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胆管炎の看護|症状からみる治療法と胆管炎患者に対する看護計画

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胆管炎

胆管炎患者の看護で特に気をつけなければいけないのが、急性胆管炎の場合です。急性胆管炎には軽症例、中等症例、重症例とありますが、重症化した場合、対応が遅れると早期に死亡に至ることがありますので、急性胆管炎においては、急性期の適切な対処が重要となります。

ここでは、主に急性胆管炎患者の症状とその治療法を確認します。また、胆管炎患者への適切な看護を行うための看護計画や目的も掲載しますので、参考にしてください。

 

1、胆管炎とは

胆管炎とは、胆道の中の胆汁に細菌が感染した状態のことをいいます。健常者の胆汁は本来無菌ですが、十二指腸から総胆管への上行感染、もしくは門脈内細菌によって胆管内胆汁が感染し、急性胆管炎を引き起こします。

胆管結石による胆管閉塞や、悪性腫瘍(胆道がん、膵がん、転移性腫瘍など)、良性疾患(慢性膵炎、胆嚢摘出術後など)による胆管狭窄などが原因になることが多く、特に高齢者においては、十二指腸の乳頭部にある括約筋の弛緩により、細菌が侵入することで感染が起こります。

また、胃の手術を経験している患者などは胆嚢の収縮力が弱まることで胆汁が停滞しやすくなり、感染に至る原因となることもあります。

慢性胆管炎の場合、自覚症状が薄く苦痛を伴うことがあまりありませんが、熱や黄疸が断続的に現れることが特徴です。

 

2、胆管炎の症状と診断

急性胆管炎の症状は、腹痛、発熱、黄疸(シャルコー3徴)がみられます。急性胆管炎の場合、このシャルコー3徴の症状が発症し、炎症が急激に進行することで敗血症や臓器不全を引き起こします。

胆道疾患の既往、シャルコー3徴がある場合、もしくは炎症反応(白血球数・CRPの上昇)、肝機能異常(ALP・γ-GTP・AST・ALT)、画像所見による胆管拡張、狭窄、結石がある場合は、これらを総合して急性胆管炎の診断がなされます。

また、急性胆管炎のうち、シャルコー3徴に加えて、ショック症状と意識障害の5つの症状を合わせてレイノルズ5徴といい、これを認めるものは重症急性胆管炎と診断されます。

 

≪レイノルズ5徴≫

・   右上腹部痛

・   発熱

・   黄疸

・   意識障害

・   ショック症状

 

3、胆管炎の治療

急性胆管炎では、原則として胆道ドレナージ術を施し胆汁の流れを改善することを前提にした初期治療を行います。

初期治療は、絶食の上で輸液、電解質の補正、抗菌薬の投与です。初期治療の際は、急変時に備えた全身状態の管理を心がけましょう。急性胆管炎が重症化した場合、緊急に胆道ドレナージを行う必要がありますので、軽症例、中等症例の場合も慎重な経過観察が求められます。

胆道ドレナージには、内視鏡的胆道ドレナージ(ERBD)や経皮的胆道ドレナージ(PTCD)があり、胃切除術後のRoux-en Y再建などにより、内視鏡が十二指腸乳頭に届かない場合や、腫瘍で胆管が分断されて複数の胆管のドレナージが必要な場合などは、ERBDよりもPTCDがよい適応となります。

胆管炎の治療

出典:肝・胆・膵 大阪医科大学 一般・消化器外科

 

PTCDについては「PTCDの手技と合併症、看護における管理・観察項目」でご確認ください。

 

≪急性胆管炎の治療≫

①重症(ショック、菌血症、意識障害、急性腎不全のいずれかを認める場合)

十分な輸液、抗菌薬投与などの適切な臓器サポートや、気管挿管、人工呼吸管理、昇圧剤の使用など呼吸循環管理とともに、胆道ドレナージを行います。

 

②中等症例

初期治療とともにすみやかに胆道ドレナージを行います。

 

③軽症例

総胆管結石が存在する場合や、初期治療(24時間以内)に反応しない場合は胆道ドレナージを行いますが、緊急胆道ドレナージは必要としないことがほとんどです。

第IV章 診療フローチャートと診療のポイント Minds医療情報サービス より引用・一部改変

 

4、胆管炎患者に対する看護計画と目標

胆管炎が重症化した場合、敗血症やショック症状を伴う場合もあるため、早期に異常を発見することがとても重要です。

バイタルサインや意識状態など、注意して観察すべきことをしっかり確認しましょう。以下に、急性胆管炎における看護計画と目標を挙げます。

 

4-1、胆管炎患者に対する看護計画

急性胆管炎は初期治療を施した後、病態の程度により治療が異なります。

ここでは、初期治療の際の看護計画と、急性胆管炎の病態により見られる患者の苦痛に伴う看護計画を示します。それぞれ観察、実施をしっかりと確認して重症化の予防、早期発見や患者の苦痛を軽減に努めましょう。

また、胆道ドレナージを行なっている場合は、排液の観察、ドレーンチューブ挿入に伴う合併症などへの注意も必要不可欠です。チューブからの排液の性状、量の観察などドレーン管理が欠かせません。出血の増量やバイタルサインに変化がある場合はすぐに医師に連絡し、指示を仰いでください。

 

≪初期治療の看護計画≫

観察項目(O-P ・   バイタルサイン

・   シャルコー3徴の有無や程度

・   ショック、意識レベルの低下の有無(レイノルズ5徴)

・   心肺、腎機能、肝機能データ

実施項目(T-P ・   絶食

・   輸液、薬剤投与

・   定期観察

教育(E-P ・   初期治療による変化の自覚を報告するように患者へ説明

 

≪患者の苦痛を軽減させる看護計画≫

観察項目(O-P ・   バイタルサイン

・   発熱、痛み

実施項目(T-P ・   痛みを緩和する体位

・   医師の指示による鎮痛剤、解熱剤の使用

・   消化機能の安静

・   冷罨法

・   水分補給

・   皮膚粘膜を清潔に保つ

教育(E-P ・   苦痛がある場合は我慢する必要がないことを患者へ説明

 

4-2、胆管炎患者に対する看護目標

初期治療においては、重症化の予防と早期発見が看護目標となります。急性胆管炎でも、保存的治療ができる場合は軽度ですが、急速に病態が悪化し、胆道ドレナージが必要となる症例があることを常に念頭に置いて看護にあたりましょう。

また、患者の苦痛を軽減させる看護目標の場合、体位や鎮痛剤での疼痛を緩和するケアだけでなく、発熱に対する援助や搔痒感による皮膚損傷の予防なども実施してください。

ドレーン管理がある場合は、挿入部の出血など皮膚状態を観察し、合併症を防ぐ総合的なアセスメントが必要です。患者の処置への不安を軽減させるため、しっかりとしたオリエンテーションを行うよう、心がけましょう。

患者に対する看護目標と個人目標への考え方・立て方

 

5、胆管炎と食事

急性胆管炎は原則的に、絶飲食での治療です。急性胆管炎の治療後や、慢性胆管炎の場合には食事療法が必要です。胆汁は脂肪の消化吸収に関わるため、特に食事内の脂質のコントロールが重要となります。

慢性胆管炎の場合は、患者の不適切な自己管理の恐れがありますので、食生活についての指導を徹底してください。

 

≪胆管炎の食事療法≫

症状 食事内容 避けるもの
急性胆管炎 絶食
慢性胆管炎や軽症の場合 脂質を抑える

高タンパク、低コレステロール食

アルコール、カフェイン、香辛料などの刺激物

 

まとめ

胆管炎は検査、治療から予後の看護まで、しっかりとした観察・ケアが必要です。初期段階から症状が急変することもあり、また、ドレーン管理を伴うことも多く、高い看護スキルが要求されます。細かい患者の変化を見逃さず、常に医師との連携を図っていくことが大切です。

慢性胆管炎や軽症患者に対しても適切な看護計画を実行し、重症化の早期発見と予防に努めましょう。


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