆候である患者の場合があるため、良く観察して重篤な疾患が隠れていないかを確認することが大切です。

鉄欠乏性貧血は、たいていの場合、注射や内服薬、食生活の見直しや鉄分の吸収を助けるビタミンCの摂取などで、通常は1~3か月で症状が改善されます。

また、ビタミン欠乏性貧血では、不足しているビタミンB12や葉酸の投与で改善しますが、葉酸を吸収しにくい体質の場合は、治療を永続的に続ける必要があります。

しかし重篤な鉄欠乏性貧血や、血液を作る機能などに問題がある場合、そして貧血が他の疾患の兆候である場合は、入院しての治療が必要となります。薬物療法と食事療法の他に、輸血や時には骨髄移植も必要となります。貧血で入院する患者さんに対しては、上記の症状の他に下記の項目を特に注意して観察する必要があります。

 

貧血の種類 観察すべき項目
重度の鉄欠乏症貧血 嚥下障害、舌炎、口角炎の有無
悪生貧血 手足のしびれや歩行障害、舌炎、知覚障害などの有無
再生不良性貧血 点状出血や出血症、歯肉出血、口内炎、血尿の有無
溶血性貧血 黄疸、脾臓の腫れが無いか
二次性貧血 疾患によりさまざま

 

これらの症状が新出したり、既存の症状が軽減しない場合は、医師と相談してください。

 

5、貧血患者の看護では何を目指すのか

血液検査や生化学検査などの結果と臨床症状から基礎疾患を推定しますが、時には内分泌検査や自己抗体その他の検査も必要となります。

診断が確定し、入院が必要となった患者さんには、症状の原因と治療の必要性や、今後の治療法などを説明して理解してもらい、看護計画を立てて毎日の観察時間と項目をリストアップします。

貧血の種類によって必要な処置や看護方法、看護期間などが異なります。何れの場合も血液中のヘモグロビンを増加させるのが目的です。

鉄欠乏性貧血やビタミン欠乏性貧血の場合は、ほとんどの場合入院せずに注射や内服薬で改善されますが、それが重度の場合やその他の貧血では、原因となっている疾患の治療も必要となります。また、ビタミン欠乏性貧血は、巨赤芽球性貧血を招く危険性があるので、注意が必要です。

貧血の一般的な治療法には食事療法、安静療法、薬物療法などがありますが、時には輸血療法や酸素療法が必要となり、重度の溶血性貧血の場合は脾臓摘出術を行うこともあります。また、他の疾患が原因で貧血を起こしている場合は、その治療と同時に貧血の治療を行うのはもちろんです。

 

6、貧血患者に対する看護計画

貧血患者の看護は、基本的には血液中の不足した成分を補うことで症状を改善する事ですが、その間患者さんの症状や苦痛の緩和に努める事が大切です。安静を保ち、食事療法と薬物療法をきちんと施し、必要な場合は輸血等の援助もします。

 

1.   患者が全身を清潔に保てるよう、入浴できない場合は清拭を行います。

2.   口腔内を清潔に保つようにします。(⇒口腔ケアの看護手順とケアのポイント)

3.   食事で必要な栄養素が取れるようにします(タンパク質・ビタミン・鉄分の高い食物)。

4.   注射や内服薬を時間通りにきちんと投与します。併せて、アドヒアランスの推進に努めます。

5.   身体の痛みやだるさを軽減するためにマッサージなどが必要な場合は、それを施します。

6.   合併症や二次的障害の発症を予防するために、異常の早期発見に努めます。

7.   貧血が他の疾病による二次的なものの場合、元となる疾病を患者が理解し、治療に努めるよう手助けします。

 

まとめ

貧血で入院する患者さんは、鉄分やビタミンが足りないだけの人から、重篤な病人までさまざまです。貧血は軽く見られがちで、入院するまでに至った患者さんは、貧血以外の症状を呈していますから、それらを軽減してあげて、治療に専念できるようにすることが必要です。

貧血が他の重篤な疾患の兆候として表れている場合も、貧血への対処が大切です。症状が改善した後も、日常のストレスや栄養不足、睡眠不足などによって貧血が再発する可能性があるので、退院後も規則正しい生活やバランスの取れた食習慣、ストレスの発散などを心がけるよう助言してあげてください。


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