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血液透析|シャントの管理と観察項目(スリル・音の有無など)

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シャント

血液透析の際に必要となるシャント。長持ちさせるためにはさまざまなことに留意しなければならず、ひとたび合併症が起こると患者の負担となるばかりか、場合によっては重篤な疾患を招いてしまうため、シャント部の観察やシャントの管理が非常に大切です。

ここでは、観察項目や管理、日常生活における注意点などについて詳しくご説明しますので、合併症の予防や早期発見・早期対処ができるよう、しっかり把握しておいてください。

 

1、シャントとは

シャントとは、動脈と静脈を体外または体内で直接つなぎ合わせた血管の事を指し、体内に溜まった老廃物を取り除くために行われる「血液透析」の際に行われます。

血液透析の目的は主に老廃物の除去であることから、効率的に浄化するための十分な血液量(毎分200cc程度)を確保しなければいけませんが、血液透析は危険度の低い静脈に穿刺し、自然に流れる静脈の血液量は血液透析を行うには不十分です。

そこで、血液量を補うために動脈に流れる血液が必要となり、動脈と静脈をつなぎ合わせるシャントの増設が不可欠になるのです。

 

2、シャントの種類

シャントには大別して「外シャント」と「内シャント」の2種類あり、患者の疾患や状態によって使い分けられますが、「外シャント」は血液の凝固が起こりやすく感染症の発症率高いことで、現在では「内シャント」が主な増設術となっています。

 

外シャント

血が固まりにくいシリコンやテフロンを用いてチューブを作り、その先端を腕の動脈と静脈に挿入し、チューブを介して動脈と静脈を連結する増設術。チューブは体外に出ていることで外シャントと呼ばれ、血液透析が発明された当初は外シャントが選択されていました。

しかしながら、チューブを介することで血液の凝固が起こりやすく、またチューブが体外にあることで感染症の発症率が高いため、最近ではほとんど行われていません。

 

内シャント

動脈と静脈を皮膚の下で直接つなぎ合わせる増設術。外科的につなぎ合わせるため、チューブは必要としません。患者自身の動脈と静脈を用いることで、血液の凝固はほとんど起こらず、また感染症の発症率も外シャントより低いため、最近ではシャントといえば内シャントを意味するほど、内シャントが実施されています。

患者自身の動脈・静脈が細い、あるいは位置関係が悪いなどの理由で使えない場合には、テフロンやポリウレタンなどの素材を用いて人工血管を作り、シャントを増設します。

 

2、シャントの観察項目

シャントは血液透析を行う上で重要なものであり、透析患者にとっての命綱です。ゆえに、シャントの閉塞や感染などのトラブルが起こると患者の負担増を招き、場合によっては死に至ることもあります。

シャントのトラブル回避においては看護師側のみの観察では不十分であり、患者の協力が必要不可欠であるため、看護師側の観察はもちろん、患者自身が積極的に実施していけるよう、以下に述べる事項について患者にしっかりと説明・促進を行ってください。

 

スリルの有無の確認

スリルとは、いわゆる“振動”のこと。動脈と静脈の吻合部(シャント部)に皮膚上から触れると、振動が伝わってきます。振動がない場合には、吻合の離脱または閉塞が考えられ、この場合には血液透析を行う上で必要となる十分な血液量が確保されていません。

シャントの閉塞は低血圧や透析中・透析後の血圧低下、長期的な透析実施に伴う血管の縮小・血瘤、静脈内側の膜の損傷に伴う内腔の狭細化、感染後の血管の狭窄など、さまざまな原因が考えられます。

多くは突然起こらず前兆を伴いますが、毎日スリルの有無を確認することで、スリルの強弱を把握でき、早期に対処することができます。スリルの有無や強弱を毎日確認するよう促すとともに、看護師側も患者の入院時には毎日確認するようにしてください。

 

シャント音の確認

シャント部に聴診器を当てると、「ザーザー」や「ゴーゴー」といった低い音が聞こえます。この低い音の時は正常に血液が流れている状態です。しかしながら、「ヒュンヒュン」や「キュンキュン」といった高い音がする場合やいつもより音が弱くなっている場合には狭窄の可能性があります。

スリルと同様に、音の変化に気づくためには毎日の確認が不可欠です。毎日確認するよう患者に促し、看護師側も直接確認するか患者に聴くようにしてください。

 

皮膚・血管の状態の確認

感染は主に穿刺した部位に起こります。穿刺部を不潔にすることで細菌が繁殖して、穿刺部周辺に発赤や発疹、熱感、かゆみ、かぶれなどの症状が現れます。また、血管に痛みや赤みが伴うこともあります。

皮膚上の軽度の感染であれば抗生物質で改善しますが、細菌が体内に侵入し敗血症を起こすと外科的治療が必要となり、患者に大きな負担となります。まずは予防のために清潔にし、早期発見・早期対処ができるよう、皮膚の状態を毎日確認するようにしてください。

また、血瘤の有無や指先の冷感・紫色化・疼痛(スチール症候群)の有無も同時に確認してください。血瘤の場合は瘤の摘出、スチール症候群の場合は血管拡張薬の使用・バンディング手術によって改善を図ります。

 

3、シャント管理

上記のように、シャント増設に伴う合併症の多くは「狭窄・閉塞」と「感染症」です。これら合併症は多発する傾向が強く、また発症するとシャントの再増設が必要となることもあり、患者の負担は非常に大きくなります。

合併症を防ぐためには、日常生活においてさまざまなことに留意する必要があり、看護師の患者に対する指導はもちろん、患者本人の協力が必要不可欠であるため、以下の留意点をしっかり把握し、患者に対して詳細に指導しつつ遵守することを促してください。

 

シャント部を圧迫しない

シャント部を圧迫することで狭窄や閉塞が起こることがあります。腕時計で締め付ける、カバンなど重たいものを持つ、圧迫されるような衣類を着る、手枕をするなど、シャント部を圧迫しないよう日頃から気をつけることが大切です。

また、シャント部だけでなく腕の動脈・静脈すべてにおいて圧迫しないことが狭窄・閉塞の予防となります。なお、血流を良くするために、シャント部の腕の適度な運動は問題ありませんが、過度な運動は血管を傷つける原因にもなるため、あくまで補佐的な運動としてください。

シャント圧迫の危険因子
・  シャントのある腕に重い物をぶらさげる

・  シャントのある腕で手枕をする

・  シャントのある腕を時計・包帯・サポーターなどで締め付ける

・  シャントのある腕で血圧測定をする

・  シャント周囲をぶつける

・  シャント周囲をひっかく

 

常に清潔に保つ

血液透析に際して静脈に穿刺を行いますが、感染症のほとんどは穿刺部周辺に起こります。穿刺部周辺を不潔すると感染確率は高まるため、常に清潔にするよう心がけます。また、清潔保持のほか、爪を短くする、乾燥によるかゆみ防止のためクリームを使用するなど、副次的な予防策を積極的に実施するよう指導してください。

シャント感染の危険因子
・  透析当日に入浴をする

・  透析後の絆創膏を翌日以降もつけたままにする

・  濡れた・湿った絆創膏をつけ続ける

・  穿刺部周辺をひっかく

・  手洗い・消毒を行わない

 

より良い生活習慣を心がける

シャントはいつかはダメになってしまい、再増設が必要となります。それに起因するのが不適切な生活習慣であり、いわゆる生活習慣病を防ぐことでシャントを長持ちさせることができます。

偏った食事を続けると血流が悪くなり、血流が悪くなることでシャントの狭窄や閉塞が起こります。また、十分な栄養が摂れていないと免疫力が低下し、容易に感染症を起こしてしまいます。バランスの良い食事や適度な運動などを継続的に行い、より良い生活習慣を心がけることを指導ならびに促進してください。

留意すべき栄養素
・  タンパク質・・・タンパク質は血液や筋肉を構成する重要な栄養素です。ただし、必要以上に摂取すると老廃物が体内に貯留し、尿素窒素・リン・カリウム値が上昇し、さまざまな悪影響を及ぼします。過度に摂取しないよう注意してください。

・  塩分・・・塩分を過度に摂取すると水分を欲し体重が増加します。また、高血圧を起因し血管に負荷がかかってしまいます。過度に摂取しないよう心がけ、定期的に血圧測定を行ってください。なお、血圧測定の際にはシャントのない腕で行ってください。

・  カリウム・・・カリウムは腎臓で排泄されますが、透析患者の腎機能は低下しているため、上手く排泄されません。カリウムを過度に摂取すると高カリウム血症となり、時に重大な不整脈や死に至ることもあるため、過度に摂取しないよう注意してください。

・  リン・・・リンの過剰摂取は、動脈硬化や骨の脆弱化、皮膚の痒みなどの影響を及ぼします。動脈硬化はシャントの狭窄・閉塞、皮膚の痒みは感染症に起因するため、リン値のコントールに努めてください。

 

まとめ

シャントは透析患者の命綱であり、狭窄・閉塞や感染症を起こすと患者の負担となるばかりではなく、重篤な二次的疾患を引き起こす可能性があります。

シャントの観察や日常生活における注意点などを詳しく把握し、患者にしっかり指導するとともに、患者本人が積極的に実施するよう促すことが合併症の予防に繋がり、シャントを長く保つことができます。

シャント管理は看護師だけでなく患者の協力も必要ですので、指導・促進をしっかり行い、合併症の予防ならびに早期対処に努めてください。


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