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【調査結果】医療介護の転職サイト「ジョブデポ」、2019年10月~3月の求人傾向

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with Career株式会社が運営する医療・介護・保育業界に特化した転職サイト「ジョブデポ」は、2019年10~12月期の医療・介護・保育の11職種の求人数を調査しました。

 

【調査結果概要】

職種別にみると、求人数から介護士と保育士の人材不足が深刻であることがわかります。介護職と保育士の求人はどの地方でも多く、全国的に慢性的な人材不足となっています。また、薬剤師や医師の人材不足も深刻となっています。

 

看護師 薬剤師 医師 臨床工学技士 臨床検査技師 診療放射線技師
地方別 北海道・東北 1,264件 1,681件 1,058件 198件 805件 88件
関東 2,220件 5,124件 3,221件 369件 1,638件 162件
中部・北陸 626件 1,741件 298件 163件 440件 51件
東海 1,276件 2,228件 1,057件 315件 647件 84件
近畿 1,717件 3,818件 2,533件 406件 1,177件 121件
中国 991件 1,635件 729件 142件 349件 53件
四国 600件 1,164件 401件 79件 257件 43件
九州・沖縄 1,811件 3,334件 1,630件 440件 958件 87件
求人数合計 10,505件 20,725件 10,927件 2,112件 6,271件 686件

 

理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 介護職 保育士
地方別 北海道・東北 1,528件 1,530件 381件 12,621件 7,126件
関東 3,146件 2,444件 816件 28,564件 23,555件
中部・北陸 937件 793件 229件 8,059件 3,425件
東海 2,045件 1,712件 393件 12,468件 4,887件
近畿 2,891件 2,332件 647件 19,179件 9,754件
中国 1,437件 1,318件 351件 9,830件 4,456件
四国 871件 786件 168件 5,404件 2,073件
九州・沖縄 2,508件 2,145件 480件 15,807件 11,141件
求人数合計 15,363件 13,060件 3,465件 111,932件 66,417件

 

【解説】

■介護職・保育士

介護職の求人数は111,932件、保育士の求人数は66,417件であることから、この2職種の人材不足はは深刻であることは間違いありません。介護職も保育士も長年処遇改善が叫ばれている職業ですが、まだ大幅な改善はみられていないのが実情であり、離職率が高いことがこの求人数に現れています。

 

ただ、求人数が多いということは、それだけ求職者にとっては有利な状況であるということですから、妥協せずに希望に合った転職ができる可能性が高いでしょう。

 

■薬剤師・医師

そして、薬剤師、医師、理学療法士、作業療法士の人材不足も深刻です。一般的には看護師不足が深刻だと言われていますが、看護職の有資格者は約1,660,000人、求人数は約10,000件となっています。

 

それに対し、薬剤師の有資格者は約300,000人で求人数は約21,000件、医師の有資格者は約320,000人で求人数は約11,000件です。

 

有資格者と求人数の割合で考えると、看護師に比べて薬剤師や医師は人材不足であり、需要が非常に高いことが分かります。

 

薬剤師と医師はどちらも求人数が多いですが、この2つの職種には大きな違いがあります。それは求人の多い地域です。薬剤師は大都市・地方問わず、全国的にまんべんなく求人があるのに対し、医師は東京や大阪、名古屋などの大都市圏に求人が集中しています。

 

このことから、需要と供給を考えると、薬剤師は都市部よりも地方の方がより条件の良い求人が多く、医師は地方よりも都市部の方がより条件の良い求人が多いと言えます。

 

■看護師

看護師不足は深刻と言われていますが、看護師の有資格者1,660,000人、求人数は約10,000件という数字を見る限り、ほかの医療・介護・保育の職種に比べると、2019年10~12月期では人材不足はそこまで深刻とは言えないかもしれません。

 

地方別の求人分布を見ると、全国各地まんべんなく求人がありますので、全国どこでも転職に困ることはないでしょう。

 

ただ、2025年問題が近づいていて、高齢者の増加に伴い、看護師の需要が高まることは間違いありませんから、これから看護師求人が増えていくことは間違いないと思われます。

 

■コ・メディカル

コ・メディカルである理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床工学技士、臨床検査技師、診療放射線技師の中でも、人材不足が深刻な職種は理学療法士と作業療法士です。

 

理学療法士の有資格者は約150,000人で求人数は約15,000件、作業療法士の有資格者は約85,000人で求人数は約13,000人ですので、医師や薬剤師よりも人材不足が深刻です。

 

これは高齢者の増加に伴い、理学療法士や作業療法士は病院などの医療機関だけでなく、介護施設でのニーズが増えてきているためと考えられます。

 

地方別の求人分布をみると、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床工学技士、臨床検査技師、診療放射線技師のコ・メディカルの6職種は、都市部・地方問わずにまんべんなく分布していますので、転職において「都市部が有利」、「地方が有利」ということはありません。


GCUの看護|GCUを知るための4つのポイント

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大学病院や小児専門病院等には周産期医療センター・母子医療センターがあり、NICUやGCUを持っています。新生児の医療現場では、NICUやGCUといった病棟で各新生児に適した治療が行われています。全ての病院にNICUやGCUがあるわけではなく、NICUのみを保有する病院もあればその両方を保有する病院もあります。ここではGCUについて解説していきます。

 

1、GCUとは

GCUとは「Growing Care Unit」の略で、新生児回復治療室と呼ばれ早産や先天性疾患を持つ新生児にNICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室)での集中治療を施したのち、状態が安定した児が引続きケアを継続して行う病棟のことをいいます。なかには出生後すぐにGCUに入る新生児もいます。出生時の体重や全身状態によってどちらに入るかが変わってくるということですね。出生後GCUに入院対象となる新生児や乳児には以下のような例が挙げられます。

 

・黄疸があり光線療法を必要とする児

・なんらかの先天性疾患が疑われ精密検査が必要な児

・急性期を脱し、全身状態が安定した児

・仮死状態で生まれ継続治療が必要な児

・重度の心身障害があり、長期入院が必要な児

・出生体重が2300g未満の低出生体重児

・退院に向けた準備を行う児

 

NICUに比べGCUは重症度が軽い赤ちゃんがいる病棟であるといえます。しかし、GCUに移ったからといって急変等がないわけではありません。順調に回復していた赤ちゃんの状態が急変することや検査中であった赤ちゃんの病状が増悪することもあります。そのような時は必要に応じてNICUでの治療が必要となる場合もあり得るということを心に留めておく必要があります。

 

2、GCUにおける看護体制・配置

厚生労働省による診療報酬改定に伴い、入院基本料における看護職員の配置基準が定められています。看護師一人に対して患者さんが何人つくかが定められており、各病院に看護職員の人数によって配置比率が変わってきます。病院は24時間体制で患者さんを看ている為、2交替または3交替の勤務状況により申請する配置人数が変わってくるからです。NICU・GCUにおける看護師の配置基準は、NICU3:1、GCU6:1となっています。しかし、病院によっては先の配置基準とは異なる所もあり、この基準がすべての施設で充たされているわけではないようです。

 

3、GCUにおける看護目標

NICUでの急性期を乗り越え状態が安定して退院に向けての準備が進められる段階になるとGCUに移動します。家族は授乳や沐浴などの日常生活で必要な技術を習得し、退院後の赤ちゃんとの生活がイメージできるよう援助していく必要があります。また、退院後の家庭環境(住宅環境・家族構成など)をふまえ、個々に合わせた対応をしなくてはなりません。それぞれの児に合わせたGCU→退院までの看護目標・計画を設定し、「家族支援」を行っていくことが重要です。病院の中には、退院が近くなると退院後の生活がイメージできるよう母子同室を行う病院もあります。

 

■目標:個別性にあった育児指導が行え、退院に向けての準備ができる

OP:観察

1.児の状態(哺乳状況、全身状態、体重等)

2.授乳または哺乳の時間間隔

3.母親の児に対する愛着

4.母親の不安の有無・表情(どんなことに不安を抱いているか等)

5.育児に対する意欲・言動

6.家族構成・住環境

TP:ケア

1.抱っこ・おむつ交換

2.直接授乳とビン哺乳

3.痰の吸引

4.酸素管理

5.栄養チューブの管理

6.検温

7.出来た事を褒め、育児への自信につながるように介入していく

8.個々の一日の生活リズムや流れを記載したパンフレットを用いてケアを進める(一例でありその通りにいかない事もたくさんある為、臨機応変に対応していく事を伝える)

9.母親が必要としている育児支援についての検討

EP:指導

1.母乳・ミルクの飲ませ方や時間間隔、ゲップの仕方についての指導・説明を行う

2.上手に母乳やミルクが飲めない児への哺乳の仕方や適切な乳首の選び方の説明

2.適切なポジショニングについて説明し実際にやってもらう

3.沐浴を行う際の児の支え方やコツ、洗い方などを母親と実践しながら説明する

4.医療機器を持っての退院を必要とする場合は、危機の扱い方、トラブル時の対処方法や連絡先についての説明を行う

5.痰の吸引の仕方や酸素吸入方法の指導を行う

6.栄養チューブからの母乳・ミルクの注入方法の指導

7.継続したリハビリや医療的なケアが必要な児に対して、訪問リハや小児専門の訪問看護ステーション、療育センターの紹介・利用を検討する

8.退院後の受診についての説明

GCUから退院する児の中には退院後も継続した医療を必要とする児もいます。このような場合、母親・家族にとって退院後の生活は不安や精神的ストレスが更に大きくなる為、訪問看護等の社会支援を含めたサポートが重要です。

 

4、GCUとNICUの違い

GCUとNICUではどのような違いがあるのでしょうか。入院している赤ちゃんは、家庭とは異なる環境下で治療を受けているため、退院に向けて赤ちゃんが過ごす環境を整えていく必要があります。NICUが未熟児の赤ちゃんを育て、全身状態を安定させるための治療を目的としているのに対し、GCUは退院に向けて家の環境に近づけ、昼間は明るく、夜は暗くというように1日の中でメリハリをつけた生活をしていくこと・母子関係の構築を目的としています。

 

■NICUとGCUの違い

NICU ・各児に必要な専門的かつ高度な集中治療を行う

・音や光・温度などが整備された特殊な環境

・両親の精神的なケア・病気についてや不安に対しての傾聴・相談

・赤ちゃんの状態に合わせたスキンシップや母子関係の確立と家族形成への支援

GCU ・退院に必要な育児指導

・母親の沐浴・授乳・おむつ交換等の育児参加により児への愛着形成を促す

・児への昼夜のメリハリをつけた生活

・退院後の育児不安への相談

・継続医療に必要な知識・技術の指導

 

NICUでは 様々な点滴や呼吸器等が装着されているため、簡単に触れたり抱っこをしたりできず母子分離状態にありますが、赤ちゃんの状態に合わせてディベロップメンタルケアやカンガルー抱っこ等の触れ合いを持つ時間を設けることで愛着形成を促す看護ケアが行われています。

一方、GCUでは、 授乳や沐浴などの練習を行い、母親主体で授乳時間を調整したりオムツを交換したりと育児技術の習得がメインに行われます。これは母親のみならず、父親の協力も得られるよう看護介入をしていくことで、母親の体力やメンタル面への助けにも繋がります。赤ちゃんと家族の絆をより深めてもらうための関わりをするのがGCUの役割と言えますね。

 

赤ちゃんとお母さん

引用元:MSF medical guidelines

 

まとめ

GCUでは、出生後すぐに母子分離を余儀なくされ、十分な触れ合いをしてくることが困難であった状況から母子が長い時間を共に過ごす環境を作っていきます。様々な不安や精神的ストレスが出てくるであろうことを予測しながら私達医療者は患児を含めた「家族」を支えていく必要があります。一般病棟とはちょっと違う特殊な環境下で過ごしたのちに家族の元へ戻っていく赤ちゃんがすくすくと育っていけるための支援を行うとともに、家族への継続した看護を行っていくことが大切です。

 

参考文献

産科病棟管理者 交流集会(日本看護協会|2013年8月3日)

GCU病 棟における家族参加型看護計画の実践報告(日本助産学会誌 第18巻 第3号|木下千鶴、木保真希子、碇石和子|2005年3月)

平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅰ(厚生労働省保険局医療課|平成30年3月5日)

CPAPの看護|持続陽圧呼吸療法の効果や副作用、3つの看護計画

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CPAPは、気管内挿管をせずに気道に陽圧をかけることができるので、睡眠時無呼吸症候群の治療に広く用いられています。病棟でCPAPを使用する時に正しく看護をすることができるように、または家庭でCPAPを導入する患者に使用方法や注意点を指導できるように、正しい知識を身につけておきましょう。CPAPの基礎知識や効果、人工呼吸器のモードについて、副作用、看護計画をまとめましたので、実際に看護する時の参考にしてください。

 

1、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)とは

CPAP(シーパップ)とは、Continuous Positive Airway Pressureを略した用語で、日本語では持続的陽圧呼吸療法と訳されます。

 

CPAP

出典:あおぞら湘南クリニック

 

CPAPは機械を用いて、気道に常に一定の陽圧をかけ続けます。気道を陽圧に保つことで、気道を確保できるほか、肺胞の虚脱を防ぐことができます。

 

CPAPの原理

出典:一般社団法人日本呼吸器学会

 

このCPAPの特徴は、NPPV(非侵襲的陽圧換気)であることです。非侵襲的ですので、気管内挿管や気管切開をする必要はありません。マスクを装着するだけで、気道に陽圧をかけることができるようになっています。CPAP療法は、一般的には睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に用いられますが、心不全などの治療にも用いられることがあります。

 

2、CPAPの効果

CPAPは気道を陽圧に保つことで、気道を確保でき、肺胞の虚脱を防ぐという効果があります。そうすることで、具体的には次の5つの効果が期待できます。

・気道の確保

・換気の改善

・機能的残気量の増加

・酸素化能の改善

・呼吸仕事量の減少

気道の陽圧を保つことで、気道の閉塞を防ぐことができるため、SASの治療をすることができます。また、肺胞の虚脱を防ぐことで、換気が改善して呼吸仕事量が減少するので、呼吸しやすくなります。さらに、胸腔内圧を高めるので、肺の血流を減少させて、心不全による肺うっ血・肺水腫を改善する効果も見込めます。

 

3、CPAPと人工呼吸器

一般的に「CPAP」というと、BiPAPマスクを使ったNPPV(非侵襲的陽圧)を指しますが、人工呼吸器のモードにもCPAPがあります。人工呼吸器のモードの1つであるCPAPもNPPVのCPAPと同じです。気道に陽圧をかけるモードです。

NPPVのCPAPとの違いは、基本的には気道内挿管(気管切開)が必要か否かだけになります。

ただ、人工呼吸器によっては、CPAPモードにPS(Pressure Support)をかけられるものがありますので、人工呼吸器のCPAPモードを使っている患者の看護をする時には、PSがかかっているかを確認する必要があります。人工呼吸器のCPAPは人工呼吸器離脱前のウィーニングに使われることが多いです。

 

4、CPAPの副作用

NPPVでのCPAPは基本的に重篤な副作用はほぼありません。人工呼吸器でのCPAPでは気道内圧が高くなりすぎることで、気道損傷や肺損傷を起こすリスクがありますが、NPPVのCPAPではマスクを使用するので、気管内挿管に比べると気密性は低くなります。

そのため、10~15cmH2O以上の気道内圧を維持することは困難であり、肺損傷のリスクはありません。1

CAPAは家庭でも安全に利用できる治療方法なのです。ただ、次のような副作用が出ることはあります。

・喉の乾燥

・鼻づまり

・腹部膨満感

・マスク装着とPEEPがかかることでの圧迫感・閉塞感

・入眠困難

・耳の痛み

CPAPは気道を陽圧に保つために、空気を送り込みますので、喉の乾燥や鼻づまり、耳の痛みなどを感じやすくなります。

また、送り込まれた空気を飲み込むことで、腹部膨満感やげっぷなどの症状も現れます。そして、マスクをつけて、常に空気を送り込まれていることで、圧迫感や閉塞感を感じる患者も少なくなく、マスク装着の不快感から入眠が困難になるという副作用もあります。

 

5、CPAPの看護計画

CPAPを装着している患者の看護をする時には、次の3つの看護問題が挙がります。

①ガス交換障害

②CPAPへの不安や不快感

③無呼吸が起こる可能性

この3つの看護問題に沿って、CPAPを装着している患者への看護計画を立案しましょう。

 

①ガス交換障害

CPAPを装着している患者は、SASや心不全による肺水腫などが原因で、1回換気量が低下するリスクがあります。1回換気量が低下すれば、酸素化が低下し、低酸素に陥って呼吸不全になることがありますので、看護師はガス交換障害が起こらないようにケアをしていく必要があります。

看護目標 呼吸不全が起こらずSpO2の低下がみられない
OP(観察項目) ・バイタルサイン(呼吸回数、SpO2)

・血液ガスデータ

・胸部レントゲン画像

・呼吸状態

・息苦しさの有無

・マスクの密着度

・呼吸音

・胸郭の動き

・チアノーゼの有無

・マスクからのリークの有無

TP(ケア項目) ・CPAPの設定の確認

・マスクをしっかり装着してもらう

・リークがあったら、マスクを装着し直す

・指示された薬剤の確実な投与

EP(教育項目) ・息苦しさを感じたらすぐに伝えてもらうように説明する

 

②CPAPへの不安や不快感

CPAPで治療をすると、圧迫感や閉塞感を感じて不安になったり、鼻詰まりや耳の痛みなどの不快を感じる患者が少なくありません。CPAPに対して不安や不快を感じてしまうと、CPAPを自己判断で中断してしまったり、無意識にマスクを外してしまうこともあります。また、不安や不快感が強くなると、CPAP自体がストレスになってしまって、不眠や食欲不振などの症状が出てくる可能性もありますし、治療に積極的に取り組むことができなくなります。そのため、看護介入して不安や不快感を軽減できるようにケアしていきましょう。

看護目標 CPAPへのネガティブな言動が減少し、積極的に治療に取り組むことができる
OP(観察項目) ・CPAPについての言動

・表情

・睡眠状況

・不快感の訴えや種類

TP(ケア項目) ・CPAP用の加湿器を用いる

・室内の加湿をする

・マスクを正しく装着してもらう

・不安を傾聴する

・医師に設定圧の調整を相談する

・気分転換を促す

EP(教育項目) ・治療についてきちんと説明する

・不安や不快感は我慢せずに伝えてもらうように説明する

 

③無呼吸が起こる可能性

CPAPは主に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に用いられます。気道を陽圧に保つことで、気道の閉塞を防ぐことができます。しかし、適切に使用できていない場合は、睡眠中に無呼吸が起こるリスクはあります。看護師は無呼吸が起こるリスクを考えながら、看護介入をして、ケアをしていくようにしましょう。

看護目標 睡眠中に無呼吸が起こらない
OP(観察項目) ・バイタルサイン(呼吸回数、SpO2)

・呼吸状態

・胸郭の動き

・マスクのフィット感

・リークの有無

・チアノーゼの有無

・CPAPに対する言動

・睡眠状況

・日中の眠気の有無

TP(ケア項目) ・マスクをしっかりフィットさせる

・圧は適切かどうかを医師に相談する

・CPAPへの不安感・不快感がないかを傾聴する

EP(教育項目) ・家族にも睡眠中に無呼吸がないかを確認してもらうように伝える

・マスクはしっかりフィットさせて適切に利用できるように指導する

・SASのリスクを指導する

 

もし、CPAPを適切な圧設定で、きちんと使うことができているのに、日中の眠気が続くという場合は、SASが原因の眠気ではなく、ほかの原因による睡眠障害の可能性を否定できません。CPAPがうまく使えないことで睡眠中に無呼吸が出てしまっていることによる眠気なのか、それ以外の原因の可能性が考えられるのかを看護師はきちんとアセスメントをしなければいけません。SAS以外の睡眠障害の可能性がある時には、医師に報告するようにしましょう。

 

まとめ

CPAPの基礎知識や効果、副作用、看護計画をまとめました。

CPAPは気管内挿管が必要ない呼吸療法で、SASの治療では保険が適用となり、家庭でも使うことができます。ただ、ICUや一般病棟でも利用することがあります。また、看護師はCPAPを家庭で導入する時にきちんと患者や家族に使用方法を指導する必要もありますので、CPAPについて正しい知識を身につけておくようにしましょう。

 

参考文献

1)肺損傷回避のための非侵襲的呼吸補助による呼吸管理(日本集中治療医学会雑誌 第4巻 第1号|山内順子、丸川征四郎、尾崎孝平、藤田啓起|1997年)

ADLの評価をする目的とは?BIとFMIの最低2つは覚えよう

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高齢社会においては、医療とリハビリ・介護は切っても切れない関係です。個々のADLの状態に合わせて介入して効果を判定するためには、ADLを一定の基準で評価することが必要です。ADLを評価する目的から、医療機関で主に使用されているBarthel IndexとFunctional Independence Measureの評価項目まで、まとめてお伝えします。

 

1、日常生活動作(ADL)意味とは

ADL:Activities of daily livingは、「日常生活動作」もしくは「日常生活活動度」と訳され、人が日常生活を送る中で必要な食事・排泄・入浴に関する動作を、どこまで自立しているかを示す言葉です。最も基本的な生活動作をADLに対してbasicADL:BADLともいいます。

更にこのADLから派生した概念として、IADL:Instrumental Activities of Daily Living、「手段的日常生活動作」もあります。これはただ食事や排泄といったADLではなく、より高度な動作を示し、お金の管理を含めた買い物や料理・洗濯・掃除等の家事全般に加え、服薬管理や公共の交通機関の利用など、生活していく上では必要となる動作のことを言います。

 

2、ADL 評価(FIM・BI)

ADLを評価する方法にはいくつかの種類があり、日本で採用されている主なADLの評価方法は以下の4つ。それぞれ異なった特徴がありますので、比較してみましょう。

 

<ADLの評価分類>

①Barthel Index:BI(バーセルインデックス)

基本となる生活動作を10項目にしぼり、(食事・移動・整容・トイレ・入浴・歩行・

階段・着替え・排便・排尿の)それぞれの項目で不能から自立までの2~4段階に分け

て評価する方法です。採点方法には20点満点と100点満点の方法がありますが、点数

が高いほど自立していることを示します。

②Katz Index(カッツインデックス)

基本となる生活動作をBIより更に6項目(入浴・更衣トイレの使用・移動・排尿・排便・食事)にしぼり、自立度によってAからGまでの7段階で判定を行うものです。

③DASC-21(ダスク21)

認知症のスクリーニングのための21の質問の中に、基本的ADL項目(入浴・更衣・排泄・整容・食事・移動)を含めたもので、認知機能障害と生活障害を一度に評価するために用いられています。

④Functional Independence Measure :FIM(機能的自立度評価表)

運動ADL13項目と認知ADL5項目で構成されており、各項目全介助の1点から完全自立の7点で評価する方法です。対象となる疾患を選ばず7歳以上を評価の対象としていることから世界中で使用されている方法で、日本国内では回復期リハビリテーション病棟における評価に使用されています。

 

ADLの評価方法はどれが間違いでどれが優れているというものはありませんが、ADLのみならBarthel Index、運動機能と認知機能を合わせて評価とする場合にはFunctional  Independence Measureを採用されることが多いので、この2つの評価方法は覚えておくと良いでしょう。(評価の各項目については、次項目でお伝えします。)

 

3、ADL 項目

ADL評価の項目は、評価方法によって項目や配点が異なります。また、日常生活動作に重点をおくか認知機能におくかでも異なりますが、ここでは主な評価方法であるBarthel IndexとFunctional Independence Measureの評価項目をお伝えします。

 

<Barthel Index>

BIはADLの評価のみ10項目で構成されており、各項目の合計点で評価します。最低は0点、上記の配点方法は100点満点となっています。点数の高い方が自立度が高いことを意味しています。

①食事 10:自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える

5:部分介助(たとえば、おかずを切って細かくしてもらう)

0:全介助

②車椅子からベッドへの移動 15:自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(非行自立も含む)

10:軽度の部分介助または監視を要する

5:座ることは可能であるがほぼ全介助

0:全介助または不可能

③整容 5:自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り)

0:部分介助または不可能

④トイレ動作 10:自立、衣服の操作、後始末を含む

ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む

5:部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する

0:全介助または不可能

⑤入浴 5:自立

0:部分介助または不可能

⑥歩行 15:45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わない

10:45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む

5:歩行不能の場合、車椅子にて45 m以上の操作可能

0:上記以外

⑦階段昇降 10:自立、手すりなどの使用の有無は問わない

5:介助または監視を要する

0:不能

⑧着替え 10:自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む

5:部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える

0:上記以外

⑨排便コントロール

 

 

 

10:失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能

5:ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む

0:上記以外

⑩排尿コントロール

 

10:失禁なし、収尿器の取り扱いも可能

5:時に失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む

0:上記以外

 

<Functional  Independence Measure>

FIMの特徴は運動と認知の評価項目が存在するところにあり、大項目としてⅠ運動・Ⅱ認知に分かれています。その次に中項目として運動ADLと認知機能それぞれに対して①~④と⑤~⑥の中項目が存在します。更にその中項目に対して小項目が存在します。

 

<FIMの評価項目>

大項目:I運動ADL、Ⅱ認知機能

中項目:Ⅰ①セルフケア②排泄③移乗④移動、Ⅱ⑤コミュニケーション⑥社会認識

小項目:①に対し食事、整容、入浴、更衣(上半身)、更衣(下半身)、トイレ動作

②に対し排尿、排便

③に対し ベッド・いす・車いす、トイレ、風呂・シャワー

④に対し歩行・車いす、階段

⑤に対し理解、表出

⑥に対し社会的交流、問題解決、記憶

 

運動ADL13項目と認知ADL5項目で評価し、小項目1つずつに完全自立の7点から全介助の1点の配点で評価とします。これを一覧にまとめているものが厚労省から発表されていますので、臨床現場で評価する際には、この表をもとに行えばOK。完全に暗記する必要はありません。

 

ADLの指標

出典:厚生労働省

 

4、ADL 看護

ADLを評価する方法がいくつも存在するということは、それだけADLの評価は必要だということです。では、なぜ一人ずつにADLの評価を、それも入院中に何度も行う必要性があるのでしょうか。その目的がわかっていないと、ただルーチン業務として「評価すること」が目的になってしまいかねません。

 

<ADL評価の目的>

①患者本人の自立度と、看護(介護)の必要度を把握する

②どの部分に対する介入が必要か、コメディカルと情報共有する

③結果を活かし、看護計画・リハビリ計画を立案する

④治療やリハビリの効果判定に使用する

⑤今後の予測、介入の余地を検討する

 

Functional Independence Measureでは各項目に対して全介助から完全自立までの7段階で評価しますので、かなり評価項目が細かくなっています。それだけ評価がきっちりされることで、今の状態と入院中の状態、退院時の状態がどのように変化していくかを数値化することができます。看護師は今の点数から⑤今後の予測を立て、どの項目に重点的な介入が必要か把握することで、③看護計画の立案に活かすことができるのです。基準がしっかり定められていることで、誰が評価してもほぼ同じ結果を得ることができ、コメディカルとも情報共有することができるため、退院に向けての入所施設などの検討にも役立ちます。

私達が忙しい業務の中で個々の患者のADLを評価する目的は、その結果を患者ごとに異なる個別の介入をして看護に活かすためです。目的をもち、ルーチン業務として行うことのないようにしたいものですね。

 

まとめ

ADLの評価はどの方法をとっても、評価することで終わっては意味がありません。評価した結果かから今後を見据え、どのような看護が必要かを考える材料にするべきです。ただ、正しい評価方法を知らなくてはスタッフと足並みをそろえることもできませんし、正しい治療判定を行うことができませんから、今回ご紹介した主な評価方法であるBarthel IndexとFunctional Independence Measureは使えるようにしておきましょう。

 

<参考サイト>

Functional Independence Measure(FIM)によるADL評価(厚生労働省|2017年11月10日)

ADLの評価法(一般社団法人日本老年医学会)

FIM 機能的自立度評価法(慶應義塾大学 医学部リハビリテーション医学教室|)

VT(心室頻拍)の看護|原因や心電図波形、看護師の対応4ステップ

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VTは心室期外収縮が連続して起こっている状態のことで、そのまま放っておくと、死に至ることもある不整脈です。そのため、看護師はVTを起こした患者を発見したら、冷静に適切な対応ができるように正しい知識を身につけておく必要があります。VTの基礎知識や原因、心電図波形、症状、治療法とガイドライン、看護師対応についてまとめましたので、実際の看護に役立ててください。

 

1、心室頻拍(VT)とは

心室頻拍(VT=Ventricular Tachycardia)とは、心室期外収縮が1分間に120回以上の頻度で3連発以上と高頻度に出現した状態のことを指します。心室期外収縮とは、正常の心臓のリズムではなく、心臓の異常興奮によって生じる心室の収縮のことです。

つまり、VTは正常リズムではなく、異常興奮で心室が連続して収縮してしまっている状態と言えます。VTが起こると、心室のポンプ機能は正常に働かなくなるため、循環を保つことができず、非常に危険な状態です。

また、VTはさらに悪性度の高い不整脈である心室細動(Vf)に移行する場合もリスクもあります。VTには30秒以上続く持続性VTと、30秒未満で自然停止する非持続性VTに分けられますが、持続性VTは自然停止することはないため、何らかの治療をしてVTを停止させなければいけません。

 

2、VTの原因

VTは心筋梗塞や狭心症、弁膜症、CT延長症候群、心筋症などの心疾患があると発症しやすくなりますが、心疾患がなく健康な心臓の人でもVTを発症することがあります。基礎疾患がないのに起こったVTを特発性VTと言います。

睡眠不足やカフェインの摂りすぎ、ストレスなどがVTの引き金になることはありますが、これといった誘因がなく、突然VTが起こることもあります。

 

3、VTの心電図波形

心電図が苦手な看護師は多いので、「不整脈の心電図」と聞くとそれだけで拒否反応を示してしまうかもしれませんが、VTの心電図波形は特徴があり、わかりやすいので大丈夫です。VTの心電図波形は、たくさんある不整脈の中でも一番わかりやすく、心電図に詳しくない看護師でも一目でVTが起こっていると判別することができます。

 

VTの心電図波形

出典:公益財団法人 日本心臓財団

 

これが、典型的なVTの12誘導の心電図波形です。VTの心電図波形の特徴は、次の2つです。

・QRS幅が広い(0.12秒)

・RR間隔は一定

 

つまり、幅の広いQRS(Wide QRS)が一定のリズムで出現していれば、VTということになります。看護師は、最初は「P波は?」、「STはどうなっている?」と難しく考える必要はありません。とりあえず「幅の広いQRSが規則的に出現しているか?」だけに着目しましょう。

 

4、VTの症状

「VT=脈なし・心停止」と思われがちですが、VTは脈なしVT(無脈性VT・Pulseless VT)と脈ありVTに分けることができます。無脈性VTの時は、意識を消失し、呼吸停止・心停止となります。脈ありVTは「脈が触れる=循環は維持できている」ということになりますので、意識消失が起こらないことも珍しくありません。

意識を消失しない脈ありVTの時は、動悸、息切れ、めまいやふらつきなどの自覚症状が出てきます。

 

5、VTの治療法とガイドライン

VTの治療方法は、次の2つのガイドラインによって定められています。

不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)(一般社団法人日本循環器学会|日本循環器学会,日本小児循環器学会,日本心臓病学会,日本心電学会,日本不整脈学会|2009年)

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」(一般社団法人日本循環器学会|日本循環器学会,日本胸部外科学会,日本人工臓器学会,日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,日本心電学会,日本心不全学会,日本不整脈学会|2011年)

 

このガイドラインによると、VTの急性期の治療は、この2つが行われます。

・カウンターショック(無脈性VTは除細動、脈ありVTはカルディオバージョン)

・薬剤投与(アミオダロン、ニフェカラント、リドカイン)

長期的な治療となると、VTの発作を起こさないという視点ではなく、VTによる突然死を起こさないという視点での治療が行われます。以下の3つの治療が行われることが多いです。

・薬物治療

・カテーテルアブレーション

・植込み型除細動器

この治療でも効果が見られないという場合は、外科的手術による治療が選択されることになります。

 

6、VT患者への看護師の対応

VTを起こした患者を発見した時の看護師の対応の流れ・手順を確認しておきましょう。VTを起こしている患者を発見すると、焦ってしまう看護師が多いと思います。VTは迅速に対応しないと、死に至ることになりますので、看護師は冷静に対応できるようにあらかじめ知識を身につけておく必要があります。

 

①バイタルサインのチェック

心電図上でVT波形を確認したら、まずはバイタルサインを確認する必要があります。と言っても、この時のバイタルサインは体温や呼吸数など細かく測る必要はありません。まずは、頸動脈で脈が触れるかどうかを確認しましょう。頸動脈で脈が触れれば、血圧60mmHg以上はあるということです。脈を確認出来たら、意識レベルの確認や血圧を測定するようにしてください。頸動脈で脈が触れなければ、無脈性VTということになります。

 

②応援を読んでCPRを開始

脈が触れたら、バイタルサインを医師に報告して、患者の状態の変化に注意しながら、医師の指示に従って対応します。無脈性VTの場合は、すぐにナースコールを鳴らしたり、大声を出して応援を呼ぶのと同時にCPRを開始します。胸骨圧迫を1分間に100回のペースで行いましょう。

 

③救急カートの用意と環境整備

CPRをしている間に、応援の看護師が来てくれると思います。そうしたら、救急カートやカウンターショックの準備を指示し、さらに処置ができるようにベッド周囲のスペースを確保するなどの環境整備をお願いしましょう。

 

④ACLSのアルゴリズムに沿って対応する

医師が来たら、基本的には医師の指示に従って対応することになりますが、多くの医師はACLSのアルゴリズムに従って処置をしていくはずですので、看護師もVT治療のアルゴリズムを理解しておくと、時間のロスなく処置をすることができます。AHA(アメリカ心臓協会)のACLSのアルゴリズムによると、無脈性VTでは迅速な除細動とCPRが治療の原則です。

だから、医師が来たらすぐに除細動が行えるように、準備しておく必要があります。

 

<無脈性VTの簡単なアルゴリズム>

1.除細動

2.CPR2分間(5サイクル)

3.リズムチェック

4.VTが続いているようなら除細動

5.アドレナリンの投与

6.CPR2分間(高度な気道確保を考慮)

7.リズムチェック

8.VTが続いているようなら除細動

9.アミオダロンやリドカインなどの抗不整脈薬の投与を検討

10.CPR2分間

このアルゴリズムの簡単な流れを覚えておけば、看護師は医師の指示を待って準備するのではなく、指示される前に準備ができますので、時間のロスが少なく、迅速に対応でき、救命率を上げることが可能になります。また、アルゴリズムを理解しておけば、自信を持ってVTの対応ができますので、焦って空回りすることもないでしょう。

 

まとめ

VTの基礎知識や原因、心電図波形、症状、治療法とガイドライン、看護師の対応についてまとめました。VTは心疾患がない患者にも突然起こり得るものですので、救急部門やICU、循環器系の診療科の看護師だけでなく、ほかの診療科の看護師も適切に対応できるように正しい知識を身につけておく必要があります。慌てず冷静に対応できるように、VT患者への看護師の対応をもう一度見直しておきましょう。

一過性脳虚血発作(TIA)の看護|原因・症状からみる3つの看護ポイント

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一過性脳虚血発作(TIA)は、文字通り一時的に脳の血管に虚血が起こることによる様々な症状のことをいいますが、脳梗塞の前兆といわれ、脳虚血によって起こる症状が消えても、脳梗塞へ移行する危険があるため、そのケアはとても重要なものとなります。TIAについてよく知り、適切な看護を行うようにしましょう。

 

1、一過性脳虚血発作(TIA)とは

一過性脳虚血発作(TIA)とは、何らかの原因で脳血管(末梢血管)部分の血流が滞り、血流が途絶えることによって神経脱落症状が出現する発作のことです。この発作は、ほとんどの場合、5〜10分くらい、長くても1時間以内には症状は消失します。

 

脳梗塞の前兆

出典:メディカルノート

 

以前は、24時間以内に症状が消えるものをTIAと定義していましたが、短時間で症状が消えても脳梗塞の兆候が発見されることが多くなり、発作時間ではTIAと脳梗塞が区別できないため、脳梗塞と完全に分けるために発作時間の定義はなくなりました。2009年米国心臓協会・脳卒中協会(AHA/ASA)は「局所(脳、脊髄、網膜)の虚血によって惹起される急性梗塞に至らない一過性の神経障害」と定義づけしています。このように定義づけられていますが、TIAとなった場合、90日以内に脳梗塞へ移行する可能性が15〜20%と高く、早期の対処が必要となるため、その診断と治療、ケアはとても重要になります。また、動脈硬化や心疾患が基礎疾患として存在することもあり、継続しての治療や観察が必要になります。

 

2、一過性脳虚血発作(TIA)のガイドラインについて

一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞へ移行する可能性があるために、速やかな治療が必要になります。そのための推奨された介入を示すガイドラインは欧米で作成されていましたが、日本で許可されている薬剤が異なり、人種によっても差異があるために、2015年に日本脳卒中学会により日本独自のガイドラインが作成されました。ガイドラインではその治療や介入の方法を推奨グレードによって示しています。

 

推奨グレード 内容
A 行うよう強く勧められる
B 行うよう勧められる
C1 行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない
C2 科学的根拠がないので勧められない
D 行わないように勧められる

参考:脳卒中治療ガイドライン2015(日本内科学会雑誌106巻 5号|2017年)

 

このガイドラインでは脳卒中全体の推奨される介入が示されており、TIAについても記載されています。ガイドラインでは、推奨グレードとは違うTIAの重症度を判定するためのABCD2スコアを使用します。このスコアによって重症度を判定し、必要に応じた介入が行われます。

 

推 奨

1.     一過性脳虚血発作(TIA)と診断すれはば、可及的速やかに発症機序を評価し、脳梗塞発症予防のための治療を直ちに開始するよう強く勧められる(グレードA)。

TIA後の脳梗塞発症の危険度予測 と治療方針の決定には、ABCD2スコアをはじめとした予測スコアの使用が勧められる(グレードB)。

脳画像上の多発性虚血病変、主幹脳動脈病変合併例、ABCD2スコア6~7点は1年以内の脳卒中再発リスクが高い(グレードB)。

2.     TIAの急性期(発症48時間以内)の再発防止には、アスピリン160~300mg/日の投与が強く勧められる(グレードA)。

急性期に限定した抗血小板薬2剤併用療法(アスピリン+クロピドグレル)も勧められる(グレードB)。

3.      急性期以後のTIAに対する治療は、脳梗塞の再発予防に準じて行う。

 

出典:脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017](日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会|2017年)

 

ABCD2スコア

A Age(年齢)>60歳(1点)
B Blood pressure(血圧)>140/90mmHg(1点)
C Clinical feature(臨床像)>半身麻痺(2点)、麻痺のない言語障害(1点)
D Diabetes(糖尿病)(1点)
D Duration of symptoms(持続時間)(10〜59分1点、60分以上2点)

出典:一過性脳虚血発作について(東京逓信病院)

このガイドラインによって、脳梗塞の発症予防とTIAの再発予防の治療が行われます。

 

3、一過性脳虚血発作(TIA)の原因

TIAの原因は脳梗塞の原因と同じものであり、その重症度によっては脳梗塞に移行する可能性があります。TIAの主な原因は次の通りです。

 

3−1、塞栓

体内でできた血栓が脳血管の末梢部位に流れ込み、つまらせることで血流を途絶えてしまうという「塞栓」が原因となります。塞栓はTIAの原因として最も多く見られ、血栓ができる場所は頚動脈が最も多く、大動脈弓、頭蓋内主幹血管での血栓が塞栓を引き起こすこともあります。

 

3−2、一過性低血圧

脳の主幹動脈に元から閉塞や狭窄がある場合、急な血圧の低下によって一時的に脳の血流が途絶えることによって起こります。この場合、血圧が回復すると症状は消失します。

 

3−3、心原性塞栓

脳梗塞は心房細動や弁膜症によってできた血栓が脳血管の末梢血管に入り塞栓しまう心原性塞栓が主な原因ですが、これはTIAも同じく原因となります。この血栓による塞栓が一時的なものか、または血栓が溶けた場合は一過性の虚血となり、TIAとなります。

 

4、一過性脳虚血発作(TIA)の症状

TIAの症状は、次のようなものがあります。

・手足、顔面の運動障害→失語など

・手足、顔面の感覚障害→失認など

・片目の暗転→片目だけ暗くなったり、霞がかったりして見える

・めまい

・嚥下困難

・平衡障害

このような症状は、15〜20分もしくは1時間以内に消失します。その場合、TIAが強く疑われるので、注意が必要です。

 

5、一過性脳虚血発作(TIA)の看護問題

一過性脳虚血発作(TIA)では、疾患自体が重症化するリスク、症状が出現した場合に転倒などによる外傷のリスク、症状が回復すると自覚症状がなくなるために病識が低いことで症状を悪化させるリスクがあり、次の看護問題が挙げられます。

 

#1脳梗塞へ移行する可能性がある

#2症状による身体損傷リスク状態

#3疾患や予防行為に対する知識不足

 

6、一過性脳虚血発作(TIA)の看護計画

上記の看護問題における看護目標はそれぞれ次の通りです。

 

#1重症化せずに経過できる

#2転倒など外傷を起こさない

#3疾患について理解し、予防行動をとることができる

 

上記の看護問題について、それぞれの看護計画を例として立案します。

 

#1

看護目標:重症化せずに経過できる

<OP>

① バイタルサイン(血圧・体温・脈拍・酸素飽和度SpO2

② 症状の有無・程度(頭痛・めまいなど)

③ 運動障害の有無・程度

④ 感覚障害の有無・程度

⑤ 視覚障害の有無・程度

⑥ 既往歴(特に、脳血管疾患の既往の有無)

⑦ 検査データ

⑧ 症状継続時間

 

<CP>

① 安楽な体位の保持

② 医師の指示により、適切な時間に投薬する

③ 脳梗塞様症状が出現した場合は、速やかに医師へ報告する

 

<EP>

① 自覚症状がある場合は速やかに伝えるように説明する

② 症状があるときは、無理せず休養をとるように説明する

 

#2

看護目標:転倒などの外傷を起こさない

<OP>

① めまい、ふらつきの有無

② 運動障害の有無、程度

③ 感覚障害の有無、程度

④ 症状継続時間

⑤ 既往歴

⑥ 今まで転倒したことがあるかどうか

⑦ 嚥下障害の有無、程度

⑧ 意識レベル

 

<CP>
① 症状が出現したら速やかに医師へ報告する

② 症状の出現時、転倒しないように環境整備を行う

 

<EP>

① 症状が出現したら、ゆっくりと座り、無理に歩いたりしないよう説明する

② 転倒の既往がある場合、転倒しないような履物や環境を工夫するように説明する

 

#3

看護目標:疾患について理解し、予防行動をとることができる

<OP>

① 既往歴

② 症状の有無

③ 日常生活動作

④ 使用中の薬剤

⑤ 病気に対する理解度

⑥ 医師からの説明の理解度

⑦ 喫煙・飲酒の程度

⑧ 検査データ

⑨ 家族歴

 

<CP>

① 医師からの説明時には同席し、理解できたかを確認する

② TIAと脳梗塞について情報を提供する

 

<EP>

① 脳梗塞について説明し、予防方法について指導する

② 喫煙のリスクについて説明し、必要時、禁煙指導を行う

③ TIAについての知識を確認し、必要時情報提供を行う

④ 症状が出現した時の対処方法を説明する

⑤ 自分でできるTIAの予防法を説明する

⑥ 服薬指導

⑦ 栄養指導

 

7、まとめ

一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞の前触れとして出現し、看護によってTIAの重症化、つまり脳梗塞を防ぐことができます。TIAを予防するとともに、症状がある時に外傷や誤嚥とならないように、そして、脳梗塞とならないように適切な看護を行なっていきましょう。

 

引用文献

1)TIAの新しい概念と対策−日本神経学会,臨床神経(臨床神経学50巻11号910-912|卜部貴夫|2010年11月)

CRT(心臓再同期療法)の看護|適応や4つの看護ポイント

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CRTとは心室を同時にペーシングすることで、重症心不全で低下したポンプ機能を改善する治療方法です。この治療によって、心不全による呼吸困難や息切れなどの症状の改善が見込めるので、患者のQOLを大きく向上させることができます。CRTの適応とガイドライン、看護のポイントをまとめましたので、実際の看護に活かしてください。

 

1、心臓再同期療法(CRT)とは

心臓再同期療法(CRT=Cardiac Resynchronization Therapy)とは、重症の心不全に対して行われるペースメーカー療法の1つで、左右の心室を同時にペーシングして収縮させることで、心臓のポンプ機能を改善させる治療方法になります。日本では2004年から保険適用となった新しい治療方法です。

通常、心臓は洞結節から電気信号が送られ、心房を収縮させ、さらにヒス束、プルキンエ線維を通って心室に伝わり、心室が収縮して、全身に血液が送り出されます。しかし、拡張型心筋症や心筋梗塞などの疾患があると、心筋が傷害されます。そうすると、心室の筋肉の中でも電気信号が早く伝わる部分と遅く伝わる部分が出てきて、左右バラバラに収縮してしまい、ポンプ機能が低下します。

ポンプ機能が低下すれば、血液がきちんと全身に送られなくなってしまいます。それを改善するための治療方法がCRTなのです。

 

両心室ベーシング

出典:両心室ペーシング(心臓同期療法;CRT)について(京都大学医学部附属病院 循環器内科)

 

CRTでは、右心房と右心室、左心室にリード線を挿入します。こうすることで、左右の心室に同時に電気刺激を流すことができ、左右の心室が同期して収縮することができるため、ポンプ機能を改善することができます。

通常、CRTは局所麻酔を用いて、左の鎖骨下に埋め込まれますが、他の心臓手術と同時に行う場合は、開胸して左上腹部に埋め込むこともあります。

CRTはCRT-P(Cardiac Resynchronization Therapy Pacemaker)とCRT-D(Cardiac Resynchronization Therapy Defibrillator)の2種類があります。

CRT-Pはペースメーカー機能だけのもので、CRT-Dはペースメーカー機能に除細動機能が付いたものになります。

 

2、CRTの適応とガイドライン

CRTの適応は、日本循環器学会や日本心不全学会、厚生労働省研究班などが合同で作成した「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」でエビデンスに基づいて、適応を決めています。

そして、適応症例の中でも、推奨度をⅠ、Ⅱa、Ⅱb、Ⅲの4段階で分類しています。

以下の適応分類は、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」1から抜粋したものです。

ここでは、クラスⅠ(手技・治療が有効・有用であるというエビデンスがあるか、あるいは見解が広く一致している)とクラスⅡa(エビデンス・見解から有用・有効である可能性が高い)の適応を説明します。

適応分類 症状
・NYHA 心機能分類 III/IV 度で、最適な薬物治療をしても、 LVEF≦35%、左脚ブロック(QRS幅120ミリ秒以上)であり、洞調律の場合

・NYHA心機能分類II度で、最適な薬物治療をしても、LVEF≦30%、左脚ブロック(QRS幅150ミリ秒以上)であり、洞調律の場合

Ⅱa ・NYHA 心機能分類 III/IV 度で、最適な薬物治療をしても、LVEF≦35%、左脚ブロック(QRS幅150ミリ秒以上)であり、洞調律の場合

・NYHA 心機能分類 III/IV 度で、最適な薬物治療をしても、LVEF<50%、ペースメーカあるいは ICDの適応であり、高頻度に心室ペーシングに依存することが予想される場合

・NYHA 心機能分類 III/IV 度で、最適な薬物治療をしても、 LVEF≦35%、左脚ブロック(QRS幅120ミリ秒以上)もしくは非左脚ブロック(QRS幅150ミリ秒以上)で、高頻度でペーシングが可能な心房細動がある場合

・NYHA心機能分類II度で、最適な薬物治療をしても、LVEF≦30%、非左脚ブロック(QRS幅150ミリ秒以上)であり、洞調律の場合

・NYHA心機能分類II度で、最適な薬物治療をしても、LVEF<50%、ペースメーカあるいは ICDの適応であり、高頻度に心室ペーシングに依存することが予想される場合

 

このようなガイドラインの適応分類を見ても、難しくて良くわからないという看護師さんが多いと思いますので、簡単にCRTの適応を説明します。

・心室の同期障害がある

・薬物治療をしても心不全の状態が改善しない

・QRS幅が120ミリ秒以上ある

・心臓のポンプ機能が悪く、LVEF(左室駆出率)が低下している

このような状態の患者には、CRTが適応となる場合が多いです。

 

3、CRTの患者への看護の4つのポイント

CRTの埋め込み手術をした患者への看護のポイントを4つ説明していきます。

 

■レスポンスやリード離脱の観察

CRTは重症心不全の有効な治療方法ですが、ガイドラインで適応になっている症例だったとしても、治療効果が表れず、心機能が改善しないこともあります。70%はCRTの埋め込み後に心機能の改善が見られますが、30%は治療効果が現れないとされています。2

CRTを埋め込み治療効果が出ていれば、術前よりもQRS幅は短縮されますので、看護師はCRTの術後は治療効果が出ているかどうか、心電図を観察していく必要があります。

また、リードが確実に固定されるまでには1~2ヶ月かかりますので、CRTの術後はリードの離脱や移動のリスクがあります。リードの離脱や移動が起こったかどうかも、心電図を観察していれば発見できます。

 

■術後合併症の予防

CRTの埋め込み手術では、次のような合併症が起こるリスクがあります。

・気胸

・血胸

・出血

・圧迫壊死

・感染

この中で最も注意しなければいけない合併症が感染です。CRTに限ったデータではありませんが、ペースメーカーの感染は施設によって異なるものの、0.7~6%3となっています。

もし、CRTの術後に感染が起これば、心内膜炎などを引き起こすリスクがあるため、リードを摘出し、場合によっては開心術を行わなければいけないこともあります。そのため、看護師は術後の感染に気を付けて、観察をしなければいけません。

創部の発赤や腫脹、熱感、疼痛の有無、発熱の有無、血液検査データなどを観察し、創部の清潔を保持して、感染の予防・早期発見に努める必要があります。

 

■横隔神経刺激の説明や観察

CRTでは左心室のリードは左心室内ではなく、左心室の表面を走行する冠状静脈に留置します。そのため、心臓に沿うようにして走行している横隔神経を刺激してしまうことがあります。横隔神経を刺激すると、横隔膜が収縮しますので、しゃっくりが起こります。この横隔神経刺激があまりにもひどい場合は、左室リードの植え替えを検討しなければいけません。

寝返りなど体位を変えた時に、この横隔神経刺激が起こることが多いですが、横隔神経刺激が突然起こると、患者は不安になりますので、看護師はあらかじめ横隔神経刺激を説明しておき、症状が出ているかどうかを観察する必要があります。

 

■退院指導

CRTの埋め込み手術をして1~2週間後には退院になることが多いです。看護師は患者が安全に退院後の日常生活を送ることができるように、しっかりと退院指導をしていかなくてはいけません。

・定期健診を受けること

・術後数ヶ月は患側の上肢を激しく動かさないこと

・リードやCRT本体に負担がかかるような激しいスポーツは避けること

さらに、CRT-Dの患者の場合はIH機器や磁気を発生させるものに近づかないなど、除細動機能が誤作動せずに日常生活を送ることができるように、退院移動をしていく必要があります。また、患者本人だけでなく、家族への指導も重要ですので、家族も一緒に退院指導をするようにしましょう。

 

まとめ

CRTの基礎知識や適応・ガイドライン、看護の4つのポイントをまとめました。

CRTは重症心不全の有効な治療方法で、患者さんのQOLを大きく向上させることができます。看護師は4つの看護のポイントを念頭に置きながら、患者だけでなく家族に対しても、看護をするようにしましょう。

 

参考文献

1) 日本心不全学会合同ガイドライン「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」(日本循環器学会|2018年6月更新)

2)CRTとは(大阪医科大学 外科学講座 胸部外科学教室)

3)ペースメーカー感染症例(Therapeutic Research vol.33 No.11|勝本慶一郎 石黒俊彦|2012年)

一次救命処置(BLS)とは?一次救命処置のガイドラインと4つの手順

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緊急事態に直面した時、皆さんは適切な対応ができるでしょうか?今回は、一時救命処置について説明します。いざというときの対応方法をしっかりと確認していきましょう。

 

1、一次救命処置(BLS)とは

一次救命処置(Basic Life Support:BLS)とは、心肺停止状態の傷病者に対し、救急隊が到着するまでの間に行う救命処置のことです。心肺蘇生(Cardio Pulmonary Resuscitation:CPR)や自動体外除細器(Automated External Defibrillator:AED)を用いた対応がこれにあたります。心臓が止まると、脳への酸素を供給することができなくなり、脳はダメージを受け始めます。その状態が続くと、脳は数分で回復が困難な状態に陥ってしまいます。一時救命処置は時間との勝負と言えるでしょう。

 

2、一次救命処置と予後

一時救命処置の有無が傷病者の予後にどのくらい影響を及ぼすかをみていきましょう。一次救命処置が行われた場合と行われなかった場合では、生存率や社会復帰率にどの程度違いがあるのでしょうか。以下の図をご覧ください。

 

救急・救助の現状

引用:平成29年版 救急・救助の現状 総務省消防庁

 

図を見てわかるように、心肺蘇生が行われた傷病者の1ヶ月生存率は16.4%と、行われなかった場合に比べ1.8倍です。社会復帰率は11.7%で2.4倍となっています。さらに、AEDを使用した場合の1ヶ月生存率は53.3%、社会復帰率は45.4%とさらに高くなっています。このことからも、一次救命処置が非常に重要であることがわかります。

 

3、一次救命処置のガイドライン

日本蘇生協議会(JRC)より、「JRC蘇生ガイドライン2015」オンライン版が公開され、2016年には最終版として差し替えられています。これは救急蘇生のためのガイドラインです。市民用に日本救急医療財団心肺蘇生法委員会監修の「救急蘇生法の指針2015」も公開されています。これらのガイドラインには成人や小児への一次救命処置の方法や、急性心筋梗塞や脳卒中などの疾患への基礎知識や緊急時の対処方法についても記載されています。

 

4、一次救命処置のABCDと手順

一次救命処置のABCDとは何かを知っていますか。AはAirway(気道確保)・BはBreathing(人工呼吸)・CはCiculation(心臓マッサージ)・DはDegiblillation(除細動)を指しています。この手順が一次救命の重要なポイントとなります。心肺停止から1分ごとに、救命率が7~10%下がると言われています。しかし、救急隊が到着するまでにはある程度の時間がかかります。その間の迅速な対応により、傷病者の命を救うことができるかもしれません。ここでは、一時救命処置の手順(ABCD)を学んでいきましょう。

 

■もし倒れている人を発見したら…

①反応(意識)の有無を確認します。

倒れている人の周りの環境が安全かどうかを確認し、傷病者の肩を軽くたたきます。大きな声で呼びかけ、反応がなければ、大声で周囲に助けを求めます。自分の周りに人が集まったら、救急通報(119 番通報)と近くにAED がある場合は、AEDを持ってきてもらうよう依頼します。傷病者の反応があるのか、ないのか迷った場合も119 番通報し、救急隊へ指示を仰ぎましょう。

 

②呼吸があるか、心臓が動いているかを確認します。

傷病者に反応がなく、呼吸がない場合や、判断に迷う場合は、心停止とみなし、ただちに胸骨圧迫(CPR)を開始します。呼吸の確認は10秒以内にとどめるようにします。心停止直後の傷病者ではしゃくりあげるような呼吸(死戦期呼吸)がみられることがあります。この呼吸を正常な呼吸と間違えて判断してしまう場合もあるため、判断に迷った場合は胸骨圧迫を開始しましょう。

 

③胸骨の圧迫を開始します。

傷病者を仰臥位に寝かせ、胸骨の下半分を圧迫します。1分間あたり100~120 回の速さで、胸が約5cm程度 沈むように圧迫します。圧迫が6cm を超えないように注意してください。(小児の場合は成人の1/3程度の圧迫になります。)複数の救助者がいる場合は、お互いにその方法が適切であることを確認し、実施者を換えてながら行います。人工呼吸行える俊樹と技術のある人は、30回胸骨の圧迫をした後、人工呼吸を2回行います。

 

④AED が到着したら、AEDを装着します。

電極パッドを右前胸部と左側胸部に貼付します。傷病者が小児の場合は、小児用パッドを

使用し、ない場合は成人用のパッドを使用しますが、成人には小児用パッドは使用してはいけません。AED が作動し始めたら、傷病者に触れないようにします。音声メッセージに従い、ショックボタンを押して電気ショックを行います。電気ショック後は直ちに胸骨圧迫を再開します。これらの動作を、救急隊が到着するまで繰り返し行います。

以下は、一次救命処置の手順を図で表したものです。

 

一次救命処置の手順

引用:一次救命処置の手順(日本赤十字社)

 

5、一次救命処置の注意点

一次救命処置を行うに当たり、まず注意しなければならないことは、処置を行う場所です。危険な場所での処置は、傷病者がさらなる危険にさらされるだけでなく、救助者も巻き込まれ、二次的な被害に巻き込まれてしまう可能性もあります。十分に周囲の安全を確保した上で、一次救命処置を開始しましょう。ただし、むやみに傷病者を動かすと状態が悪化する危険性もありますので、注意が必要です。また、救助者が成人か小児科によっても、CPRの方法や使用する物品(AEDのパッドなど)が異なる場合がありますので、いずれの場合でも対応できるよう確実な知識を身につけておく必要があります。前述のように、一次救命処置は時間との勝負です。いかに早く、いかに適切に処置を行うかが重要なポイントとなり、そのためには一次救命処置に対する、正しい知識と技術を身につけておく必要があります。

 

まとめ

一次救命処置の重要性は理解できたでしょうか。心肺蘇生の方法やAEDの使い方については、一般の方向けにも、各地方で講習が開催されています。みなさんは自信を持って、その技術を実践できるでしょうか?松村さんの事例のように、奇跡的に命を取り留める傷病者の方がいらっしゃる一方で、救命処置が間に合わなかった方、救命処置を行っても残念ながら命を落としてしまう方がいらっしゃるのが現状です。しかし、一次救命処置が正しく行われた場合、行われなかった場合に比べ、その命を助けられる確率が確実に上がります。一次救急処置を必要とする場面に遭遇することは、それほど多くないかもしれません。万が一、その場面に遭遇した時に、対応できる知識と技術を身につけておくことは非常に重要です。学んだ手順をしっかりと再確認し、いざというときに適切な対応ができるよう、繰り返し復習していきましょう。

 

参考文献

救急蘇生法の指針(市民用)(厚生労働省|2015年)

「JRC蘇生ガイドライン2016」オンライン版(日本蘇生協議会|2016年)


PVC(VPC)が出た時の対応は?焦らず5つのポイントを確認し、もしもに備えよう

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病棟でモニター管理をしていると、循環器の患者でなくてもアラームの鳴ることがあります。PACやPVCは全く珍しいものではありませんが、では、いざモニター上にPVCと表示されたら、何をどう判断して行動したらよいのでしょうか?PVCがどんな状態であるかがわかると、みるべきポイントと備えておくべきことがはっきりしてきますよ。

 

1、心室期外収縮(PVC・VPC) とは

期外収縮というと「たかが期外収縮」と思ってしまいがちですが、PAC(APC)とPVCではその危険度は全く異なります。PVC:premature ventricular contractionはVPCともいわれ、心室に異所性の興奮が起こることで、予定されるタイミングよりも早くに収縮が起こる状態です。異所性に興奮の起こる場所が、A(atrial=心房)かP(ventricular=心室)かに注目してください。もし異所性の興奮の起こっている場所が心室で、それが頻発したり連発する場合や心筋梗塞(AMI)など基礎疾患を有する場合には、「たかが期外収縮」とは言えず、命に関わることもあるのです。

 

PVCには単発かどうかによって危険度が異なり、それを重症度によって分類したものにLown(ラウン)分類というものがあります。

<心室期外収縮の重症度分類 >

Grade0:期外収縮なし

1:散発性(1 時間 30 個未満)

2:多発性(1 時間 30 個以上)

3:多形性(多源性)

4a:2 連発

4b:3 連発以上

5:RonT型

 

ここで大切なことは、この分類を覚えることではありません。大切なことは、頻発・連発しているかどうかです。逆に言うと、単発で出ているときの危険度はさほど高くありません。

なぜ頻発していることが危険になるのかというと、Grade5のRonT型を起こすと、そこから致死的不整脈である心室頻拍(VT)に移行するリスクが高くなるからです。RonT型とは、T波の終わりに期外収縮のR派が重なったもので、一つ前の興奮から短時間で興奮してしまう(連結期が短い)と、T波は心室の再分極相にあたり電気的に不安定なため、そこからVTに以降する危険性が高いことがわかっています。近年ではLown分類そのものの意義は薄れてきていますが、「規則性がなく連結期が短く頻発しているPVCは危険」という認識をもつことが重要です。

また、アメリカのミシガン州テクムゼーという地域に住む住民に1959年から行った調査研究によると、PVCの認められた群のほうが認められなかった群よりも将来的に冠動脈疾患の罹患率が高くなると報告されました。(冠動脈疾患のリスクファクタ―である高血圧・喫煙・コレステロール・耐糖能などの冠危険因子で調節した後も同様の結果であったと報告されています。)PVCはたかが期外収縮といっても、生命予後に関わる不整脈であるということがお分かりいただけたでしょうか。

 

2、心室期外収縮(PVC)の心電図

PVCは、「心室が異所性の興奮を起こした状態」ですが、これはどういうことでしょうか。本来は洞結節から始まった興奮が房室結節を経由してプルキンエ線維を流れ、最終的には扇が開くように心筋全体に興奮の広がるはずが、心室内のまったく別の場所を起源として勝手に興奮電動が始まってしまった状態です。これを心電図で表すと、下のような波形になります。

 

心室期外収縮

引用:日本臨床検査医学会

 

この波形を見ると一目瞭然ですが、PVCでは本来のQRS波形と全く異なり、幅広い形をしています。房室結節を通っていないためQRS波に先行するP波はなく、QRS波に続くT波は下向きのいびつな形をしています。PVCはその興奮の発生源によって形が異なりますので、複数の形が存在する場合にはそれだけ異所性興奮を起こしている場所が多いことを意味し、非常に不安定で危険な状態です。上の心電図ではPVCは単発ですが、もしこれが頻発した場合は3連発以上で心室頻拍(VT)が発生したことになり、特にRonT型ではVTへの移行リスクが高くなります。

 

心室頻拍

引用:日本臨床検査医学会

 

心室頻拍(VT)は一つ一つの波形が大きな山を形成していますが、これには非常に大きなエネルギーを使います。エネルギーが枯渇するにつれこの山は小さくなり、次第に心室細動(VF)となり、最後には完全にエネルギー切れの状態になって心静止(ASYS)となります。単体では怖くないPVCも、時と場合によっては命に関わる重症不整脈となりえるのです。

 

3、心室期外収縮(PVC)症状

心室期外収縮(PVC)に限らず、心房粗動(AFL)や発作性上室性期外収縮(PSVT)・発作性心房細動(Paf)などの不整脈においても、自覚症状は患者個々によって全く異なります。冷汗をかいて血圧が下がりショック状態を呈することもあれば、「なんかドキドキします」程度のことまであります。糖尿病患者では心筋梗塞を発症していても神経障害のために痛みに気づかない、もしくは「なんとなく胃が痛い」程度のこともありますので、自覚症状だけで重症度を判別するわけにはいきません。

看護師は胸部症状を訴える患者に対しては、まず十二誘導心電図を取りましょう。心電図は全くの無害でコストほとんどかからない検査にして、非常に大きな診療上の材料となりますので、循環器病等勤務者でなくともすぐにとれるようにしておきたいものです。近くに心電計がない場合でも、脈を自分で触知すればリズムが異なることに気が付くでしょう。

 

4、心室期外収縮(PVC)の看護

心室期外収縮(PVC)を起こした場合、無症状や単発のものであれば必ずしも治療は必要ありません。基礎疾患を有しない場合には生活習慣の改善を指導したり、動悸などの症状がある場合には抗不整脈薬の投与を行うこともあります。しかし、血圧低下など循環動態の変調をきたした場合や心筋梗塞などの急性期に伴う場合には、緊急対応を要します。

AHA(アメリカ循環器学会)では、重症不整脈のうち心室細動(VF)と心室頻拍(VT)を起こしている患者が意識なく脈拍の触知もできない場合には、すぐに効果的な胸骨圧迫からの心肺蘇生を開始し、除細動を行うようにガイドラインを作成しています。また、同じVTでももう少し状態がよく、血圧低下や冷や汗などの循環動態の変調はあるものの意識があって頸動脈が触知できる場合には、除細動よりもエネルギー量を少し抑えた(同期下)カルディオバージョンを行うべきと推奨しています。

看護師はモニターを装着中の患者にPVCが出現したら、冠動脈疾患を起こす可能性を常に頭の隅においておくことが大切です。そして、PVCはPVCでもQRS波形の種類や発生の頻度・連結期間などに注目し、どれくらいその患者のリスクが高いか予測しておくかどうかで、心室頻拍(VT)に移行した際の初動体制は変わります。

 

<モニターのアラームが鳴ったら・・・この5つを確認すべし!>

①アラームの理由は何か?(電極はずれ、ノイズ、不整脈など)

②期外収縮の場合、原因は心室性なのか上室性なのか?

③PVCの形は1種類か、それとも複数あるのか?

④PVCの間隔は近いか、比較的離れているのか?

⑤基礎疾患に何があるか? (特に生活習慣病の有無)

 

この5つを確認し、危険なPVCであると判断される場合には、自分の勤務帯で急変するかもしれないと気を引き締めましょう。危険性を認識していれば、頻回にモニターチェックと患者のもとを訪室することができます。更に「心室頻拍(VT)や心室細動(VF)を起こしたら、誰に何を報告してどう対応すべきか」と頭の中でシミュレーションしておくと、もしものときにすぐに行動に移すことができるでしょう。

 

まとめ

PVC一つをとっても、その患者の現病歴や現在の循環動態・意識レベル・自覚症状によって必要とする看護は異なります。看護師に求められることは、早期に異常へ気づいて心電図をとり、不整脈・冠動脈疾患の有無を確認することにあります。やるべきことがわかると、怖さも少し和らぐのではないでしょうか。

 

参考文献

診療群別臨床検査のガイドライン 2003(日本臨床検査医学会|2003年11月)

心室期外収縮による心機能評価と予後の予測(JPN. J. ELECTROCARDIOLOGY Vol. 33 No. 4|秋山俊雄|2014年)

病気がみえる vol.2 循環器(MEDIC MEDIA|2017年)

SSI(手術部位感染)の看護|ガイドラインや原因、2つの看護計画

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SSIとは手術部位に起こる感染のことで、手術全体の5.4%に起こっています。SSIは手術中の対策で低下させることができますが、術前・術後の病棟での看護でも発生率を下げ、予防することができます。SSIの基礎知識やガイドライン、原因、症状、看護計画をまとめました。術前・術後の看護をする時の参考にしてください。

 

1、手術部位感染(SSI)とは

手術部位感染(SSI=Surgical Site Infection)とは、術後30日以内に発生する手術操作が直接及ぶ部位に発生する感染症と定義されています。手術の切開創の感染だけでなく、腹腔内感染など臓器・体腔の感染も含まれます。手術が原因で起こる感染には、創部の感染(SSI)以外にも尿路感染や肺炎などがありますが、手術が間接的な原因であっても術野外で起こった感染症はSSIではなく、「遠隔臓器感染症」と定義されます。

SSIは感染部位によって3つに分けることができます。

・表層切開創SSI=皮膚、皮下組織

・深部切開創SSI=軟部組織、筋膜、筋

・臓器/体腔SSI=臓器/体腔

 

SSIの感染部位

出典:阪大病院感染制御部 感染管理マニュアル F.侵襲処置・医療器具関連感染防止対策 Ⅳ.手術部位感染予防策

 

厚生労働省の院内感染対策サーベイランス事業SSI部門JANIS2017年年報によると、2017年の全体のSSI発生率1は5.4%となっていますが、手術部位によって発生率は大きく異なります。

代表的な手術手技別のSSI発生率は以下のようになっています。1

手術手技 SSI発生率
BILI-PD(膵頭十二指腸切除) 24.9%
COLO(大腸手術) 11.2%
GAST-T(胃全摘) 11.5%
TAA(胸部大動脈手術) 3.5%
HPRO(人工股関節) 0.7%
THOR(胸部手術) 1.5%
VSHN(脳室シャント) 2.4%

消化器外科の手術は、脳外科や胸部外科、整形外科などの手術に比べると、創汚染のリスクが高いため、SSIの発生率が高くなります。

 

2、手術部位感染(SSI)のガイドライン

日本でのSSIの予防対策は、アメリカのCDC(Centers for Disease Control and Prevention=アメリカ疾病予防管理センター)の「手術部位感染の予防のためのガイドライン2017」に基づいて行われていることが多いです。CDCのSSI予防のガイドラインでは、エビデンスレベルに応じて、次の5つのカテゴリーに分類して、予防の勧告をしています。

ここではカテゴリーⅠAやⅠBの代表的な勧告をご紹介します。

・カテゴリーⅠA=高いエビデンスがある強い勧告

・カテゴリーⅠB=低いエビデンスや常識がある強い勧告

・カテゴリーⅠC=州や連邦規制によって必要とされる強い勧告

・カテゴリーⅡ=弱い勧告

・勧告なし/未解決問題=不確かなエビデンスがある未解決問題、又はエビデンスなし

 

■非経口の予防抗菌薬

・手術前の抗菌薬は臨床実践ガイドラインに基づいた適用の時のみに投与し、手術時に抗菌薬の濃度が確保されるタイミングで投与する。

・帝王切開前は予防抗菌薬を投与する。

・SSI予防のために、手術切開部に抗菌薬を塗布しない。

 

■血糖コントロール

・周手術期は200mg/dl未満に血糖値を管理する。

 

■正常体温

・周手術期は正常体温を維持する。

 

■酸素化

・挿管中の患者は術中と抜管後はFiO2を増加させる。酸素輸送を最適にするために、周手術期の正常体温と十分な体液補充を維持する。

 

■消毒薬予防

・手術前日には石鹸や消毒薬を用いたシャワー浴や入浴をさせる。

・アルコールによる皮膚消毒を行う(禁忌を除く)

このCDCのSSI予防ガイドラインのほかに、WHO(世界保健機関)も「手術部位感染予防のためのグローバルガイドライン,2016」を出しています。

 

3、手術部位感染(SSI)の原因

SSIの原因は、皮膚の常在菌など患者自身の内因性の細菌叢であることが多いですが、医療従事者や手術室の環境など外部からの細菌が原因となってSSIが発生することもあります。SSIの主な原因菌は次の通りです。2

・黄色ブドウ球菌(20%)

・コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(14%)

・腸球菌(12%)

・緑膿菌(8%)

そして、SSIが発生するリスクを上げる要因や危険因子には、次のようなものがあります

患者側の要因 医療側の要因
・年齢

・性別

・栄養状態

・喫煙

・肥満

・既にある感染巣

・保菌者

・糖尿病

・カミソリによる剃毛

・皮膚に対する不適切な処置

・手術室の換気不良

・手術手技(止血・組織損傷・死腔)

・不適切な抗菌薬の予防投与

・デバイスの挿入

・手術室の出入り

・ドレーンの留置

・不適切な滅菌

・手術時間

・再手術

・ステロイドの大量投与
・周手術期の特定の血液製剤の輸血

これらの要因によって原因菌が創部を汚染し増殖して、SSIを発生させるのです。

 

4、手術部位感染(SSI)の症状

SSIの主な初期症状は次のようなものになります。

・創部の発赤、腫脹、疼痛(表層切開創SSI)

・創部からの膿性排液(深部切開創SSI)

・ドレーンからの膿性排液(臓器/体腔SSI)

SSIの症状は、一般的な感染の症状と同じですので、これらの症状に加えて発熱も出てきます。初期症状を放っておくと、再手術をしなければいけないこともあります。さらに、全身感染に移行して、敗血症から敗血症性ショックを起こし、死に至ることもあります。だから、看護師はSSIを正しく理解し、術前から予防のための看護計画を立案して、看護ケアを行っていかなければいけないのです。

 

5、手術部位感染(SSI)の看護計画

SSIの看護計画は、術前の感染予防と術後の感染予防の2つがあります。看護問題を「感染リスク状態」として、予防するためのケアを行うために、感染予防のための看護計画を立案していく必要があります。

 

■術前の看護計画

術前は、SSIが発生するリスクをできるだけ低下させることを目標にして、看護計画を立案し、ケアをしていかなければいけません。

看護目標 手術に向けて、SSI発生リスクを排除することができる
OP(観察項目) ・バイタルサイン
・血液データ
・胸部レントゲン・喫煙歴の有無・既往歴
TP(ケア項目) ・前日に入浴、シャワー浴をしてもらう

・剃毛が必要なら電気クリッパーを用いる

・医師の指示に基づき血糖コントロールを行う

・術直前に抗菌薬投与の指示がある場合は、指示を守り確実に投与する

EP(教育項目) ・SSIについて説明する

・術前30日間は禁煙してもらうように指導する

術前にSSIを予防するために看護師ができることは、まずは皮膚の清潔の保持です。オペ前日にはシャワー浴、又は入浴してもらうようにします。もし、シャワー浴ができないのであれば、全身清拭をするようにしてください。

また、剃毛が必要であれば、電気クリッパー(サージカルクリッパー)を用いて剃毛をするようにしてください。剃刀を用いると、皮膚に小さな傷ができて、そこから感染を起こすリスクが高くなります。術前の抗菌薬の投与は、オペ室で麻酔導入直後に行われることが多いですが、病棟で投与する指示が出ることもあります。その場合は、投与時間を守り、確実に投与するようにしてください。

最後は、禁煙についてです。喫煙者は創部の治癒が遅延することがわかっていますので、手術の30日前からは禁煙してもらうように、家族を巻き込んで禁煙指導をするようにしましょう。

 

■術後の看護計画

オペ後は、全身管理をしながらも、SSI予防のためのケアを行っていかなくてはいけません。

看護目標 SSIを発生させない
OP(観察項目) ・バイタルサイン
・血液データ(WBC、CRP)
・胸部レントゲン・創部の状態(腫脹、発赤、疼痛)・ドレーンからの排液量、性状
TP(ケア項目) ・医師の指示に基づく抗菌薬の投与

・血糖値の測定と管理

・創部処置は清潔操作を徹底する

・ドレーンは排液が停滞しないように屈曲や固定位置などに気を付ける

・ドレーンパックが床につかないように固定する

・手指衛生を徹底する

EP(教育項目) ・創部に痛みや異常を感じたら報告するように指導する

・創部の清潔保持の重要性を説明する

・ドレーンにはできるだけ触れないように指導する

オペ後は創部の清潔保持とドレーン管理が、予防のキーポイントになります。創部処置をする時には、創部を観察しながら、清潔を保持しなければいけません。

また、ドレーンが屈曲するなど排液が妨げられると、排液が創部に戻り、感染を起こす原因となりますので、スムーズに排液できるように、ドレーン管理には注意してください。

また、ドレーンバックが床につくと、逆行性感染を起こすリスクがありますので、床につかないようにベッド柵などにしっかり固定しておくようにしましょう。

 

まとめ

手術部位感染(SSI)の基礎知識とガイドライン、原因、症状、看護計画をまとめましたが、いかがでしたか?SSIはすべてを予防することはできませんが、術前・術後の看護師のケアによって、リスクを低下させることは可能です。術前・術後の感染予防のための看護計画を立案して、しっかり予防するようにしましょう。

 

参考文献

1)院内感染対策サーベイランス事業SSI部門JANIS2017年年報(厚生労働省)

2)北大病院感染対策マニュアル 3-4(手術部位感染予防策|2016年)

腎機能評価の基本である、クレアチニン(Cr)が低い患者へ求められる5つの看護

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腎機能は臨床現場の様々な場面で必要となります。そして腎機能の評価として最初に上がるものといえば、クレアチニン・BUNあたりではないでしょうか。クレアチニンとBUNは基本となる生化学の採血項目に必ず含まれています。今回は、この基本となるクレアチニンを重点的に学んでいきましょう。

 

1、クレアチニン(Cr) とは

腎機能は看護師が臨床現場でよく目にする検査です。腎機能が低下して腎不全に陥れば数日と命はもちませんし、造影CTをするにしても腎機能が低ければできません。たかが熱中症も、重症になると腎機能が悪化して人工透析が必要になります。では、腎機能を評価するための検査にはどんなものがあるでしょうか。

 

<腎機能の指標となる検査は?>

・Cr(クレアチニン)

・BUN(尿素窒素)

・eGFR(推算糸球体濾過量)

・BUN/Cr比

・Ccr(クレアチニンクリアランス)

・シスタチンC

・Na(ナトリウム)

・K(カリウム)

 

腎機能を評価するものにも、いろいろな項目がありますね。最近よく使われるようになったe-GFRはクレアチニンあってこその指標ですし、シスタチンCは腎機能が悪いことがわかってから初めてオーダーする項目です。(やたらと調べても保険適応がありませんし、検査にも時間がかかります。)それに対し、Crはこれだけで腎臓の状態を良い・悪いを判断することができるため、ぜひ覚えておきたい検査です。

 

簡単に腎機能を知ることのできるCrですが、そもそもCrとはどんなものを調べた値なのでしょうか。クレアチニン(Cr)は、教科書的には「筋肉の収縮に必要なクレアチンの最終代謝産物」と言われています。しかし、なぜ筋肉の代謝産物で腎機能がわかるのでしょうか?

 

<Crの体内動態>

①肝臓で生成されたクレアチンが、筋細胞に取り込まれる。

②その中の一部が最終代謝産物であるCrとなる。

③血液を介して腎臓に送られる。

④糸球体で濾過され、尿となる。

⑤尿と一緒に対外へ排泄される。

 

Crは腎臓の糸球体で濾過された後には、尿細管で再吸収されない上、分泌量もごくわずかです。つまり、「血中にあるCr=腎臓(糸球体)で濾過されずに血液循環に戻ってしまったもの」となります。よって腎機能が悪い=糸球体濾過率が悪い=血清クレアチニンが上昇するという図式ができるわけです。Crがどのように産生されて身体の中を流れているのかがわかると、腎機能の評価をするにふさわしい検査項目であることがおわかりいただけるでしょう。

 

2、クレアチニン(Cr) 基準値

Crは筋肉の最終代謝産物で腎機能を評価する項目ですから、必然的に筋肉量の違う男性と女性では、基準値が異なります。一般的に男性の方が女性よりも筋肉量が多いので、女性よりも正常とされるCrの値も高めになっています。

<Crの基準値>

男性:0.61~1.04mg/dl

女性:0.47~0.79mg/dl

細かい数値は施設基準に多少の違いがありますが、おおよそ「Crは1.0以内が基準値」と覚えておくとよいでしょう。

 

3、クレアチニン(Cr) 異常と原因

筋肉の量が多くなれば、腎機能が正常であっても代謝産物であるCrは当然高くなります。ですから、筋肉量の違いによって下のように影響を受けることがわかっています。

性別による影響 →男性>女性
年齢による影響 →成人(青年)>小児・高齢者

 

そしてこれらを考慮すると、異常値とその原因は以下のようになります。注意しなくてはならないことは、Crが異常値を示す原因としては腎機能低下と筋肉量によるものだけではなく、血液疾患や肝疾患も関与することです。

〇Crが上昇している場合

・腎臓でのCr排泄低下  →腎機能低下

・筋肉量が多い      →スポーツ選手、末端肥大症

・赤血球内のCr遊出     →溶結性疾患(血栓性血小板減少性紫斑病etc.)

〇Crが低下している場合

・腎臓でのCr排出上昇   →尿量増加(尿崩症など)

・筋肉量の著しく少ない  →高齢者、長期臥床、神経筋疾患(筋ジストロフィーetc.)

・クレアチン生成低下   →肝障害

 

4、クレアチニン(Cr) 看護

近年、生活習慣病の増加に伴い、人工透析を未然に防ぐためにCKD(慢性腎臓病)を健康診断でいち早く見つけようとする動きが出ています。CKDには糖尿病を始めとした生活習慣病だけではなく、ネフローゼ症候群など病状がかなり進行して浮腫が顕著になるまで自覚症状のない病気を早くに発見して適切な治療を受けることで、透析に至ることなく現在の腎機能を維持させることが目標です。

看護師は、まずCrの異常が出た患者に対してなぜ起こっているかを考える必要があります。糖尿病なのか、それともネフローゼなのか、高度な脱水(熱中症)なのか・・・などなど、目の前の患者さんの病態生理を考えなくてはなりません。Crの値を受けてどのような治療をしていくか、問題が腎臓にあるのか腎臓以外にあるのか、より詳しい検査(Ccrや腎生検など)を行うのかによって、必要な検査の介助や入院の予定を組むことになります。状態によっては透析導入を視野に入れたシャント増設術を行うかもしれません。

 

<Crの低い患者に対して求められる看護とは?>

・腎機能低下の原因検索、必要な検査の施行(Ccr、蛋白尿検査、腎生検、)

・腎機能が悪化するとどうなるのか、患者に病態を説明する。

・腎機能を悪化させる要因にアプローチする(栄養指導、糖尿病治療)

・医師の指示により、水分制限の設定と説明を行う。

・医師の指示により安静が必要とされる場合(腎血流量を増加させるため)、指導を行う。

まずは正しい検査を行うことで、一過性の問題(脱水など)なのか、進行していくのか、その原因はどこにあるのかを調べることが重要です。看護師は突然腎臓に問題があると言われた患者に対して、十分な病態や今後の生活についての説明が求められます。

 

5、クレアチニンクリアランス(Ccr)

Crというと、一般的には腎臓の糸球体で濾過されず、血液中に戻ってきてしまった血清に含まれるCrを意味します。しかし、Crの弱点である筋肉量による誤差を失くしてもう少し腎機能を細かく調べることができる方法があります。それが、クレアチニンクリアランス(Ccr)です。

最近ではCrや身長・体重などからCcrを推算することができる便利なツールもありますが、Ccrは筋細胞に取り込まれたクレアチンの産生量による検査結果への影響を減らすため、採血と検尿を併用して行うのが一般的です。

 

<Ccrの検査手順>

①検査の開始前に排尿し、それまでに膀胱内に溜まっていた尿を出し切る。

(この分はカウントしない)

②畜尿を開始(24時間蓄尿)する。

③畜尿中(一般的には翌日早朝、空腹時)に採血を行う。

③24時間後、尿意がなくても排尿を促す。(この分はカウントする)

④畜尿量を測定し、記録する。

⑤畜尿瓶に溜まった検体を混ぜて内容を均一にし、一部を採取してスピッツへ入れる。

⑥尿量・採血・検尿(スピッツに採取したもの)をそろえて検査部門へ提出する。

⑦以下の計算式に基づいて、Ccrを求める。

計算式:尿中CRE(mg/dl)×蓄尿量(ml/min)/血清CRE(mg/dl) ]×[ 1.73/体表面積(m2)

 

ただし、24時間畜尿はときには入院を要したりと患者の負担が大きいため、簡便に2時間尿で検査を行ったり、近年はCKD(慢性腎臓病)の初期評価としてはCrの値と年齢からeGFRを計算して求める方法が主流になってはいますが、本当に腎機能の低い人の評価としては24時間畜尿と採血を合わせて行う従来のCcrが優れています。

 

まとめ

CKD(慢性腎臓病)という概念が生まれてから、CrやCrから計算するeGFR(推算糸球体濾過量)が注目されるようになりました。看護師はただCrの結果を確認するだけではなく、Crの仕組みを理解した上でその結果が何を意味するのか病態生理を考え、患者の腎機能を守るための治療・サポートという役割を担っています。

 

参考文献

Ccr(クレアチニンクリアランス) (中国労災病院中央検査部生化学検査)

eGFR・Ccrの計算(日本腎臓病薬物療法学会)

病気がみえる vol.8 腎・泌尿器(MEDIC MEDIA|2014年9月)

ICDとは?ICD適応の5つの疾患とICD埋め込み術

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近年、食生活の欧米化に伴い狭心症などの虚血性心疾患は増加しています。虚血性心疾患は突然死の原因にもなりうる可能性が高く、心臓が原因とされる突然死としては、急性心筋梗塞、狭心症、心筋症、心不全、不整脈、弁膜症などが挙げられます。突然死は発症してから死亡まで24時間以内と定義され、年間5万人以上の方が死亡しており、その原因の6割以上を心臓突然死が占めています。突然死と不整脈には深い関わりがあり、不整脈をコントロールするためにしばしばICDが用いられます。ここでは、ICDについて詳しく説明していきます。

 

1、ICDとは

ICD(Implantable Cardioverter Defibrillator)とは、植込み型除細動器のことを言います。致死性の不整脈(心室頻拍や心室細動)などの治療を行う体内植込み型の装置で、心臓の脈を監視し、不整脈の発作が出た場合に、電気ショックを発生させてその不整脈を抑える働きをします。不整脈そのものを治療する装置ではありませんが、発作による突然死を防ぐ目的で用いられます。ICD本体には、心臓のリズムが正常かどうかを監視するための非常に精密なコンピュータが内蔵されていて、さまざまな不整脈に対応できる治療プログラムが設定されています。異常を感知した場合には、どのタイプの不整脈かを即時に診断し、そのプログラムに沿った治療が行われます。ICDの普及により、以前は救うことの難しかった命を、90%以上の高い確率で救うことが出来るようになったと言われています。

 

2、ICDとペースメーカーの違い

ICDは本体と接続した細い電線(リード線)で構成されていて、患者の不整脈の状態によりリード線が1本のものと、2本のものが使い分けられています。見た目はペースメーカーとよく似ていていますが、その働きと使用の目的が異なります。ICDはリード線の先を心臓に取り付け、本体とリードを接続することで心臓の動きを監視していて、命に関わるような不整脈の発作が起きた場合に、本体から電気的な刺激を心臓に伝え治療を行うしくみになっています。ペースメーカーは除脈の治療に用いられ、徐脈が起きた際に心臓の動きに合わせて、電気的な刺激を流すことで必要な心拍数を維持する働きを持っています。また、ICDはペースメーカーと同じ徐脈に対する治療機能も持ち合わせています。ICD本体は約70g程度で折り畳み式の携帯電話ほどの大きさですが、ペースメーカーと比べると大きくなります。ICDには電池の寿命があり、作動状況によもよりますが大体4~5年ぐらい、寿命が来た場合は交換が必要となります。

 

3、ICDの適応条件

ICDの適応条件について、ACC/AHA ガイドラインに基づき以下のように表記しています。

・クラスⅠ:有益であるという根拠があって、適応であることが一般に同意されている

・クラスⅡa:有益であるという意見が多いもの

・クラスⅡb:有益であるという意見が少ないもの

・クラスⅢ:有益でないまたは有害であり、適応でないことで意見が一致している

 

■心室細動

≪クラスⅠ≫

①臨床的に心室細動が確認されている患者

②器質的な心臓疾患に伴う持続性の心室頻拍があって、かつ以下の条件を満たす患者

・失神を伴う場合

・血圧が80 mmHg 以下、または脳虚血症状や胸痛の訴えがある場合

・多形性の心室頻拍

・血行動態が安定している単形性心室頻拍の患者で、薬物治療で効果がない場合や、副作用により使用できない場合、薬効評価ができない場合、カテーテルアブレーションが無効な場合

≪クラスⅡa≫

①カテーテルアブレーションにより持続性心室頻拍が誘発されなくなった場合

②薬効評価で有効な薬剤が見つかっている場合

≪クラスⅢ≫

①急性虚血,電解質異常,薬剤などが原因となる頻拍で、その原因を除去すれば、心室頻拍・心室細動の再発を抑制することができる場合

②抗不整脈薬やカテーテルアブレーションではコントロール不良で、頻回に心室頻拍または心室細動繰り返す場合

③根治可能な原因に起因する心室細動または心室頻拍(WPW 症候群に関連した心房性不整脈や特発性持続性心室頻拍など)

④余命6 ヶ月未満の場合

⑤精神障害などがあり治療法に対し患者の同意や協力が得られない場合

⑥NYHA クラスⅣの心移植の適応とならない薬剤抵抗性の重度うっ血性心不全患者

 

■非持続性心室頻拍

≪クラスⅠ≫

①冠動脈疾患、拡張型心筋症に伴う非持続性心室頻拍があり、左室機能低下(左室駆出率≦35 %)があり、さらに電気生理検査によって持続性心室頻拍または心室細動が誘発され、かつそれらが抗不整脈薬によって抑制されない場合

≪クラスⅡa≫

①冠動脈疾患,拡張型心筋症に伴う非持続性心室頻拍があり、左室機能低下(左室駆出率≦35 %)を有し、さらに電気生理検査によって持続性心室頻拍または心室細動が誘発される場合

③肥大型心筋症に伴う非持続性心室頻拍があり、突然死の家族歴を有し,かつ電気生理検査によって持続性心室頻拍または心室細動が誘発される場合

≪クラスⅡb≫

・該当なし

≪クラスⅢ≫

 

■器質的心疾患を伴わない非持続性心室頻拍

≪クラスⅠ≫

・該当なし

≪クラスⅡa≫

①慢性心不全(冠動脈疾患または拡張型心筋症に基づくもの)で、十分な薬物治療を行ってもNYHA クラスⅡまたはクラスⅢの心不全症状を有し、左室駆出率が35 % 以下の場合

≪クラスⅡb≫

①発症から1ヶ月以上または冠動脈血行再建術から3ヶ月以上経過した左室駆出率が30 % 以下の心筋梗塞

≪クラスⅠ≫

①器質的心疾患に伴う原因不明の失神があり、電気生理検査によって血行動態の破綻する持続性心室頻拍または心室細動が誘発され、薬物治療が無効または使用できない場合

≪クラスⅡa≫

①心機能低下を伴う器質的心疾患および原因不明の失神があり、電気生理検査により血行動態の安定した持続性心室頻拍が誘発される場合で、薬物療法またはカテーテルアブレーションが無効または不可能な場合

②心機能低下を伴う器質的心疾患と原因不明の失神があり、電気生理検査により血行動態の破綻する持続性心室頻拍または心室細動が誘発され、薬効評価がなされていないか不可能な場合

≪クラスⅡb≫

①拡張型心筋症,肥大型心筋症に伴う原因不明の失神があるが、電気生理検査により血行動態的に破綻する持続性心室頻拍または心室細動が誘発されない場合

≪クラスⅢ≫

①原因不明の失神で、電気生理検査により持続性心室頻拍または心室細動が誘発されない場合

 

■Brugada 症候群

≪クラスⅠ≫

①心停止蘇生例

②自然停止する心室細動または多形性心室頻拍が確認されている場合

≪クラスⅡa≫

①Brugada 型(coved 型ST上昇)心電図所見を示し、失神の既往または突然死の家族歴があり、電気生理検査によって多形性心室頻拍あるいは心室細動が誘発される場合

≪クラスⅡb≫

①Brugada 型(coved 型ST 上昇)心電図所見を示し、失神の既往または突然死の家族歴があり、電気生理検査によって多形性心室頻拍あるいは心室細動が誘発されない場合

≪クラスⅢ≫

①Brugada 型(saddle-back 型ST 上昇)心電図所見を示すが、心室細動・失神の既往及び突然死の家族歴がなく、電気生理検査によって心室頻拍あるいは心室細動が誘発されない場合

 

■先天性QT 延長症候群

≪クラスⅠ≫

①心停止蘇生例,または心室細動が臨床的に確認されている場合

≪クラスⅡa≫

①β遮断薬などの治療法が無効な再発性の失神があり、かつtorsades de pointes が確認されるか,または突然死の家族歴がある場合

≪クラスⅡb≫

①β遮断薬などの治療法が無効な再発性の失神がある場合

 

4、ICD埋め込み術

手術は全身麻酔下または局所麻酔下で行われます。通常、左胸部に植込まれ、手術の時間はだいたい2~4時間ほどです。まず胸部を数センチ切開してICD本体を留置するポケットを作ります。その後、鎖骨下を通っている静脈を通じて、右心室内にリードを留置します。リードを留置したのち、ICDが働く事を確認するため心室細動を起こし、確実に頻脈を停止できる事を確認します。手術中の合併症として、心不全やポンプ失調、血胸や気胸、血栓症や塞栓症、電極による穿孔などが挙げられます。

 

まとめ

ICDは突然死を防ぐための1つの手段として用いられます。しかし、ICDを使用する場合には、さまざまな適応条件があり、また、手術が必要となるため、侵襲的な処置が必要となります。そのため必然的に合併症のリスクが高まり、その看護にあたっては、リスクを予測した観察・看護が必要となります。現場での看護に生かすことができるようICDへの理解を深め、適切な看護が提供できるよう準備をしっかりとしていくことが重要です。

 

≪参考文献≫

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010年度合同研究班報告)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)(一般社団法人日本循環器学会|2011年)

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PSVT(発作性上室頻拍)の看護|波形や原因、治療、看護の5ポイント

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PSVTとは発作性上室頻拍のことで、140~250回/分の頻脈が突然起こる不整脈です。薬剤を使わず、迷走神経刺激だけで発作を止めることができるケースもありますので、看護師は適切な対応ができるようにしておく必要があります。PSVTの基礎知識や心電図波形、原因、治療、看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。

 

1、PSVT(発作性上室頻拍)とは

PSVT(paroxysmal supraventricular tachycardia=発作性上室頻拍)とは、心房が関与している不整脈の一種で、突然140~250回/分の頻脈が起こることが特徴です。PSVTは心房が関係して起こる頻脈を表す病名であって、1つの不整脈を指し示すわけではありませんので、次のような不整脈に細かく分類することができます。

・房室結節回帰性頻拍(AVNRT)

・房室回帰性頻拍(AVRT)

・心房頻拍(AT)

この中でAVNRTとAVRTの2つが90%以上を占めます。

 

発作性上室性頻拍

出典:発作性上室性頻拍・心室頻拍(慶應義塾大学病院 KOMPAS|2017年2月)

 

PSVTの発作が起こると、「今始まった」と患者本人がわかるほど、明確な自覚症状が現れます。

・動悸

・不快感

・胸痛

・めまいやふらつき

・脱力感

・血圧低下

・失神

PSVTの発作は数分~数時間で自然に停まりますが、治療をせずに放っておくと、発作の頻度は増加し、発作の継続時間は長くなると言われています。1

 

2、PSVTの波形

心電図と聞くだけで、拒否反応を示す看護師は多いですが、PSVTの波形は不整脈の中では比較的判別しやすいので大丈夫です。

 

PSVTの波形

出典:発作性上室頻拍(PSVT)(医療法人社団回心会・青秀会)

 

PSVTの波形の基本的な特徴は、次の3つです。

1.脈拍は140回/分以上

2.QRS波は幅が狭い

3.RR間隔は規則的

要はサイナスリズム(sinus rhythm)と同じような波形だけど、頻脈になっているのがPSVTの波形ということになります。

ただ、AVNRTとAVRTでは、特徴が少しだけ違います。

・AVNRTの波形の特徴 →P波はQRS波に埋もれていることが多い
・AVRTの波形の特徴 →QRS波の後に逆行性P波が見える

ここまで来ると、少し難しくなるので、心電図が苦手な看護師は「脈拍は140回/分以上」、「QRS波は幅が狭い」、「RR間隔は規則的」という3つを押さえておけばOKです。心電図に自信が持てるようになったら、P波の違いに着目すると良いと思います。

 

3、PSVTの原因

PSVTの原因は、心臓の電気回路の異常です。通常の心臓は、洞結節で電気信号が発生し、刺激伝導系を通って、心臓の中心部にある房室結節に伝わり、そこからヒス束、プルキンエ線維を通って心室に伝えられます。

でも、PSVTはこの電気回路の中に、異常な回路が生じてしまい、そこを電気信号がグルグル回る(リエントリー)ことで、頻脈が起こります。

 

PSVTの原因

出典:発作性上室性頻拍(一般社団法人日本不整脈心電学会)

 

AVNRTは房室結節付近にリエントリー性の異常回路が生じることで起こります。AVRTは、心房から心室に向かう経路の中に副伝導路と呼ばれるリエントリー性の回路が生じることが原因です。AVRTはWPW症候群が原因で副伝導路が生じるケースが多いですね。

心臓に電気回路の異常が生じる原因は、WPW症候群以外にリウマチ性心疾患などがありますが、健康な人もPSVTが起こることがあります。心疾患がないのにもかかわらずPSVTが起こる場合は、甲状腺機能亢進症やアルコール、喫煙、カフェインの過剰摂取、麻薬による薬物中毒などが原因となることがあります。

 

4、PSVTの治療

■発作時の治療

PSVTの発作が出ている時には、まずは迷走神経刺激を行います。迷走神経を刺激することで、房室伝導が抑制されますので、サイナスリズムに戻すことができます。

<迷走神経刺激の方法>

・息を止める方法

・顔に冷たい水をかける方法

迷走神経刺激をしても、発作が止まらない場合は、薬物治療を行い、それでも停止しない場合は、電気ショックを用いることもあります。

 

■根本的な治療

発作が繰り返し起こる患者には、頓服薬の処方や予防のための薬物療法を行います。ただ、発作により患者のQOLが大きく低下する場合は、カテーテルアブレーションを行います。カテーテルアブレーションの治療効果は非常に高く、約95%で治療効果がみられます。2

 

5、PSVTの看護のポイント

PSVTの患者の看護のポイントを押さえておきましょう。

①迷走神経刺激を行う

PSVTの発作を起こしている患者がいたら、まずは迷走神経刺激を行いましょう。

一番簡単な方法は、息を止めてもらうことですね。息を止めることで、胸腔内圧を上昇させることができるので、迷走神経を刺激することができます。迷走神経刺激の方法には、頸動脈洞の圧迫や眼球圧迫もありますが、これは脳梗塞や網膜剥離のリスクがあるので、看護師はやってはいけません。

 

②バイタルサインの確認

PSVTでは血圧が低下して失神を起こすこともありますので、バイタルサインを測定してください。また、12誘導を取ることや自覚症状の確認も重要になります。

 

③不安の除去

PSVTの発作を起こした患者は、突然頻脈になり、動悸などの自覚症状があることで、「このまま死ぬのかもしれない」、「何か深刻な病気なのだろうか?」と大きな不安を抱えます。看護師は患者に対して、治療方法を丁寧に説明し、不安を傾聴するなど、不安を除去するためのケアを行っていかなければいけません。

 

④迷走神経刺激の方法の指導

PSVTの発作で来院し、発作が落ち着いた患者には、迷走神経刺激の方法を指導しましょう。PSVTはまた発作が起こる可能性があります。その時に慌てず落ち着いて対処できるように、看護師が正しい迷走神経刺激の方法を指導しなければいけません。

指導すべき迷走神経刺激の方法は、息を止める方法と冷水を顔にかける方法の2つです。念のため、頸動脈洞圧迫や眼球圧迫は危険であるため、絶対にやってはいけないことも指導しておきましょう。患者本人が胸痛や不安でパニックになったために、自分では迷走神経刺激をうまく行えないこともあります。その時は、家族が代わりに行えるように、患者本人だけでなく家族も一緒に指導しておくと安心です。

 

⑤発作のリスクを減らすための指導

発作のリスクを減らすための生活習慣の指導も行いましょう。

PSVTは喫煙やカフェインの過剰摂取、アルコール、ストレス、過度の運動などが引き金になることもあります。そのため、看護師は原因となる生活習慣を説明するし、改善するように指導しなければいけません。

禁煙や節酒を指導するほか、カフェインを含む飲み物を伝えて、カフェインの摂取は控えめにすること、ストレスは溜め込まないようにすること、医師に指示された範囲での運動を守ることを指導して下さい。これについても、本人だけでなく、家族も一緒に指導することが大切です。

 

⑥カテーテルアブレーションの説明

PSVTの根本的な治療方法は、カテーテルアブレーションになります。PSVTが原因でQOLが大きく低下している患者には、非常に有効な治療方法です。ただ、発生率は1%以下と高くないものの、脳梗塞や心穿孔、感染などの合併症のリスクは伴います。

また、心臓にカテーテルを到達させて治療することに恐怖を感じて、治療を拒否する患者もいます最終的に判断するのは患者本人ですが、看護師はカテーテルアブレーションの有効性や合併症のリスクをきちんと説明して、必要な情報提供をし、患者と家族が納得した上で治療を受けられるように、支援していく必要があります。看護師が丁寧に説明するのはもちろんですが、必要があれば、何度でも医師に説明してもらえるように、インフォームドコンセントの場をセッティングするようにしましょう。

 

まとめ

PSVTの基礎知識と心電図波形、原因、治療、看護のポイントをまとめました。PSVTは循環器内科や救急外来ではよく遭遇する不整脈です。ただ、それ以外の診療科でも患者が発作を起こすことはあります。看護師はPSVTを正しく理解し、迷走神経刺激を行えるなど、適切な看護ができるようにしておきましょう。

 

参考文献

1) 循環器最新情報(公益財団法人 日本心臓財団)

2)発作性上室性頻拍(一般社団法人日本不整脈心電学会|奥山裕司)

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人工股関節置換術(THA)の看護|合併症や5つの術後看護計画

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人工股関節置換術(THA)とは、変形した股関節の代わりに人工股関節を挿入する手術のことです。疼痛で歩けなかった患者は、この手術を受けることで、疼痛から解放され、さらに歩行可能になります。人工股関節置換術の基礎知識や合併症、術後の看護計画、禁忌肢位をまとめました。実際の看護の参考にしてください。

 

1、人工股関節置換術(THA)とは

人工股関節置換術(THA=Total Hip Arthroplasty)とは、変形した股関節を切除して人工の股関節に置き換える手術のことです。

 

人工股関節置換術

出典:人工股関節置換術-整形外科-(大阪府済生会中津病院)

 

関節リウマチや変形性股関節症、骨折、大腿骨頭壊死などの疾患で、股関節が変形すると痛みが生じます。股関節痛が強くなると歩行が困難になり患者のQOLは大きく低下します。人工股関節置換術で変形した骨を切除し、金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換えることで、股関節の疼痛から解放され、さらに安定した歩行が可能になりますので、患者のQOLを向上させることができます。

人工股関節は長年使っていると摩耗してきます。患者さんの状態にもよりますが、10~20年で人工股関節の入れ替え(再置換術)が必要になります。

 

2、人工股関節置換術(THA)の合併症

人工股関節は股関節の疼痛で歩けない患者を歩けるようにできる治療方法です。ただ、100%安全な手術であるとは言えません。人工股関節置換術には、次のような合併症があります。

 

■脱臼

人工股関節置換術の合併症の中では、脱臼が一番怖いとされています。術後3ヶ月程度経てば、軟部組織や筋肉が安定しますので、脱臼のリスクは低くなりますが、術直後~術後3ヶ月までは、脱臼のリスクが高いので、ベッド上での体位・離床時などには注意が必要です。もちろん術後3ヶ月以降も脱臼するリスクはありますので、日常生活内でも脱臼には気を付けなければいけません。

 

■感染

THAでは人工物を体内に入れるのでどうしても感染のリスクは高くなります。術後の創部感染はもちろんですが、手術創が落ち着き日常生活に戻った後も虫歯やその他の感染症を発症した時に人工股関節部位に感染が起こり、人工関節を取り除かなければいけないこともあります。

 

■深部静脈血栓

THAの手術中は脚を動かしませんので深部静脈血栓が作られ肺塞栓症を発症するリスクがあります。

 

■人工股関節のゆるみや破損

人工股関節は金属やポリエチレン製で、組み立て式になっています。

 

THA

出典:人工股関節置換術(THA)(医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院・船橋整形外科クリニック)

 

そのため、摩耗したりゆるみが出たりします。耐久性が高い素材を使っていますが、10~20年で再置換が必要です。また、股関節に強い衝撃が加わると、股関節が破損してしまうこともあります。このほか、骨セメントを圧入したことによる血圧低下や術中の骨折、術中の血管や神経の損傷などがTHAの合併症となります。

 

3、人工股関節置換術(THA)の術後の看護

人工股関節置換術の術後は、次のような流れで看護をしていくことになります。

1.オペ後の全身観察

2.脱臼のリスクや安全性に配慮しながら、離床を進める

3.リハビリの看護

このような流れで看護を進めていく中で、立案すべき具体的な看護計画を紹介していきます。

 

3-1、人工股関節置換術(THA)の看護計画

人工股関節置換術の術後の看護計画は、次の5つがあります。

①急性疼痛

当然のことですが術後は創部の痛みが生じます。創部の痛みは、食事や睡眠の妨げになりますし、疼痛自体がストレスになります。また、術後の離床の妨げにもなりますので看護師は急性疼痛を看護問題として挙げて、疼痛コントロールのための看護計画を立案する必要があります。

看護目標 ・疼痛コントロールができ、良眠できる
・疼痛が離床の妨げにならない
OP(観察項目) ・バイタルサイン
・疼痛部位
・創部の状態(発赤、腫脹、出血の有無)・疼痛の程度(ペインスケール)
・睡眠の状態・食欲、食事量・痛みの訴え、表情
TP(ケア項目) ・冷罨法
・医師の指示による鎮痛薬の投与・安楽な体位の工夫(禁忌肢位に注意)・気分転換を促す・不安の傾聴
EP(教育項目) ・痛みは我慢する必要はないことを伝える

・レスキュー薬が使えることを伝える

 

②感染リスク状態

THAのオペ後は感染に注意する必要があります。創部の感染はもちろんですが、挿入した人工股関節が感染を起こすリスクもあります。さらに、オペ後はバルンカテーテルが挿入されていますので尿路感染を予防するためのケアを行わなければいけません。

人工股関節の感染が起これば再手術して洗浄、もしくは再置換術を行わなければいけませんので、看護師は術後の感染を予防するためのケアを行っていきましょう。

看護目標 感染が起こらない
OP(観察項目) ・創部の状態(発赤・腫脹・疼痛)

・血液検査データ(WBC、CRP)

・バイタルサイン

・尿検査のデータ

・尿の性状(混濁の有無、浮遊物の有無)

TP(ケア項目) ・指示された抗生剤の確実な投与

・創部の清潔操作を徹底する

・手洗を徹底する

・陰部洗浄は1日1回行う

・指示が出たら速やかにバルンカテーテルを抜去する

・バルンカテーテルの尿バックは床につかず逆流しない場所に固定する

EP(教育項目) ・創部に触れないように指導する

・創部に腫脹など違和感が出てきたら、すぐに報告してもらうように指導する

 

③褥瘡発生のリスクがある(皮膚統合性リスク状態)

人工股関節置換術後は、一般的には術後翌日から離床が始まりますが、それでも疼痛で自由に動くことはできません。また脱臼を防ぐために禁忌肢位がありますので、体位に制限があるのが普通です。そのため、同一体位を取る時間が長くなりますので、褥瘡発生のリスクがあります。特にTHAの手術は60歳以上の高齢者が多く、栄養状態が不良で皮膚が脆弱化していることが多いので、褥瘡の発生リスクは高いと考えたほうが良いでしょう。

看護目標 ・褥瘡が発生しない
OP(観察項目) ・皮膚(特に褥瘡好発部位)の観察
・疼痛や掻痒感の有無
・血液検査データ(TP、Alb等)・自発的に体動があるかどうか・皮膚の湿潤の程度・機械的刺激の有無
TP(ケア項目) ・体交枕を使用して褥瘡好発部位に圧がかからないようにする

・禁忌肢位に注意して体位交換を行う

・全身清拭などで清潔を保つ

・シーツや衣類のしわを伸ばす

・ルート類が体に当たらないように注意する

・安静度に応じて離床を促す

・皮膚保護剤やフィルムを使用する

EP(教育項目) ・長時間、同一体位は取らないように指導する

・体位交換の必要性を説明する

・痛みや発赤などがある場合は、すぐに報告してもらう

 

④深部静脈血栓のリスクがある

THAのオペは通常2~3時間かかります。その間は脚を動かすことはありません。さらに術後も自由に脚を動かすことはできません。そのためTHAの術後は、深部静脈血栓のリスクが高いです。深部静脈血栓が肺に飛べば、肺塞栓症を発症し命に関わります。術後は、深部静脈血栓を予防するためのケアを行っていきましょう。

看護目標 深部静脈血栓が作られない
OP(観察項目) ・血液検査データ(Dダイマー)
・下腿部の熱感や腫脹の有無・下腿部の皮膚の変色の有無・下腿部の倦怠感の有無・浮腫の状態

・下腿の左右差

・足背動脈の触知の有無、左右差

・バイタルサイン(SpO2)

・呼吸苦や胸痛の有無

TP(ケア項目) ・安静度の範囲内で下肢を動かす
・弾性ストッキングや弾性包帯を着用してもらう・水分摂取を促す・医師の指示があればフットポンプを用いる
EP(教育項目) ・安静度の範囲内で自発的に下肢を動かすように説明する

・水分摂取の重要性を伝える

・下腿の違和感や呼吸苦・胸痛を感じた場合はすぐに伝えてもらうように指導する

 

⑤転倒リスク状態

THAのオペ後は、術後翌日から車イスや歩行器を使っての離床が始まることが多いです。術後の離床時は疼痛や恐怖、筋力低下などの要因から転倒するリスクがあります。術後に転倒すると、脱臼や股関節の破損、骨折などの危険がありますので看護師は転倒をしないようにケアをしなければいけません。

看護目標 転倒しない
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・血液検査(Hb、Htなど)

・術前のADL

・疼痛の程度

・離床への意欲

・離床時のふらつき、歩行の状態

・車イスや歩行器の使用状況

TP(ケア項目) ・ベッド周囲の環境整備

・車イスや歩行器は使いやすい場所に置く

・衣類や履物を動きやすく転倒しにくいものにする

・必要時は指示された鎮痛薬を投与する

・ベッドの高さを下げる

・必要なら離床センサーを使う

・移動時の見守り

EP(教育項目) ・離床時はナースコールを押すように指導する

 

4、人工股関節置換術(THA)の禁忌肢位

人工股関節置換術後に注意しなければいけないことは脱臼予防です。術後はどうしても脱臼が起こりやすく、特に術後3ヶ月までは筋肉や軟部組織が安定しないので、脱臼のリスクは高いと考えたほうが良いでしょう。THA後の脱臼のリスクや禁忌肢位は、術式によって異なります。人工股関節置換術は後方進入法(後方アプローチ)と前方進入法(前方アプローチ)に大きく分けることができます。

 

最小侵襲手術

出典:最新の最小侵襲手術(医療法人社団 弘人会中田病院)

 

少し前までは後方進入法が一般的でしたが、15~20cmと大きく切開しなければならず、さらに大臀筋を切開するため、軟部組織が不安定になり、脱臼のリスクが大きくなります。そのため、最近は前方進入法が主流となっています。切開は8~10cmと小さく、筋肉や腱を切開する必要がないため。術後の回復が早く脱臼のリスクも低くなります。後方進入法と前方進入法では、禁忌肢位は異なります。

術式 禁忌肢位
後方進入法 股関節の屈曲・内転・内旋(股関節を曲げて膝が内側に入った状態)
前方進入法 股関節の伸展・外旋(立位で患足を後ろに引き、内側に入った状態)

後方進入法も前方進入法も、股関節を深く曲げる動きは危険ですし、ねじりを加えるとさらに危険です。深いソファーに座ったり、座って脚を組んだり、横座りをしたりするのは、術後3ヶ月以上経っても脱臼の危険がありますので看護師は患者に禁忌肢位や脱臼のリスクについて、しっかり指導しておく必要があります。

 

まとめ

人工股関節置換術(THA)の基礎知識や合併症、術後の看護計画、禁忌肢位をまとめましたが、いかがでしたか?人工股関節置換術は患者のQOLを大きく向上させる治療方法です。ただ、脱臼やその他の合併症のリスクがありますので、看護師はそのリスクをできるだけ低下させるための術後看護を行っていくようにしましょう。

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3つのパフォーマンスステータス(PS)の適応と治療方針の決定の仕方

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がんの治療方針、治療効果の判定に用いられるパフォーマンスステータス。通称PSと呼ばれているこの指標は、病気による局所症状で活動性が制限されている場合に用い、臨床的に判断する有効な手段となっています。

 

1、パフォーマンスステータス(PS)とは

パフォーマンスステータス(通称Performance Status:PS)とは、全身状態の指標の一つで、がんの治療方針の決定、治療効果の判定などではパフォーマンス・ステータスの評価は必須となっています。パフォーマンス・ステータスには3種類あり、WHO PS 、ECOG PS 、KPSが代表的です。パフォーマンスステータスは、病気による局所症状で活動性が制限されている場合に用いることで、臨床的に判断する有効な手段です。

 

2、PSの種類と評価

パフォーマンスステータスには数種類の基準が存在します。以下で違いを見ていきましょう。

■ECOG PS: Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status

スコア 患者の状態
0 まったく症状なく社会的活動ができ、発病前と同じように日常生活ができる
1 激しい運動や肉体労働の制限をうけるが、歩行、軽い労働、座っての作業はできる
2 歩行ができ、身の回りのことはすべてできる。ただ時々少しの介助が必要なこともある。軽い作業はできないが、日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身のまわりのことしかできない。しばしば介助が必要で、日中の50%以上はベッド外で過ごす
4 身の回りのこともできず、全く動けない。常に介助が必要で、終日ベッドにいる

 

■KPS : Karnofsky Performance Status

スコア 患者の状態
正常な活動ができる。特別な看護が必要ない。 100 疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし。
90 臨床症状は軽くあるが、正常活動可能
80 臨床症状がかなりあるが、努力すれば正常の活動が可能である
労働することは不可能。自宅で生活を営むことができ、看護はほぼ個人的な要求によるものである。いろんな程度の介助を必要とする。 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
自分で身の回りのことができない。施設や病院の看護と同じような看護を必要とする。疾患が急速に進んでいる可能性がある。 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死は差し迫っていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期がせまっている
0 死亡

KPSは、予後を予測するために、PaPスコア(Palliative Prognosis Score)、食欲不振や呼吸困難感、WBC、リンパ球の割合とあわせて用いられることがあります。

 

■WHO PS : World Health Organization Performance Status

スコア 患者の状態
0 問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行ができ、軽い作業や座っての作業を行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行はでき、身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 身の回りの限られたことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全に椅子またはベッドで過ごす。
5 死亡

出典:全身状態(Performance Status)(国立がん研究センター東病院)

 

ECOG PS、WHO PSはスコアが0から5に進むにつれ、状態が重くなるのに対して、KPSではスコアが0から100に細分化されているのがわかります。近年ではECOGPSが多く用いられていますが、脳外科の部門ではKPSが使われています。ECOG PSは,判断する者の主観が大きく影響する基準でもあるため,同一患者を異なる医療者で診断するとPSが変化する可能性が少なからずあると考えられます。

 

3、PSの適応とリスク

パフォーマンスステータス(PS)は全身状態を評価し、脳外科や化学療法で用いられる指標だとお話ししましたが、指標と治療方針を照らし合わせてどのように治療方針を変更していくのでしょうか。化学療法を参考に見ていきましょう。抗がん剤治療はどんな患者さんにも行っていいものではありません。というのも、抗がん剤治療は、がん細胞を攻撃するのと同時に、正常な細胞も攻撃してしまうという側面を持っているため、患者さんの状態が良くないと、有害事象を引き起こしてしまうこともあるからです。固形癌の抗がん剤治療では、ECOG-PSのスコア 3以上は有害事象が高度となるリスクが上昇し、治療による効果をリスクが上回ることがあるため、一概には推薦されません。一般的な化学療法の適応はECOG-PS スコア0または1であり、2以上の場合は癌の症例ごとに治療法の検討を要します。しかし例外もあり、たとえば卵巣がんや胚細胞腫瘍など、化学療法が極めて効果的な固形がんや血液腫瘍など、良い治療効果が見込まれる分子標的薬治療などでは、リスクよりも治療による全身状態の改善が見込まれる場合、ECOG-PSがたとえ不良でも化学療法を積極的に行うこともあります。

 

4、化学療法の効果と評価

化学療法では、治療によってどんな効果が現れているかを評価していく必要があります。効果があれば現在の治療を続行していけばいいですが、効果がないのであれば、他の治療法を検討する必要があります。

 

抗がん剤の効果の評価は、以下のように行っていきます。

1.完全寛解(CR=コンプリート・レスポンス)

腫瘍が全て消失し、4週間以上その状態が続いている場合。

この状態が長く続けば治癒に結びつく。

 

2.部分寛解(PR=パーシャル・レスポンス)

腫瘍の縮小率が50%以上かつ新しい病変の出現が4週間以上ない場合。

完全寛解したわけではないが、薬がよく効き、ほとんどの症状は消失している。

 

3.不変(SD=ステイブル・ディジィーズ)

腫瘍の大きさがほぼ変化しない場合(正確には、50%以上小さくもならず、25%以上大きくもならない場合)。癌は放置すればさらに大きくなるので、大きさが変わらないということは、治療の効果があったことを意味している。

 

4.進行(PD=プログレッシブ・ディジィーズ)

腫瘍が25%以上大きくなった場合、もしくは他の場所に新しい腫瘍ができた場合。

出典:抗がん剤の知識・抗がん剤治療の進歩と現状(がん研有明病院|2015年5月1日最終更新)

 

これらの4段階で評価しますが、1から3の段階、つまり完全寛解、部分寛解、不変の結果が得られた場合には、行った治療は「効果あり」であると考えます。効果がある場合は、その治療を継続していくのが基本となりますが、完全寛解の結果が得られた場合は、化学療法を中止し、あとは再発がないかのフォローを受けることとなります。

 

まとめ

いかがでしたか。普段化学療法や脳外科に精通しなければ、なかなかパフォーマンスステータス(PS)という言葉を耳にしない方もいらっしゃると思います。また、看護師はあまり治療方針に関わる機会が少ないというのも、あまりPSについて知らない原因かもしれません。PSは、化学療法治療や緩和ケアを受ける患者さんの治療方針を決めるために、非常に大事な指標となっています。患者さんに効果のある治療に、本人が積極的に臨めるよう援助していきましょう。

 

参考文献

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)(用語集|国立がん研究センターがん情報サービス)

がん治療の基礎知識 4.効果、安全性の評価方法 1)performance status(日経メディカル|門倉玄武|2013年10月7日)

P-616.PS不良患者に対する治療選択に影響する因子とは?(第55回日本肺癌学会総会|日本肺癌学会|2014年11月)

E.予後の予測(聖隷三方原病院症状緩和ガイド)

抗がん剤の知識・抗がん剤治療の進歩と現状(がん研有明病院|2015年5月1日最終更新)

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腹腔鏡下胆嚢摘出術(ラパ胆)を受ける患者の看護とドレーンの8つの管理ポイント

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従来開腹して行っていた手術を、腹腔鏡の観察下で行うものを、腹腔鏡下手術といいます。腹腔鏡下胆嚢摘出術、通称ラパ胆は腹腔鏡下手術のさきがけでもあり、その後、胃、大腸、腎臓、副腎などの手術に広く応用されている術式でもあります。胆嚢結石、急性胆嚢炎、胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋腫症などの症例にラパ胆が選択されます。ラパ胆を受ける患者さんの術後合併症、観察ポイントについて考察していきましょう!

 

1、腹腔鏡下胆嚢摘出術(ラパ胆)とは

従来開腹して行っていた胆嚢摘出手術を、腹腔鏡の観察下で行うものを、腹腔鏡下胆嚢摘出術、通称ラパ胆(laparoscopic cholecystectomy)といいます。原則として全身麻酔下で施行されますが、開腹手術と比較すると創が小さく創痛も少なく低侵襲な術式です(腹部に1~2cmの傷を3~4ヶ所開ける)。入院期間も短くて済むため患者にはメリットがあります。最近では整容性を追求し、術者の操作を1つの孔から行う単孔式内視鏡手術なども行われています。近年ではさらに低侵襲の手術ロボットの導入も進んでいて、新しい技術が臨床で応用され始めています。

 

2、ラパ胆の適応

胆嚢結石、急性胆嚢炎、胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋腫症などにラパ胆が適応となります。胆のう癌は原則として開腹手術が適応です。これは腹腔鏡下胆嚢摘出術によって起こりやすい腹膜播種を避けるためでもあります。

 

3、ラパ胆の合併症

■胆嚢の働きについて復習

胆嚢は肝臓で作られる胆汁を貯蓄、濃縮し、放出する器官です。胆道を介して肝臓と十二指腸乳頭部につながっています。

 

肝臓と周辺の臓器の構造

出典:図1 肝臓と周辺の臓器の構造(国立がん研究センターがん情報サービス|2015年8月21日更新)

 

胆汁は通常5倍から10倍に濃縮されます。胆汁の排出経路と作用については以下の通りです。

1、肝細胞で胆汁が作られる

2、作られた胆汁は、胆嚢で貯留・濃縮される(水分吸収・粘液分泌)

3、十二指腸下行部に食物(特に脂肪)が入ると、コレシストキニン(CCK)が分泌され、胆嚢が収縮すると同時に、Oddi括約筋が弛緩する

4、胆汁が十二指腸に排出

5、小腸での脂肪の消化・吸収を促進

 

■胆汁の働きについて復習

胆汁とは、肝臓でたえず生成される黄褐色の液体で、小腸における脂肪の消化・吸収を促進する機能と、肝臓内の老廃物を肝臓外に排出する機能を持ちます。胆汁自体に消化酵素は含まれません。

ラパ胆の合併症は、術中と術後に起こるものに分けられます。

 

3-1 術中合併症

■心肺機能低下

腹腔鏡下手術では、視野確保のためにCO2を使い腹腔を膨らませます。このことを気腹といいますが、気腹により腹圧が上昇し、静脈環流量が減少するため、心肺機能が低下します。そのため術前検査で、患者の心肺機能を評価する必要があります。

 

内視鏡外科手術

出典:くわしく知ろう内視鏡外科手術(医療法人東和会 第一東和会病院)

 

■胆道、周囲血管損傷

ポート留置や視野外での不適切な操作が原因となり起こります。術前から胆道の走行を確認することや、術中にも胆道造影により早期に胆道損傷に気づくことが重要です。

■深部静脈血栓症

気腹による腹圧の上昇のため、下大静脈が圧排され、下肢静脈がうっ滞することで起こります。弾性ストッキングや間欠的下肢加圧装置の着用により予防します。

 

3-2 術後合併症

■下痢

胆汁を蓄える働きをする胆嚢を摘出してしまうので、脂肪の消化・吸収が不安定になり、便中の水分が増加することにより下痢が起こりやすくなります。油分が多いものを控え、食生活に気を付けてもらわなければいけませんが、たいていは術後1か月で体が順応してきます。

 

4、ラパ胆のドレーンの注意ポイント

ドレーンとは、体内に貯留した体液や空気を体外に排出するための管のことをいいます。ドレーンを使って、体外に体液や空気を排出することをドレナージといい、その種類には以下の二つがあります。

■閉鎖式ドレナージ

排液がドレーンからチューブを通じて排液バッグまで誘導されるもの。

■開放式ドレナージ

ドレーンから 直接体表面に誘導され、排液バッグではなくガーゼなどに吸収されるもの。

 

ラパ胆の場合、術後1~3日までドレーンを留置することがありますが、必ずしもドレーンを留置するわけでもないので、腹部の観察が必須となります。

ドレーンをきちんと管理するためには、必ず以下の項目を確認するようにしましょう。

・ドレーンは皮膚に固定されているか

・ガーゼやテープが血液や体液で汚染されてはいないか

・挿入部位からドレーンバッグまでの落差が保たれているか

・ドレーンチューブにねじれや屈曲がないか

・ドレーンバッグが床に接触していないか

・移動時ドレーンが体にからまっていないか

・体動時、ドレーンが引っ張られないよう

・ドレーンが床に接触していないか

■ドレーン排液が胆汁様になると注意

ラパ胆の合併症として、胆汁漏があります。純粋な胆汁漏では、黄色空茶褐色で粘性のある排液がみられます。薄い黄色調の排液では、胆汁漏なのか、漿液性排液なのか判断するのが難しいことがありますが、その際はガーゼに排液を落として、粘性を見て判断します。術後早期~数日後に起こりやすく、かつ腹痛や発熱がある場合は腹膜炎の可能性もあるのでドクターに報告します。

■ドレーンが閉塞・屈曲・破損していた時の対応

ドレーンが閉塞・屈曲・破損していると、効率よくドレナージが行えません。そのため、訪室するたびに、ドレーンチューブに問題がないか、排液の色、量、性状、臭いなどを必ず確認します。持続吸引機などの陰圧がかかっていない場合は、ドレーンの破損を疑います。ドレーンに問題があると気づいた場合は、まず患者のバイタルサインをチェックし、破損している場合は破損部を滅菌ガーゼで多い医師に報告します。血塊やフィブリン塊でチューブ内が閉塞している場合は、ミルキングローラーやアルコール綿を使ってチューブをしごいて流します。ドレーンのタイプによって、ミルキングして良いものとだめなものがあるので、必ず確認しましょう。ねじれや屈曲がある場合だと、固定やセッティングを再度修正するとねじれにくくなります。

 

まとめ

従来の開腹手術よりも低侵襲ですが、高度な技術が要求される腹腔鏡下手術。腹腔鏡下胆嚢摘出術、通称ラパ胆は腹腔鏡下手術のさきがけでもあり、今では胃、大腸、腎臓、副腎などの手術に広く応用されている術式でもあります。低侵襲とはいえ、全身麻酔下で行うので術後の合併症は必ずしも少ないとはいえませんし、術後の展開も早く1週間で退院という流れも多いので、観察項目とやるべき処置を絞って効率よく受け持ちができるように、再度ラパ胆について復習してみてはいかがでしょうか。

 

参考文献

チーム医療を担う医療人共通のテキスト 病気がみえるvol.1消化器 第5版(株式会社メディックメディアp354,371|医療情報科学研究所|2016年3月26日)

解剖生理からケアまで網羅!必修事項がサクッとわかる消化器外科看護まるごと図解ブック(株式会社メディカ出版 p210|毛利靖彦、楠正人|2014年3月24日)

消化器疾患看護の専門性を追求する消化器外科NURSING6(株式会社メディカ出版|p34|2016年6月1日)

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看護師が行う6つの体位と体位変換の方法および注意点

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看護技術の中でも日常、頻繁に行われている体位変換。以前は体位交換と言われることが多く「体交」という言葉がしっくりくる方もいらっしゃると思います。今ではあまり体位交換という言葉は使用されなくなり、体位変換という言葉が用いられることが多くなりました。通常、私たちは寝ている間にも無意識に体位変換を自ら行っています。普段、寝ている間に褥瘡ができたりはしませんよね。しかし、病気等の理由により自分自身で体位変換が行えない場合や安静等で同一体位の保持を余儀なくされる場合は、同一の部位が長時間にわたり圧迫されてしまうケースが多く、褥瘡のリスクが高まってしまします。それを防ぐためにも、定期的な体位変換が必要となるのですが、体位変換にはそれ以外にも様々な目的があります。今回は、体位変換の目的や方法、注意点などについて説明していきます。

 

1、体位変換とその目的

自分自身で体の向きを変えることが困難な患者や身動きが取れない患者、また身動きが不十分な患者に対し、他社が定期的に体の向きや位置を変えることを体位変換といいます。長時間、同一部分が圧迫されることにより、血行障害が起こり褥瘡のリスクが高まります。また、動きが制限されることによって拘縮や変形、循環障害が起こる可能性があります。体位変換はそれらを予防するために行われます。また体位変換は、肺の拡張を促し、気道内の分泌物を排出しやすくする目的でも行われます。体位変換の方法や頻度は患者の状態により異なるため、患者の状態と起こりうるリスクを把握した上で、方法や頻度を決定することが大切です。

 

2、体位の種類

体位変換の方法を学ぶ前に、まずは主にどんな体位があるのかを見ていきましょう。それぞれ、どのような場合に用いられるかも合わせて学習していきましょう。

①仰臥位

一般的に言う「あおむけ」の状態です。背中を下にし、上を向いた状態のことを言います。循環の安定を目的とする場合に用いられることが多い体位です。同一体位による局所への圧迫で褥瘡等の合併症を引き起こす可能性があるため、適宜、除圧を行いながら、良肢位を保持します。

②側臥位

横向きの状態です。右側を下にしている場合を右側臥位(うそくがい)、左側を下にしている場合を(さそくがい)といいます。肺塞栓等がある患者に対し、ガス交換の改善を目的する場合に用いられることがあります。健側肺を上にした体位をとることで、血流障害のない肺に空気が入りやすくなり、ガス交換の改善が期待できます。

③腹臥位

仰臥位の反対の意味で、「うつ伏せ」の状態を指します。お腹を下にした状態のことを言います。無気肺を予防や改善を目的に用いられ、無気肺のある肺野に重力がかからないようにすることで、健側肺の血流が増加し、ガス交換及び酸素化の改善が期待できます。仰臥位では背側に形成しやすく、側臥位完全側臥位前傾側臥位腹臥位の順に改善見込みが高くなります。背面解放がポイントです。

④ファーラー位

仰臥位の状態から上半身を40度に起こした状態を指し、半座位とも言われています。上半身の角度が15度から30度程度起こした体位はセミファーラー位と言います。人工呼吸器による肺炎等の合併症予防のために効果的な体位です。上半身の拳上角度が30度から45度で人工呼吸器関連肺炎(VAP)のリスクが減少すると言われています。また、頭蓋内圧亢進時には15〜30度頭高位のセミファーラー位を保持することで、静脈灌流を促進させ、頭蓋内圧を低下させる効果があります。

⑤座位

仰臥位の状態から、上半身を90度に起こした状態を言います。換気量を増やす目的で用いられることが多く、横隔膜の位置により換気量は変動します。

⑥立位

立った状態のことを言います。

 

3、体位変換の方法

体位変換を行うには、さまざまな方法があります。どの体位から、どの体位に変換するのか、何人で体位変換を行うのかなど、患者の状態や施行者の人数によりその方法が異なります。では実際にどのように体位変換を行うか、その方法を確認していきましょう。

①仰臥位から側臥位への体位変換

・まず体位を変換する方向に枕を移動させ、患者の顔を横に向けます。

・患者の両腕を前胸部で組み、上側になる方を上にします。

・患者の両膝を引き上げて立てます。

・引き上げた両膝を変換する方向へ倒して、肩に手を添え側臥位にします。

②側臥位から仰臥位への体位変換

・枕を中央に移動します。

・患者の上側の下肢を支えながら後方に回旋させます。

・枕で患者の体が固定されている場合は、丁寧に外します。

・上側の肩と腸骨部分をしっかりと支え、背部側に回旋します。

・頭から下肢が直線になるように、骨盤の位置をずらします。

③仰臥位から端坐位にする場合

・患者の手を介助者の肩に置きます。

・患者の頸部を肘で支え肩甲骨を持ちながら、患者を浮かせます。

・患者の上半身を手前に寄せて、腕を押さえながら弧を描くように起こします。

・介助者の手を患者の膝の下に入れます。

・患者の膝を立て、背部を支えながら殿部を軸にして90度回転させます。

④水平に移動させる場合(介助者が1名で施行する場合)

・患者の後頭部をしっかりと支えます。

・枕を手前にずらし、患者の頭を枕に戻します。

・患者の上半身と下半身を分けて移動させます。

⑤上方へ移動させる場合(介助者が1名で施行する場合)

・ベッドの上部に枕を移動させます。

・患者の腕を組み、両膝を立てます。

・足元側の腕で腰部や大腿部を支え、頭側の腕で肩甲骨部を支えます。

・介助者側に患者を引き寄せます。

 

4、体位変換時の注意点と観察項目

体位変換は単に体位を変えるだけでなく、体位変換の際には以下の点に注意し、患者の状態を観察していくことが大切です。

①循環

・血圧・脈拍数、不整脈、循環障害の兆候・症状の有無

②呼吸

・呼吸数、呼吸状態

③意識状態

・意識障害、頭蓋内圧の変化の有無

④身体的・精神的状態

・創部の状態、疼痛、苦痛の有無、睡眠状態、患者の表情、精神的ストレスの有無

⑤皮膚

・損傷・刺激・圧迫など皮膚トラブル、褥瘡の有無

⑥医療機器等

・ルートや呼吸器、ドレーン等の屈曲、閉塞の有無

 

まとめ

体位変換では「安全であること」「安楽であること」「安定性があること」が重要なポイントとなります。特に「安全であること」に関しては、患者だけでなく、施行者の安全確保も重要です。よく、体位変換で腰痛がひどくなったなどの話を耳にします。体位変換を実施する場合には、周りの環境が安全であることの確認を行うことはもちろんですが、施行者の身体的負担が少なく、効率的に体位変換を行うことができる体勢や位置、身体の使い方などを研究していく必要があります。ここに記載した基本的な方法をしっかりと押さえたうえで、患者にとっても看護する側にとっても安全で安心な体位変換を身につけていきましょう。

 

参考文献

褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)(褥瘡会誌17 487~557|日本褥瘡学会教育委員会ガイドライン改訂委員会|2015年)

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VAP(人工呼吸関連肺炎)の看護|原因や予防バンドル、ガイドライン、6つの看護ポイント

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VAP(人工呼吸関連肺炎)とは、人工呼吸管理をスタートして48時間以降に発症した肺炎のことです。ICUにおける院内感染の中で最も多く、患者の死亡率を上げるものですので、看護師は予防のためのケアを徹底しなければいけません。VAPの基礎知識や原因、治療とガイドライン、予防バンドル、予防のための看護のポイントをまとめました。実際に看護をする時の参考にしてください。

 

1、VAP(人工呼吸関連肺炎)とは

人工呼吸関連肺炎(VAP=Ventilator Associated Pneumonia)とは、人工呼吸管理前には肺炎がなく、気管挿管して人工呼吸管理をスタートした後48時間以降に発生した肺炎のことです。

・早期VAP 人工呼吸器を使い始めて4日以内に発生したもの
・晩期VAP 5日以降に発生したもの

ICUにおいては最も多い院内感染となっています。ICUでは3~4%の患者がVAPを発症し、死亡率を20~55%も増加させるというデータ1があります。だから、看護師はVAPを予防するためのケアを行っていかなければいけません。

 

2、VAPの原因

気管挿管中は、本来の気道のフィルター機能やバリア機能が働きません。また、人工呼吸管理をしている患者は、全身状態が悪く、免疫力が低下していることが多いです。だから、原因菌が気道に侵入すると、肺炎を起こしやすくなります。原因菌は、外部の環境から侵入した細菌と患者自身の体内にある細菌に分けることができます。

 

人工呼吸関連肺炎

出典:人工呼吸関連肺炎;VAP(日本メドトロニック株式会社)

 

■外部環境のからの原因菌

外部環境の原因は、人工呼吸器の回路の汚染です。加湿器や回路の汚染、看護師の不潔な操作などが原因で、人工呼吸器の回路内に原因菌が侵入すると、そこから気管挿管を通って、下気道で感染を起こします。

 

■患者内部からの原因菌

患者の体内にある細菌がVAPを起こす原因は、口腔内や咽頭部の分泌物の気管への垂れ込みです。気管挿管中は、次の要因で口腔内に細菌が繁殖しやすくなります。

・経口摂取をしないので唾液の分泌量が低下する

・口腔ケアが不十分である

・経管栄養や消化管潰瘍の予防薬で胃液がアルカリ化し、胃の中の細菌がストマックチューブを介して口腔内に逆行してくる

・経鼻挿管だと副鼻腔炎を発症しやすい

このような原因で、口腔内に細菌が繁殖し、それが気管内に垂れ込んでしまい下気道で感染を起こすため、VAPを発症します。

 

3、VAPの治療とガイドライン

治療は、現在はアメリカの感染症学会(IDSA)のガイドラインに沿って行われることが多いです。

ただ、IDSAのガイドラインに掲載されている抗生物質の投与量は、日本では未承認であることも多く、日本の現状に隔たりがある2ため、ガイドライン通りに治療ができないこともあります。VAPの治療は、原因菌を確定する前に抗菌薬を投与するエンピリックな治療を行うことが多いですが、黄色ブドウ球菌(MRSA)、緑膿菌、その他のグラム陰性菌について、それぞれ考慮して、抗菌薬を決定します。

 

4、VAPの予防バンドル

VAPは患者の死亡率を上昇させますので、治療よりも発症させないための予防が重要になります。

VAPを予防するためには、予防策を単独で行うのではなく、できる限り予防策をひとまとめにして行うと良いとされています。複数の予防策をひとまとめにして行うことをバンドリングと言います。VAPの予防はバンドリングを行うことで、31~57%もVAPの発症率を低下させることができるというデータ1があります。

VAP予防バンドルは、日本集中治療医学会・ICU機能評価委員会が「人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010改訂版(略:VAPバンドル)」をまとめています。

 

この予防バンドルには、次の予防策が挙げられています。

1.手指衛生を確実に実施する

2.人工呼吸器回路を頻回に交換しない

3.適切な鎮静・鎮痛をはかる。特に過鎮静を避ける。

4.人工呼吸器からの離脱ができるかどうか、毎日評価する

5.人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない

このVAP予防バンドルを実践していけば、VAPを予防して、発症率を下げることができるはずです。

 

5、VAP予防のための看護のポイント

VAPは看護師が予防を意識し、予防のためのケアを徹底することで、発症率を下げることができます。VAPの予防のための看護は、難しいことではなく、日ごろの看護の中で少し気を付ければ良いものばかりですので、今日から予防のための看護を実践していきましょう。

 

①手洗いの徹底

先ほどのVAPの予防バンドルにもありましたが、予防のためには看護師の手洗いは非常に重要です。VAPは院内感染です。そして、院内感染を予防するためには、手洗いは基本中の基本です。忙しい時でも、「一患者、一手洗い」を徹底していきましょう。

 

②カフ圧の調整

VAPを予防するためには、カフ圧の調整は重要です。カフ圧が低すぎると、気管壁とカフの間に隙間ができて、口腔内からの分泌物が下気道に垂れ込んでしまいます。ただ、カフ圧が高すぎると、気管壁を圧迫して、血流障害を起こすことになります。だから、看護師は20~30cmH2Oにカフ圧を保つように、こまめにチェックするようにしてください。

 

③吸引

痰の吸引もVAP予防につながります。ただ、必要以上の頻回な気道吸引は、気道内の汚染につながりますので、必要最低限の回数で清潔操作を心がけて、痰の吸引をするようにしましょう。

 

④口腔ケア

気管挿管中の口腔ケアは、挿管の位置がずれてしまうリスクもあるため難しいですが、挿管中の口腔ケアは頻回に行わなければいけません。気管挿管中の口腔ケアはブラッシングケアと維持ケアを組み合わせて、1日4~6回行うのが望ましい3とされています。

 

⑤体位の調整

VAPを予防するためには、体位の調整も重要です。仰臥位にすると、口腔内の分泌物が気管内に垂れ込みやすくなるため、基本的に仰臥位はNGです。VAPを予防するためには、看護師は体位交換の時に、側臥位や腹臥位にするようにしましょう。

また、経管栄養中は胃の内容物が逆流しないように、30~45度にギャッジアップすると良いですが、通常時は口腔内の分泌物が垂れ込みやすくなるリスクもありますので、経管栄養を投与していない時は、ベッドの角度を調整するようにしてください。

 

⑥呼吸器回路の管理

看護師は、VAPを予防するために、人工呼吸器の管理にも注意しなければいけません。

・呼吸器回路に汚染や破損がないかをチェックすること

・加湿器には滅菌水を用いること

・回路内の結露はウォータートラップに落とすなど早めに除去する

これらのことを徹底して、呼吸器回路から細菌が侵入しないように管理していくようにしましょう。

 

まとめ

VAPの基礎知識や原因、治療とガイドライン、予防バンドル、看護のポイントをまとめました。VAPは日ごろの看護をする上で、看護師が少し注意をするだけで、発生率を下げることができますので、看護のポイントを押さえ、しっかり実践していくようにしましょう。

 

参考文献

1)ICU感染防止ガイドライン改訂第2版(株式会社じほう 第4章|国立大学病院集中治療部協議会・ICU感染制御CPG改訂委員会|2013年2月)

2)人工呼吸器関連性肺炎(VAP)の 予防・治療に関する 最新のエビデンス(第57回日本化学療法学会西日本支部総会/第52回日本感染症学会中日本地方会学術集会 教育セミナー13|竹末芳生|2009年)

3)人工呼吸器関連肺炎予防のための気管挿管患者の口腔ケア実践ガイド(案)(一般社団法人日本集中治療医学会・一般社団法人日本クリティカルケア看護学会|2016年)

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CPM(持続的他動運動)の看護|目的や方法、看護の6つのポイント

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CPMとは機械を用いて関節の屈曲・伸展を行うリハビリ方法のことです。膝関節の術後に用いられることが多いです。CPMは効果的なリハビリ方法ですが、正しく使用しないと、CPMのリハビリ効果が半減したり、安全に使用できなかったりするので、看護師はCPMについて正しい知識を身につけておきましょう。CPMの基礎知識や目的、方法、看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。

 

1、CPM(持続的他動運動)とは

CPM(Continuous Passive Motion=持続的他動運動)とは、機械を用いて、関節の屈曲・伸展運動を他動的にゆっくりとしたペースで連続して行う訓練方法のことです。

 

CPM

出典:整形外科用機器「CPM(下肢用)」(ガデリウス・メディカル株式会社)

 

このCPMは看護師や理学療法士などが患者の脚を持って行う徒手でのROM訓練に比べると、次のようなメリットがあります。

①支持面積が大きく安定感がある

②ゆっくりとした一定のペースで屈曲・伸展を行うことができる

③可動域を一定に保つことができる

CPMには上肢用もありますが、臨床では下肢用が用いられることが多く、膝関節の術後のリハビリに使われることが多いです。CPMの性質上、膝関節のためにCPMを用いると、自動的に股関節の屈曲・伸展運動も行うことになります。

 

2、CPM(持続的他動運動)の目的

CPMの目的は、次の4つ1の目的があります。

1.関節可動域の拡大

2.関節拘縮や静脈血栓症などの廃用症候群の予防や治療

3.関節軟骨の修復や術後の腫脹の軽減

4.疼痛の軽減

膝関節の手術後は、術直後からリハビリを始めることで、膝関節の屈曲角度が改善し、治癒効果を高めて早い時期に社会復帰ができるとされています。特に、人工膝関節全置換術(TKA)の手術後は、数時間から十数時間にわたってCPMを行う必要があるという研究結果2もあります。TKAの場合、術後2日目からCPMを行ってリハビリを始めるのが一般的です。

 

3、CPM(持続的他動運動)の方法

CPMの準備は医師や理学療法士が行うこともありますが、基本的には病棟で看護師がCPMをセットして行うケースが多いので、CPMの方法を理解しておきましょう。

①CPMに関する医師の指示(関節可動域や時間等)を確認する

②バイタルサインや患部の状態をチェックする

③患者にCPMを実施することやコントローラーの使用方法を説明する

③CPMをベッドにセットする

④患者の患足をCPMにセットして、しっかり固定する

⑤CPMの速度や屈曲の角度、時間などをセットする

⑥最初の数分は疼痛の状態やズレがないかを確認するためにベッドサイドでつきそう

⑦コントローラーを患者に渡し、ナースコールを手元に置いてベッドサイドを離れる

⑧終了時間になったら、ベッドサイド訪問し、CPMの機械を外して片付ける

⑨関節可動域や疼痛の程度などを看護記録に残す

これが、基本的なCPMの方法になります。

 

4、CPM(持続的他動運動)の看護の6つのポイント

CPMを行う時の看護のポイントを確認しておきましょう。看護師が看護のポイントを押さえておくことで、安全に、そしてより効果的にCPMでのリハビリを進めていくことができます。

 

①不安の軽減に努める

CPMを実施する場合は、患者の不安軽減に努めましょう。術後2日目ごろからCPMを開始することが多いですが、術後すぐに関節の曲げ伸ばしをすることに不安・恐怖を感じる患者はとても多いです。

「とても痛いのではないか?」、「傷が開いて出血するのではないか?」、「脱臼してしまうかもしれない」のような不安を持ったままだと、CPMを拒否したり、CPMをスタートしてもすぐに自分で緊急停止してしまって、リハビリがなかなか進みません。

そのため、看護師はCPMを行う前に、CPMの目的や安全に行える効果的なリハビリ方法であることをしっかりと説明して、患者の不安を軽減しておく必要があります。また、初回はコントローラーを渡してすぐに退室するのではなく、患者がCPMの運動に慣れて不安がなくなるまで、ベッドサイドで長く付きそうなどの配慮をすると良いでしょう。

 

②実施前に医師の指示をしっかり確認する

CPMを行う前には、医師の指示をしっかり確認しましょう。特に、関節可動域については、必ず医師の指示を守らなくてはいけません。

指示よりも関節可動域を狭くしてしまったら、効果的なリハビリを行うことができません。逆に関節可動域を広く設定してしまったら、関節に負担をかけてしまうことになります。また、CPM実施中に「痛みもないし、もっと関節可動域を広げられそうだから」という理由で、医師の指示以上の可動域にCPMの設定を変えるのも止めましょう。これは、患者にもきちんと説明しておく必要があります。リハビリを積極的に進めたいという意欲がある患者は、コントローラーで設定を勝手に変更し、関節可動域を広げようとすることがあるので、注意しなければいけません。

 

③無理はしないように説明する

CPMを行う患者に対しては、看護師は無理をしないように説明しておきましょう。

痛みが強くなったり、関節に違和感が出ているのに、「リハビリに必要だから」、「お医者さんの指示だから」などの理由で、我慢してCPMを続ける患者がいます。それではCPMが逆効果になりかねませんから、そのような時には無理をせずにコントローラーで緊急停止をして、看護師をすぐに呼ぶように、しっかり指導しておく必要があります。

 

④疼痛コントロールを行う

CPMの看護のポイントの4つ目は、疼痛コントロールを行うことです。術直後にCPMを行う場合、痛みが強くて思ったようにCPMを行うことができないというケースが少なくありません。だから、看護師はCPMを行う時には痛みをできるだけ軽減できるように、鎮痛薬の投与時間を計算して、CPMを行う時間を決めたり、必要ならCPMの実施前にレスキュー薬を投与するなどの工夫をして、疼痛コントロールを行いましょう。

また、CPMの前後にクーリングを行ったり、安楽な体位を取るように指導することも大切です。患者のCPMに対する恐怖を解消して、積極的にCPMを行うためにも、疼痛コントロールは非常に重要になります。

 

⑤ズレないようにしっかり固定する

CPMを実施する時は、看護師はCPMの機械がズレないようにしっかり固定してください。膝関節用のCPMはベッド上で使っていると、足元の方向に少しずつ動いてずれていくことが多いです。

CPMの機械自体が動いてしまうと、患者の膝関節とCPMの膝関節を置くべき部分がズレてしまい、きちんと屈曲・伸展運動を行えなくなってしまいます。そのため、体交枕などを用いて、CPMの機械が動かないようにしっかりと固定するようにしましょう。また、もし動いてズレてしまった時はセッティングし直す必要があるので、ナースコールで看護師を呼ぶように、患者に指導しておきましょう。

 

⑥皮膚の損傷が起こらないように注意する

CPMを行う時には、ベルトで下肢とCPMの機械を固定する必要があります。

ズレないようにある程度しっかり固定しなければいけませんが、固定がきつすぎると、表皮剥離や褥瘡を起こすリスクがあります。逆に、固定が緩すぎても、ベルトと皮膚の間に摩擦を起こすので、表皮剥離の可能性が出てきます。看護師はCPMによる皮膚損傷が起こらないように注意しなければいけません。

CPMの機械やベルトは皮膚に刺激を与えないように柔らかい生地を用いていますが、それでも、皮膚損傷のリスクはあります。看護師は皮膚損傷が起こらないように注意しながら固定し、必要があれば、保護クリームやフィルムを貼るなどの工夫をすると良いでしょう。

 

まとめ

CPMの基礎知識や目的、方法、看護のポイントをまとめましたが、いかがでしたか?

CPMは膝関節の手術後によく用いられるリハビリ方法ですので、看護師は正しく使用できるように正しい知識を身につけておきましょう。特に、整形外科病棟の看護師は、CPMを用いる機会が多いと思いますので、CPMについてもう一度勉強しておきましょう。

 

参考文献

1)機器を用いた訓練―CPM;持続的他動運動訓練(総合リハビリテーション 20巻9号|中村耕三、大井淑雄|1992年9月)

2)人工膝関節全置換術患者に対する持続的他動運動の効果((第49回日本理学療法学術大会 抄録集 Vol.41 Suppl. No.2|小田太史、石丸将久、佐賀里昭、東友美、内藤誠、古賀彩佳、川嵜真理子、小路永知寿、吉田佳弘|2014年)

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看護師が行う血液検査の目的や内容など、よく使う7つの項目

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救急外来で緊急搬送された患者や入院病棟で急変を起こした患者などに行う緊急時の検査は、大きくは3つの視点で分けることができます。①血液や尿などの検体検査, ②超音波検査や心電図検査などの画像検査、③さらに脳血管造影や心臓カテーテルといった侵製の大きな検査です。中でも血液検査は、ほぼ全ての緊急患者に行う検査です。今回は緊急時に行う血液検査に着目して、勉強していくことにしましょう。

 

1、血液検査とは

血液検査は、健康診断や定期受診・ちょっとした体調不良や命に係わる緊急時などを含め、あらゆる場面で検査の基本となるものです。ただし、血液検査は緊急時の診断に必要なものと健康を維持するための指標として必要なものでは、調べる項目・目的は全く異なります。

血液を検体とする検査にはたくさんのものがあります。一般的な静脈からの採血だけではなく、時には動脈からもとりますし、その血液をガス分析にかけることもあれば培養検査にまわすこともあり、それぞれの目的も結果が出るスピードも異なります。

ここからは、健康診断で重要視されるコレステロールや中性脂肪・HbA1cなどではなく、緊急時に必要な検査として必要とされる項目を優先度や必要性から考えていきます。

 

2、血液検査 項目・基準値

①血球検査(赤血球,白血球,血液像など)

臨床現場において、末梢血液検査(CBC)は基本中の基本の検査で、「血算」や「末血」と呼ばれます。国内ではほぼどの医療機関でも、基本となる紫のスピッツで調べる検査項目です。

血球検査は検査室を有する医療機関のほぼ全施設が実施しているといっても過言ではなく、また検査結果はものの数分で出るため、緊急時には特に有用な検査です。これにより、大まかな炎症の度合いや貧血・出血状況・凝固異常などを推測することができます。

 

血球算定検査

出典:臨床検査基準値一覧(国立がん研究センター中央病院 臨床検査部|2016年6月)

 

②血液生化学検査

臨床現場で採血をする際に、基本となるのは「血算」と「生化」です。血算は上に挙げた血球検査のことを意味しますが、これとセットになっている「生化」というのは、正式には生化学検査と言います。茶色のゴム栓にゲルの入っているスピッツに採取することから、現場では「茶ゲル」とも呼ばれますね。

生化学は抹消血液検査より検査時間は必要ですが、より詳しい情報を得ることができます。例えば白血球よりもより詳しい炎症状態(CRP)、電解質異常(Na.K.Cl)、腎機能(BUN.Cre.GFR)・肝機能(GOT.GPT.γ-GTP)もわかります。肝機能を示す項目の中には、心筋が虚血に陥ったときに上がる項目(CK.GOT.GPT)もあるので、生化学検査の範囲は非常に広く、臨床現場では血算・生化の採血に画像検査を加えて診断することが多いですね。

 

生化学検査

出典:臨床検査基準値一覧(国立がん研究センター中央病院 臨床検査部|2016年6月)

 

③グルコース(血糖)

臨床で最も基本となる採血が血算・生化の2つだとすると、ここから先はおまけといいますか、少し幅広い検査になってきます。基本の紫・茶の2本のスピッツに足すとしたら、まず次にくるのは血糖でしょう。一般的にはグレーのスピッツで採取しますが、生化学の茶ゲルスピッツで血清血糖を調べることで代用できますので、実際には調べていてもスピッツに糖(グレー)が含まれていないこともあります。

 

血糖は意識障害に大きく関与していることもあるので必要ですし、治療をする際に糖尿病がベースにあるかどうかも大きな情報となります。ただし、輸液ラインをとりながらの採血を行うのが基本の現場において、もっとも迅速に血糖を調べる方法は血糖測定器でこれだけを調べることです。ですから、意識障害を起こした患者さんには、輸液ラインや採血セットを用意している間に、まず血糖測定だけを行うこともあります。(血糖の正常値は、生化学検査の基準値表を参照してください。)

 

④凝固系

血算・生化・糖ときたら、次に臨床現場で採取する血液検査が、凝固系です。黒いスピッツで調べる項目ですね。凝固系が必要になる理由としては、血液凝固機能の異常による出血性の疾患を特定する場合や、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓を溶解するような治療の場合にはその値によって適応を決定したり、治療を開始してから経時的な観察が必要となるために行います。

 

凝固・線溶検査他

出典:臨床検査基準値一覧(国立がん研究センター中央病院 臨床検査部|2016年6月)

 

⑤血型(交差適合試験)

救急外来に搬送されてきた患者さんの中には全く受診歴がなく、どんな既往歴を抱えていて、受傷時の様子もわからないような、情報の極端に少ないケースが多々あります。そんな場合、このあとでどのような診断がくだってどの治療を行うにしても困らないように、最初から思い当たるものを全て採血しておくということは、現場の常識です。

 

実際に検査のオーダーは緊急に必要な血算・生化・糖・凝固の4種類だけであっても、このあと入院や輸血の可能性が高い場合には、あらかじめ血型や交差適合試験(クロス血)専用のスピッツに輸血前検査など、どうしても調べるなら専用スピッツが必要なものを末梢血管確保(ルート確保)と同時に一度にとってしまうことがあります。現実には、①~④と画像検査でおおよその診断がつくことが多いので、これらは今後の治療をスムーズに行うためのものですね。

 

⑥血液ガス検査(ABG)

血液ガスは、指先で図る酸素飽和度(SpO₂)よりもより正確な呼吸状態を知ることができます。特にCOPDの患者ではただSpO₂の値が低いことを確認するだけではなく、CO₂がどのくらい溜っているかも治療上重要ですから、基礎疾患に呼吸器系が含まれる場合や現時点の呼吸状態が悪い場合には、血液ガスを採取します。

pHだけを知りたいような特殊な場合には静脈血で採取することもありますが、緊急時に行う血液ガス測定では動脈血での採取が基本となりますので、看護師は医師の介助を行った後に確実に止血を確認する必要があります。

 

血液ガス

出典:臨床検査基準値一覧(国立がん研究センター中央病院 臨床検査部|2016年6月)

 

⑦血液培養

近年、抗菌薬を使用に対する見解がきびしくなってきました。これは多剤耐性菌問題が深刻になっており、抗菌薬をやたらに投与するのではなく、その患者が感受性のある薬剤を選ばなくてはならないからです。そのためには、血液培養が必要になります。

ただし、現実には迅速に結果がでるものではありませんから、まずは見立てで抗菌薬を投与し、それでも効果が得られない場合や血液培養の結果で今の薬剤に耐性があると報告された場合に、他の薬剤への変更を行います。血液培養の検体は抗菌薬を投与する前の血液であることが鉄則ですので、病棟に入室する前に救急外来で採取するケースもよくあります。「こんな忙しいときになぜ!?」と思うこともあるかもしれませんが、それは十分理にかなっているのです。

 

3、血液検査 看護

ここまで、緊急時に必要な検査である血算・生化学・糖・凝固に加え、血液型や血液ガス・血液培養まで、看護師の取り扱う血液検査についてお伝えしてきました。看護師はデータをもとに患者の診断を行うわけではありません。しかし、それぞれの検査は、ただ採取するだけでは看護師としては不十分です。

 

<採血をするときはここに注目‼

・患者の疾患や病態に対し、なぜこの検査が必要なのか(目的)

・検査データから、患者は今どのような病態にあるのか(推測)

・その病態から、どこを観るべきか(観察)

・このあと、どのような検査や処置・治療が必要になるのか(予測・準備)

 

これらを常に考えながら、看護師は血液検査に携わることが求められます。そして、血液検査だけではなく、最終的には他の画像検査や既往歴、患者の受傷起点など、複数の情報を合わせて最終的に病態を理解します。看護師が病態を理解することは、どこに注目して観察したらよいのかを知ることができるだけではありません。医師が次に求める情報や処置を予測することで、少ない人員でも効率的に動き、最小限の時間で患者に必要な看護・治療を行うことができるようになるのです。

 

そのためには基本的な病態と検査の関連を理解しておく必要があり、おおよその基準値も覚えておかねばなりません。とくに生化学検査の範囲幅広く、血液ガス検査では理解が難しいので敬遠してしまう気持ちもわかります。

全ての正常値やその検査の意味を知ることは難しいかもしれません。しかし、緊急時に必要なポイントに絞って覚えておくだけでも、あなたの看護のレベルは格段にUPすることは間違いありません。

 

まとめ

血液検査と一口にいっても、幅広くて奥が深いですね。検査値を正しく読みとるには疾患に関する知識が必要ですし、そのデータから病態をその場で結びつけることは難しいかもしれません。しかし、めげずに特訓していけば、患者の状態から医師は何を疑ってどんな検査をオーダーするか予測がつき、結果を見ることで医師がどう診断して次にどの治療を行うかという予測を立てることができるようになります。そうなったら、あなたは立派なエキスパートナースです。

 

参考文献

EBMに基づいた緊急時に必要な検査とその看護(メディカ出版|藤原正恵、松月みどり|2003年1月1日)

臨床検査基準値一覧(国立がん研究センター中央病院 臨床検査部|2016年6月)

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