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【統合失調症の看護まとめ】看護計画、症状、陰性

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統合失調症

 

 

統合失調症はさまざまな症状が存在し、患者さんによって発現する症状が異なり、さらに原因もさまざまであるため、各患者さんに合わせた看護が必要になります。それゆえ、統合失調症の看護ケアは非常に難しく、経験豊富な看護師であっても悩むことが多々あります。

しかしながら、統合失調症という精神疾患に関する深い知識と理解を持つことで、各患者さんに合った看護ケアを行うことができるため、臨床経験の浅い方は特に当記事を熟読し、統合失調症に関する理解を深めていってください。

 

 

1、統合失調症とは

統合失調症は、幻覚や妄想といった症状が特徴的な精神疾患であり、現在では80万以上の人が統合失調症にかかっていると言われています。

これは日本人の全人口のうちの約0.7%であることから、実に約100人に1人が発症する頻度の高い精神疾患なのです。人口割合では10代後半~20代の思春期・青年期が特に多く、男女割合では男性の方が約1.5倍高い傾向にあります。

統合失調症には大きく分けて「前駆期」「急性期」「消耗期」「回復期」「安定期」の5つの発症期間が存在し、それぞれの期間における適切な看護が必要であるため、統合失調症の看護ケアは非常に難しいものなのです。

 

 

2、統合失調症の症状

統合失調症は大きく分けて「妄想・幻覚症状」「意識・感情症状」「生活障害症状」の3つに分けられます。これら内訳において、非常に多くの症状が存在し、患者によってさまざまです。以下に具体的な統合失調症の症状を紹介します。

 

妄想・幻覚症状(陽性症状)

妄想
・被害妄想 自分は嫌われている、悪口を言われている、といった思い込み。
・関係妄想 全ての周囲の出来事を自分と関連付けて考えること。
・注察妄想 盗撮・盗聴など、常に誰かに見張られているという思い込み。
・追跡妄想 誰もいないにも関わらず、誰かに追われていると感じること。
・心気妄想 何かしらの病気にかかっていると思い込むこと。
・誇大妄想 自分が他者より優れている、偉大だと思い込むこと。
・宗教妄想 自分はこの世の神であると思い込むこと。
・嫉妬妄想 恋人や配偶者が不倫や浮気など、不貞行為があると思い込むこと。
・恋愛妄想 接した異性に好意をもたれている、愛されていると思い込むこと。
・被毒妄想 飲食物に毒薬が入っている、もしくは誰かが毒薬を混入したと思い込むこと。
・否認妄想 自分の家族は本当の家族ではない等、否定的な思い込みをすること。
・迫害妄想 誰かに攻撃されていると思い込むこと。
・没落妄想 自分または世界が滅びゆく感じがすること。

 

幻覚
・幻聴 外界から何の刺激もないのに、何かが聞こえるように感じること。
・幻視 実際には無いものが、存在するかのように見えること。
・幻嗅 実際には臭わないのに臭いを感じること。
・幻味 実際には何も味を感じないに関わらず、変な味がする等と感じること。
・知覚過敏 音や匂いに敏感になり、光が眩しく感じること。

 

 

意識・感情症状(陰性症状)

意識
・思考操作 心理的に操られているなど、他人の考えが入ってくると感じること。
・思考奪取 自分の考えが他人または何かの力によって奪われていると感じること。
・思考伝播 テレパシーなど、自分の考えが他人に奪われていると感じること。
・思考察知 自分の考えが他人に知られていると感じること。

 

感情
・興奮 有頂天になる、自分は天才であると考え、極度の興奮状態になる。
・昏迷 外界からの刺激や要求に全く反応しない状態。
・拒食 食欲がない、食べることへの意味の拒絶など、拒食状態になる。
・感情鈍麻 喜怒哀楽といった感情が鈍化し、外部に現れない状態。
・心的遮断 他人に心を許さず、平面的な関係構築しか出来ない状態。
・カタレプシー オウム返しなど、受動的にとらされた姿勢を保ち続け、自分の意思で変えようとしない状態。
・緘黙 一言も話すことができない、話す意欲がない状態。
・拒 言われたこと全ての対し、拒絶反応を示す状態。
・自閉 自己の内界に閉じ込もり、他人との接触を拒む状態。
・抑う 気分の低下、不安感の発現、睡眠時間の減少といった症状が現れる。
・パニック 激しい動悸や発汗、頻脈、ふるえ、息苦しさ、胸部の不快感など、パニック発作が出現する。
・自己喪 自分の過去への達成・過程に対する疑問による心理的な危機状況に陥る。

 

 

生活阻害症状(陰性症状)

・論点相違 話のピントがずれる、話題が飛ぶなど、会話における論点の食い違いが生じる。
・能率低下 作業のミスが多い、行動の能率が悪いなど、仕事における効率の低下。

 

 

2-1、統合失調症の診断基準

統合失調症は、症状が曖昧かつ多岐に渡る精神病であるため、断定することが難しいのが実情です。しかしながら、断定する上で参考となりうる診断基準は、上記の各症状に基づくDSM-IVと呼ばれる多軸評価法によって定められており、一般的にはDSM-IVを基に診断が行われています。

 

上記の「妄想・幻覚症状」「意識・感情症状」「生活阻害症状」のいずれかの症状が2つ以上、1か月以上存在する。

 

※DSM-IVの判断基準は厳密に定められていますが、一見で把握するのは難しいため、簡略化しています。

 

 

2-2、統合失調症の経過

上記のように統合失調症には様々な症状が発現しますが、これらの発現時期は病態の経過により異なります。統合失調症の経過には大きく分けて「前駆期」「急性期」「消耗期」「回復期」「安定期」の5に分けられます。

 

前駆期

前駆期は、急性期を前にして様々な統合失調症の症状が出現する時期で、焦り・不安感・感覚過敏・集中困難・気力の減退・不眠・食欲不振・頭痛といった症状が出現します。これらの症状は鬱病や不安障害と類似しているため、当該期においてはや不安障害として診断されることが多いのが実情です。

 

急性期

幻覚や妄想などの、統合失調症に特徴的な症状が出現する時期で、幻覚や妄想は、患者本人にとって不安・恐怖・切迫感といった負の感情が強く引き起こされます。それゆえ、睡眠や食事リズムの乱れ、行動・コミュニケーションの欠落など、日常生活における対人関係に支障をきたします。

 

消耗期

心身とも疲れ切った状態で、心身のエネルギーが落ちて、活動が鈍くなる時期です。 疲れやすい、物事が続かない、集中力の低下など、急性期における反動としてエネルギーの消失症状が発現します。また、甘えや受身的行動が発現する場合もあります。この時期に差し掛かると、エネルギーを蓄えることにより回復するため、よく寝る、よく食べるなど、基本的な生活改善を行うことで、同時期の症状は自然になくなり、回復期へと向かいます。

 

回復期

現実感を取り戻す時期であり、疲労感や意欲減退を覚えつつ将来への不安と焦りを感じ、周囲からは結構よくなったように見えるものの、未だ元気がない状態であり、完治一歩手前といった時期です。各症状が緩和、もしくは消失しますが、一時的に強く発現する場合もあります。

 

安定期

この期間においては完治と認識され、社会復帰への基準となります。リハビリテーションにより治癒へと向かうため、看護において最も大切な時期であり、適切な看護・治療が行われないと、前駆期に再移行する可能性、つまり再発を迎えてしまうことがあるため、慎重かつ適切な看護が必要となります。

 

 

3、統合失調症の原因

統合失調症の原因は大きく分けて「脆弱」「ストレス」「病気」の3つに分けられます。これらの原因すべてを100%とした時、「脆弱」は約50%、「ストレス」は約40%、「病気」は約10%の割合で統合失調症を発症します。

 

脆弱

脆弱とは、外界からの刺激に弱く、心理的な病気になりやすい本人の弱さのことを言います。ドパミンなどの神経伝達物質の失調も当該原因の1つであり、これらの多くは親からの遺伝によるものです。

遺伝が統合失調症の原因に関わっているというのは、この脆弱の事を指し、統合失調症の発症歴がある親から子へ同病が遺伝するということではありません。つまり、親の心理的要因による脆弱性が子に遺伝するというわけです。

また、養育環境による脆弱も原因の1つです。親や親族に甘やかされて育った子供は、外界の刺激(叱責など)に弱く、こうした環境的な要因も含まれています。

 

ストレス

転校・転居・親の離婚といった環境の変化、卒業といったライフイベント、その他、失恋や過労など、多大なストレスがのしかかることでも統合失調症は発症します。上記のように外界からの刺激に弱い人はもちろん、ストレスに対する耐性が強い人も該当します。特に10代~20代に多くみられるのがストレス要因であり、中でも10代後半~20代前半に多い傾向があります。

 

病気

妊娠母体のインフルエンザ感染、周産期障害(低体重出生)、発達障害などの病気によっても統合失調症は発症します。中でも脳発達障害による発症率が高く、遺伝因子と環境因子が相互に作用することで発症し、統合失調症だけでなく、他の精神疾患の発病リスクも高まります。

 

 

3、統合失調症の治療

統合失調症は主に「薬物療法」「精神療法」「心理社会的介入」の3つを基に治療を行っていきます。これらは発症経過によって治療が異なるため、早期改善のためには各段階における適切な治療が必要です。

なお、治療段階においては「前駆期・急性期・消耗期」「回復期」「安定期」の3過程により、適切な治療を行っていきます。

 

前駆期・急性期・消耗期

薬物療法 精神症状を改善するのに十分な投薬を行う。
精神療法 治療関係の構築、支持的な態度で接する。
心理社会的介入 安心して治療に専念できる環境を作り、症状が激しければ入院治療も考慮。

 

回復期

薬物療法 症状の再燃防止に必要な服薬量の決定。
精神療法 支持的な態度で接する。
心理社会的介入 再燃防止のためストレスを少なくし、社会参加・社会復帰のための準備を進める。

 

安定期

薬物療法 再発防止に必要な服薬の継続。
精神療法 支持的療法。病名告知、疾患に対する教育など。
社会的介入 ストレス過剰にならないよう配慮し、リハビリテーションを通じた社会参加・社会復帰を支援する。

 

 

3-1、薬物治療

統合失調症の治療に用いる基本薬剤は抗精神病薬です。抗精神病薬には,従来型タイプの「定型抗精神 病薬」と、副作用が少ない新型タイプの「非定型抗精神病薬」の2つがあり、さらに注射剤・液剤・錠剤・細粒剤な ど、さまざまな剤型があります。これらは患者さんの症状や生活環境・生活リズムなどによって使い分けられます。

 

定型抗精神病薬の特徴

フェノチアジン
クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)   特徴:ドパミン受容体遮断による抗精神病作用統合失調症における興奮状態を抑制

 

副作用:

血圧降下、縮瞳など

悪性症候群、麻痺性イレウス、遅発性ジスキネジアなど

レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
チオリダジン(メレリル)
フルフェナジン(フルメジン、フルデカシン)
プロペリシアジン(アパミン、ニューレプチル)
ペルフェナジン(ピーゼットシー)

 

ブチロフェノン
ハロペリドール(セレネース、ハロステン) 特徴:ドパミン受容体、セロトニン受容体遮断による抗精神病作用精神運動興奮や幻覚に有効 副作用:

血圧降下、頻脈、錐体外路症状など

悪性症候群、麻痺性イレウス、遅発性ジスキネジアなど

ブロムペリドール(インプロメン)
チミペロン(トロペロン)
スピペロン(スピロピタン)

 

ベンズアミド系
スルピリド(ドグマチール、アビリット) 特徴:ドパミン受容体遮断による抗精神病作用統合失調症における興奮状態を抑制副作用:

パーキンソン症候群、発疹、ジスキネジア、アカンジア、乳汁分泌・月経異常など

悪性症候群、遅発性ジスキネジア

スルトプリド(バルネチール)
ネモナプリド(エミレース)

 

非定型抗精神病

セロトニン・ドパミン遮断薬
リスペリドン(リスパダール) 特徴:セロトニン受容体遮断、ドパミン受容体遮断作用幻覚、妄想などの陽性症状や感情的引きこもり、情動鈍麻などの陰性症状に有効副作用:

パーキンソン症候群、ジスキネジア、月経異常、高プロラクチン血症など

悪性症候群、遅発性ジスキネジア,麻痺性イレウス

パリペリドン(インヴェガ)
ペロスピロン(ルーラン)
アリピプラゾール(エビリファイ)

 

MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬
クエチアピン(セロクエル) 特徴:セロトニン、ドパミンアドレナリン、ヒスタミン受容体に同程度の拮抗作用陰性、陽性症状、不安症状、うつ状態等の多様な精神症状に効果を有す 副作用:

体重増加、アカンジア、プロラクチン上昇など

高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、悪性症候群、遅発性ジスキネジア

クロザピン(クロザリル)
オランザピン(ジプレキサ)

 

これらの薬物は、患者さんの性格や状態、周囲の環境と精神症状を考慮し、薬物療法の対象となる症状(幻覚・妄想・興奮 など)と、心理社会的治療が有効な症状を大まかに分けて治療薬剤を選択します。

また、症状が強く発現していない場合には、副作用の少ない「非定型抗精神病薬」、症状が強く発現している場合には「定型抗精神病薬」を選択し、薬剤は混同・早期変更をせず、約4週間~6週間かけて同一薬による治療を行い、効果を判定します。

 

【薬物における副作用】

上記で各系統の薬物に関する簡略的な副作用を紹介しましたが、抗精神病薬すべてにおける身体的特徴は非常に多いため、同項で詳しく紹介します。統合失調症治療で用いられる薬物すべてに共通する副作用は以下の通りです。

精神神経系: 眠気、ふらつき、倦怠感
消化器・循環器系: 口の渇き、排泄障害、貧血、不整脈
その他: 体重増加、糖尿傾向、乳房の張り、生理不順、発疹

 

 

3-2、その他の治療法

統合失調症の治療には主に薬物が使用されますが、薬物治療により改善されない患者さんもいます。その場合には、「修正型電気けいれん療法」「心理社会的治療」により改善を図ります。

 

修正型電気けいれん療法

修正型電気けいれん療法とは、麻酔をかけた状態で、頭部に通電することにより人工的にけいれん 発作を起こして、精神症状を改善する治療法のことです。昏迷や興奮、抑うつなどの症状が発現している場合に特に効果的であり、身体状態の悪化や自傷・他害の危険が切迫している場合にも適応されます。

 

心理社会的治療

心理社会的治療には、互いに良好な関係を構築した上で共感を示すことで苦しみを緩和させる「支持的精神療法」、妄想的信念や幻聴に対する思考パターンを修正する「認知行動療法」、複数の患者が集まってそれぞれの抱える心の問題を話し合う「集団精神療法」の 3つの療法があります。これらは鬱病患者にも適応され、高い効果を示すことが多いため、多くは薬物療法と共に行われます。

 

 

4、統合失調症の看護計画

統合失調症を持つ患者さんの看護は非常に難しいものですが、薬物による治療が主であるため、看護師は患者さんの興奮度を上昇させないために、また早期に回復期・安定期に移行できるようで、急性期においては特にさまざまな事に気を配りながら看護ケアを行わなければいけません。

しかしながら、過度に援助すると自己解決能力が低下してしまい、再発のリスクが高くなるため、看護師はサポート役に徹し、患者さん自身で解決できるよう努めていくことが重要となります。

 

看護目標

・症状をコントロールし、暴力が回避できる

・自ら適切な服薬・症状管理ができる

・症状とうまく付き合いながらセルフケアが行える

・自ら適切な活動・休息が行える

・知覚障害、思考障害に適切に対処しながら生活できる

・自己と外界が区別できる

・円滑な対人関係を形成することができる

・社会復帰時において社会生活を維持することができる

・ストレスに対して効果的な対処法がとれる

 

 

4-1、患者本人に対する看護

統合失調症の症状は多岐に渡り、患者さんによって発現する症状は実にさまざまです。また、精神的な要素が非常に強いため、統合失調症の看護にはこれといった正解がないのが現状です。

それゆえ、「言って良いこと・悪いこと」、「して良いこと・悪いこと」というのは患者さんによって異なるため、症状を緩和させ早期に回復期へ移行できるよう、ストレスに対する自己解決の支援が看護師の大きな役割となります。

また、コミュニケーションを図る際には、「否定も肯定もしない」という態度で接し、何が禁句なのかを把握し、急性期においては特に、それらを避けながら接してあげることが大切です。

 

 

4-2、患者の家族に対する看護

統合失調症を早期に改善し、再発を防止するためには家族の支援が必要不可欠です。家族に対し、統合失調症の理解促進に加え、ストレスに関する心理教育も重要です。

特に回復期・安定期においては、症状が緩和され、病気が治ったと考えてしまいがちですが、良好な心理的・物理的環境の構築や、服用といった継続治 療が必要不可欠であるため、このことも家族に対し指導していく必要があります。

また、患者と家族の関係が良好でない場合には、レクリエーションや自助グループの参加など、家族間の良好な関係が構築できるよう、看護師が間に入って促進していきましょう。

 

 

まとめ

統合失調症は実に奥が深い精神疾患です。統合失調症の看護ケアは非常に難しいものですが、統合失調症に関する深い知識をもって、各患者さんの想いや悩みを考慮しながら、献身的にケアを行うことで、早期治療に向けた適切な看護を行うことができます。

統合失調症を持つ患者さんの臨床経験が少ない方や、看護に関する壁にぶち当たっている方は、今一度、統合失調症に関する知識を深め、患者さんの立場に立った献身的な看護を行うよう努めてください。

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