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血栓溶解療法(t-PA治療)の看護計画や脳梗塞患者への投与注意点

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血栓溶解療法(t-PA治療)の看護

高齢社会に入った日本で問題となっているのが、介護問題です。介護の必要な患者の3~4割は脳卒中が原因とされており、脳梗塞が全体の7~8割を占めると言われています。血栓溶解療法は、脳梗塞を発症した患者の超急性期において行う新しい治療法です。血栓溶解療法について学び、看護計画を立案します。

 

1、血栓溶解療法(t-PA治療)とは

1-1、これまでの脳梗塞治療

脳梗塞は➀ラクナ梗塞➁アテローム血栓性脳梗塞➂心原性脳塞栓症に大別されています。これらが原因となって脳の血管を詰まらせることで、様々な症状・後遺症を引き起こします。これまでも脳梗塞に対する治療が研究され、様々な治療法が導入されました。以下がこれまでの主な治療方法です。

 

■これまでの脳梗塞急性期の治療

➀少量ウロキナーゼ療法 : 血栓を溶かして血液の流れを改善

➁抗凝固療法      : 血栓が作られるのを防ぐ

➂抗血小板療法     : 血液を固める作用のある血小板の機能を抑制する

➃血液希釈法      : 血液の粘度を下げ、梗塞周辺の血流を改善する

⑤脳浮腫軽減療法    : 脳浮腫を予防する

➅脳保護療法      : 脳神経細胞の障害の進行を抑える

 

これらも麻痺などの症状の進行を抑える効果がありましたが、どちらかというと「これ以上の進行を遅らせること」が目的であり、「治す」という治療ではありませんでした。

 

1-2、新しい脳梗塞治療法~t-PA静脈療法~

以前の脳梗塞治療が消極的治療であるとすると、新しい治療は積極的治療です。既にできてしまった血栓を溶かし、脳血流を再開させること(再灌流)を目的としている、活気的治療法なのです。どういう治療かというと、超急性期に血流を改善させることによって、以前なら壊死するのを止められなかった不完全な梗塞巣(ペナンプラ)を助けよう、というものです。

そこで出て来るのが、t-PAという薬です。t-PAは組織プラスミノーゲン・アクチベータといい、血栓そのものに作用して溶かす薬です。脳梗塞は、血流再開までの期間が短ければ短いほど回復は良好で、後遺症も軽く済ませることができます。t-PAは2005年10月に脳梗塞の超急性期治療薬として厚生労働省に承認され、画期的な治療薬となりました。

 

2、血栓溶解療法(t-PA治療)の適応について

血栓溶解療法は、ワーファリンのように血液をサラサラにするという程度ではありません。革命的な治療法である反面、出血という最大の合併症と隣り合わせの治療です。そのため、全ての脳梗塞の患者が血栓溶解療法の対象とはなりません。

・出血リスクがもとから存在する人

・既に時間の経過した脳梗塞で期待できる効果の低い人

これらに該当する場合は使えません。出血リスクの高い人の場合は、脳梗塞の治療のせいで命に関わることも出てきます。また、効果の期待できないような人にそれだけの危険な薬を「ダメもと」で使うことはできないからです。

 

■血栓溶解療法の適応

・発症後4.5時間以内の虚血性脳血管障害

・症状の急速な改善がない

・軽症ではない

(以前は発症後3時間以内とされていましたが、2008年の欧米での大規模研究の結果を受け、2012年9月からは4.5時間に拡大されました。)

 

3、血栓溶解療法(t-PA治療)投与方法・時間

日本脳卒中学会によると、t-PAの投与方法は下記の基準になります。

アルテプラーゼ0.6mg/㎏(34.8国際単位/㎏)の10%を1~2分かけてボーラス投与

残りを1時間で点滴静注

 

4、血栓溶解療法(t-PA治療)における注意点

血栓溶解療法を行う前には、必ず対象患者が出血性リスクのないことを確認する必要があります。極端な話、脳梗塞と思った症例が実は脳出血やくも膜下出血だった場合、血栓溶解療法を行うことで、逆に致命的になるということです。ただし、禁忌には絶対的な禁忌と、状況に応じて検討すべきとう相対的禁忌があります。以下は、AHA(アメリカ心臓協会)の提唱している基準で、それぞれ「除外基準」・「相対的除外基準」としています。

 

4-1、血栓溶解療法の禁忌

■除外基準

➀過去3か月以内の頭部外傷または脳卒中既往歴

➁くも膜下出血を示唆する症状

➂過去7日以内の圧迫不能部位の動脈穿刺

➃頭蓋内出血の既往歴

⑤血圧上昇(収縮期>185mmHg または拡張期>110nnHg

➅診察での活動性出血の所見

⑦急性出血傾向(以下を含むがこれらだけではない)

(1)血小板数<100000/㎣

(2)48時間以内のヘパリン投与によるaPTT>正常値上限

(3)現在抗凝固療法を受けており、INRが>1.7、またはプロトロンビン時間が>15秒

➇血糖値が<50mg/dl(2.7mmol/L)

➈CT所見が複数の脳葉におよぶ脳梗塞(大脳半球の1/3以上が低吸収域)を示す

 

■相対的除外基準

➀非常に軽度で急速に改善している脳卒中症(自然に消失している)

➁発作後に残存する神経学的障害を伴う痙攣

➂過去14日以内の大手術または重篤な外傷

➃最近の消化管出血または尿路出血(過去21日以内)

⑤最近の急性心筋梗塞(過去3か月以内)

(AHA ACLS-EPマニュアル リソーステキストより)

 

5、血栓溶解療法(t-PA治療)の副作用

血栓溶解療法の副作用は、出血性脳梗塞です。脳梗塞では、脳の血管が詰まったことによってその先の血管ももろくなります。治療によって再灌流を果たすと、この血流に耐えきれず、血管の壁が破れて出血を起こし、今度は出血性脳梗塞となり、致死的な合併症となります。数%未満ではありますが、消化器・膀胱・肺などの臓器出血を起こしたり、出血に伴う貧血・血圧低下・発汗・熱感・発熱もあります。出血と別の副作用には、アナフィラキシーや不整脈・血管浮腫・頭痛などが報告されています。

 

6、血栓溶解療法(t-PA治療)の看護

血栓溶解療法は超急性期の治療なので、T(テンポラリー)として経時記録形式をとることも多いかと思います。t-PA(グルトパ®)静注後は24時間は出血傾向が続きます。ここでは、出血リスクを早期に発見し、対応するための計画を立案していきます。

 

6-1、看護問題

血栓溶解療法により、全身における出血のリスクがある

 

6-2、看護目標

出血徴候を早期に発見できる

 

6-3、看護計画

■O-P

1.バイタルサイン

2.意識レベル・神経学的評価(GCS・JCS・瞳孔など)

3.麻痺の有無・経時的変化の有無

4.頭痛の有無

5.嘔気・嘔吐の有無

6.出血傾向の有無

(末梢ライン挿入部・採血痕・口腔内からの出血、尿の性状、その他全身の皮下出血)

7.転倒・転落アセスメントスコア

8.患者の疾患・治療に対する理解度

9.せん妄の有無・程度

10.採血データ(とくに凝固機能)

 

■T-P

1.血圧が医師の指示範囲内を超えないよう、適宜指示薬を使用しコントロールする

2.周囲に危険なものを置かないように環境整備する

3.転倒・転落アセスメントに応じて、離床センサーやベッド下にマットレスを設置する。

4.口腔ケアは口腔ケア用スポンジブラシを使用し、愛護的に行う

5.採血や処置後の止血は圧迫止血をし、必ず止血を確認する

6.介助の必要な場合は適宜トイレ介助を行い、転倒による出血を防ぐ

 

■E-P

1.本人・家族へ、治療前にt-PAによる効果と副作用を説明する

2.移動する際には必ずナースコールを押すように説明する

3.愛護的な口腔ケアを指導する

 

まとめ

脳梗塞は、t-PA導入によって劇的な治療効果をあげるようになりました。しかし、リスクの非常に高い治療であることを念頭に置き、患者・家族からの既往歴や服用中の薬剤の情報収集により適応を見極め、投与後も出血させないよう予防に努める必要があります。また、適応基準や禁忌については各医療機関でガイドラインを設けていることも多いため、必ず所属機関のマニュアルを確認しましょう。

 

参考文献

t-PA静注療法とは何ですか?(国立循環器病研究センター|2007/07/01)

日本脳卒中学会

血栓溶解療法(静脈内投与)(脳梗塞急性期 脳卒中治療ガイドライ|2009)

国立病院機構 京都医療センター 

rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法マニュアル(虚血性脳血管障害急性期|2012)T

 


CCUの看護|集中治療に携わる看護師に求められる3つのポイント

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CCUの看護

CCUはCoronary Care Unitの略で、基本的にはICU(Intensive Care Unit)と同じ集中治療室です。生命の危機にある重篤な患者さんを治療するため24時間体制で全身管理を行うことを目的としています。CCUは、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈系疾患を専門とする集中治療室です。近年では、重症心不全・致死性不整脈・血行動態が破綻した肺血栓塞栓症などの重症の循環器疾患や心血管系の重症疾患全般を対象にするところが多くなっています。

 

1、CCU看護師の役割

集中治療における看護師の役割は大きく、責任も重大です。一刻を争う病状の中で適正な判断や対応ができなくてはなりません。このため、少しの変化も見逃さない観察力・集中力といった能力が要求されます。

また、集中治療やケアにおける最も基本的な問題には、病態生理・治療・看護についての理解を含め以下の知識や看護技術が必要とされます。

1.全身の循環管理

2.脳神経障害

3.呼吸管理

4.心電図・ペースメーカーの知識

5.多臓器不全

6.フィジカル・アセスメント

7.カテーテルやチューブなどの管理

上記以外にも危機的状況にある患者やその家族の心理について学び、ケアしていく技術を身につけておくこと、各機器や装置の操作や管理がきちんとできること等があります。自分が所属する集中治療室の設備や使用される機器について熟知しておくことが大切です。

 

2、CCU・ICUでの看護

ICUやCCUでは、急変のリスクが高く、集中治療を必要とする患者さんに対して生命維持のための看護はもとより、治療過程における日常生活機能の維持、精神的安定の維持、さらには家族への細かい配慮も含めたケアを行なっていかなくてはなりません。また、生命の危機状況にある患者は、自分では生理的ニードを満たすことができないため、日常生活上のすべての援助を必要としています。

 

2−1、観察

患者には心電図などのモニターが装着されています。これらのモニタリングとともに、直に患者を観察することで異常の早期発見とその対処に勤める必要があります。

①血行動態:心拍数・体温・中心静脈圧・血圧・心電図波形

②呼吸状態:呼吸音・動脈血ガス分圧・呼吸のリズムや深さ・呼吸数

③意識レベル

④血液検査

⑤1時間あたりの尿量や比重

⑥発汗・冷汗、皮膚色

⑦疼痛・苦痛の有無や程度

⑧カテーテル・チューブ・医療機器のチェック

 

2−2、コミュニケーション・看護ケア

CCUにいる患者の中には、挿管されている・意識障害があるため会話ができない人もいます。直接会話ができる患者とは比較的コミュニケーションが取りやすいですが、そうでない患者に対しては看護師の五感と患者の表情や眼差し等からサインを感じ取り対応していく必要があります。また、患者のみならず家族に対するケアも大切です。患者の状態や家族がいない時の様子などを説明し不安の軽減を図るとともに相談・励ましなどの心理的支援をしていきましょう。

①良肢位の保持・体位交換

②不安や苦痛に対するケア

③患者やその家族とのコミュニケーション

④日常生活ケア

⑤患者家族への精神的ケア

 

3、CCU看護マニュアルの活用

各医療機関には基本的に看護マニュアルが存在します。病棟やICU・CCU等それぞれの部署でマニュアルが作成・修正されていると思います。まずは自分の所属する部署の看護マニュアルをきちんと理解した上で一般的に販売されている書籍等を活用していくと良いでしょう。CCUエキスパート看護マニュアルなど循環器看護に必要な知識や手技、看護についての書籍が販売されているので、気に入ったものから読んでみることをお勧めします。また、「HEART Nursing」という医療雑誌を購読することで、心疾患領域の専門看護について様々なカテゴリーから学ぶこともできます。

 

4、CCU・ICU看護師のためのセミナーと参考書

現在CCUやICUに勤務されている方や、これから働きたい・集中治療について学びたいという医療者向けに様々な機関がセミナーや研修を行なっています。学会やセミナーに参加することで学べることが多々あります。また、他の医療機関の看護についても知る良い機会となるため、興味のあるものに参加してみましょう。以下にいくつかご紹介しますので参考にしてください。

ICU・CCU看護教育セミナー(日本集中治療医学会)

集中ケア認定看護師会

日総研セミナー

JSEPTICー特定非営利活動法人

セミナー(メディカ出版)

医学の友社

 

まとめ

ICUやCCUのような集中治療を必要とする所では生命の危機に瀕した重症患者を看るため、常に各状況に応じた適切かつ迅速な対応が求められます。一般病棟に比べると滞在期間は短いことが多いですが、限られた時間の中で患者さんの状態の変化を瞬時に判断し適切な看護実践を行なっていく必要があります。生命の危機の回避と回復に向けて多職種協働でチーム医療を行い、安全かつ的確な看護実践をしていきましょう。

 

参考文献

ICU・CCU看護教本 (医学図書出版株式会社|日本集中医学会|1994年2月20日)

有料老人ホームで看護師が必要とされるのは、2つの理由があるから

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有料老人ホーム看護

有料老人ホームとは、民間企業が運営する老人福祉施設を指します。特別養護老人ホームの入所基準が要介護3以上という規制がある中、有料老人ホームの需要も高まっています。今回は有料老人ホームの仕事内容や給与など、転職の際に気になる点についてまとめました。

 

1、有料老人ホームと特別養護老人ホームの違い

有料老人ホームというのは、設置主体は民間事業者(社会福祉法人でも株式会社でも可能)です。そして、有料老人ホームは提供するサービスによって、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3つのタイプに分けられます。有料老人ホームでは、このどのタイプかによって看護師の役割や仕事内容は異なりますが、基本的には医療行為を行わず、入居者の健康管理が中心となります。

 

<有料老人ホームの概要>

介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム
・介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設

・介護等が必要となっても、ホームが提供する介護サービスである「特定施設入居者生活介護」を利用しながら、ホームでの生活を継続することが可能

・生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設

・介護が必要となった場合、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護サービスを利用しながら、ホームでの生活を継続することが可能

・食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設

・介護が必要となった場合には、契約を解除し退去しなければならない

高齢者が入所する施設を探す際に最初に検討するのは、特別養護老人ホームが多いと思います。特別養護老人ホームと有料老人ホームは、どのような違いがあるのでしょうか。特別養護老人ホームは、地方公共団体・社会福祉法人が設置している公的施設で、介護を必要とする高齢者のためのものです。平成27年4月より原則として新規入所者は要介護度3以上という条件がつけられており、入りたいからと申し込んで入れるものではありません。しかし、公的施設であることから料金も有料老人ホームより安価で、本人の年金額だけで入所することも施設によっては可能です。

有料老人ホームは、介護だけでなく健康な高齢者を対象とする施設もあり、介護度を問わずに入ることができます。さまざまな対象に向けて受け入れ態勢を整えているため、丁寧なケアや対応を提供することができる一方で、人件費がかかる分金額も特別養護老人ホームの倍以上かかるという特徴があります。

 

2、有料老人ホームでは医療行為や介護はあるのか?看護師に求められる2つの力とは

有料老人ホームに入所している方の特徴としては、自立度の高い高齢者が多いことがあげられます。介護度の高い人であれば、金額の安い特別養護老人ホームも入所可能になるので、その対象にならない比較的介護度の低い人が入所していることが多いです。介護度の高い人も、自宅で介護していた人の急な用事や突発的な事情によってショートステイとして入ることもありますが、主な入所者は1人ずつ自室をもち、食事や入浴といった時間以外は自室で過ごすことのできる人達です。

有料老人ホームは常勤医師を設置していないため、基本的に医療行為はありません。提携病院の医師の指示によって、投薬や通院をします。よって有料老人ホームにおける看護師の業務は、直接介護をすることでも医療行為を行うことでもなく、健康管理と緊急時の対応になります。

 

<有料老人ホームにおける、看護師の主なスケジュールの例>

8:30  出勤

9:00  朝礼・申し送り

9:30  巡視・バイタルチェック

9:30  通院の付き添い、服薬準備

12:00  休憩

13:00  巡視

14:00  バイタルチェック

15:00  通院の付き添い、レクリエーションの参加など

16:00  巡視・記録、夜・翌朝の服薬準備

17:00  夕礼・申し送り

18:00  退社

 

これらが有料老人ホームにおける日常ですが、看護師に求められることはこれだけではありません。緊急時の判断と対応です。突発的な熱や意識レベルの低下など、状態に合わせて提携病院への受診を指示したり、救急車を要請して同乗するなど、状態に応じた判断が求められます。この緊急時の判断と責任こそが、看護師に求められることなのです。

 

3、 有料老人ホームの看護師の勤務体制は?夜勤について

有料老人ホームでは、看護師の24時間体制の勤務をうたっている施設もあれば、日中のみとしている施設もあります。24時間体制の有料老人ホームでは夜勤シフトもありますが、必ずしも夜勤があるとは限りません。夜勤のみ勤務する看護師もいますし、看護師個々で契約内容が違うため、交渉具合では日勤のみの勤務にすることも可能です。また、場合によっては比較的短期間で入れ替わる派遣というスタイルで勤務する看護師もいます。民間事業だからこそ、勤務の内容や看護師の設置体制は各施設によって違います。求人内容をよく見比べ、自分のライフスタイルや体調を考慮して検討しましょう。

 

4、有料老人ホームに勤務する看護師の給料は

看護師は勤務する場・勤務時間のどれも自由度の高い業種です。夜勤ありの急性期病院でバリバリに働くのも、有料老人ホームでゆったりと利用者と接しながらストレスフリーで働くのも、どちらも間違いではありません。働くスタイルの違いです。

公立病院の場合は医療機関ごとに大きな差はありませんが、民間の医療機関や有料老人ホームでは、年収・給料に大きな差があります。緊急時の対応がメインとして、平時はルーティンワークのみでも、満足いく給料を受け取ることも可能です。

 

まとめ

民間で運営する有料老人ホームは自由度が高い分、事業者によって勤務体制や給与が大きく違います。ホームの雰囲気も独自のものがありますので、ただ年収だけではなく、勤務内容や勤務時間もよく検討しましょう。何より、入所者がいきいきしている施設で働きたいものですね。

 

参考サイト

有料老人ホームの概要(平成25年度)(厚生労働省)

グループホームで勤務する看護師は、3つの緊急事態を予測しよう!

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グループホーム看護師

グループホームは、障害のある人が共同生活を行う住まいの場であり、原則はADLの自立している利用者に対し、家事等の日常生活上の支援を提供するものです。今回はグループホームでの看護師の仕事や業務内容・給与など、転職の際に気になる情報をまとめました。

 

1、グループホームって、どんなところ

グループホームは、軽度の障害を有し独りで暮らすには不安のある高齢者が、主に家事援助などの支援を受けながら利用する生活の場です。利用者像としては、食事や入浴の支援を想定していますが、年々利用者の障害は重くなっているのが現状です。

 

<グループホームの概要>

◯グループホーム、ケアホームは、障害のある方が地域の中で家庭的な雰囲気の下、共同生活を行う住まいの場

◯1つの住居の利用者数の平均は5名程度

具体的な利用者像

具体的な支援内容

必要な設備等

・単身での生活は不安があるため、一定の支援を受けながら地域の中で暮らしたい方

・一定の介護が必要であるが、施設ではなく、地域の中で暮らしたい方

・施設を退所して、地域生活へ移行したいがいきなりの単身生活には不安がある方 など

・グループホームは介護を要しない者に対し、家事等の日常生活上の支援を提供。

・ケアホームは、介護を必要とする者に対し、食事や入浴、排せつ等の介護を併せて提供

・共同生活住居ごとに1以上のユニットが必要

・ユニットの入居定員は2人以上10人以下

・居室及び居室に近接して設けられる相互に交流を図ることができる設備を設ける

・居室の定員:原則1人

・居室面積:収納設備を除き7.43㎡

グループホームは一般的に住宅街に立地することが多く、1施設における人数は原則10名以下となっています。ですから、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設に比べると小規模で、担当する利用者(入所者)の数も少ないのが特徴です。身寄りのない独居の高齢者が生活保護を受けてグループホームに入所していることも多く、ニーズは年々高まっています。

 

2、グループホームの看護師の配置基準

グループホームでは、利用者9人に対しスタッフ3人が必要とされていますが、この3人を全て看護師にする必要はありません。厚労省発表の『指定認知症対応型共同生活介護等に関するQ&Aについて』中の医療連携体制加算について内で説明されていますが、看護師を設置していると、加算をとることができるということです。

しかし、年々障害の重い入所者が増えてインスリン管理などを必要とする入所者も増加しており、介護士のみで入所者の生活を指させることは難しくなっています。看護師を常駐させるには交替要因なども必要となるため、実際は日中のみ看護師が勤務し、夜間はオンコール体制をとっていることが多いです。

 

3、グループホームの看護師の仕事内容

グループホームでは、原則として介護(ケア)を必要とすることは少なく、ADLの介助については介護士の担当となります。では、看護師の役割・実際の業務内容は何があるのでしょうか。

 

<グループホームにおける看護師の業務>

①バイタルサインの測定 → 入浴の可否や受診の必要性を判断

②服薬管理(血糖測定やインスリン注射を含む)

③必要時、排便処置(浣腸や摘便)

④食事介助と見守り、必要時吸引

⑤急変対応、医療機関への付き添い

⑥突発的な出来事への対応(膀胱留置カテーテルの抜去や外傷など)

⑦定期通院の付き添い

⑧家族との連絡調整

グループホームは、生活の場です。ですから、普段は検査や処置といった医療行為がルーティンワークとしてあるわけではありません。グループホームにおいて看護師が必要とされる本当の意味は緊急事態への対応です。

 

<グループホームで発生する3つの緊急事態とは!?>

・誤嚥による窒息

・急な意識レベルの低下

・転倒による外傷

これらは、頻度は高くないもののグループホームに勤務していると年に数回発生します。そんなときに対応するのが、私達看護師なのです。中央配管システムのないグループホームでもポータブルの吸引機を常備しているくらい、窒息は身近に潜む問題です。また、高齢者が多いために脳血管疾患によるレベル低下、転倒による外傷なども看護師の介入が必要とされる緊急事態です。

 

4、グループホームの看護記録

グループホームでは、「こう書かなくてはいけない」といった看護記録はありません。自分の不在時に誰が読んでもわかる記録を残しておくということは必要ですが、医療機関のようにSOAPやPOSの書き方をしなくてはいけないという決まりはありません。ですから、看護計画や看護記録といった形式的なもののため残業は少なく、ブランクがあって看護診断がわからいない人やデスクワークが苦手な人にとって、生活重視の場で勤務する方がストレスは少ないかもしれません。

 

5、グループホームの看護師の給料

グループホームは、原則1施設で9人までとなっています。裕福な人が入るというよりは、孤独な人、生活保護を受給している人が多いということもありますし、経営的に余裕のある施設は多くありません。そのため、看護師を常勤で配置することが難しく、パート勤務の看護師のみでやりくりしているホームもあります。転職先としてグループホームを検討するのであれば、年収ではなく仕事の内容や自分にとっての適性で選択することをお勧めします。

 

まとめ

「医療の第一線で働くには荷が重い」「ゆったりと人に向き合いたい」という人は、これまでせっかくの看護師という資格を活かすことができずにいました。看護師の活躍する場は病院だけとは限りません。高齢社会となった現代では、高齢者の生活を支える場で働くことも可能です。

グループホームの良いところは、医療現場ではないところです。高い年収を期待することは難しいですが、医療機関(特に急性期)での勤務に抵抗のある人やブランクの長い人にとっては、家事育児の経験と看護師資格の両方を活かせる場となるでしょう。

 

参考サイト

グループホームとケアホームの現状等について(厚生労働省|2013年7月26日)

医療連携体制加算について(指定認知症対応型共同生活介護等に関するQ&Aについて|厚生労働省|2006年5月2日)

グループホーム 設置・運営マニュアル(『質の高い』グループホームを創るための設置・運営マニュアルの作成、および、グループホーム・ケアホームの世話人・生活支援員および管理責任者、管理者向け研修の実施|障害のある人と援助者でつくる 日本グループホーム学会|2007年)

乳児院で働く看護師が知っておくべき6つの要点

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乳児院看護師

「乳児院」と聞いてみなさんはどのような仕事を思い浮かべますか?看護師の職場は病院に限らず介護施設や老人福祉施設、保育園、幼稚園、乳児院などにもあります。様々な看護職の中で、ここでは乳児院についてご紹介します。これから「乳児院で働いてみたい!」とお考えの看護師さんの参考にしていただけたらと思います。

 

1、乳児院とは

乳児院とは、棄児、両親の病気あるいは死亡などの理由、または保護者の何らかの事情で家庭において養育することができない乳幼児を預かって養育する施設で、児童福祉法37条に定められた入所型の児童福祉施設です。乳幼児の基本的な養育機能に加えて障害児・病児・被虐待児などに対応できる専門的養育機能を持ちます。医療を目的とするものではありませんが、乳幼児の養育には医学的配慮、看護上の配慮が必要です。

乳児院は、主に出生後すぐから1歳未満の乳児を24時間体制で養育します。1歳以上の児童は通常、児童養護施設で養育されますが、乳児院でも必要な場合には小学校入学前まで継続して養育を行うこともあります。

 

2、乳児院での看護

乳児院で養育されるのは、何らかの理由により親と過ごすことができない子供達です。このため、その子供達にとって乳児院は家庭の代わりになります。親の代わりを看護師や保育士が担っているのです。親のように愛情を注ぎ、子供が安全に過ごせるようサポートしていく必要があります。普段の関わりから一人一人の様子を把握しておくことで身体的、精神的な変化の発見につながります。

 

3、乳児院での看護師の役割

乳児院には看護師の他に保育士や栄養士、臨床心理士、児童相談員、委託医など様々な職種が存在します。それぞれの職種の役割分担や関わりを知っておくと上手く連携が取れて円滑に仕事を進められますね。主に看護師と関わると思われるのが保育士です。

保育士は保育のプロです。乳幼児のお世話を行うのが主な仕事です。

①子供の遊び

②食事介助

③着替え

④授乳

⑤散歩

⑥しつけ

これらを行うのが保育士の役割です。保育士は子供達のために様々なことを考えてお世話をしていく役割を担っています。

一方、看護師としての役割はどうでしょうか。

子供の日々の体調管理や日常生活ケアはもちろんのこと、心のケアも必要とされます。乳幼児は体の不調を自分から訴えることが難しいため、鳴き声の変化や普段との様子の違い等、ちょっとした変化に気付き体調の変化を判断できる能力が求められます。乳児院の看護師は、施設毎に最低限の看護師しか配置していないため、求められる責任は大きくなると言えます。

  • 身体的発育
  • 栄養状態
  • 精神運動発達
  • 行動発達
  • 日常生活上の感染予防

病院との大きな違いは、乳児院は「家」として存在しているものであり、病院と違って必ずしも医療が必要な子供がいるというわけではない点です。私たち看護師は、通常の看護業務よりも子供達の体調管理・健康管理を主にしていく役割を担っています。看護師としてある程度の臨床経験と予防医療に関する知識や技術を持ち合わせていることが必要です。

 

4、乳児院における看護師の配置基準

乳児院の看護師の配置基準には、最低基準と措置基準がありますがどちらも同じ基準となっています。看護師の乳児院での配置基準は以下のようになっています。

4ー1、最低基準

・乳児10人以上:乳児10人で2人以上(以下10人毎に1人)

・乳児10人未満:乳児7人以上で看護師1人以上(7:1)

 

4ー2、措置基準

・乳児10人以上:乳児定員10人で2人以上(以下10人毎に1人)

・乳児10人未満:看護師1人以上(乳児7人に対して看護師1人以上)

 

5、乳児院での看護師の給料

これまでの経験や資格を活かして乳児院で働こうと考えたら当然お給料の額も気になりますね。

乳児院で働く看護師の年収は、転職先によって異なりますが、400万円から450万円前後と言われています。一般病院と比較すると3年から5年目の看護師と一緒かそれより少ないぐらいの年収と言えるでしょう。しかし、乳児院の数が病院に比べて少ないことや乳児院自体の求人案件も少ない上に、人気が高い職種であるため、競争率が高い看護求人でもあります。定着率が高くなかなか空きができないことが一つの原因ではないでしょうか。転職して年収をアップさせたいとお考えの看護師には給料面で見るとあまり期待できないかもしれませんが、子供が好きだという人にとっては、やりがいのある職場でしょう。求人が少なく人気が高い転職先となると、個人で探すのは難しいのが現状です。色々な条件を考慮した上で乳児院への転職を決めたのであれば、やはり看護師求人サイトへの登録が良いのではなかと思われます。ご自分の条件や要望を提示して希望に合ったところを紹介してもらえます。

 

6、乳児院での勤務

乳児院は24時間体制で運営されているため、一般病院と基本的には一緒ということになります。基本的には1日の労働時間は8時間ですが、シフト勤務(日勤、夜勤の交代制)を採用しています。小さいお子さんがいる等、家庭との兼ね合いを考えると仕事と家庭を両立させていくことは難しい職場であると言えます。基本的には各勤務帯につき看護師は一人であるため、急に休むことができないためです。「夜勤が厳しい」という場合には、転職サービスを利用して日勤専従の乳児院看護師を探してもらうのも一つの方法です。

 

7、看護師として働くメリット・デメリット

どのような職場で働くにしても良い面とそうでない面があります。病院と乳児院とではどのような面でメリット・デメリットがあるのでしょうか。これらについても知っておくと転職活動をする際や働き始めてからの参考になるでしょう。

  • 病院で働く時のような過度なストレスがない

・健康管理がメインの仕事であるため命に直接関わるような処置を行うことがありません。しかし、何が起こるかわからないのが子供です。子供達の様子についてはきちんと把握しておくことが必要です。特に重症心身障害児を預かっている施設では、迅速な対応が求められるため観察力や状況に応じた判断力がなくてはなりません。

  • 子供達の成長を日々感じ取れる

・親代わりとなって養育する場であるため、子供達が日々成長していく姿を直に見て感じられるところに喜びとやりがいがあるのではないでしょうか。

  • 給料が少なめ

・先にもご紹介したように、給料は病院勤務に比べると少ないのが現状です。

  • 看護師の募集求人が少ない
  • 各勤務帯につき看護師は一人である

全国の乳児院の一覧で御覧ください。

 

 

まとめ

私たち看護師は、乳児院では基本的に健康管理や発育状況などに注意を払って日常生活援助を行っていく必要があります。施設には寝室・病室・観察室・日光浴室などを設けることが義務付けられています。子供の成長に合わせた各職種からの関わりや援助を行い、愛情を持って子供達と接していくことで健やかな発育、社会への適応性を養うなどの自立支援に取り組んでいくことが大切です。

 

参考文献

社会的養護の施設等について(厚生労働省)

乳児院での保育実践における看護ニーズの検討(川崎医療福祉学会誌Vol18 No2 383-392|若井和子 小河孝則|2009年)

社会的養護の現状 (1)施設数、里親数、児童数等(児童家庭福祉の動向と課題 139ページ|厚生労働省雇用均等・児童家庭局|2017年4月25日)

最低基準等及び措置費における職員配置基準について 1.乳児院(厚生労働省)

クリニックでの看護師の仕事が人気なワケ|選ばれる3つのポイント

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看護師クリニック

クリニックの看護師の仕事は、病院の外来での仕事に似ていて、なんとなく楽そうなイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。クリニックは転職先として選ばれる人気の仕事でもありますが、それには仕事内容や給料などの条件に選ばれる理由があります。詳しくみていきましょう。

 

1、クリニックでの看護師の仕事とは

ひろせクリニック

引用:医療法人社団光城会 ひろせクリニック

 

クリニックの看護師の仕事内容は、診療の介助が主な仕事になります。クリニックは、病院のような入院施設がないので、診療の受付時間前に出勤して、診療の準備を行い、一般外来のように医師の指示のもとに、診療の介助と注射、検査、処置、与薬などの看護業務を行います。診療時間が終わると、後片付けや、翌日の準備、記録物のまとめという仕事もあります。勤務時間は、クリニックの診療時間にもよりますが、診療時間の前後1〜2時間前に出勤し、1〜2時間後に退勤するということが多いです。夕方で診療が終わるクリニックもありますが、美容外科や不妊治療などを行なっているクリニックは、一般の仕事が終わった後に受診できるように、やや遅めの時間まで診療しているというところもあります。その場合、夕方で診療が終わるクリニックは18時くらいには退勤としているところがありますが、夜まで診療を行なっているところは早番や遅番というようなシフト制で勤務することになります。診療の介助には、レントゲンなどの放射線技師の介助、手術介助も行うこともあります。クリニックの看護師は、他の施設で働いている看護師より楽そうなイメージですが、行う業務は多岐にわたっているのです。

クリニックは、医師が独立して開業するというものが多いため、オープニングスタッフとして働くこともできます。オープニングスタッフとなると、1からスタッフとともにクリニックを作り上げる楽しさがあるでしょう。また、パートの看護師にもクリニックの看護師は人気の仕事です。それは、短時間でも働きやすく、残業が少ないということがあります。

 

2、クリニックで働く看護師の給料事情

様々な仕事をこなすクリニックの看護師の給料事情はどうなのでしょう。クリニックで働く看護師は、常勤の看護師と非常勤(パート)の2種類の看護師がいます。常勤の看護師は、決められた出勤日数と勤務時間で、残業があることもあります。しかしその分、ボーナスもあります。手取りでの給料は病院勤務の看護師とほぼ変わらないかもしれませんが、夜勤がなく夜勤手当がないので、手取りは病院勤務よりも少ない可能性もあります。非常勤は時間給となるために、希望または決められた時間と日数勤務することで給料が支払われます。

常勤の給料は基本給があり、手当などがつくということは病院勤務の看護師と同じです。しかし、勤務する場所や診療科によって、基本給が異なります。例えば、一般内科で診療が日祝日は休み、夕方までの診療となると、病院勤務の看護師より基本給は低くなることがありますが、週休2日で休みの曜日は不定、勤務時間は早番遅番などシフト制で、手術介助がある美容外科では、病院勤務の看護師よりも基本給が高いということがあります。この給料の差は、仕事の複雑さと勤務時間の縛りの違いによって変化するといえます。これによって、クリニックで働く常勤の看護師の年収は300〜500万円とばらつきがあります。

非常勤(パート)は、時間給での勤務になりますが、一般的に、クリニックで働く看護師の時給の相場は1000〜1800円となっています。平均的には1400円前後が多くなっています。クリニックによって基本給や手当などが異なりますのでよく調べてみてください。

 

3、クリニックの看護師を選ぶ理由

クリニックの看護師を選ぶ理由

引用:東京ミッドタウンクリニック

 

クリニックの看護師の仕事は、夜勤がなく、患者さんとの関わりがその日その日となるということが特徴なので、なんとなく病院で働いている今よりは楽そうというイメージがあり、病院で勤める看護師が転職する先として選ぶ人気の仕事となっています。また、病院で働く看護師が仕事を辞めたいと思う理由には、人間関係があります。クリニックでも、もちろん他の看護師との関わりはありますが、病棟での看護師よりは人数が少ないこと、医師との関わりも病院とは違うということが、クリニックを選ぶ理由となっています。また、病院には看護師寮を完備しているところもありますが、最近はクリニックでもを備えているところもあります。クリニックで働きながらも、生活がしやすい寮があるのは、魅力の一つといえるでしょう。

パートやバイトとして選ぶ理由として、他の職種より時給が高いということがあります。クリニックは、時給が比較的高い割に、看護師としても働けて、残業がないので人気があります。このようにクリニックで働くのは、病院勤務の看護師よりも条件がいいように思われ、病院で働くよりも魅力的ではありますが、新卒や1年目の看護師はクリニックで働くことは難しいかもしれません。それは、クリニックでの業務は、様々な処置や検査、診療介助を行うので、ある程度の看護師としての経験や技術が必要なのです。

 

4、クリニックに就職するためには?

クリニックでの就職でも、病院のように面接などがあります。もちろん、面接にはきちんとした就職活動用の服装で行くようにし、普段着で行ってはいけません。大きな病院のような就職試験はないことがありますが、面接は必ずあり、志望動機や雇用条件を示し合わせる場としては不可欠なものです。面接の前には事前に必要事項を履歴書に書いて提出し、その履歴書を元に面接が行われます。そのため、病院を辞めてクリニックへの就職を希望するなら、楽そう、簡単そうというような志望動機は隠しておくようにし、クリニックでどのような仕事をしたいのかということを志望動機として記入するといいでしょう。面接時にも、志望動機を聞かれることがあるので、自分の言葉で言えるようにまとめておくようにしましょう。

 

5、まとめ

クリニックで働く看護師は、夜勤がなく、人間関係も悪くないようなイメージで、病院で働くよりも楽そうなイメージがありますが、クリニックで行う看護業務は外来の診療介助業務以外にもあり、責任がある仕事なのです。しかし、病棟での仕事や人間関係とは異なる状況にはなるため、気分一新で仕事をしたい時には合うものかもしれません。そして、パートやバイトとしても時給が比較的高く、働く時間も自由にできることが多いため、人気があるのです。クリニックでの仕事は決して楽ではないかもしれませんが、条件が合えば働きやすい環境といえるでしょう。

看護師の派遣と単発バイトの4つのメリットとデメリット

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看護師の派遣と単発バイト

看護師の働き方として、最近選ばれているものに派遣で働く看護師や単発のアルバイトでの看護師というものがあります。看護師の働き方としてあまり聞きなれない派遣やバイトはどのようなもので、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。派遣看護師と単発バイト看護師についてご紹介します。

 

1、派遣の看護師という働き方

看護師の派遣での働き方は、一般的な派遣社員と同様で、派遣先が病院や外来の他、保育園や有料老人ホームデイサービス検診センターなどの施設となります。仕事の内容は、その場所で働く常勤の看護師とほぼ同じ内容になりますが、雇用条件が異なります。派遣の看護師は、看護師の派遣を行なっている派遣会社からの紹介での雇用になり、派遣会社との契約になります。そして、一般的な派遣会社の派遣社員と同じように、契約期間が数ヶ月から年単位で設定されており、短期から長期の契約での仕事となります。そのため、病院などの派遣先での雇用条件の交渉は派遣会社が行い、直接派遣先とのやりとりは行いません。派遣の看護師として働く人の中には短期間働き、契約が終わると旅行などの趣味の時間にして、また短期間働くというライフスタイルを送っている人もいます。

デイサービス

引用:社会福祉法人訓子福祉会

 

2、単発のバイト看護師とは

単発バイトでの看護師は、派遣の看護師とは違って長期間同じ場所で働くわけではなく、1日や半日、または何日間か連続での仕事になります。単発のバイトには、コンサートなどでの救護室での仕事であるイベントナースや、会社や学校などの旅行に添乗するツアーナースがあります。他に、病院で働く夜勤専従のバイトもあります。夜勤専従の場合は、その病院との契約で長期間働くこともできます。単発のバイトを選ぶ人には、ダブルワークとして仕事をしているということの他に、いろいろな単発のバイトやパートでの仕事を行なって生活しているという看護師もいます。

詳しい仕事内容は、こちらで確認してください。

 

3、人気・おすすめの単発バイト

単発のバイトでおすすめなのは、イベントナースやツアーナースです。イベントナースは、コンサートや大きなイベントでの救護室での仕事になりますが、イベントの裏側や、様々な職業の人と関われる仕事なので、病院ではできないような経験ができます。また、ツアーナースは、旅行気分で仕事ができるので、旅行好きな人にはおすすめです。単発の看護師の仕事は常勤で働きながらもすることができるので、休みの日にするバイトでも気分転換にもなるかもしれません。どちらも、病院の看護とは全く違う場所での仕事なので、楽しく働くことができるでしょう。他には夜勤専従の仕事もあります。昼の時間を有効に使いたいという人にはおすすめの仕事です。夜勤専従の仕事は主に病院の病棟での夜勤や、救急外来での仕事があります。

ツアーナース

引用:大分県立宇佐高等学校

 

4、派遣や単発に看護師として働く志望動機とは

最近は、常勤ではなく派遣看護師や単発のバイトを仕事として選んで行なっている看護師が増えています。その志望動機は、長期間病院看護師として働き人間関係などで心も体も疲れ、長期ではなく短期間で働きたいからということがあります。長期間、同じ場所で働くと、看護業務の他に人間関係の煩わしさが出てくるものです。しかし、短期間での仕事なら、人間関係が深くなる前に終了することができるので、このようなストレスが少なくなる可能性があります。また、短期間で働いて契約が終わったら旅行など趣味でリフレッシュし、再び派遣で短期間の仕事をするというライフスタイルをしている人もいます。他には、単純にお金が欲しいという動機で、常勤をしながら単発でバイトをしているという人もいます。働くときには志望動機を履歴書に書かなくてはなりませんが、どんな志望動機でも正直に書いて良いことと、良くないことがあります。履歴書を書くときはマナーもありますのでよく調べてから書くようにしましょう。

 

5、派遣看護師・単発バイト看護師として働くメリットとデメリット

楽しそう、病院の仕事より楽そうな派遣看護師や単発のバイト看護師として働くには、メリットとデメリットがあります。メリットとデメリットそれぞれについて、詳しくみていきます。

 

5−1、派遣看護師・単発バイト看護師のメリット

①ダブルワークができる

常勤として働きながら、休日に単発のバイトをすることができます。単発でのバイトには、いろいろな種類の仕事があり、病院とは違う内容の仕事があるので、リフレッシュとしても良い機会になります。

 

②高時給である

看護師のバイトや派遣は、他の職種と比べて時給が高いものが多いので、短期間でも、短時間でも良い給料となります。また、日払いでの仕事もあるため、すぐに現金が欲しい時などに役立てることができます。

 

③人間関係が煩わしくない

看護師は女性が多く、人間関係の問題はよくありますが、派遣や単発のバイトでは短期間で職員と関わるため、長期間関わるためにできるような人間関係の煩わしさはないでしょう。

 

④いろいろな場所で仕事ができる

派遣でも単発のバイトでも、働く場所は様々です。同じ場所で長く働くことはなく、行ったことがない場所で仕事をすることも多くなります。特に派遣看護師では、看護師の数が少ない地方での仕事もあり、リゾート地で仕事をすることも可能です。

 

5−2、派遣看護師・単発バイト看護師のデメリット

①社会保険がない

派遣や単発のバイトだけを仕事としている場合、長期間同じ場所で働くわけではないので、その働き先では社会保険に加入はできません。もし、単発でも同じ場所で月に決められた日数働くなら社会保険に加入できる場合はありますが、それは特例であることが多いのです。もし、本業で長期間働いている場所がなければ、社会保険のうち健康保険は国民健康保険に加入することになり、国民年金は自分で手続きを行う必要があります。

 

②医療行為がない

派遣や単発のバイトの仕事だと、病院以外で働くことが多く、一般的な看護師の仕事としての医療行為をすることができないこともあります。病院への派遣なら医療行為はありますが、常勤ではないので、任される仕事は雑用となることもあります。看護師らしく医療行為をしたい場合は、病院で働かなければならないでしょう。また、ツアーナースやイベントナース、施設での仕事は、看護師が1人または2人程度なため、医療的な判断が必要になります。病院での看護業務より楽なイメージがありますが、状況によっては大変なこともあるのです。

 

③ボーナスがない

派遣看護師や単発バイトの看護師にはボーナスがありません。特例として、何年間かの契約で働く派遣看護師にはボーナスがあることもあります。

 

④本業に支障が出ることもある

常勤をしながらバイトを行う場合、疲労などで本業に支障が出ることもあります。バイトをするときは、ほどほどにする必要があります。また、バイトを認めていない医療機関もあるので、本業の決まりを確認する必要があります。

 

まとめ

看護師の仕事には病院や施設で常勤として働くこと以外にも、派遣やバイトという選択肢があります。派遣やバイトの看護師は楽しそうでメリットが多いようなイメージですが、反面デメリットもあるので、ライフスタイルとメリット、そしてデメリットを比べて選ぶようにすると良いでしょう。本業とのダブルワークで行う場合は、本業の施設の決まりを確認して行うようにしてくださいね。

熱中症の看護|症状や看護観察項目、看護の2つのポイント

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熱中症看護

近年、熱中症がニュース等で大きく取り上げられています。一般外来や救急外来で働いていると、熱中症の患者に出会うことも多いのではないでしょうか。

「たかが熱中症」と思うかもしれませんが、重篤な後遺症が残ったり、命を落とすこともあるので、看護師は正しい知識を持っておかなくてはいけません。熱中症の基礎知識や症状、救急外来での看護観察項目、看護のポイントをまとめました。熱中症の患者の看護をする時の参考にしてください。

 

1、熱中症とは

熱中症とは、高温多湿の環境に体が対応できなくなったことで、様々な症状が出る病気の総称です。熱中症になると、体温調節機能が働かなくなるため、体温が上昇し、自分で調節できなくなります。通常は、私たちは暑い環境にいても発汗や皮膚の血流量を増加させることで熱を放散させ体温を調節します。

平常時の体温調整反応

出典:熱中症予防情報サイト 熱中症の予防方法と対処方法(環境省)

 

しかし、次の3つの要因によって、体温調節機能が破綻します。

・高温多湿の環境

・体調(高齢者や乳幼児、基礎疾患がある、体調不良である等)

・行動(運動、水分摂取をしない等)

体のバランスの破綻

出典:熱中症予防情報サイト 熱中症の予防方法と対処方法(環境省)

体温調節機能が働かなくなることで、熱が体の中にこもるようになり、体温が上昇して熱中症を発症します。

 

2、熱中症の症状

熱中症になると体温が上昇することで様々な症状が現れます。熱中症はその重症度によって症状が違うのです。

重症度 症状 診断・分類
Ⅰ度 めまい、立ちくらみ、失神、生あくび、大量の発汗筋肉の硬直、筋肉痛、口渇感、気分不快、四肢のしびれ 熱けいれん、熱失神、熱ストレス
Ⅱ度 頭痛、嘔気・嘔吐、虚脱感、倦怠感

集中力低下、判断力の低下

熱疲労
Ⅲ度 意識障害、小脳症状、痙攣発作、高体温、

肝機能障害・腎機能障害

血液凝固異常

熱射病

Ⅰ度では意識レベルはクリアです。Ⅱ度になると、意識クリアの場合もありますが、JCSⅠのレベルに落ちることはあります。Ⅲ度になると、JCSⅡ以下にまで意識レベルが低下します。

 

3、外来での熱中症の看護観察項目

夏場はたくさんの熱中症患者が来院します。東京都内だけで、毎年4000~5000人が熱中症で搬送されているのです。以下のグラフは東京消防庁管轄内で1年に熱中症で搬送された患者数になります。

熱中症の患者数

出典:熱中症関連(公益社団法人東京都医師会)

 

これだけ多くの熱中症患者がいるのですから、看護師は患者を観察して重症度を見極め、院内トリアージをする必要があります。

外来での熱中症の看護観察項目は、次の通りです。

・意識レベル

・バイタルサイン

・経口での水分摂取の可否

・自覚症状

・他覚症状

・基礎疾患の有無

・発汗の状態

・熱中症になった環境(労作性か非労作性か)

救急外来や一般外来の看護師は、これらの看護観察項目をチェックして、院内トリアージをして、治療の優先順位を決める必要があります。特に重症度でⅡ度以上は輸液等の治療が必要になることがありますし、高体温の時間が長くなればなるほど予後が悪くなるというデータ1があります。そのため、看護師が熱中症患者の院内トリアージを行うことは非常に重要ですから、看護観察項目はしっかり把握しておきましょう。

 

4、熱中症の看護の2つのポイント

熱中症の患者の治療・看護のポイントは、次の2つになります。

・体温を下げる

・脱水や電解質を補正する

重症患者の場合は、これ以外に横紋筋融解症に対する治療や肝機能・腎機能障害や多臓器不全の治療、DICの治療なども行いますが、基本的にはこの2つの治療を中心に行います。

 

4-1、体温を下げる時の看護のポイント

熱中症患者は、とにかく体温を下げることが大切になります。先ほども説明しましたが、高体温の時間が長くなれば、予後が不良になりますので、いかに早く体温を下げるかが重要なのです。

重症の場合は、深部体温が38℃台になるまで冷却をしますので、救急外来やICUでは直腸温や膀胱温などを持続的に確認しながら、冷却を行います。

・体表に水をスプレーする

・濡れたガーゼで体表を覆い、扇風機の風を当てる

上記の方法が救急の臨床現場では広く使われます。アルコールを噴霧すると、熱放散を促すことはできますが、経皮的にアルコールが吸収されることがあるので小児患者には使用しません。また、成人にも使わないことが多いです。

設備が整っている病院では、冷水を入れた浴槽に患者を入れて全身を冷やすこともあります。ただ、この冷却方法はモニターを装着しながらではできなかったり、心肺停止などの急変時には迅速に対応が難しいこともあるので、一長一短の方法であるとされています。

最近では、血管内冷却カテーテルを挿入して体を冷やしたり、水冷式体表冷却(ゲルパッド法、ラップ法)などの最新冷却法を取り入れている病院も増えてきていますが、日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2015」では、まだ症例数が少なく、十分な有効性の検討がされていないと結論付けています。また、氷嚢や冷たい輸液、冷水による胃洗浄などは、あくまで補助的なものという位置づけです。

 

体温を下げる時には、次の2つのことに注意して看護をしていく必要があります。

■シバリングに注意する

熱中症患者の体温を下げている時には、シバリングが起こることがあります。一気に体温を下げると、体温を戻そうとする体の機能が働くので、シバリングが起こり、体温が下がりにくくなることがあります。特に、氷嚢をたくさん使って、患者の身体を氷嚢で覆うようにすると、皮膚温が一気に下がります。

皮膚温だけを下げても深部温は下がりにくいです。しかも、皮膚温が30℃以下になると、シバリングが起こりやすくなります。深部温を下げることは重要ですが、シバリングを起こさないように、皮膚温を一気に下げ過ぎないよう注意しましょう。

 

■低体温に注意する

高体温が長時間続くと予後不良になりますので、熱中症患者は素早く体温を下げなければいけません。ただ、体温が下がり過ぎてしまうこともあるので、むやみに冷やせば良いというわけではないのです。

低体温になれば、循環・呼吸・神経系などの問題が生じますので、患者を冷却する時には、直腸温や膀胱温を注視して、モニターを確認しながら行うようにしましょう。

 

4-2、脱水や電解質を補正する時の看護のポイント

熱中症患者は脱水になっていることがほとんどです。意識障害がなく、自力での経口摂取ができる患者には、OS-1などの経口補水液を飲んでもらいます。経口摂取が不可能な患者には点滴をすることになりますが、患者の年齢や基礎疾患よっては、急速輸液は心不全や脳浮腫、肺水腫などのリスクがありますので、滴下速度は医師の指示をしっかり守らなくてはいけません。

また、急速輸液をする時には、血管痛が生じたり、血管外漏出が起こるリスクが高いので、刺入部を観察し、意識がある患者には痛みが生じたらすぐに報告するように指導しておいてください。

そして、水分出納をしっかり把握しておく必要がありますので、IN/OUTバランスはきちんと計算しておくようにしましょう。経口摂取をしている患者には、どのくらいの水分を摂取したかをきちんと報告してもらうように指導しておきましょう。

また、トイレに関しても、重症度によって、尿回数を確認すれば良いだけのこともありますし、尿量をチェックして尿比重などを確認すべきこともありますので、あらかじめ医師に確認しておかなければいけません。経口摂取の患者も輸液をする患者も、補液中は意識レベルや自覚症状、他覚症状の変化に注意していく必要があります。

 

まとめ

熱中症の基礎知識や重症度による症状の違い、外来における熱中症の看護の観察項目と看護のポイントを解説してきました。熱中症は高体温が長時間続くと、予後が悪くなりますので、看護師は病院を訪れた患者を観察してトリアージを行い、治療の優先順位を正しく判断する必要があります。さらに、素早く38℃台まで体温を下げるように看護を行っていきましょう。

 

参考文献

1)熱中症診療ガイドライン2015(一般社団法人日本救急医学会 熱中症に関する委員会|2015年3月31日)


バストバンド固定中の患者を安全に診るための3つの看護計画

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バストバンド看護上腕骨近位端骨折や肋骨骨折の保存療法で使われるバストバンド。バストバンドを使用することで、患部が安定し、動作による痛みが軽減するため、整形外科ではよく用いられます。肋骨骨折は高齢者の日常生活でも生じることがあり、家のテーブルやタンスの角で胸をぶつける、室内での転倒など、軽度のエネルギーで受傷する方が後をたちません。上腕骨近位端骨折も同様に高齢者の転倒で生じることがあり、若い人の場合はスポーツや事故で受傷することがあります。バストバンドは使い方を間違えば、呼吸苦や皮膚トラブルを生じることがあるので使用には注意が必要です。今回は、バストバンドを用いた固定の方法と観察ポイントを紹介します。

 

1、バストバンドとは

バストバンドとは、通称胸部固定帯ともいわれ、主に肋骨骨折の保存療法や、上腕骨近位端骨折の術前の患者に使われます。伸縮性がありマジックテープで固定できるため、様々な体型の患者に使用可能です。

アルケアバストバンド・エース

出典:アルケアバストバンド・エース(ASKUL)

 

2、バストバンドの目的

バストバンドの目的は、骨折部の保護と安静の保持です。骨折部は少しの体動で激しく痛みますが、バストバンドを装着することで患部が安定し、痛みが軽減されるのです。

 

2-1、肋骨骨折のバストバンド適応

肺や心臓、血管の損傷を伴っていない肋骨骨折の場合にバストバンド固定を行います。肋骨骨折は基本、保存的治療が原則です。骨折、不全骨折、レントゲンで骨折がはっきりしない打撲の場合でも同様にバストバンド固定を行うことがあります。骨折部痛が強いときには、鎮痛剤やシップを併用し様子を見ます。転位が激しい骨折の際は手術を行うことがありますが稀です。

 

2-2、上腕骨近位端骨折のバストバンド適応

転位の少ない場合、3~4週間の三角巾固定とバストバンド固定を行います。固定期間中も手指の腫れを軽減させるため、痛みや腫脹の程度に応じ手指のリハビリを積極的に行います。

 

3、バストバンド固定の方法(肋骨骨折の場合)

バストバンドは正しく使用しなければ皮膚障害や循環障害を起こすので注意が必要です。

 

3-1、必ず肌着の上から着用する

肌着なしで直接装着すると、皮膚障害が生じやすくなります。

 

3-2、骨折部に広い帯面がくるよう取り付ける

広い帯面がくるように取り付けることで患部が安定しやすくなります。

 

3-3、息を吸い込んだタイミングで上のマジックテープをとめる

呼吸のしづらさが生じないように、息を吸い込んだ時点でテープを止めます。

 

3-4 息を吐いて下側のテープを止める

下側のテープはウエストに近く、上のテープと同様に止めると緩んでしまいますので、息を吐いた時点で下のテープを固定します。

これで完了です。

肋骨骨折~胸部固定帯の使用法~

出典:肋骨骨折~胸部固定帯の使用法~(宏洲整形外科医院)

 

4、バストバンド固定の方法(上腕骨近位端骨折の場合)

上腕骨骨折の場合、自分で巻くことは難しいので、医療者が実施します。

 

4-1、肌着の上から装着する

肋骨骨折の時と同様、バストバンドの下には下着やパジャマを着るようにしましょう。腕を固定するので、袖のある服を選びます。

 

4-2、三角巾を装着する

このとき腕が下垂しないように注意しましょう。循環を妨げないために、手首側が肘より少し上になるように結びます。

三角巾の装着方法については、以下の動画を参考にしてください。

出典:誰でも簡単!三角巾の使い方(東京有明医療大学)

 

4-3、三角巾の上からバストバンドを装着する

体幹側面に上腕がぴったりくっつくように巻きます。呼吸が妨げられないよう、肋骨骨折の時と同様、息を吸った時にテープを止めます。

 

4-4、下側のテープは患側を包み込むようにして止める

両方のテープを患側の上に止めてしまうより患側を包み込むよう止めた方が患肢が安定します。

肩関節脱臼の整復・固定

出典:肩関節脱臼の整復・固定(大宮医療専門学校)

 

5、バストバンド固定中の3つの看護計画(肋骨骨折の場合)

①■看護計画:骨折による安楽障害

■看護目標:骨折部痛が軽減する

観察項目

・骨折部痛の程度

・表情、言動

・皮下出血の有無

・夜間睡眠状況脹の有無

・鎮痛剤の副作用の有無

■上腕骨近位端骨折の場合

・手のしびれの有無

・手指の動き(グーパーの動きはできるか)

・母指IP関節の自動屈曲ができるか(正中神経範囲)

・示指と中指の自動屈曲ができるか(正中神経範囲)

・母指IP関節、手指MP関節の自動屈曲ができるか(橈骨神経範囲)

■肋骨骨折の場合

・SPO2(肋骨骨折の場合)

・呼吸困難の有無(肋骨骨折の場合)

ケア項目

・痛みに応じ鎮痛剤使用

・バストバンド固定

・バストバンドの下から三角巾固定(上腕骨近位端骨折の場合)

・必要時体位変換

・咳、くしゃみの際は患部を押さえ、小さくこわけにして咳をするよう指導する(肋骨骨折の場合)

指導項目

・バストバンドの装着方法を本人、家族に指導する

・バストバンド装着中に気を付けるポイントを本人、家族に指導する

・痛みがひどい際はナースコールするよう説明する

・安静時に呼吸苦が出た場合は直ちにナースコールするよう指導する(血気胸、肺挫傷の可能性あるため)

 

②■看護計画:転倒リスク状態(骨折痛による動きの制限から)

■看護目標:入院中転倒しない

観察項目

・年齢(75歳以上は特に転倒リスク高し)

・睡眠剤の内服の有無

・痛みの程度

・ADL

・トイレまでの距離

・急激な環境の変化があるか

・認知症、せん妄の有無

ケア項目

・筋力低下がみられる場合や骨折痛が強く離床できない場合は、ADLに応じて尿道バルーン設置

・トイレまでの距離がある場合、夜間ポータブルトイレ使用

・ふらつきある場合移動時見守り行う

・認知症、不穏行動あれば必要時センサーマット設置

指導項目

・ふらつきあれば移動時ナースコールするよう説明

・ズボン上げ下ろし介助が必要な際はナースコールするよう説明

 

③■看護計画:皮膚統合性障害リスク状態

■看護目標:バストバンドによる皮膚トラブルを生じない

観察項目

・バストバンドの固定が強すぎないか

・バストバンド接触部の皮膚の状態

・バストバンド接触部に痛みは生じていないか

・シップ使用の際はシップによるかゆみ、かぶれがないか確認

・検査データ(ALB、TP、ヘモグロビン)

・発汗の有無

・体重

・皮膚脆弱性

・食事摂取量

ケア項目

・訪室時バストバンドの固定確認

・バストバンド下に違和感あれば巻き直す

・発汗があれば必要に応じて清拭、着替えの実施

指導項目

・皮膚に痛み、かゆみ感じればナースコールするよう説明

・発汗した際は着替えの促し

 

まとめ

肋骨骨折や上腕骨近位端骨折の保存療法として使われるバストバンド。バストバンド固定により骨折部が安定し、痛みが緩和され快適に日常生活が送れる一方で、巻き方を間違えれば皮膚トラブルや循環障害を起こすこともあるため、本人や家族への指導が必要です。病棟でバストバンド固定中の患者さんに出会った際は、わかりやすい生活指導を意識して行いましょう。高齢者の場合、再度自宅で転倒して骨折を起こすことも考えられるため、転倒しないよう自宅環境の整備、介護サービスの導入なども、本人家族と相談して退院後の生活が安心して送ることができるようサポートを行っていきましょう。

 

参考文献

ビジュアル整形外科看護(株式会社照林社 P20 105-106|佐々木由美子、黒佐義郎|2013年6月10日)

上腕骨近位端骨折(一般社団法人日本骨折治療学会)

肋骨骨折(一般社団法人日本骨折治療学会)

カウプ指数|計算式・方法、基準値、評価や看護の4つのヒント

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カウプ指数看護

成人の場合、肥満かどうかを表す指数はBMI(Body Mass Index)を用いますが、これは乳幼児には当てはまりません。乳幼児の栄養状態の確認や肥満判定に用いられる指数がカウプ指数です。乳幼児期の肥満は、将来の肥満につながります。

また、子どもの頃から動脈硬化が進行しますので、生活習慣病の原因になります。さらに子どもの肥満は日常生活にも影響をきたし、子どものQOLを下げる可能性もあるのです。カウプ指数の基礎知識や計算式・方法、基準値、評価や看護介入のポイントなどを知って、実際の看護に役立てていきましょう。

 

1、カウプ指数とは

カウプ指数とは、生後3ヶ月から5歳までの乳幼児の発育状態や栄養状態を確認するために参考にする指標の1つです。乳幼児の栄養状態は良いか、痩せすぎではないか、肥満ではないかなどを見る時に、このカウプ指数を用いることが多いです。成人はBMI(Body Mass Index)を用いますが、成人とは体型が大きく違う乳幼児にはBMIは当てはまらないため、カウプ指数が使用されます。

 

1-1、ローレル指数とは

子どもの発育状態を表す指数には、ローレル指数もあります。ただ、ローレル指数は学童を対象にした指数になります。高校生以上になると、BMIを用いて肥満かどうかの判定を行います。

 

2、カウプ指数の計算式・方法

カウプ指数の計算式は、次のようになります。

・カウプ指数=体重(g)÷身長(cm)2×10

これを見て気づいた人もいると思いますが、カウプ指数の計算方法はBMIと似ています。ただ、注意しなければいけないのは、体重と身長の単位が違うことです。カウプ指数の計算式では、体重の単位はグラム(g)、身長の体位はセンチメートル(cm)になります。

 

3、カウプ指数の基準値

カウプ指数の基準値は、厚生労働省では次のように明記しています。

 

<厚生労働省の基準値1

体型 基準値
やせぎみ 14以下
ふつう 15~17
ふとりぎみ 18以上

3ヶ月の乳児と5歳の幼児では体型が全く違いますので、年齢によって基準値を設けていることもあります。

 

<年齢別の基準値2

年齢 普通体型の範囲
乳児(3ヶ月~11ヶ月) 16~18
満1歳 15.5~17.5
満1~2歳 15~17
満3~5歳 14.5~16.5

ただ、このカウプ指数の基準値は、普通体型の範囲を超えたら絶対に肥満というわけではありません。カウプ指数はあくまで「目安」になります。

 

4、カウプ指数の評価や看護のヒント

カウプ指数は乳幼児の肥満判定に用いられることが多いです。一昔前は乳幼児の肥満はさほど問題視されていませんでしたが、現在は乳幼児期の肥満は、将来の肥満や生活習慣病の原因になり、さらに子どものQOLを低下させる要因になるため、早めに治療が必要であるとされています。

乳幼児期の肥満は、次のような問題が起こります。

・将来の肥満の原因になる

・子どもの頃から動脈硬化が進行して、生活習慣病になる

・膝や腰など筋骨格系の発達に影響が出る可能性がある

・骨折などの外傷が多くなる

・「肥満」がコンプレックスになり精神的抑圧を受けることがある

このような問題があるため、カウプ指数で肥満と判定されたら、治療や看護介入をすべきなのです。

また、カウプ指数は肥満ばかりが取り上げられますが、痩せすぎかどうか、つまり栄養状態が良くない状態かどうかを評価することもできます。栄養状態が悪いと、今後の発育・発達に影響が出てきますので、看護介入をして行く必要があります。

 

4-1、カウプ指数の評価はあくまで目安

カウプ指数は、3ヶ月~5歳までの乳幼児の栄養状態を評価するものですので、肥満かどうかの目安となる指標です。しかし、カウプ指数だけで肥満かどうかを評価してはいけません。カウプ指数はあくまで肥満かどうかの目安であり、カウプ指数だけで評価できるものではありません。

肥満かどうかを評価するためには、カウプ指数以外に、肥満度も用います。

肥満度の計算方法は、次の計算式になります。

・肥満度=(実測体重-標準体重) / 標準体重×100(%)

幼児の場合、肥満度の基準は15%以上で「太りぎみ」、20%以上は「やや太りすぎ」、30%以上は「太りすぎ」になります。

また、痩せすぎかどうかを評価する時には、カウプ指数のほかに成長曲線で-2SDの曲線を下回っていないかどうかも確認しておく必要があります。

 

4-2、カウプ指数で標準ではない乳幼児への看護のヒント

カウプ指数で標準ではないと評価された乳幼児には、看護介入をしていく必要があります。太りすぎか痩せすぎかで具体的な看護計画は変わってきますが、看護のポイントは同じです。

 

■多角的なアセスメントが必要

カウプ指数で標準外(太りすぎ、または痩せすぎ)と判定された乳幼児に看護介入する時には、多角的なアセスメントが必要になります。

・患児の生活習慣

・親の生活習慣

・食事量

・運動量

・親の理解度

・親子関係

・病気が原因ではないか

子どもの肥満は、親の影響が非常に大きいですから、乳幼児本人だけでなく親や家族、生活環境に関するアセスメントもしっかり行う必要があります。多角的にアセスメントを行うことで、その子の肥満(痩せすぎ)の原因が見えてきますので、看護計画の立案に役立ちます。

また、子どもの肥満は食べ過ぎによる単純性肥満が多いですが、先天性異常などの二次性肥満の可能性もあります。痩せすぎの場合も、単純に食が細いだけでなく、何らかの疾患が原因のこともありますので、多角的なアセスメントを行うようにしましょう。

 

■支持的なかかわりをする

カウプ指数で標準範囲外だった場合、その親はとても不安になります。自分の育て方が悪いのか、普段の食事がいけないのかと悩み、親である自分が悪いのかと自分を責めるようになります。だから、看護師は親に共感し、寄り添い、支持的なかかわりをして、看護介入をしていかなくてはいけません。

「体重を増やす必要性(体重を減らす必要性)」を説明すると、親は責められていると感じます。そのため、必要性を説明するよりも、どうやったらカウプ指数で標準範囲に入るように体重をコントロールできるのか一緒に考えていくことが大切であり、親への精神的なケアも重要な看護になります。

 

■家族を巻き込んで看護介入をする

乳幼児の肥満(もしくは痩せすぎ)への具体的な対処法は、家族の協力が必要不可欠になります。そのため、食事療法や運動療法は家族を巻き込んで、家族が一緒に行えるものを提案し、指導しなければいけません。特に、母親だけでなく父親や家族全員を巻き込んで協力してもらうことが大切です。

例えば、肥満の子どもの食事療法を母親だけに指導して、父親の理解を得られていない場合、どんなに母親が頑張って食事療法をしても、父親が子どもにおやつを与えてしまうかもしれません。

また、母親だけに指導すると、母親だけに子どもの発育の責任を押し付けてしまうことになり、母親を精神的に追い込むことになりかねません。だから、家族全員を巻き込んで看護介入していく必要があるのです。

 

■継続的な看護介入が必要

カウプ指数で標準範囲外と評価された乳幼児には、継続的な看護介入が必要になります。カウプ指数自体が、年齢によって基準値が変わってくるものですし、肥満や痩せすぎは一時的に解消するだけで良いというものではなく、それを維持していく必要があるものだからです。そのため、カウプ指数で標準範囲外と評価された乳幼児とその家族には、継続的に看護介入をして子どもの発育を確認していかなければいけません。

 

まとめ

カウプ指数の基礎知識や計算式・方法、基準値、評価や看護のポイントなどをまとめました。カウプ指数は乳幼児の栄養状態・発育状態を判定でき、肥満や痩せすぎの評価に使える指数です。ただ、年齢によって基準値は変わりますし、あくまで目安の1つになる指標ですので、カウプ指数だけで「痩せすぎ」、「太りすぎ」と判定することはできません。カウプ指数で標準範囲外と評価された乳幼児には家族を巻き込みながら、継続的に看護介入していくようにしましょう。

 

参考文献

1)21世紀出生児縦断調査(特別報告)結果の概況(厚生労働省|2009年3月18日)

2)BMI,ローレル指数,肥満度 の解説(Kodama’s tips page)

腰痛の看護|原因と4つの看護問題・看護計画、緩和ケアのポイント

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腰痛看護

腰痛を訴える患者はたくさんいます。たかが腰痛と思うかもしれませんが、腰痛によって患者のQOLが大きく低下することもあります。腰痛によって発生する看護問題をしっかり把握し、看護計画を立ててケアをしていかなくてはいけません。

腰痛の原因や看護問題、看護計画、また緩和ケアで重視すべきことなどをまとめましたので、腰痛の患者の看護をする時の参考にしてください。

 

1、腰痛の原因

腰痛の原因は、主に5つに分類することができます。

①整形外科疾患によるもの

②内臓疾患によるもの

③心・血管系疾患によるもの

④皮膚疾患によるもの

⑤精神的な問題によるもの

 

 

分類 疾患
整形外科疾患 圧迫骨折、急性腰痛症(ぎっくり腰)、椎間板ヘルニア、変性すべり症等
内臓疾患 膵臓がん、膵炎、胆のう炎、腎盂腎炎、腎・尿路結石、子宮筋腫、卵巣嚢腫等
心・血管系疾患 心筋梗塞、狭心症、大動脈解離、腹部大動脈瘤等
皮膚疾患 褥瘡、帯状疱疹等
精神的な問題 ストレス、不安、身体表現性障害等

腰痛の原因というと、整形外科疾患を思い浮かべることが多いですが、それ以外の疾患でも起こることがあります。時には、命に関わる深刻な疾患のサインになることもありますので、看護師は様々な原因を考慮してアセスメントをする必要があります。

 

2、腰痛の看護問題

腰痛がある患者には、どのような看護問題が発生するのかを考えて、看護計画を立案していかなければいけません。腰痛の患者の看護問題は、腰痛の原因や程度、患者の状態によって変わってきますが、主に次の4つが挙げられます。

・慢性疼痛(急性疼痛)

・転倒リスク状態

・セルフケア不足

・不使用性シンドロームリスク状態

 

■急性疼痛(慢性疼痛)

腰痛の痛みは患者にストレスを与え、不眠や食欲低下の原因となるものですから、看護問題として挙げる必要があります。急性疼痛か慢性疼痛はその患者によって違いますので、患者の状況を考慮して判断してください。

 

■転倒リスク状態

腰痛の程度によっては、歩行がうまくできず、転倒のリスクが大きくなることがあります。転倒すれば、骨折等の危険がありますので、転倒せずに過ごせるように看護介入していかなければいけません。

 

■セルフケア不足

腰痛が辛いと、セルフケアにも影響が出てきます。腰痛の程度によっては、トイレに行けなかったり、入浴が困難になることも少なくありません。日常生活においてセルフケアができるように看護問題として挙げて、ケアをしていく必要があります。

 

■不使用性シンドロームリスク状態

痛みが強いと、動くことができません。また、痛みが強くなることに恐怖を覚えて、自ら動こうとしないこともあります。腰痛によってベッド上から動かないと、筋委縮、関節拘縮、心機能低下、血栓塞栓症、せん妄などの廃用症候群を発症するリスクが高くなります。特に、高齢者は廃用性症候群のリスクが高いですから、不使用性シンドロームリスク状態を看護問題として挙げて看護介入をしていく必要があります。

 

これら4つの看護問題は、患者の状態によって優先順位が変わってきます。アセスメントをしっかり行って、4つの看護問題の優先順位を考えて下さい。

 

3、腰痛の看護計画

次に、腰痛の看護計画を説明していきます。先ほど説明した4つの看護問題に基づいて、看護目標を設定し、看護計画を立案していきましょう。

 

■急性疼痛

まずは、疼痛の看護計画です。急性疼痛なのか、慢性疼痛なのかで看護計画の詳細は変わりますが、共通する部分も多いです。

ここでは、腰痛が発症したばかりの患者を想定して、急性疼痛で看護計画を立案します。

看護目標 疼痛が軽減し、睡眠や食事に影響を及ぼさない
OP(観察項目) ・疼痛の部位や持続時間
・疼痛の程度(NRSなどを用いて)
・バイタルサイン
・睡眠状況・表情や言動・食事量
TP(ケア項目) ・安楽な体位を取ってもらう

・気分転換を促す

・冷罨法

・不安などの訴えを傾聴する

・医師の指示に従い鎮痛薬を投与する

EP(教育項目) ・痛みを我慢せずに伝えるように指導する
・痛みが強くなったら、すぐに伝えてもらうように指導する・鎮痛薬を使えることを伝えておく

慢性疼痛の時も基本的には看護計画は同じですが、冷罨法ではなく温罨法を用いるのが一般的です。

 

■転倒リスク状態

看護目標 転倒せずに安全に入院生活を送ることができる
OP(観察項目) ・歩行状態やふらつきの有無
・腰痛の程度・バイタルサイン・ベッド周囲や病室、病棟の環境(ベッドの高さや危険物、障害物はないかなど)・病衣や履物
TP(ケア項目) ・必要時は歩行介助をする

・車イスや歩行器の使用を検討する

・ベッドの高さを調整する

・環境整備を行い、危険物・障害物は除去する

・動きやすい(歩きやすい)病衣や履物を用意してもらう

・必要時は離床センサーを使う

EP(教育項目) ・歩行に不安がある時にはナースコールで呼んでもらうように指導する

・転倒した時の危険性を説明する

 

■セルフケア不足

今回は、腰痛によって入浴が困難で、トイレへの移動も難しいという患者を想定して、看護計画を立案します。

看護目標 ・一部介助で入浴ができる
・ポータブルトイレで排泄できる
OP(観察項目) ・腰痛の程度(NRSなどを用いて)

・腰痛の持続時間

・ADLの自立度
・歩行時のふらつきの程度

・生活習慣

TP(ケア項目) ・入浴は一部介助で行う

・浴室の安全を確保する

・入浴時は声掛けをし、見守りを行う

・ポータブルトイレを設置する

・必要ならポータブルトイレへの移動介助を行う

・プライバシーに配慮する
・指示に基づいて入浴前に鎮痛薬を投与を行う

EP(教育項目) ・できることは自分でやってもらうように説明する

・セルフケアの重要性を説明する

・家族にも不要な手出しはせずに見守ることの重要性を説明する

 

■不使用性シンドロームリスク状態

看護目標 廃用性症候群を予防できる
OP(観察項目) ・腰痛の程度(NRSなどを用いて)
・ADL・バイタルサイン・廃用性症候群の有無や程度・離床への意欲の程度
TP(ケア項目) ・気分転換を促す

・離床を促す

・必要時は医師の指示に基づいて鎮痛薬を投与する

・歩行が困難なら歩行器や車イスを用意する

・腰痛から起こるストレスや痛みによる離床への不安を傾聴する

・関節可動域運動などベッド上でできる運動を行う

EP(教育項目) ・廃用症候群について説明する

・離床の重要性を説明する

・痛みが強くて離床ができない時は鎮痛薬を使えることを説明する

・離床が厳しい時はベッド上でできる運動を指導する

 

4、腰痛を緩和ケアで看護する時のポイント

緩和ケア病棟に入院している患者は、腰痛を訴えることが多いです。膵臓がんや子宮がん、大腸がんなどは、進行すると腰痛を引き起こしますし、脊椎に骨転移することでも腰痛が出てくるからです。

緩和ケアで腰痛を訴える患者には、先ほど説明した4つの看護問題と看護計画に基づいたケアをするだけでなく、全人的なケアをする必要があります。なぜなら、腰痛は精神的なストレスや不安で発症し、さらに増悪することもあるからです。緩和ケアでは、基本的に全人的なケアが必要ですよね。これは腰痛の看護にも当てはまることです。

だから、緩和ケアでは腰痛からくる疼痛を薬剤や温罨法などでしっかり取り除くだけでなく、不安などを傾聴し、患者が穏やかに「自分らしく」過ごしていけるように看護していかなければいけません。

 

まとめ

腰痛の原因や看護問題、看護計画、緩和ケアでの看護のポイントをまとめました。腰痛は様々な原因があることを考慮してアセスメントしていかなくてはいけません。また、腰痛は患者のQOLを低下させるものですから、疼痛緩和のための看護をしながら、患者のADLが落ちないようにケアしていきましょう。

化膿性脊椎炎の2つの基本的治療、抑えておきたい看護のポイント

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化膿性脊椎炎の看護

化膿性脊椎炎は、細菌が脊椎に入り込んで炎症を起こす疾患です。40~50代に多く、男性が女性の2倍の発生頻度があるとされていましたが、近年は高齢者の発症も増加傾向にあります。化膿性脊椎炎の病態生理と基本的な治療、看護師に求められることをまとめました。

 

1、化膿性脊椎炎 とは

化膿性脊椎炎は細菌が脊椎に入り込んで炎症を起こし、重症化すると膿が神経を圧迫して麻痺を呈し、重篤なケースでは敗血症を併発する疾患です。感染症であることから、感染性心内膜炎や糖尿病などの基礎疾患を有する人に多いとされていますが、近年は高齢者やがんの術後など、免疫力の低下した易感染性宿主(compromised host)の増加が問題になっています。まずは化膿性脊椎炎の症状・原因から理解を深め、基本的な治療方針とそのために必要な看護を検討し、看護計画に発展させていきましょう。

 

1-1、化膿性脊椎炎の症状

・発熱

・腰痛、頸部痛(発症部位の多くが腰椎と頸椎であるため)

・殴打痛

・圧痛

・運動痛

・下肢のしびれ

・下肢の筋力低下、麻痺

主な症状は発熱と疼痛で、痛みは感染部位(病巣)に起こります。感染部位は腰椎が半分以上を占め、頸椎・胸椎がその後に続きます。多くの感染部位が腰椎であることから、化膿性脊椎炎の症状としては腰痛が多くを占めています。

しかし、発熱については腰痛緩和のために鎮痛薬を使用しているケースや高齢者では典型例を示さないことから、発熱がいつから起きているかや熱型などの詳細がはっきりしないことも多々あります。

痛みの種類は殴打痛・圧痛・運動痛があり、初期から訴える患者がいる一方で、はっきりしないこともあります。診断と治療が遅れて、膿瘍が脊柱管内に侵入した場合や椎体破壊によって脊柱管が圧迫されると、下肢のしびれや麻痺などの神経症状を呈するようになります。重篤な場合では敗血症を併発し、易感染性宿主にとっては致死的となるケースもあります。

 

臨床現場では腰痛という症状からすぐに化膿性脊椎炎と診断することは難しく、IDSA(米国感染症学会)のガイドラインでは、病歴・身体所見・血液検査を“総合的にみて疑うべき”と提言しています。

化膿性脊椎炎の診断には、同じように脊椎に炎症を起こす「結核性脊椎炎」や類似する所見を呈する「転移性脊椎腫瘍」との鑑別診断も含め、CTやMRIなどの画像検査が有効です。とくにMRIでは90%の診断率があるとされています。

化膿性脊椎炎

出典:化膿性脊椎炎(徳山貴人|2013年11月1日)

 

上の写真では、化膿性脊椎炎の所見として以下の内容が見られます。

・椎間板腔の狭小化

・椎体上下縁の不整像

・椎間板上下の椎体の信号変化

 

化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis、椎体炎)のMRI画像診断はこちらの動画でも詳しく説明されていますので、参考にしてください。

 

出典:化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis、椎体炎)のMRI画像診断

 

化膿性脊椎炎は、腰痛や発熱といった自覚症状に加え、ガイドラインにのっとった採血・各所見による診断と画像診断を総合して初めて確定診断がつくものと言えるでしょう。では、今度は化膿性脊椎炎を発症してしまう原因について考えていきましょう。

 

1-2、化膿性脊椎炎の原因

化膿性脊椎炎の原因は、脊椎の細菌感染です。基礎疾患として感染性心内膜炎などの先行する感染症や、易感染状態となる糖尿病やがんがあります。また、近年は高齢化によって高齢者の罹患も増加しています。感染経路の主たるものは血行性で、黄色ブドウ球菌が約半数を占めます。

 

<化膿性脊椎炎の感染経路>

・血行性(他の病変から流れてくる)

・外傷や手術による直接感染(尿路感染など)

・近くの組織からの浸潤・連続感染

 

<化膿性脊椎炎の起因菌>

・S.aureus(黄色ブドウ球菌)

・MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)

・E.coli(大腸菌)

・Streptococcal species(連鎖球菌)

・CNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)

・Pseudomonas auruginosa(緑膿菌)

 

化膿性脊椎炎は更に、発症時の熱型や自覚症状によって3つに分類することができます。

<Kulowski分類>

急性型 高熱、強い腰背部痛など典型的な急性症状で発症するもの
亜急性型 37度台の微熱で発症するもの
慢性(潜行)型 発熱がなく、腰背部痛をきたすもの

化膿性脊椎炎は、なかなか早期診断の難しい疾患です。腰痛症の患者は整形外科受診者の多くを占めますし、安易な鎮痛薬の使用によって発熱を確認できないこともあります。

また、化膿性脊椎炎と症状が類似する転移性脊椎腫瘍との鑑別も重要です。診断の遅れは感染による重篤化や治療の遷延を招き、更に悪化すると麻痺や敗血症を引き起こし致死的な状態を招くこともありますので、早期の診断と起因菌の同定が治療の要となります。

典型的な症状を示す急性型と違い、亜急性型や慢性型は確定診断をつけるまでに時間を要することがありますが、早期に診断して以下に述べる治療につなげることが、重症化予防にとって重要です。

 

2、化膿性脊椎炎 の治療

化膿性脊椎炎の治療は、抗菌薬の適切な投与と、装具の使用を含めた局所の安静です。しかし、抗菌薬に抵抗性を示し、高度な椎体破壊や急性に麻痺が進行するケースでは手術が適応となります。

治療は血液培養で陽性を確認するとともに、感受性検査も行うことから始まります。抗菌薬は起因菌に対して感受性のあるものでなければ効果が得られないため、治療前の血液培養では起因菌同定が必須となります。そのため、検体は2セット(感染性心内膜炎の合併が疑われる場合は3セット)採取することが望まれます。血液培養の結果が陰性の場合、確定診断には針生検が必要となるため、血液培養よりも侵襲度は高くなります。

 

3、化膿性脊椎炎の看護過程

化膿性脊椎炎の基本的治療は適切な抗菌薬投与と安静です。そのため、化膿性脊椎炎の患者に対する看護の必要性は、疾患の理解や安静の徹底、ADLの制限に伴う介助など多岐にわたります。

①化膿性脊椎炎の重症化予防と早期発見の必要性がある

②化膿性脊椎炎に伴う疼痛がある

③化膿性脊椎炎の治療による安静から、筋力低下を起こす

 

4、化膿性脊椎炎  看護計画

上に挙げた化膿性脊椎炎の患者が抱えている問題に対し、ここでは①に注目して、看護計画を立案していくことにします。

 

①化膿性脊椎炎の重症化予防と早期発見の必要性がある

目標:疾患を理解して安静が保持できる

疼痛や神経症状などの症状を、医師・看護師と共有することができる

 

OーP(観察)

1、疼痛の有無・程度、部位

2、神経症状の有無(しびれや脱力感・麻痺など)

3、バイタルサイン(発熱の有無)

4、血液データ(CRP・WBC・血沈などの炎症所見)

5、血液培養の結果

6、化膿性脊椎炎に対する患者の理解度

7、患者の訴え

 

TーP(実施)

1、医師の指示により抗菌薬・鎮痛剤を適切に使用する

2、安静期間は必要に応じて清潔・排泄等のADLの援助を行う

3、ADLの援助を行う際には、プライバシーを確保する

4、呼びやすいようにナースコール(ボタン)の場所を配慮する

 

EーP(教育)

1、化膿性脊椎炎の疾患について説明する

2、安静の必要性、治療計画を説明する

3、異常を感じたときやADLの介助が必要なときは、遠慮なく言うように説明する

 

まとめ

化膿性脊椎炎は症状だけで鑑別診断することが難しい疾患ですが、治療が遅延すればするほど重症化します。入院患者には安静をしっかり守るように教育していくことに加え、神経脱落症状の出現など症状増悪時にはすぐに訴えるように説明し、重症化を防ぐ必要があります。

更に、ADL制限に伴う苦痛を少しでもやわらげること、安静による下肢筋力低下などの二次的な障害の発生を予防するようにリハビリ等コメディカルと連携することも、看護師には求められます。

 

参考文献

化膿性脊椎炎(徳山貴人|2013年11月1日)

整形外科疾患ビジュアルブック(学研メディカル秀潤社|落合慈之、下出真法|2018年1月29日)

発達障害を持つ子どもの心身をケアするための2つの看護計画

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発達障害看護

自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などからなる発達障害。発達障害をもつ子どもはその症状により学校になじめず不登校となったり、心のトラブルだけでなく心因性の身体症状を伴うことがあります。少しの言葉で傷付きやすいので、今何で悩んでいるのか、信頼関係を築きながら援助していくことが大切です。発達障害を持つ子どもの心と体のケアと看護計画についてお話します。

 

1、発達障害とは

発達障害とは、発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」とされています。

 

2、発達障害の診断

本人・家族からの問診、心理検査、脳画像検査(CT/MRI)、知的機能検査(各種発達検査)、 特殊な認知機能検査(WCST、CPTなど)を通して、時間をかけて包括的に評価し決定します。

 

2-1、学習障害

学習障害はアメリカ精神医学学会の診断基準「DSM-Ⅳ-TR」で4タイプに分類されます。知的な遅れや感覚障害はないにも関わらず、中枢神経系の機能障害より特異な基礎的学力の障害があると考えられています。特に小学2~4年生などの読み書きや計算式を要求される学年での成績不振などで学習障害に気づくことがあります。学習障害の4タイプは以下の表を参考にしてください。

下位分類 内容
①読字障害 ②算数障害 ③書字表出障害 ④特定不能の学習障害 ひらがな・漢字がなかなか覚えられない、作文が書けない、計算はできるが文書題が解けないなど

出典:小児看護学 子どもと家族の示す行動への判断とケア(日総研出版p340 表109 学習障害の下位分類と内容|筒井真優美|2010年10月)

 

2-2、注意欠陥|多動性障害

注意欠陥|多動性障害(通称ADHD)は、不注意、多動性、衝動性の3つの症状からなり、1つのことに集中できず他のことに移ってしまったり、常に動き回りじっとしていられなかったり、待つことができず考えなしに行動してしまったりなどの行動が見られます。7歳までに多動|衝動性、不注意、または両方の症状が現れ、それらのタイプの程度により、多動‐衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型に分けることができます。以上の理由から、周囲と適応しにくいことがあり、行動上の問題が実際よりも重大であると周囲から誤解されることもしばしばあります。

 

2-3、広汎性発達障害

広汎性発達障害は、自閉症およびその近縁疾患のことを指します。自閉症は、対人的相互反応の質的障害、コミュニケーションの質的障害、行動、興味および活動の限定された反復的で情動的な様式の3つの行動症状からなり、特徴として、視線があわない、一人遊びを好む、会話ができない、母親の後追いをしない、反響言語が多い、文字や記号への著明な関心と記憶、同じものや同じやり方に強いこだわりを示すなどがあげられます。自閉症の典型的な症状は1歳台から始まります。こだわりが強いもの、好きなことには何時間でも集中できますが、新しいことや決まったことを変更して行うことが苦手です。広汎性発達障害の分類については以下の表を参考にしてください。

①自閉性障害(自閉症) ②レット障害(レット症候群) ③小児期崩壊性障害 ④アスペルガー障害(アスペルガー症候群) ⑤特定不能の広汎性発達障害(非定型自閉症を含む)

出典:小児看護学 子どもと家族の示す行動への判断とケア(日総研出版|p340 表111 広汎性発達障害の下位分類|筒井真優美|2010年10月)

 

3、発達障害の特徴

発達障害の子どもは、身体症状(特に夜尿、チック、頭痛、腹痛などの心因性と思われる症状)を伴いやすいです。また、無気力で倦怠感を伴う抑うつ症状や、いらいらして攻撃的になったり、相手の気持ちが理解できず意図せず相手を傷つけてしまったりすることもあります。以上の理由から、学校生活で問題を抱え、いじめの対象となってしまうことがあり、結果情緒の不安定が続き、不登校の原因となることもあるため注意が必要です。しかしながら、発達障害は症状や特性を本人だけでなく家族・周囲の人がよく理解し、その子どもに合わせた生活や、学校での過ごし方や人間関係を工夫することさえできれば、子どもの能力を十分に生かすことができます。だからこそ本人・家族、周囲が同じ目標をもって治療に臨むことが大切です。

 

4、発達障害の看護計画

発達障害をもつ子どもたちは、心因性の身体症状や、心のトラブルを持っていることが多々あるため、今その子どもに対して何が問題になっているのかを知り、どう信頼関係を築いて関わっていくかが大事です。以下、看護計画を挙げましたので参考にしてください。

 

4-1、心因性の身体症状による安楽障害

■看護目標:不安が軽減し身体症状が軽快する 観察項目

・表情、言動 ・夜間睡眠状況 ・腹痛、頭痛の有無 ・夜尿、排便の回数 ・チックの有無 ・学校での人間関係 ・学校での教師からのコメント ・体重 ・食事摂取量 ・やる気の有無 ・倦怠感の程度 ・家族関係

ケア項目

・遊びや絵画を通じて感情を表出する機会を作る ・受容的・共感的な態度で接する ・自責の念を和らげ、思いを受け止める ・希望的な態度で接する ・子どもの要求には可能か不可能かはっきり答える ・無理に考えを強要しない ・内服が苦手であれば服薬ゼリーなどで内服してもらう

指導項目

・地域と連携を図り家族へのサポート体制が整うよう支援する ・家族と子どもが同じ病気感を持っているか、治療目標を持っているか再確認し目標設定する ・家族の頑張りを認める

 

4-2、具体例

・内服治療をしぶしぶ続けている子どもの場合 →投薬を続けている頑張りを認めて褒める ・少しずつだが眠れるようになってきた不眠症の子どもの場合 →前回は眠れなかったのに少しずつ変化が起こっていることから、いずれ乗り越えられることを希望的に答える ・自閉症の子どもが工作をしている時の対応 →良い作品だということを伝え、ほかにも作品を作ったりしているのかなど、長所を褒めて伸ばす ・子どもがいじめにあっていることを自分のせいだと責める母親 →家族を責めず、母親自身が自責の念を抱いていること、周囲からもプレッシャーをかけられていることを理解し、自責感を和らげ自信をもてるような言葉をかける ・家族の負担が大きく家族の健康が心配な場合 →家族の睡眠・食事状況、子どもの送迎や家事の役割などを確認し、必要であれば家庭内外でサポート体制ができるように整える

 

まとめ

学習障害、注意欠陥|多動性障害、広汎性発達障害からなる発達障害を抱える子どもは、心身ともにトラブルを抱え、周囲となじめないことから不登校や自傷行為に走ることもあります。本人や家族との問診と、心理・認知機能・脳検査などを通して包括的に診断し、本人と家族が同じ病気感・治療計画を持って治療に臨むことが大切です。

 

参考文献

小児看護学 子どもと家族の示す行動への判断とケア(筒井真優美|日総研出版|p340ー344|2010年10月) ・発達障害とは(文部科学省) ・こころの発達診療部(東大病院) ・発達障害(厚生労働省)

気分障害とは|症状から見る5つの看護ポイント

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気分障害看護

私達は様々な感情とともに日常生活を送っています。喜びや悲しみ、怒り、落胆、幸福感などがそれにあたります。それらの感情が破綻し生活に影響を及ぼすような状況に陥った時、どのような症状が出てくるのでしょうか。

 

1、気分障害(Mood Disorders)とは

気分障害とは、日々感じている気分に障害をきたすこと、すなわち過度な悲しみや高揚が長期間に渡って持続し、身体的・社会的・職業上の機能に支障をきたしている状態を言います。生活の変化によるストレス・離婚や家族との死別・病気などを原因として発症することから、誰にでもなりうる病気といえます。

気分障害は大きく1.うつ病性障害、2.双極性障害(躁うつ病)の2つに分けられます。これらの違いや特徴・看護における注意点を踏まえて患者さんの社会復帰へむけて寄り添った看護をしていきましょう。

 

2、診断基準

気分障害におけるうつ病・双極性障害の診断基準に用いられているのは、DMS−5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)で、アメリカ精神医学会American Psychiatric Associationによって2013年に発行された精神障害の診断・統計マニュアルです。以前はDMS―Ⅳを基準として使用されていましたが、現在は一部改定されたDMS―5がメジャーになりつつあります。またWHOが作成するICD―10も用いられていますが、ここではDMS−5の診断基準を見ていきます。

 

2−1、うつ病性エピソードの診断基準:DSM−5

以下のA〜Cをすべて満たす必要があります。

A.以下の症状のうち5つまたはそれ以上が同一の2週間の間に認められ、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは抑うつ気分又は興味または喜びの喪失である。

①ほとんど毎日の1日中続く抑うつ気分

②ほとんど毎日の1日続く興味や喜びの消失

③食欲・体重の変化

④ほとんど毎日の不眠または過眠

⑤精神運動背の静止または焦燥(他者によって観察可能で主観的でないもの)

⑥気力の減退・疲労感

⑦無価値感や過剰または不適切な罪責感がほとんど毎日存在

⑧思考・集中・決断の困難

⑨自殺念慮や自殺企図

B. 症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている

C. エピソードが物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因とされない

D. うつ病性障害の出現は、統合失調性感情障害、統合失調症、統合失調症様障害、せん妄障害または他の特異的、非特異的な統合失調症スペクトラムおよび他の精神病性障害では上手く説明ができない

E. 過去に躁病性エピソードや軽躁病性エピソードはなかったこと

 

2−2.双極性障害(躁うつ病)の診断基準

〇双極性障害は以下のように分類されます。

〇双極Ⅰ型障害:うつ状態と躁状態がはっきりしている

〇双極Ⅱ型障害:うつ状態と軽躁状態が存在。うつ状態の期間が長く慢性化する傾向がある

気分循環性障害:軽いうつ状態と軽躁状態を繰り返す

➀.双極Ⅰ型障害:DSM―5

◆躁エピソード

以下のA〜Eをすべて満たす必要がある

A.気分が以上かつ持続的に高揚し、開放的で、または苛立たしい、いつもとは異なった期間が少なくとも1週間持続する

B.気分障害の期間中、以下の症状のうち3つまたはそれ以上が持続しておりはっきりと認められる程度に存在している。

・自尊心の肥大または誇大

・睡眠欲求の減少

・普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする

・観念奔逸またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験

・注意散漫

・目標指向性の活動の増加、または精神運動性の焦燥

・まずい結果になる可能性が高い快楽的活動に熱中すること

C.症状は混合性エピソードの基準を満たさない

D.気分の障害は、職業的機能や日常の社会活動または他者との人間関係に著しい障害を起こすほど、または自己または他者を傷つけるのを防ぐために入院が必要であるほど重篤であるか、または精神病性の特徴が存在する

E.症状は、物質の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患によるものではない

 

➁.双極性障害Ⅱ型:DMS―5

◆軽躁病エピソード

以下のA〜Eをすべて満たす

A.以上かつ持続的な高揚し・開放的または易怒的な気分、そして異常かつ持続的な増大した活動または活力が、1日のうちほとんどほぼ毎日存在するいつもと違った期間が少なくとも4日連続で持続する

B.気分の障害と活動と活力の増大の期間中、以下の症状のうち3つまたはそれ以上がはっきりと認められる程強く、通常のふるまいからの変化として持続して存在したことがある

・自尊心の肥大または誇大

・睡眠欲求の減少

・普段よりも多弁であるかしゃべり続けようとする心迫

・観念奔逸またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験

・注意散漫が報告されるか観察されること

・目標志向性の活動の増加または精神運動性の焦燥

・まずい結果になる可能性が高い楽しい活動に熱中すること

C.そのエピソードが、症状がない時のその人の性格特性ではない、昨日における明確な変化を示している

D.気分障害と機能の変化が他者によって観察できる

E.気分障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を起こすほど、入院が必要であるほど重篤ではない。もし精神病性の特徴が存在するのであれば躁病と定義する

双極性障害のイメージ

引用元:うつ病から双極性障害に診断が変わったのはなぜ?(医者が教えない精神科のこと)

 

3、看護計画

気分障害では気分や思考、言動あるいは身体面に特徴のある変化が見られます。それらの程度を把握し患者にとって必要な看護計画の立案・看護の実践をしていきましょう。

 

3−1.看護計画

①服薬の必要性を理解し適切な治療ができる

OP:観察

1.病識の有無と理解

2.拒薬の原因

3.服薬時の態度や服薬に関する患者の訴え

4.家族や患者の薬に対する不安等

 

TP:看護

1.服薬の介助・説明

2.服薬の確認

 

EP:指導

1.服薬の重要性と副作用について説明し、心配のないことを説明する

2.服薬の自己管理ができるよう状態に合わせて指導していく

 

②日常生活のバランスがとれ、トラブルを起こすことなく入院生活が送れる

OP:観察

1.多弁・多動・活動性の亢進

2.患者の表情・会話・態度

3.気分の日内変動(易怒性・興奮・暴力等)

4.患者自身の抑制力

 

TP:看護

1.トラブルになりそうな状況下では看護師が入り調整する

2.他者に対して悪影響を及ぼす恐れがある場合は、患者と話し合い活動範囲を決める

3.感情的にならず言葉づかいや態度に注意して対応し一貫した態度をとる

4.できるだけ静かな環境を整える

5.患者と約束したことは必ず守り待たせない

6.患者と共に到達目標を決める

 

EP:指導

1.不安や怒り、恐れなどの感情を言葉で表現するよう指導する

2.処置や検査等については簡潔に説明する

 

③適切な栄養・水分の摂取ができる

OP:観察

1.食事・水分摂取量

2.間食の有無や程度

3.体重の増減

4.検査データ

5.食事中の様子・味覚の変化

6.食事を摂らない理由

 

TP:看護

1.患者の負担にならない程度に付き添い介助する

2.患者の嗜好に合わせて食事形態を変更・工夫する

3.患者の好む場所で食べられるよう配慮する

4.食べることを無理強いしない

5.食事摂取が困難な場合には補液などを検討する

 

EP:指導

1.病院食以外にも好むものを食べられることを説明する

2.家族に差し入れを依頼する

 

④適切な休息が得られ活動と休息のバランスがとれる

OP:観察

1.睡眠パターン(入眠困難・中途覚醒・睡眠時間・早朝覚醒・熟睡感)

2.健康時の睡眠パターン

3.嗜好品の種類・頻度

4.不眠の環境因子・日中の睡眠状況

5.倦怠感

6.不安

7.活動状況

8.気分の変動

9.眠剤とその効果

 

TP:看護

1.改善可能な不眠の環境因子は、早急に対処し解決できるようにする

2.日中の睡眠が多すぎる場合は少し控えてもらい、起きて座位で過ごす時間を増やしていけるよう関わりをもつ

3.患者とともに日課表を作成、活動と休息のリズムを作る

4.不眠時は眠剤を使用する

5.不安や不眠に対する訴えがある場合は傾聴する

 

EP:指導

1.睡眠を妨げる嗜好品について説明し、できるだけコントロールするように指導する

2.意識的に日中活動することで不眠の改善に繋がることを説明する

3.眠れない時は眠剤を使用できることを説明する

 

⑤自発性の低下により清潔行為が行えない

OP:観察

1.更衣の状況

2.入浴・洗面・歯みがき等の日常生活行為の状況

3.清潔行為能力の程度

4.身辺の整理状況

 

TP:看護

1.必要に応じて入浴・洗髪の介助をおこなう

2.入浴が出来ない時は清拭を行う

3.ベッド周囲の環境整備をともに行う

4.洗面の声掛け

 

EP:指導

1.清潔保持の必要性を説明する

2.出来る事は自分で行うよう説明する

 

⑤自傷行為をすることなく入院生活が送れる

OP:観察

1.希死念慮の有無

2.精神状態

3.自傷行為の有無

4.表情・言動

5.睡眠状況

6.周囲の危険物の有無

 

TP:看護

1.患者とコミュニケーションをとり信頼関係を築く。患者自らが悩みを訴えられるように関わる

2.患者の訴え・行動・服装の把握

3.危険物の有無、取り扱いに注意する

4.自殺のサインを見逃さない

5.薬物の管理を十分に行う

6.希死念慮の訴えがある場合は自殺しない事を約束する

 

EP:指導

1.家族に現在の状況や内服薬の説明をする

2.外泊時は不審な行動があれば早く帰院するよう説明する

3.外泊時は患者を一人にさせないよう家族に説明する

 

4、看護のポイント

先に挙げた看護計画は一例であり、患者の状態に応じて必要な目標や解決するべき問題を計画に組み込んでいきましょう。看護師は、患者自身の観察はもちろんのこと、患者の気持ちに寄り添いながら支援や看護を行っていくことが大切です。

1.慌てず焦らずに少しずつゆっくりと行う

2.安易な励ましはせず、患者の気持ちに寄り添う

3.安心・リラックスできる環境で休息できるよう環境を整える

4.患者とコミュニケーションをとり、信頼関係を築く

5.患者にとって大きな決断はしない

 

まとめ

精神科での看護は、患者が本来持つ自立性を回復し「その人らしい生活」が送れるようになる事を目標とした関わりです。心の問題として病気を捉えがちですが脳神経細胞の形にも変化が生じている状態でもあり、正しい治療を受ける事で回復する事を患者さんに理解してもらえるよう関わりを持ち、社会復帰に向けて個々にあった看護実践をしていくことが大切です。

 

参考文献

日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅰ.双極性障害(2018年1月25日|日本うつ病学会、気分障害の治療ガイドライン作成委員会)

日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016(2016年7月31日|日本うつ病学会、気分障害の治療ガイドライン作成委員会)

うつ病(厚生労働省)

DSM−5精神疾患の分類と診断の手引き(2014年6月30日|日本精神神経学会|医学書院)

内視鏡検査の看護|内視鏡検査の3つの種類と看護のポイント

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内視鏡検査看護

内視鏡とは、先端に小型カメラを内蔵した細い管で、口や鼻、肛門からその管を挿入し、食道・胃・十二指腸大腸などの観察を行う医療機器です。内視鏡の歴史は古く、古代ギリシア・ローマ時代にその起源はさかのぼると言われています。よく「胃カメラ」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、これは開発当初の内視鏡を表わしていて、現在、医療現場で「胃カメラ」という言葉が使われることはほとんどありません。内視鏡は、時代の経過とともに様々な開発を経て、病気の早期発見や治療等に用いられるようになりました。

 

1、内視鏡検査の目的と種類

内視鏡検査は、食道や胃、十二指腸、大腸などの粘膜を観察し、病気の有無や、重症度などの鑑別のために行われます。また、病変を切除したり、治療に用いられたりする場合もあります。

 

■上部消化管内視鏡検査

胃内視鏡検査とも言われています。口から内視鏡を挿入し、食道や胃、十二指腸を観察します。最近、より細い管を鼻から挿入する経鼻内視鏡検査が行われることもあります。経鼻内視鏡検査は、口から内視鏡を挿入するよりも管が細いため、嘔吐反射が起こりにくく、患者の負担が少ないと言われていますが、鼻腔の形状などにより挿入が困難なケースや鼻出血等を伴う場合があります。上部消化管内視鏡検査は逆流性食道炎や胃炎等の炎症性病変、ポリープ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの病気の発見、疾患の重症度や進行度の判定や経過の観察等に有用です。

 

■下部消化管内視鏡検査

大腸内視鏡検査とも言われています。肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を観察することができます。その場でポリープの切除や生検が行われる場合もあります。下部消化管内視鏡検査では潰瘍性大腸炎やクローン病等の炎症性腸疾患、ポリープ、大腸癌や直腸がんなどの病気の発見、疾患の重症度や進行度の判定や経過の観察等に有用です。大腸内視鏡検査については「CF(大腸内視鏡検査)の看護手順と留意すべき観察項目」をご覧ください。

 

■肝・膵内視鏡検査

胆のうや胆管、膵臓の観察や治療に用いられます。X線検査と組み合わせた内視鏡的逆行性胆膵管造影法(ERCP)は、胆管や膵管に造影剤を直接注入し、X線を撮りながら検査が行われます。また、内視鏡の先端に超音波装置が付いた、超音波内視鏡(EUS)が用いられる場合もあり、超音波装置により、病変の画像をより鮮明に撮影することができます。詳細については「ERCP、ERBDの検査や合併症、適切な手技のための看護ケア・計画立案」、「EUSの看護|超音波内視鏡検査の目的や方法、看護のポイントを学ぶ」をご覧ください。

 

2、内視鏡検査の方法

上述のように、内視鏡検査には種類があり、種類によって検査の方法が異なります。ここでは、上部消化管内視鏡検査と下部消化管内視鏡検査の方法について記載していきます。

 

■上部消化管内視鏡検査

①検査前に、患者に消泡剤を服用してもらい、咽頭麻酔をします。(経鼻の場合は鼻の充血や腫れを抑え、取り通りを良くするため血管収縮剤の点鼻薬投与を行ったのち鼻腔麻酔を行います。)

②必要時、鎮痙剤の投与を行います。

③検査室へ移動し、患者を左側臥位にします。口から内視鏡を挿入する場合は、マウスピースを噛ませ、必要時追加で咽頭麻酔を行います。

④内視鏡を口または鼻からゆっくりと挿入していきます。身体の力を抜くように声かけし、モニターを確認しながら内視鏡を進めていきます。途中で体位を腹臥位へ変える場合もあります。

⑤食道、胃、十二指腸を十分に観察しながら写真撮影を行います。必要時、染色や生検を行います。

⑥通常検査は10~30分程度で終了しますが、検査時間には個人差があります。

 

■下部消化管内視鏡検査

①検査前に、患者に経口腸管洗浄剤を服用してもらう。排便状態が不十分の場合は下剤を追加したりや浣腸を追加することもあります。

②患者に検査着に着替えてもらい、必要時、鎮痛薬および鎮静薬の投与を行います。

③患者を左側臥位にし、肛門より内視鏡を挿入していきます。挿入時には、腹部に力を入れないよう声かけし口呼吸を促し内視鏡を進め、直腸、大腸等の観察を行っていきます。

④検査中、体位を変えて観察を行うこともあります。観察部位によっては、ガスの注入や脱気、染色を行うこともあります。必要時、生検で組織を一部採取したり、ポリープを内視鏡的に切除する場合もあります。

⑤通常検査は、10~30分程度で終了しますが個人差があります。

 

3、内視鏡検査の合併症

内視鏡検査を行う上で、合併症を引き起こす可能性はそれほど高くはありませんが、まれに出血や穿孔などが生じる場合があります。合併症による入院や緊急処置が必要となるケースは上部消化管検査では0.012%程度、下部消化管検査では0.011%程度と言われています。検査前には、合併症のリスクについても、十分に患者に説明することが大切です。

 

4、内視鏡検査時の看護のポイント

内視鏡検査では、いずれの場合も検査実施の前に、検査の目的や方法等を説明し、患者が理解した上で、同意書に署名をもらうことが必要となります。検査の日程が決まったら、検査日前日より、厳守する項目や注意するポイントがありますので、患者への注意喚起および適切な指導が必要となります。

 

■検査前日

・指定された時間までに食事を済ませるよう指導します。また夕食は消化の良いものとし、食べすぎないよう説明します。

・飲み物、食べ物の摂取可能時間を確認し、時間を厳守するよう指導します。時間が守られなかった場合は、検査ができない場合もあるので注意が必要です。

・前日は早めの就寝を心がけるよう説明します。

・下部消化管内視鏡検査の場合は、決められた時間に下剤の服用が必要になる場合があるため、服用時間、服用方法等の説明が必要となります。

 

■検査当日

・検査終了まで、飲食・喫煙禁止となります。常用薬の服用については、事前に医師へ確認を行い、指示通りに服用するよう説明が必要です。

・検査前に飲食時間の確認とバイタルサインの測定を行います。検査の内容によっては、血管確保が必要な場合がありますので、必要に応じて点滴を行います。

・下部消化管内視鏡検査の場合、経口腸管洗浄剤を服用してもらう必要がありますので、検査時間を確認し、服用開始時間に服用を開始するよう指導すます。排便状況の確認を行い、不十分な場合は医師に報告します。追加で下剤の投与が必要な場合もあります。

 

■検査中

・患者の状態を観察し、合併症の兆候がないか等確認を行います。

・不安や苦痛を和らげるよう、適宜声かけを行います。

・体位を変える場合、必要に応じて介助します。

 

■検査後

・安静が必要な場合は、安静時間を確認します。

・患者の状態や腹部症状等、合併症の有無を確認し、バイタルサインの測定を行います。

・食事や水分摂取の開始可能時間を確認し、時間を厳守するよう説明します。

・その他、患者の状態や検査の内容により、注意事項がある場合は医師へ確認を行い、患者に十分説明を行います。

 

まとめ

内視鏡検査に関わらず、検査を受ける患者は大きな不安を抱えています。検査前の十分な説明はもちろんのこと、検査中、検査後も、患者の状態を観察し、不安を最小限にとどめられるようサポートしていくことが必要となります。合併症の出現頻度が高い検査ではありませんが、使用する薬剤により副作用が出現するリスクもあり、まれに合併症を引き起こす可能性もあります。個々の患者の状況をしっかりと把握するとともに、万全な態勢で検査を受けることができるよう、しっかりと準備を整えることが大切です。検査の方法や、看護のポイントをしっかりとおさえ、適切な看護を提供できるよう学習を進めていきましょう。

 

参考文献

内視鏡の歴史(あなたの健康ドットコム|オリンパス)

上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸内視鏡)と治療(2018年3月改訂|一般社団法人日本消化器内視鏡学会)

大腸内視鏡検査と治療(一般社団法人日本消化器内視鏡学会)


自己効力感と看護|看護計画へ活かすヒントや7つの看護研究の紹介

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自己効力感と看護

「自己効力感」という言葉を聞いたことはありますか?「自己効力感」という言葉は、元々は心理学で用いられていましたが、看護をする上でも非常に重要な概念になります。自己効力感の意味や看護理論との関係、看護計画への活かし方、看護研究や文献・論文をまとめました。

これから糖尿病の患者を看護する時、セルフケア不足の患者の看護をする時には、「自己効力感」を意識して、実際の看護に取り入れてみてください。

 

1、自己効力感とは

自己効力感は、カナダ人の心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念で、セルフエフィカシー(self-efficacy)と言うこともあります。バンデューラは、自己効力感とは個人の行動遂行能力に対する確信の程度と定義づけています。

簡単に言うと、ある行動を遂行できるという自分の可能性を認識している程度、「私にもできるんだ!やればできる!」と思える程度のことですね。そして、自己効力感の先行要因には、自分の行動がもたらす結果を予測する「結果予期」と行動遂行に対する自分の能力を予測する「効力予期」の2つがあります。

禁煙を例に挙げて考えてみましょう。

「禁煙して、タバコを吸わない生活を実現できる」と思えるかどうかが結果予期。そして、そのために「禁煙生活を頑張る、タバコを吸いたくても我慢できる」と思えるかどうかが効力予期になります。この結果予期と効力予期の2つを強く思えることが、自己効力感を高めることにつながります。

 

2、自己効力感と看護理論

自己効力感は看護をする上でとても大切な概念です。ドロセア・オレムが提唱した看護理論を例にとって、自己効力感と看護理論の関係について考えていきましょう。

オレムは、「セルフケアとは個人が生命、健康、安寧を維持する上で自分自身で開始し、遂行する諸活動の実践である」とセルフケアを定義づけています。

そして、セルフケア不足の患者には、次の3つの看護システムで看護介入していくべきとしています。

・全代償的看護システム セルフケアが全くできない患者に対して、全面的に看護師がケアをすること
・一部代償的看護システム セルフケアが一部出来ない患者に対して、できない部分だけ看護師がケアすること
・支持・教育的看護システム セルフケアできる患者に対し、より良く・正しくできるように指導すること

このセルフケア不足の患者に対してケアする上で、自己効力感を高める看護を取り入れるのは非常に重要です。特に、リハビリ等によってADLが徐々に拡大しているような患者の場合、今まで看護師にケアしてもらっていたことが当たり前になり、自分ではセルフケアを積極的にしようとしないことがあります。

そのようなセルフケア不足の患者に対し、「自分でもセルフケアができる」と感じるようなケア、つまり自己効力感を高めるケアをすることで、セルフケア不足を解消することができるのです。様々な看護理論がありますが、自己効力感と結びつけて考えると、看護理論をより深く理解でき、看護理論を具体的な看護計画に反映させることができます。

オレムの看護理論については、「セルフケアの看護|オレムの看護理論や看護目標・看護計画・看護研究」でも説明しています。

 

3、自己効力感を高める看護計画のポイント

看護をする上で、患者の自己効力感を高めることは非常に重要です。ここでは、糖尿病の自己管理ができない患者に対する看護計画を例に挙げて、看護計画の中にどうやって自己効力感を高めるケアを入れれば良いのかを説明していきます。

まずは、自己効力感を高めるためのポイントを確認しておきましょう。

<自己効力感に関係するもの1

1.達成体験=患者自身が何かを達成した、成功した経験をする

2.代理体験=患者以外の人が何かを達成したことを観察したり、成功体験を聞く

3.言語的説得=言葉での励まし

4.生理的情緒的状態=心身の状態を整えて、ネガティブな方に向かないようにする

5.行動に対する意味付けや必要性

6.達成するための方略=達成するための方法

7.原因の帰属=原因は何か

8.ソーシャルサポート

9.認知能力=過去や未来という時間を関連付けること、反省する能力

10.健康状態

これを踏まえて、糖尿病の自己管理ができていない患者の看護計画を立ててみましょう。看護目標は「糖尿病の自己管理ができるようになる」ですね。

 

<OP(観察項目)>

・バイタルサインや血糖値

・食事量

・運動習慣の有無

・生活習慣

・家族構成

・協力者の存在の有無

・普段の言動や表情

・自己管理の重要性の理解度

・認知の能力

バイタルサインや血糖値のデータを観察することで、その患者の健康状態を把握し、自己効力感を高めることにつなげます。また、認知能力や理解度を観察することも、自己効力感へのアプローチにつながります。

 

<TP(ケア項目)>

・自己管理ができている患者に面会させて、成功体験を聞いてもらう

・自己管理ができるように励ます

・利用できるソーシャルサポートを紹介する

・自己管理できない原因を患者と共に考える

・1日ごとに目標を立て、達成感を頻回に味わえるようにする

・1日の血糖値や体重、食事量、運動量などをノートに記入してもらう

・患者にとってやりやすい自己管理の方法を提案する

・患者会や糖尿病教室を紹介する

自己効力感を高めるためには、患者自身が成功体験を積み重ねられるためのケアを行い、同じ糖尿病でも自己管理ができている人たちの話を聞く機会を作ることが大切です。また、患者会や糖尿病教室、その他のソーシャルサポートを紹介することで、自己効力感を高めることができます。

 

<EP(教育項目)>

・食事指導を栄養士と共に行う

・運動療法の指導を行う

・自己管理の重要性を説明する

・家族にも自己効力感を説明し、高めることの重要性や工夫を伝える

糖尿病の自己管理では、食事指導と運動療法の指導が大切ですが、同時に自己効力感を高めるために、「なぜ自己管理が必要なのか」という動機づけも重要になります。糖尿病の看護計画は自己管理だけではなく、合併症の予防や感染症の予防、低血糖の予防などもありますが、自己効力感を高めて自己管理ができるようになれば、他の看護計画も立案しやすくなるはずです。糖尿病の看護については、「糖尿病の看護 看護の視点とアプローチをする方法とは」でも説明しています。

 

4、自己効力感の看護研究、文献・論文

自己効力感という概念を活かした看護をするためには、自己効力感に関する看護研究や文献・論文を読んでおくと良いでしょう。

自己効力感に関する看護研究や文献、論文をご紹介します。

看護教育52号8号

自己効力感を高める看護-糖尿病にて入退院を繰り返される患者様からの学び(看護教育52巻8号|川上勝利|2011年8月)

日本糖尿病教育・看護学会誌3巻2号

糖尿病患者の自己管理行動に関連する要因について―自己効力感、家族サポートに焦点を当てて(日本糖尿病教育・看護学会誌3巻2号|服部真理子、吉田亨、松嶋幸代、伴野祥一、河津捷二|1999年9月)

看護研究31号3巻

がん患者用自己効力感尺度作成の試み(看護研究31号3巻|塚本尚子|1998年6月)

外来がん化学療法患者における自己効力感の関連要因(日本がん看護学会誌24巻3号|林亜希子、安藤詳子|2010年)

自己効力感の概念分析(日本看護科学会誌vol.20 No.2|江本リナ|2000年)

循環器系疾患患者の自己管理行動および自己効力感に影響する要因(富山医科薬科大学  看護学会誌第4巻2号|直成洋子、泉野潔、澤田愛子、高間静子|2002年)

血液透析患者の自己管理行動及び自己効力感に影響を及ぼす因子(日本生理人類学会誌3巻3号|川端京子、石田宣子、岡美智代|1998年)

 

まとめ

自己効力感は心理学用語ですが、看護をする上で非常に重要な概念になります。自己管理が必要な患者、セルフケア不足の患者などの看護をする時には、自己効力感を高めることを意識して看護計画を立てると、看護目標を達成しやすくなるはずです。

 

参考文献

1)自己効力感の概念分析(日本看護科学会誌vol.20 No.2|江本リナ|2000年)

ANCA関連血管炎の看護|原因・症状・予後から考える4つの看護ケア

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ANCA関連血管炎の看護

ANCA関連血管炎は自己免疫疾患のひとつで、近年、増加傾向にある疾患です。ANCA関連血管炎は種類やその重症度によって治療や看護に違いがあり、症状によっても看護ケアが変わってきます。ANCA関連血管炎について良く知り、看護ケアに活かしましょう。

 

1、ANCA関連血管炎とは

ANCAとは、抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody)という自己免疫抗体のことをいいます。ANCAには核周囲が染まるp-ANCA(perinuclear-ANCA)と細胞質が染まるc-ANCA(cytoplasmic-ANCA)があります。それぞれの抗体に対する抗原は、p-ANCAはMPO(myeloperoxidase)、c-ANCAはPR3(proteonase3)が代表的です。

 

p-ANCA

p-ANCA

 

c-ANCA

c-ANCA

引用:Apollo HOSPITALS

 

血管炎は罹患血管のサイズによって大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎に分類され、小型血管炎は細動脈や毛細血管、細静脈、小動脈が対象になります。小型血管炎のうち、抗好中球細胞質抗体によって引き起こされる血管炎をANCA関連血管炎といいます。ANCA関連血管炎は、全身の臓器に発症する3種類の全身型と、一つの臓器のみに発症する1種類の臓器限局型に分けられます。

 

ANCA関連血管炎

全身型

 

・顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis,MPA)
・多発血管炎性肉芽種症(granulomatosis with polyangiitis,GPA)
・好酸球性多発血管炎性肉芽種症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis,EGPA)
臓器限局型 ・腎限局血管炎(renal-limited vasculitis,RLV)

 

1-1、顕微鏡的多発血管炎

顕微鏡的多発血管炎は50歳代半ばから70歳代の高齢者に多く発症し、肉芽種を伴わない壊死性の小型血管炎で、中型血管炎の炎症を伴うことがあります。この血管炎では腎病変を伴うことが70〜80%と多く、壊死性糸球体腎炎が高頻度で出現します。この場合、発症後数週間から数ヶ月で腎不全になることが多く、早い対応が必要になります。また40〜50%に割合で肺障害があり、日本では間質性肺炎を伴うことが多くなっています。その他では、20%の割合で末梢神経障害が発症しています。臨床検査ではCRPの上昇、血清クレアチニンの上昇、MPO-ANCAの上昇がみられます。

 

1-2、多発血管炎性肉芽種症

多発血管炎性肉芽種症は、男性は30歳代〜60歳代、女性は50歳〜60歳代に多く発症します。上気道に肉芽種性の炎症が出現し、腎臓に壊死性半月体形成腎炎が起こります。壊死性の腎病変は、顕微鏡的多発血管炎でも出現するため、壊死性ということだけでは、どちらの血管炎かという指標にはなりません。多発血管炎性肉芽種症は、眼窩、副鼻腔、中耳などの炎症から始まり、気管、気管支、肺へ炎症が広がり、続いて腎臓へと広がります。上気道から腎臓障害へと進むのが特徴で、膿性鼻漏、鼻出血、鞍鼻、中耳炎、視力低下から血痰、呼吸困難へと進み、腎炎へと移行します。他に、紫斑や関節痛、しびれ、感覚異常、運動機能異常などの症状があります。臨床検査では、CRPの上昇、PR3-ANCAの上昇、レントゲンでは肺多発結節、CT・MRIでは服鼻腔の骨破壊性病変がみられます。

 

1-3、好酸球性多発血管炎性肉芽種症

好酸球性多発血管炎性肉芽種症は、平成27年に難病指定された疾患で、40歳〜70歳が好発年齢となっています。気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患から始まり、発熱、体重減少などの全身症状へと移行します。また、多発単神経炎による知覚障害、運動障害が80%発症し、皮膚血管炎による紫斑などが起こります。臨床検査では、好酸球数の上昇、CRPの上昇、MPO-ANCAの上昇がありますが、決定的な所見としては、好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽種や壊死性血管炎がみられることがあります。

呼吸器の病気

引用:呼吸器の病気(一般社団法人日本呼吸器学会)

 

1-4、臓器限局型の腎限局型血管炎

臓器限局型の腎限局型血管炎は、腎臓にのみ発症する顕微鏡的多発血管炎と考えられています。血管炎が腎臓のみに限局されていると診断されたものでも、ほかの箇所にも炎症初見が見つかることもあり、顕微鏡的多発血管炎と同じものであるという報告もあります。

日本では、ANCA関連血管炎の9割が顕微鏡的多発血管炎を占めていますが、欧米は多発血管炎性肉芽種症が多くを占めています。

 

2、ANCA関連血管炎の原因

ANCA関連血管炎の原因はわかってはおらず、何らかの原因によってANCAが自己の好中球と結合し、そのANCAと結合した好中球が血管を刺激して攻撃することによって血管炎を起こすことが発生機序となっています。顕微鏡的多発血管炎は環境因子であるシリカ、薬剤(抗甲状腺薬:プロピルチオウラシル、抗生剤:ミノサイクリン、降圧剤:ヒドララジン)、感染症(ウイルス、グラム陰性桿菌)などの関与と、日本人の遺伝的因子であるANCAの特異性が関与しているという報告もあります。しかし、いずれも確たる原因はわかってはいません。

 

3、ANCA関連血管炎の予後

ANCA関連血管炎のうち顕微鏡的多発血管炎は寛解率80%以上と高く、5年生存率は45〜76%と報告されてはいますが、長期生存率では死亡率は25%となっており、早期発見や治療方法が進歩してもなお予後不良な疾患であるといえます。ANCA関連血管炎全体としては、その多くは対症療法に関する感染症が最も多くなっており、敗血症やニューモシスチス肺炎などの重症感染症による死亡率が高くなっています。好酸球性多発血管炎性肉芽種症は、治療によって90%が寛解し、5年生存率は97%と報告されています1)

ANCA関連血管炎は自己免疫疾患なので、治療はステロイド療法など免疫を抑制する治療が多く、感染の危険性は高くなります。また、長期的に治療を行い、急性期、慢性期、寛解期と1年以上かけて治療を行なっていくこと、また、長期的に診ていくことが必要になります。

 

ANCA関連血管炎

引用:ANCA関連血管炎.com

 

4、ANCA関連血管炎の看護計画

ANCA関連血管炎は、疾患による症状に対する看護と、治療中の看護が必要になります。看護目標と計画は次の通りです。

 

〈看護目標〉

①症状による苦痛を軽減できる

②感染予防行動がとれる

③長期的な治療に対するストレスを軽減できる

 

4-1、ANCA関連血管炎の看護ケアの4つのポイント

看護目標に対する看護ケアのポイントは次の通りです。

①全身症状(倦怠感、発熱、呼吸困難、易疲労感など)に対する看護

安楽な体位の工夫や、ADLに対する援助を行います。

②感染症予防

治療中は易感染状態となるために、感染症にならないようケアを行う必要があります。環境を整えること、患者への手洗い、うがいなどの指導を行います。

③精神的看護

治療が1〜2年以上続くため、また、予後による不安があるために精神的なサポートが必要になります。安心して納得し、安全・安楽に治療を受けることができるように援助します。

④確実な治療を受けることができるよう支援

医師の指示に基づいて正しい時期に正しい量の薬剤を投与し、また患者が治療を十分に受けることができるように援助します。

 

4-2、ANCA関連血管炎の看護計画

看護ケアのポイントをふまえての看護計画はこのようになります。

 

看護計画

①観察項目<OP>

・血液検査データ(CRP、MPO-ANCA値、PR3-ANCA値、血清クレアチニンなど)

・CT、X-P、MRI

・苦痛の有無、種類、程度(倦怠感、痛みの部位・程度など)

・発熱の有無

・呼吸困難の有無、血中酸素濃度

・表情、日常生活動作

・バイタルサイン

・感染予防行動

・治療計画

 

②ケア項目(TP)

・安楽な体位の工夫

・ADL介助

・医師の指示により、的確に薬剤を投与する

・発熱時、クーリングや医師の指示により解熱剤を投与する

・バイタルサイン測定

・苦痛や不安が強い時には、寄り添って傾聴する

 

③教育項目(EP)

・手洗いの方法を説明する

・痛みや倦怠感などがあるときは、遠慮なく伝えるように説明する

・治療計画を確認し、必要時、説明する

・不安なことがあれば遠慮なく伝えるように説明する

 

まとめ

ANCA関連血管炎は自己免疫疾患のひとつで、原因は未だにわかってはいませんが、早期発見、早期治療によって寛解できる疾患です。治療中は免疫を抑える治療を行うので、感染に注意が必要です。また治療は長期にわたるため、不安やストレスをできるだけ軽減し、安全安楽に治療を受けることができるように援助していくことが必要です。

 

参考文献

1)血管炎症候群の診療ガイドライン2017年度改訂版(2018年3月23日|日本循環器学会、日本医学放射線学会等)

3つのアディクションの種類と、依存患者の治療と看護

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アディクション看護

アディクション(依存症)をもつ患者は自分の意思で使用法をコントロールできず、自分の力では依存から抜け出せないため、入院あるいは通院治療が必要です。

 

1、アディクションとは

アディクションは依存症とよばれ、物質依存、プロセス依存、関係依存の3つに分類することができます。アディクションの原因は、自分の意思で使用量や場所、頻度をコントロールすることができないコントロール障害だと言われています。

①物質依存

酒、たばこ、薬物

②プロセス依存

ネット、ショッピング、ギャンブル

③関係依存

性依存、DV、ストーカー

 

2、アディクション治療と看護

基本は依存している物質・関係・プロセスを断つことを優先します。入院あるいは通院を選択し、依存するもののない環境で心理社会的治療、認知行動療法を行いながら治療していきます。本人だけでなく家族や職場の人にも協力してもらえるよう、共通の認識が持てるよう援助します。依存物質を断った後、離脱症状、臓器障害、合併症を起こすことがあるため対処療法を行いつつ、体調が落ち着いてきたらリハビリを経て、長期的に治療を継続します。

 

参考文献

依存症の種類と分類(医療法人社団祐和会 大石クリニック)

パターナリズムの看護で大切な3つのこと

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パターナリズム看護

パターナリズムとは

パターナリズム(paternalism)とは、父権主義や温情主義と言われ、父親が子供に対して良かれと思って子供の意見を聞かずに物事を決定することを言います。医療の現場においては医師が父親、患者が子供と理解すると良いですね。医療におけるパターナリズムは、治療に複数の選択肢があったとしても、医師が望ましいと判断した治療法だけを話すことで事実上患者には治療の選択権がない状態を言います。しかし、意識不明の患者・決断が困難な小児医療等の分野ではインフォームドコンセントを行うことが難しいためパターナリズムが認められるケースもあります。

医療におけるパターナリズム

引用元:医療におけるパターナリズム

 

パターナリズムの看護

看護をしていく上で大切な事は、➀インフォームド・コンセント、②患者に考える時間を与えること、③自律性を尊重した看護をしていくことです。このためには医療者と患者間のコミュニケーションや情報交換が重要となります。患者の意向や思いを知り、納得して治療が進められるような関わりが必要です。

 

まとめ

医療パターナリズムに陥らないためには、信頼関係を築き患者にとってのQOLをいかに充実したものにしていくかを念頭に看護をしていくことが大切と言えます。

 

参考文献

医療におけるパターナリズムが正当化される条件(日本老年医学会雑誌41 8-15|五十嵐雅哉|2004年1月25日)

頭痛の看護|原因と看護計画、看護ケアの4つのポイント

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頭痛の看護

頭痛を訴える患者は、とても多いです。看護師は患者の頭痛の訴えを、「たかが頭痛」というスタンスで聞いてはいけません。頭痛の原因をアセスメントし、頭痛を緩和させるケアをしていく必要があるのです。頭痛の原因と看護計画、看護ケアをまとめました。頭痛の患者を看護する時の参考にしてください。

 

1、頭痛の原因

頭痛は、一次性頭痛と二次性頭痛に分類できます。

・一次性頭痛=基礎疾患がない頭痛

・二次性頭痛=他の疾患が原因で起こる頭痛

 

そして、一次性頭痛と二次性頭痛には、様々な原因1があります。

一次性頭痛 ・片頭痛
・緊張性頭痛・群発頭痛・三叉神経・自律神経性頭痛・その他の一次性頭痛
二次性頭痛 ・頭部外傷による頭痛

・頭頚部血管障害による頭痛

・非血管性頭蓋内疾患による頭痛

・物質またはその離脱による頭痛

・感染症による頭痛

・ホメオスターシス障害による頭痛

・顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面痛

・精神疾患による頭痛

日常生活を送っている中で起こる頭痛は、一次性頭痛の片頭痛や緊張性頭痛などが多いですが、入院生活を送っている患者の場合、片頭痛や緊張性頭痛などのいわゆる「一般的な頭痛」だけでなく、二次性頭痛が原因である可能性を考慮しなければいけません。

 

2、頭痛の看護計画

頭痛の看護計画は、その頭痛の原因によって異なりますが、ここでは片頭痛や緊張性頭痛など一次性頭痛の疼痛を緩和するための看護計画をご紹介します。

 

①急性疼痛

看護目標 頭痛が緩和して、良眠できる
OP(観察項目) ・バイタルサイン
・頭痛の程度(NRSなどのペインスケールを用いて)・頭痛の種類(ズキズキ、締め付けられる痛みなど)・頭痛の出現時間やタイミング・頭痛の前兆の有無・随伴症状の有無

・検査データ

・食事量

・言動や表情

・睡眠状況

TP(ケア項目) ・医師の指示に基づいて鎮痛薬を用いる

・安楽な体位をとってもらう

・訴えを傾聴する

・温罨法や冷罨法を行う

・気分転換を図る

・リラックスできるような環境整備を行う

EP(教育項目) ・頭痛が出現したり、増強したらすぐに伝えてもらうように指導する

・痛みが強い時には鎮痛薬を使えることを伝えておく

・痛みを我慢する必要はないことを指導する

もし、頭痛に伴って、不眠の症状が強いようなら、説明した「急性疼痛」に加えて不眠を看護問題として挙げて看護計画を立案すべきです。

また、頭痛が原因でセルフケア不足が起こっている場合は、セルフケア不足を解消するための看護計画を立案してください。患者の頭痛が二次性頭痛であることがわかっている場合は、頭痛の原因となっている疾患に焦点を当てて、看護計画を立案していく必要があります。

疾患別に、次の記事も参考にして看護計画を立案すると良いでしょう。

くも膜下出血の看護計画|原因・症状・治療などの看護課程と看護問題

頭蓋内圧亢進の看護|原因と症状、治療における観察項目と看護計画

髄膜炎の看護|発症機序と種類、患者に対する予防・観察・ケア

頭痛の緩和ばかりに気を取られずに、患者の状態に合わせて、看護計画を立案していくことが重要です。

 

3、頭痛の看護ケアの4つのポイント

頭痛の看護をする時には、次の4つのポイントに気を付けてケアをしていきましょう。

 

①原因を決めつけずにあらゆる可能性を考慮する

患者から頭痛の訴えを聞いたら、原因を決めつけてはいけません。あらゆる可能性を考慮しながら、アセスメントしていく必要があります。いつも頭痛を訴えてくる患者の場合、「どうせ片頭痛だろう」、「また不定愁訴か」のように思いがちです。

ただ、次のような可能性もあるのです。

・廊下を歩いていた時に誰にも見られていない中で転倒して頭部を強打した

・髄膜炎を発症している

・くも膜下出血を起こしていた

・副鼻腔炎を発症している

だから、原因を決めつけずに、バイタルサインをチェックして、しっかりアセスメントをしていかなくてはいけません。

また、鎮痛薬の飲み過ぎで慢性的な頭痛を起こしている可能性もありますので、それまでの鎮痛薬の服薬歴もチェックしておきましょう。頭痛を軽く見て、看護師が「どうせ片頭痛か緊張性頭痛」と決めつけてしまうと、患者の命に関わる重大な疾患を見逃してしまうかもしれません。そのため、「たかが頭痛」と思わずに、しっかりとアセスメントして、医師に報告する必要があります。

 

②訴えをしっかり傾聴する

頭痛のケアをする時には、患者の訴えをしっかり傾聴しましょう。慢性的な頭痛はストレスが関係していることが多いです。もしかしたら、患者は入院生活にストレスを感じていたり、治療方針に不安を感じていて、そこから頭痛を発症しているのかもしれません。

訴えを傾聴するだけで、患者のストレスや不安の解消につながりますし、何に対してストレスや不安を感じているのかがわかるので、より良いケアができるようになります。また、患者の訴えを聞くことで、一次性頭痛ではなく、実は二次性頭痛で、重大な疾患の早期発見につながることもあるのです。だから、頭痛の看護ケアをする時には、まずは患者の訴えに耳を傾けなければいけません。

 

③安静にしてもらう

頭痛の患者には安楽な体位を取らせるようにしましょう。頭痛を緩和するには、安静にすることが大切です。安楽な体位、頭痛が緩和する体位は人それぞれ違いますので、患者の希望を聞きながら、体位交換用のクッションなどを用いて、その患者にとって一番楽な体位を取らせるようにしましょう。

また、音や光の刺激で頭痛が悪化することがあります。特に、片頭痛は光や音の刺激が頭痛の引き金になることがありますので、可能な範囲で病室を暗くして、静かな環境を作るなどの環境整備をして看護していきましょう。

 

④緊張性頭痛は温罨法、片頭痛は冷罨法

片頭痛や緊張性頭痛は、ストレスが頭痛を発症させたり悪化させたりする要因になりますので、頭痛の患者にはリラックスできるような看護ケアをしていく必要があります。そのため、アロママッサージをしたり、手浴・足浴などのケアで頭痛を緩和させるようにしましょう。

また、リラックスのためのケアと言えば、温罨法が思い浮かぶと思います。緊張性頭痛の場合は温罨法が有効ですが、片頭痛の場合は温罨法をすると逆効果になり、冷罨法の方が疼痛を緩和させる効果があるので注意が必要です。緊張性頭痛はギュウギュウと締め付けられるような痛み、片頭痛はズキズキとした脈打つような痛みが特徴です。

 

頭痛

出典:頭痛 (医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院)

 

緊張性頭痛は脳の血管が収縮することで起こる頭痛で、片頭痛は逆に拡張することで起こる頭痛です。そのため、緊張性頭痛は温罨法で温めて、リラックスさせて脳の血管を拡張させると、頭痛を緩和させることができます。

逆に、片頭痛は冷やして血管を収縮させることで、頭痛を緩和させることができるのです。患者に頭痛の痛みの種類を聞いて、温罨法と冷罨法のどちらが良いかを判断すると良いでしょう。

 

まとめ

頭痛の原因と看護計画、看護ケアのポイントをまとめましたが、いかがでしたか?頭痛は様々な原因が隠れていることがありますので、原因を決めつけることなく、あらゆる可能性を考えてアセスメントしていきましょう。また、忙しい中でも患者の訴えに耳を傾け、しっかり傾聴して看護ケアに活かしていくようにしてください。

 

参考文献

1)慢性頭痛の診療ガイドライン2013 頭痛一般(株式会社医学書院|日本神経学会、日本頭痛学会|2013年5月15日)

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