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ベンチュリーマスク(インスピロン)の看護|適応や原理・仕組み・使い方と酸素濃度の流量

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ベンチュリーマスク看護

ベンチュリーマスクは酸素濃度を調節し、安定した濃度の酸素を患者に投与できる酸素投与法のことです。またインスピロンとはベンチュリーマスクのことで、インスピロン社から出ており、加湿機能が付いたインスピロンネブライザーをインスピロンとも臨床現場で呼ぶことがあります。

ベンチュリーマスクの基礎知識や適応、原理や仕組み、流量と酸素濃度、使い方、看護のポイントをまとめましたので、看護をする時の参考にしてください。

 

1、ベンチュリーマスク(インスピロン)とは

ベンチュリーマスクとは、高流量システムに分類される酸素投与器具の1つで、患者に投与する酸素濃度を正確に設定できることが特徴です。

ベンチュリーマスク(インスピロン)とは

出典:酸素療法 | 呼吸ケア | コヴィディエンアカデミア | 医療関係者の皆様へ | コヴィディエン

鼻カニュラや酸素マスク、リザーバーマスクでは、酸素の流量は設定できるものの、濃度までは設定できません。

それに対して、ベンチュリーマスクではダイリュータ部分で酸素流量と濃度を調節することができるので、患者の1回換気量に左右されることなく、吸入の酸素濃度が24~50%と安定した酸素を供給することができるのです。

ベンチュリーマスク(インスピロン)とは

出典:高流量システム|酸素療法|製品情報|日本メディカルネクスト株式会社

ベンチュリーマスクのダイリュータは6色に分かれていて、それぞれ設定する酸素濃度を使い分けます。

酸素濃度
青色 24%
黄色 28%
白色 31%
緑色 35%
桃色 40%
オレンジ色 50%

インスピロンネブライザーはベンチュリーマスクの機能に、ネブライザー機能が付いたもので、酸素投与と同時に十分な加湿をすることができるという特徴があります。

インスピロンは日本メディカルネクストという医療機器メーカーのブランド名ですので、正しくはネブライザー付ベンチュリー装置やネブライザー式酸素供給装置と言います。ただ、臨床現場では、「インスピロン」や「インスピロンネブライザー」と呼ぶことがほとんどです。

 

2、ベンチュリーマスクの適応

ベンチュリーマスクは吸入酸素濃度が調整できますので、COPDなどのⅡ型呼吸不全の患者への酸素投与に適しています。

日本呼吸器学会によると、呼吸不全の患者は動脈血の酸素分圧が60mmHg以下になることを呼吸不全と定義していて、二酸化炭素分圧が45mmHg以下をⅠ型呼吸不全、45mmHgを超える場合をⅡ型呼吸不全と分類しています。

Ⅱ型呼吸不全の場合、酸素が入ってこないだけでなく、二酸化炭素が出ていかずに体内に溜まってしまいます。Ⅱ型呼吸不全の患者に高濃度の酸素を投与してしまうと、どんどん二酸化炭素が体内に溜まりCO2ナルコーシスを発症するリスクがあります。

ベンチュリーマスクは吸入する酸素濃度が24~50%と調節できるので、Ⅱ型呼吸不全の患者に酸素を投与しても、二酸化炭素が溜まりにくいというメリットがあるのです。

インスピロンは、ベンチュリーマスクの効果+加湿効果がありますので、Ⅱ型呼吸不全の患者の中でも、痰の粘稠度が高く喀出が困難な人など、十分な加湿が必要な患者が適応となります。

 

3、ベンチュリーマスクの原理・仕組み

ベンチュリーマスクは、ベンチュリー効果を生み出すことで、酸素と空気を混合させて、設定した酸素濃度を作り出しています。

ベンチュリー効果とは、出口を小さくして勢いよく酸素を流してジェット気流を作ることで、ジェット気流の周りを陰圧にして、空気を引き込む原理です。

ベンチュリーマスクの原理・仕組み

出典:酸素療法 | 呼吸ケア | コヴィディエンアカデミア | 医療関係者の皆様へ | コヴィディエン

この空気を引き込む量はダイリュータの穴の大きさによって変わります。6種類あるダイリュータを付け替えることで、引き込む空気量を調節して、一定の酸素濃度を維持することができるのです。

 

4、ベンチュリーマスクの酸素濃度・流量

ベンチュリーマスクやインスピロンは、患者への酸素濃度を調整でき、安定した酸素濃度を供給できるというメリットがあります。

ただ、このメリットは、供給ガス流量が30リットル/分を保っていることが前提となっています。これよりも供給ガス流量が低下してしまうと、設定した酸素濃度よりも実際に供給する酸素濃度は低くなってしまいます。

成人は1秒間に約500mlの空気を吸い込みます。この1秒間の吸入量を1分間に換算すると30リットルになります。

ベンチュリーマスクからの供給ガス流量が30リットル/分を下回ると、しっかり呼吸するためにはベンチュリーマスクからの供給ガスだけでは足りないので、マスクの周囲にある空気を吸い込むことになります。

ベンチュリーマスクの供給ガス流量が30リットル/分以上だったら、供給ガスだけで呼吸を十分にすることができます。

でも、30リットル/分未満の場合、呼吸するためには供給ガス+周囲の空気が必要になるので、結局はベンチュリーマスクの設定酸素濃度より吸入酸素濃度低くなってしまいます。

ただ、医療施設の通常の酸素流量計の最大流量は15リットル/分ですので、30リットル/分の供給ガス流量を流すためには、空気を15リットルは混ぜなければいけません。

空気には酸素が21%含まれていますので、100%酸素15リットルに空気を15リットル混ぜると、最大酸素濃度は60%となります。

でも、最大流量が10~12リットル/分の流量計も多く、ダイリュータは50%までしかないので、実質的な最大酸素濃度は50%となるのです。

ベンチュリーマスクの酸素濃度・流量

出典:酸素療法 | 呼吸ケア | コヴィディエンアカデミア | 医療関係者の皆様へ | コヴィディエン

この酸素流量とダイヤル目盛りの交差する数字が30以上の設定だと、設定どおりの酸素濃度を供給することができます。

 

5、ベンチュリーマスクの使い方や看護

ベンチュリーマスクをつけている患者の看護をする時には、使い方と看護のポイントを確認しておきましょう。

 

■ベンチュリーマスクの使い方

ベンチュリーマスクの患者の看護をする時には、酸素の流量と濃度が指示通りの設定になっているか、マスクは顔に密着しているかどうかを確認しましょう。

酸素流量の目盛りを確認することはもちろんですが、ベンチュリーマスクのダイリュータは色も確認してください。インスピロンの場合は、目盛りが見えにくいことがありますので、注意が必要です。

また、ベンチュリーマスクで使用するマスクと一般的な酸素マスクは種類が違います。ベンチュリーマスクの場合は、呼気が逃げやすいようにマスクの穴が大きくなっています。間違って一般的な酸素マスクをつけると二酸化炭素がこもってしまいますので、注意しましょう。

ヒーターによる加湿をしているインスピロンの場合は、蛇管内に結露が発生しますので、必ずウォータートラップをつけなければいけません。

ウォータートラップに水がいっぱいになったり、蛇管の中に水が溜まっていると、供給ガス流量が低下しますので、ウォータートラップの水は適宜破棄してください。

また、インスピロンの加湿のための水が少なくなったら、注ぎ足しをせずに、新しいものと交換するようにしましょう。注ぎ足しをしながら使用していると、雑菌が繁殖し、感染源になる危険性があります。

 

■ベンチュリーマスクの看護のポイント

また、ベンチュリーマスクの適応となる患者はCOPDなどのⅡ型呼吸不全であることが多いので、CO2ナルコーシスを発症するリスクが高いです。そのため、血液ガスデータと共に、頭痛や振戦、傾眠などの症状の有無を観察する必要があります。

CO2ナルコーシスの看護については、「CO2ナルコーシス患者の看護|観察項目と具体的なケアのポイント」を参考にしてください。

また、ベンチュリーマスクは供給ガス流量が多いため、話しにくかったり、食事をしにくいというデメリットがあります。

そのため、コミュニケーション方法や食事などの工夫をして、精神的なストレスを最小限にする看護を行いましょう。

 

まとめ

ベンチュリーマスクの基礎知識や適応、原理・仕組み、酸素濃度・流量、使い方、看護のポイントをまとめました。

ベンチュリーマスクは酸素濃度を調節でき、安定した濃度で供給できるので、CO2ナルコーシスのリスクがある患者に適応となる酸素投与法です。

ベンチュリーマスクの看護をするためには、原理や仕組み、酸素濃度と流量をきちんと知っておく必要がありますので、少しややこしいですが、しっかりと理解して、看護に活かすようにしましょう。


ストマ(ストーマ)の看護計画|ストマの種類と看護目標・観察項目、その看護ケア

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ストマ看護

悪性腫瘍や先天性疾患など理由は様々ですが、ストマ(ストーマ)を造設することで患者さんはボディイメージの変化やライフスタイルの変化を余儀なくされてしまいます。また、ストマ造設を納得したうえで造設しなければ、その後の社会生活に大きな影響が出てしまいます。看護師は、ストマ造設の患者さんたちがそのような身体的な変化に適応し、以前と同じように社会生活に戻れるよう、看護技術面だけでなく心理面でもケアをして関わっていく必要があります。今回、ストマのもっとも基本的な知識をまとめていますので、ぜひストマの患者さんの看護に関わる際の参考にして下さい。

 

1、ストマ(ストーマ)とは

ストマとは消化管や尿路を人為的に対外に造設した排泄孔です。便や尿を肛門や尿道から出せなくなってしまった場合に、腹壁を通して腸管や尿管を体表面に開口して排泄させる方法です。消化管の場合を消化管ストマ、尿路の場合は尿路ストマといいます。この記事では消化管ストマについて述べていきます。

 

2、ストマの種類

ストマを作らなくてはいけなくなる疾患には様々なものがあります。ストマ造設が必要になる疾患は結腸や直腸がんなどの悪性腫瘍から、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患やイレウスなど、原因となる疾患によってどの種類のストマが必要になるかが変わってきます。

消化管ストマは造設する部位によって回腸ストマと結腸ストマに分けられます。結腸ストマはさらに以下のように種類があります。食事を摂ってから排便まではおよそ48~72時間が必要です。摂取物は胃から各消化管を通過して大腸に至ります。盲腸までは水様便の状態ですが、大腸を通過する際、大腸で少しずつ水分が吸収されS状結腸にたどりつくころには固形便となります。ですから、大腸のどの部分にストマが造設されるかで便の状態や量、食事摂取から排泄されるまでの時間が異なってきます。

 

造設部位 ストマ種類 便の性状 便の量
回腸 回腸ストマ 水様便

固形

多い

少ない

 

結腸

上行結腸ストマ

横行結腸ストマ

下行結腸ストマ

S状結腸ストマ

 

造設期間によるストマの違い
一時的ストマ ストマ閉鎖術が予定されている場合のストマのことです。
永久的ストマ ストマの閉鎖術施行の予定はありません。

 

ストマ型式
単孔式ストマ ストマの多くがこのタイプです。1本の消化管を途中で切断して、その端を腹壁から引き出して作られたストマのことです。
双孔式ストマ この双孔式ストマは、腸管切除の必要がない一時的ストマを造設する場合に多くつくられます。便が出る人工肛門と、便は出ず粘液を出すための孔の2つの穴があります。
 

ループ型ストマ

消化管の一部をループ状に体表に引き出して、腸管壁の一部を切り開き、反転させて造設したストマです。双孔式なので、2つの穴が並んでいますが、正面から見ると円形に近く見えます。
 

二連銃式ストマ

途中で切断した消化管の端を、それぞれ体表に出して造設されたストマです。名前のように、銃口が2つ並んでいるように見えるストマです。現在はこちらのストマよりも、ループ型ストマの造設が一般的です。

 

3、ストマの合併症

ストマの合併症は、ストマ造設後の手術直後から起こってくる早期合併症と、退院後に生じてくる晩期合併症の2種類にわけられます。早期合併症はそのほとんどが縫合された皮膚粘膜接合部が完成するまでの過程で生じます。ストマ造設後の術後の回復を順調にすすめるために、また患者さんの社会復帰を遅らせないためにも合併症の早期発見をし、合併症が進む前に最適な看護援助を行っていくことが看護師には求められます。

 

■早期合併症と晩期合併症

合併症の部位 早期合併症 晩期合併症
ストマの形状 巨大、陥没、過小、漿膜炎 脱出、瘻孔形成、重責、狭窄、萎縮、陥凹
ストマの粘膜 浮腫、壊死、循環障害、充血、うっ血

出血、貧血

萎縮、貧血、びらん、潰瘍、硬結、腫瘍
ストマの皮膚縁 ストマの離開、膿瘍、出血、脱出、哆開(縫合した創部が開いてしまうこと) 粘膜皮膚移植、外傷、浸軟、肥厚、狭窄
ストマの周囲皮膚 皮膚周囲のびらん、潰瘍、膿瘍 静脈瘤、ストマ周囲の皮膚障害、感染

 

各観察項目は、ストマのどの部位のどの位置にあるか、どのような状態かをはっきり明記して記録しておくことが重要です。そのためには、ストマの各部位の名称を覚えておく必要があります。また、障害が起こっている部位は「ストマ基部6時方向にびらんあり」などの表記を使って、位置もしっかり明記しておきましょう。

ストマの合併症

 

4、ストマ造設術のスケジュールと看護師の役割

ストマ造設までのスケジュールは以下のような流れで行われます。(各病院によって細かい部分の違いやスケジュールの前後が多少はあります)

 

実施内容 看護師の関わり
 

 

 

 

手術前日までに

行われること

 

 

 

 

 

 

 

 

術前オリエンテーション

ストマ造設について、患者さんは医師より説明を受けます。その説明を受けたあと、看護師は患者さんがストマについてどのように受け止めているか、どの程度理解できたのか情報収集することが必要です。患者さんがストマの必要性やストマとはどういうものかについてしっかり理解できていなかったり、そもそもストマ造設そのものに納得していない場合、ストマ造設後のボディイメージ変化の受け入れができなかったり、セルフケア手技の習得拒否、社会復帰が遅れてしまうといったことも起こってしまうからです。患者さんの心理状況をアセスメントしたうえで、ストマ造設についての理解をしっかり促していくことが大切です。また、ストマ造設を受け入れて納得している場合でも、ストマを見たことがない患者さんにとっては退院後の生活がどんなものかイメージしにくいはずです。ストマになった時の排泄方法やストマケアの方法の情報を提供し、実際に使う装具などを実際に見てもらい、術後の自分の体の排泄機能、生活がどう変化するか具体的に理解できるよう関わっていきましょう。
 

 

 

 

 

 

ストマサイトマーキング

ストマサイトマーキングとは、術前にストマの造設位置を選定してその部位にマーキングしておくことをいいます。ストマサイトマーキングは以下の目的があります。

・合併症を起こしにくくなる。

・患者さんの生活を想定してセルフケアがしやすい位置にマーキングすることで、患者さんが自己管理しやすい位置にストマを造設できる

・しわになりにくい、安定した皮膚表面を選択しておくことで、ストマ造設後に装具の装着がしやすい部位を選択できる

・実際にストマを造設する位置にマーキングを行うことで、患者さんが自分のボディイメージの変化

やストマについて具体的イメージをすることができます。

 

手術当日

 

ストマ造設

手術終了後、造設したストマに装具を装着します。装具は術直後、ストマの状態に合ったものを選択し装着することになります。
 

 

 

手術後

1日目以降

 

 

離床開始

ストマ装具の交換

 

手術後1日目以降、離床が開始されます。ストマや周囲の皮膚状態を観察しながら、術直後に装着した装具の交換を行います。術直後からしばらくの間は、静脈還流が障害されることによりストマに浮腫が生じています。徐々に浮腫は軽減していくので、退院までには浮腫がとれてサイズが縮小します。

ですから、ストマ装具の決定は、浮腫が消失した後、ストマサイズや皮膚状態、ライフスタイルを考慮したうえで、退院までに患者にあった装具を決定することになります。

 

 

手術後

2日目以降

 

 

ストマ袋から

排泄物破棄の実施

排泄物が出てきているようであれば、患者さん自身か今後ケアを行う家族(もしくは他の援助者)にストマ袋から排泄物を破棄する方法を習得していってもらいます。また、実際に装具を触ってもらったり、看護師が装具交換しているのを見学してもらいながら、少しずつ装具交換の知識と手技を覚えていってもらうよう指導を行います。
手術後

7~10日目

この期間の間にストマ粘膜と皮膚の縫合部分の抜糸が行われます。
 

 

退院までに

行う指導

 

ストマ装具交換の

手技習得

日常生活についての

注意点を説明する

患者さんかその家族(もしくは他の援助者)がストマ装具の定期交換の手技を習得できるよう指導します。退院してからの日常生活をふまえて、注意する点や食生活の指導も行います。シャワー浴や入浴なども体験してもらい、退院してから困らないように具体的な生活場面を考えながら指導を行います。

 

 

4-1、退院してからの注意点や指導内容

①食事について

ストマ造設後の食事制限はありませんが、排便コントロールは大切となるため、以下の食事指導を行います。

 

・下痢や便秘の時に摂取した方が良い食べ物、摂取しない方が良い食べ物

・ガスを発生しやすい食べ物

・ガスの発生を抑える食べ物

・便やガスの臭いを強くしてしまう食べ物

・便やガスの臭いを抑える効果をもつ食べ物

 

②入浴について

ストマを造設していても装具をはずして入浴することができます。体の内圧の方が水圧より高いため、ストマ内にお湯が入ってくることがないためです。ただ、肛門には肛門括約筋があり、排便を抑えることができますが、ストマにはその括約筋がないため入浴中でも便が出てきてしまうことがあります。ですから、心配な時は透明なゼリーやプリンのカップをストマ部分にかぶせて抑えながら入る方法もあります。

 

③仕事や学校などの社会生活

社会生活に制限なく、今までと同じように生活できます。ただ上記にも書いてあるように、排便が出るのを調整することはできないため、便やガスでストマ袋がいっぱいになってしまった場合はその都度、席をはずして破棄に行けるように、学校の先生や職場の上司に協力を得ておくようにしてもらいましょう。

 

まとめ

病棟においてはストマ造設後の創部のケア、ストマの装具決定や手技の指導、合併症を起こしてしまったストマのケアなど看護師に求められる看護ケアはまだまだたくさんあります。上記で説明したのはそれらの基本となる知識です。しっかり理解をしたうえでさらに必要な指導技術やストマケア方法を学んでいって下さい。

 

参考文献

片山育子他 はじめてのストーマケア メディカ出版(2012年)

山本由利子 ストーマケアBASIC メディカ出版(2008年)

回復期の看護|特徴と問題・目標、看護師の役割と看護計画

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回復期看護

あらゆる疾病になった場合の人間の健康状態の経過において、身体機能の安定した状態を「健康レベルが高い」とみなします。あらゆる疾病に対する健康レベルの経過は、「急性期(手術や急変など))」「回復期」「慢性期」「終末期」の4つに分けて考えることができ、これらの段階によって分けた看護を経過別看護とよびます。ここでは「回復期」について説明していきたいと思います。

 

1,回復期の看護

■回復期看護の特徴について

・身体機能の回復傾向は明らかであるが、何らかの機能障害が残るリスクがある

・機能回復への不安や機能障害の受容困難に陥りやすい

・運動機能、脳昨日、呼吸機能、循環機能などの医学的リハビリが必要になる

・機能障害の程度により生活の再構築が必要

・身体機能の促進と機能障害拡大の予防、残存機能の活用、残存機能の活用、生活行動の自立支援、障害受容の支援、社会的支持の獲得支援が必要となる

 

ただし、実際の患者の看護においては急性期の状態と見ることも終末期の状態としてみることができたり、慢性期における急性期ということもあり得るのが看護の難しさでもあったりしますので臨機応変にケアを行っていくことが必要です。

また回復期リハ病棟では、急性期病棟より手のかかる患者が選択的に入院してくる病棟でもあります。というのも単に介護するだけではなく、急性期病棟で行った手術の合併症の見落としを予防したり、今後の自宅への生活に向けて自立支援を行っていく必要が求められるからです。

しかしながら、手術や急性期を脱した患者が、どのように自宅に帰っていくのかを知ることができ、ゆっくりした時間の中で患者と向き合うことができるのは、回復期病棟で働く魅力でもあります。

回復期の特徴

出典:ナーシング・グラフィカ成人看護学①(株式会社メディカ出版 2013年1月20日  安酸史子、鈴木純恵、吉田澄恵 著)

 

2、回復期の看護問題と看護計画

回復期病棟での看護問題は、整形術後、脳梗塞後、呼吸器術後など何の疾患かによって、また個人や年齢、家族構成によって大きく異なります。今回は、回復期病棟に多い脳卒中による片麻痺がある患者の看護計画を紹介します。

 

■皮膚統合性障害

リスク状態:寝たきり状態

看護目標:褥瘡を発生させない

観察項目

・スキントラブルの有無

・検査データ(ALB、TP)

・食事摂取量

・適当なマットレスが使用されているか

・一日の活動状況

・便失禁、尿失禁の有無

・発汗の有無

 

 

ケアプラン

・2、3時間に1回は体位変換を行う

・適当なクッションを用い除圧する

・日中離床介助

・食事時は車いすに座り食事摂取促し

 

指導項目

・便失禁、尿失禁があった場合はナースコールで知らせるよう説明する

■転倒

リスク状態:片麻痺がある

看護目標:転倒しない

観察項目

・履物のサイズ、テープで留められるものか

・ベッドの高さ

・4点柵はなされているか

・患者のベッド周囲やテーブルの上は整理整頓されているか

・車いすの位置は妥当か

・車いす移動中のスピードは適当か

・病棟廊下は整理整頓されているか

 

ケアプラン

・ベッドの高さは最下に徹底する

・4点柵実施

・車いすの定期点検実施

 

指導項目

・テープ付きの靴を購入してもらうよう家族に説明する

・車いすの使い方を家族に説明する

・トイレに行く際はナースコールで知らせるよう説明する

 

■関節拘縮

リスク状態:片麻痺がある

看護目標:関節拘縮を起こさない

観察項目

・ベッドの固さ、布団の重さは適当か

・しびれの有無

・関節可動域の確認

・疼痛の程度

 

■関節可動域について

関節可動域について

出典:リハビリ(関節可動域改善・筋肉増強訓練)|オリエンタルメディスン

 

ケアプラン

・良肢位を保つ

・適宜必要なクッションを使用する

・セラピストからの助言に準じたリハビリを行う

 

指導項目

・どのようなリハビリを行うか、事前に患者に説明し不安を取り除く

 

■嚥下困難

状態:脳卒中後遺症

看護目標:栄養状態維持、窒息に対する恐怖の緩和

観察項目

・嚥下にかかる時間

・むせの有無、G音

・1回量は適切か

・患者の好み

・検査データ(ALB、TP)

 

ケアプラン

・少量ずつ頻回摂取する

・1回に口の中に入れる量を少なくする

・適宜とろみをつける

・必要に応じてきざみ食にする

 

指導項目

・家族に食事介助の方法を指導する

・食事摂取がうまくいかないときは患者が好きなものを買ってきてもらう

・食事中エプロンを着用し、こぼれても衣服が汚れないようにする

 

■失語

状態:脳卒中後遺症

看護目標:家族や医療スタッフとコミュニケーションがとれる

観察項目

・患者の表情、言動

 

ケアプラン

・ジェスチャーを使用する

・短い文で話しかける

・わかりにくいときは繰り返し言う

 

3、回復期の看護師の役割

回復期の看護師は、様々な医療スタッフと密にかかわりながら、患者の自宅への退院を支援していく重要な役割を担っています。回復期の看護師の主な役割を以下にまとめます。

 

■連絡調整

院内外の医療スタッフや業者それぞれが時間と場所と対象者を共有し、スムーズに活動するにはスケジュール管理が必要です。そのため、部署内の組織体制や勤務予定、患者のスケジュール(他科受診、入浴時間、検査、外出や面会)を明確に看護師が管理し調整します。日々の患者のバイタルサインや状態把握をみて、適宜スケジュールを変更します。

 

■記録-情報の活用

医療スタッフと密にかかわると、多すぎる情報量や重複した記録のため整理が追い付かないときがあります。そのような場合は、看護計画に盛り込んで日常のケアに生かしたり、皆が見える掲示板にまとめたりして情報の簡素化に努めます。

 

■ADL評価

回復期の看護師は、セラピストからの専門的なアドバイスを看護計画に取り入れて実施し、その様子やADLを評価したものをセラピストにフィードバックする役割も担っています。他職種カンファレンスを開いて口頭で情報共有したり、評価表を用い他職種が見えるように工夫をします。

 

■自立支援

患者にとって大切なことは、入院生活の中で提供されるケアが専門性に基づき、効果が期待できることであり、そしてケアの大半は看護師が実施しています。つまり各職種が専門的にかかわるためには、看護師が実施できる具体的な方法を提示する必要があります。患者が自立していけるよう、セラピストからの助言を看護計画に組み込むときは、初めてその計画を見た看護師も実施できるように具体的に示します。(例えば「歩行訓練を行う」であれば、「自室と食堂を歩行器で移動する」と具体性を持たせるとケアが行いやすいですね。)

 

■環境づくり

病室や食堂では、患者の生活や安全、能力向上に向けたベッドの高さ、テーブルや椅子の配置にします。「たかが環境整備」と思うかもしれませんが、環境の正しい理解がADL評価や患者の能力に応じた環境調整、院外生活における問題点の考察など自立支援の視点になるため環境整備は重要です。ベッドやマットレス、車いすやクッションなど様々な物品の使用目的や特性も把握する必要があります。看護師は、環境に敏感であり、病棟環境は自分で作り上げるという自覚を持ち、あるべきものがあるべき場所に整理整頓されているよう、無駄のない環境づくりができるよう意識しなければいけません。

 

■家族とのかかわり

ケアの対象者は患者本人だけではなく、家族も対象者に含まれます。時には入院中の洗濯を家族にお願いしたり、患者の意欲を高めるために家族に面会を依頼する必要もあります。日々のリハビリを自宅での生活に置き換えて指導することも回復期の看護師の役割でもあるため、家族に指導を行い、外出外泊など地域生活への復帰の機会を徐々に作り上げていきます。

 

まとめ

急性期よりは状態が安定しているとはいえ、様々な身体の問題を抱えている患者、その家族を自宅や施設での生活していけるように看護を行っていくのが回復期の難しさでもあります。しかし、他職種で連携していくスケジュール管理能力を身に着けることができたり、患者の自宅での生活がより鮮明に見えるようになったり、回復期で働くメリットは多々あります。これから回復期で働きたい看護師の方や、今回復期で働いているが看護に自信がない方はぜひこれらを参考にして、日々のケアに生かしてください。

 

参考文献

ナーシング・グラフィカ成人看護学①:株式会社メディカ出版(安酸史子、鈴木純恵、吉田澄恵 著)

新しいシステムと運営の仕方:回復期リハビリテーション病棟(有限責任中間法人日本リハビリテーション病院・施設協会)

看護に必要なリハビリテーションの知識と技術:株式会社医学書院(石田肇)

オリエンタルメディスン:関節可動域改善・筋肉増強訓練について

ミエログラフィー(脊髄造影)の看護|看護目的と適応方法、副作用について

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ミエログラフィー看護

ミエログラフィー(脊髄造影)は、脊柱管内の神経が圧迫され、しびれ、痛み、まひなどの症状が出ている患者に行う侵襲的な検査方法です。ミエログラフィーの看護は、施術方法や目的、副作用などについてよく知り、腰椎穿刺・後頭下穿刺に準じた処置や観察など、適切な看護が必要です。

患者がミエログラフィーを安全に安楽に受けられ、検査後の副作用を発生させないためには、検査前後の看護が重要となります。ミエログラフィーについて詳しく説明します。

 

1、ミエログラフィー(脊髄造影)とは

ミエログラフィーとは、脊髄腔の形状と交通性を診断するための臨床検査です。腰椎を穿刺して造影剤を脊髄腔内に注入し、X線で造影剤の拡散する様子を透視して撮影します。

ミエログラフィー(脊髄造影)とは

出典元:藤元メディカルシステム

 

ミエログラフィーは脊髄の圧迫病変の評価に用いられ、今後の治療方針や手術部位、手術方法を決めるための参考に使われます。

MRIによっても脊柱脊髄の病変の診断は行われますが、ミエログラフィーは立位、側位など様々な動態撮影に優れていて、実際に姿勢を動かしての圧迫の状況を確認することができます。また、造影剤を使用してからCTを施行することができるため、神経根の近位の抽出が可能となり、圧迫病変の診断に有用性が高い検査ができます。

 

2、ミエログラフィーの目的と適応

ミエログラフィーは、様々な原因による脊柱管内の神経組織の圧迫や狭窄の位置、程度を評価するための検査です。

 

■ミエログラフィーで撮影した正面のX線画像

ミエログラフィーで撮影した正面のX線画像

出典元:慶應義塾大学医療・健康情報サイト

 

■ミエログラフィーで撮影した側面のX線画像

 

ミエログラフィーで撮影した側面のX線画像

出典元:慶應義塾大学医療・健康情報サイト

 

 

主に腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなど、脊椎脊髄病疾患の病態把握や、今後の治療方針を決定するために行います。

 

3、ミエログラフィーの方法と流れ

ミエログラフィーの検査時間は10分から20分ほどです。検査前からの流れをみていきましょう。

 

3-1、検査前

医師から検査の方法や目的、副作用について説明してもらい、同意の有無を確認し、同意される場合は同意書にサインをもらいます。また、検査当日は入院となり、検査前は絶飲食になります。

 

3-2、検査当日

検査当日は入院し、検査前に点滴を行います。検査室へ行き、患者に横を向いて背中を丸めながら寝ていただき、医師が細い針を用いて腰椎に穿刺して、神経組織を包む硬膜の中にヨード造影剤を注入します。その際に検査のため髄液を少量採取することがあります。

頚椎部の評価にはベッドを傾けて頚部へ造影剤を流します。その後、体を曲げたり伸ばしたりしていただき脊髄・馬尾神経の圧迫の評価をします。脊髄造影検査の終了後にCT室へ移動して、脊髄造影後CT検査を行います(検査所要時間約5-10分)。

検査後は自室へ戻り、床上安静となります。

 

4、ミエログラフィーの看護

ミエログラフィーは腰椎穿刺してヨード造影剤を注入して造影する検査なので、腰椎穿刺の看護と同様の看護が必要です。

 

4-1、検査前日

①穿刺部位を清潔にし、必要があれば剃毛を行い、検査前には絶飲食となることを説明します。

②検査後は頭部を30度ほど挙上して3時間ほど症状安静が必要であること、床上安静中は排泄を床上で行う必要があることを説明します。

 

4-2、検査前

①患者に上下に分かれた検査着に着替えてもらい、排泄を済ましてから血管ルート確保を行います。

②出棟時にはバイタルサインをチェックして、ストレッチャーにて造影室まで移送します。 検査中も適宜バイタルサインのチェックを行います。

③検査時は、病棟の看護師が介助に当たることもありますが、造影室の看護師が介助に当たることもあり、その場合は、病棟看護師は病棟での患者の様子を、造影室の看護師は検査中の患者の様子や検査状況などをお互いに申し送ります。

 

4-3、検査中

①造影前にバイタルサインをチェックし、問題がなければ、患者を左側臥位として膝を抱えるような姿勢と取り、腰椎穿刺の体位を保持します。

②医師が穿刺部を消毒し、局所麻酔を行います。患者には、動かないように説明し、また激痛が走る場合は伝えるように説明します。

③穿刺中は患者の体位の保持をサポートしながら、プロテクターを装着し、清潔操作で必要物品を授受するなど、医師の処置の介助を行います。

④穿刺後に髄液の流出が確認できたら、必要なら必要量の髄液を採取し保管します。

⑤造影剤の注入後、穿刺針を抜去し、穿刺部に消毒後に絆創膏を貼ります。患者の体位を仰臥位に戻し、頭部を下げないようにして造影を開始します。

 

4-4、検査終了後

①穿刺部位を清拭し、バイタルサインを測定します。

②問題がなければ、ストレッチャーで頭部を下げないよう45〜60度挙上しながらCT室へ移送し、検査後、病棟へ帰棟します。

③帰棟後、バイタルサインのチェックを行い、問題がなければ医師の指示のもとで飲食可とし、3時間頭部を30度挙上して床上安静とします。

④検査後3時間でめまいなどがなく、意識レベルに問題がなければトイレ歩行も可となりますが、めまいなどがあれば車椅子でのトイレ介助を行います。

⑤トイレ歩行以外は床上安静として、安静中は造影剤が頭蓋内に入らないように、頭部を10〜30度挙上します。

⑥飲水可となったら水分摂取を促し、水分摂取が少ない場合は医師に報告し、必要であれば造影剤を排泄させるために輸液が追加されることもあります。

⑦翌日から入浴が許可されることを説明します。

 

4-5、検査中、検査後の観察のポイント

脊髄造影の副作用(頭痛、嘔気、嘔吐、めまい、振戦など)の有無、穿刺部位の状態(出血、血腫、疼痛の有無)、意識状態、アレルギー性の発疹の有無、バイタルサインを時間ごとに観察を行うようにします。異常があれば、速やかに医師に報告します。

 

5、ミエログラフィーの副作用について

腰椎穿刺と同様の副作用に追加して、造影剤による副作用も考えられます。

 

■腰椎穿刺の副作用

頭痛、嘔気、めまい、感染症などがあります。頭痛、嘔気、めまいは低脊髄圧症候群と呼ばれ、腰椎の穿刺部位から髄液が漏れることで脳脊髄液が減り、脳の浮力が低下することで脳を支えている血管や神経が引っ張られることで起こります。

このような症状は、数日から1週間程度で改善されますが、ひどい場合は、点滴治療や自己血液による硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)という方法を行うことがあります。このブラッドパッチによって、硬膜外腔に血液が広がって徐々に血液が固まり、髄液が漏出している穴を塞いでくれるのです。

感染症は穿刺部位周囲のものもありますが、稀に髄膜炎が発症することもあります。

 

■ヨード造影剤の副作用

かゆみ、発疹、発赤、嘔気、息苦しさが検査直後から数日で起こる場合があります。ヨード造影剤の副作用は、造影剤が排泄されないことによって起こるので、検査後には水分を十分に摂取して造影剤を早期に排泄させることが副作用を発症させないために重要です。

 

まとめ

ミエログラフィー(脊髄造影)の目的、方法、看護、副作用について説明してきました。様々な造影検査がありますが、ミエログラフィーは腰椎穿刺を伴う検査のため、腰椎穿刺に対する看護も必要です。ミエログラフィーの検査中や検査後の管理で患者さんの安楽や、副作用の発生の有無にも大きく影響しますので、しっかりと観察して管理することが大切です。

与薬の5Rとは|看護師が確認すべきタイミングと5Rの覚え方

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与薬5R

日々の医療現場では輸液や内服は必ずと言って良いほど日常的に行われる看護行為の一つです。小児から大人まで様々な疾患に対して行われる与薬を、安全かつ適切に患者さんに投与できるよう細心の注意を払って業務を行わなければなりません。輸液や内服といった患者さん毎に異なる薬剤の投与を正確に行うために看護師が行う確認作業に5Rというものがあります。中には6Rとして推奨している医療機関等もありますが、ここでは基本的な5Rについてのポイントを見ていきます。

 

1、5Rとは

5Rとは、輸液等の与薬を行う際、安全に投与するために行う確認事項のことを言います。『R』とは「Rⅰght」の略を指します。5つの確認項目に対して正しいものが準備・投与されようとしているのかをチェックするためのものですね。「Rⅰght=正しい」が重要なキーワードとなります。まずは意味を理解し業務に取り入れていきましょう。

 

2、5Rに基づく確認の方法

輸液や内服の指示が出たら、処方箋、注射指示書に記載されている薬剤を5Rに基づき要点をおさえて確認していきます。以下では誤薬を防止するため、何を確認していく必要があるかを見ていきましょう。

 

①Right・Patient:正しい患者
患者さんにフルネームで名乗ってもらい指示書と合っているかを確認します。氏名、診療科、病室番号、年齢や性別なども確認しましょう。同性あるいは同姓同名の患者さんがいる場合には細心の注意が必要です。同室に同性または同名の患者さんがいることもあるかもしれません。「フルネーム」で確認することが患者さん違いの防止になることを頭の中に入れておきましょう。

 

②Righ・Drug:正しい薬剤
指示書の薬剤との合致を確認します。薬剤を溶解・混合する前に看護師同士でダブルチェック、指示量をシリンジに吸った時にダブルチェックをします。また、患者さんに投与する前にも再度確認を行います。薬剤アレルギーの有無や禁忌薬剤ではないかの情報収集も前もってしておく必要があります。遮光性の薬剤や直前溶解の薬剤もあるのでこれも一緒に確認しておきます。他の医療者とのダブルチェックにより自分自身の思い込みの可能性を低下させることで誤薬を防止できます。内服薬に関しては薬剤部から上がってきたものを処方箋と照らし合わせながら内容が正しいか確認、その後与薬する看護師が再度確認します。

 

③Right・Dose:正しい用量
年齢・体重による適正な薬剤量、濃度であるかを確認しましょう。単位や桁数なども確認します。途中から薬剤量が変更になっている場合もあるため、指示量に変更はないか注意しましょう。処方事故で最も多いのが投与量の間違いです。指示書や処方箋をその都度チェックして疑問な点は必ずカルテを見る、医師に確認することが大切です。また、与薬における事故では、静脈注射・内服・末梢静脈点滴での過剰投与が多く、重複していることに気がつけない確認不足が原因に挙げられます。薬剤の取り違えや禁忌薬剤の投与と合わせて注意する必要があります。

 

④Right・Route:正しいルート、経路、用法
注射による与薬、座薬、内服、点眼、湿布などの貼付等の確認をします。注射であれば静脈注射だけでなく皮下注射・筋肉注射もあります。ワンショットでいくものなのか、時間をかけていくものかも確認が必要です。また、薬剤によっては単独で投与しなければならないものもあります。点滴ルート内の混濁や詰まりの原因となり、ルートの取り直しや最悪の場合には中心静脈ルートの入れ替えなど患者さんにも負担がかかりますので日頃から配合禁忌の薬剤を知っておくことも重要です。

 

⑤Right・Time:正しい時間
日付、投与時間や点滴の滴下速度(一定の時間をかけて投与するもの)を確認します。輸液においては抗生剤など、8時間毎や12時間毎等投与時間が決まっている物があります。これは薬剤の半減期や腎臓・肝臓機能障害を防止するために副作用を考慮した投与時間、滴下速度となっているためです。また、内服においても同様のことが言えます。食前、食直前、食後、眠前あるいは時間が指定されていることもあります。指示書や処方箋をきちんと確認し時間や速度を守った与薬を行いましょう。

 

3、5R確認のタイミング

薬を実際に患者さんに与薬する前に3回はこの5Rの確認を行う必要があります。

 

■1回目:薬剤を手にする時
指示書をもとに薬剤を準備する際に薬を出しながら一つ一つチェックしていきます。この時、患者さん毎に別々のトレーに準備していくことで事故防止に繋がります。同性の患者さんがいる場合にはトレーを離して準備するようにすることでミキシング時の入れ違いの防止対策になります。わかりやすいようマーキング等の対策を取るのも良いでしょう。

 

■2回目:薬剤を手に取って容器から取り出す時、詰める時
薬剤を容器から取り出す、混合させる時に確認を行います。ここでダブルチェックを行うことで用量の間違いや正しい患者さんのものであるかの確認ができます。特に小児の場合は年齢によって薬剤の使用量がかなり変わってきますので桁数や単位に十分注意しましょう。また、インスリンなどの微量に使用する薬剤の単位にも気をつけなければなりません。

 

■3回目の:患者さんに薬剤を投与する前
実際に患者さんのもとへ行き与薬をする直前です。患者さん本人が話せるようであればフルネームを名乗ってもらう、そうでなければ、ご家族やネームバンド・ベッドネームで本人確認を行い指示書と合わせて声出し確認・指差し確認をしながらルートをつなげていきます。特に点滴ルートが複数ある患者さんに対しては、どのルートからその薬剤を投与するのかをしっかり確認しなければなりません。

 

4、5Rの覚え方

5Rの覚え方には様々な方法があるようです。下図のような指を使ったもの、語呂合わせで覚える方法などです。覚えるまではメモを持ち歩き、項目ごとに一つずつ確認をしていくようにすると良いでしょう。ご自分に合った覚え方をインターネットや文献などから探して取り入れるのもひとつの方法ですね。また、それぞれの医療機関には看護業務に関するマニュアルが用意されていると思います。これらを参考に日々の業務の中で実践しながら覚えていきましょう。

5Rの覚え方
引用元:一関病院|医療安全へのとりくみ

まとめ

医療に従事する者にとって薬剤の投与は常についてまわる業務の一つです。人の命を預かる私たちにとって決して間違ってはならない重要項目であり、常に緊張感を持っていなければなりません。過剰に体内に入ってしまった薬剤は抜くことができません。このことからも、輸液や内服を行う際には誤薬防止のため事前に必ずダブルチェックを行うことが必要不可欠です。いくつもの業務を並行して行うという忙しさの中で時間に追われつい確認を怠ってしまうことが事故の原因となります。自分自身の思い込みや見間違いに気付ける5Rはとても重要な作業の一つなのです。きちんとした確認作業を行うことで患者さんだけでなく自分自身をも守ってくれる5R、その必要性をきちんと認識・実践し医療事故の防止に努めていきましょう。

 

参考文献

看護師の内服与薬業務における確認エラー|日本看護管理学会(2005年12月)
注射業務における看護師の安全確認行動の分析|Nurses’Actionofthe(2003年1月)

マーゲンチューブの看護|種類や目的、看護技術(挿入・交換・固定方法)

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マーゲンチューブ看護

マーゲンチューブは、胃の中の減圧や排液、経管栄養の投与などを目的に、鼻腔から胃に挿入するチューブのことです。消化器外科の術後や経口摂取が不可能な患者に挿入され、病院だけではなく介護施設でも、挿入している患者は多いと思います。

マーゲンチューブの基礎知識や種類、目的、看護技術(挿入・交換・固定方法)をまとめました。マーゲンチューブを挿入する患者の看護をする時の参考にしてください。

 

1、マーゲンチューブとは

マーゲンチューブとは、主に鼻腔から胃に挿入するチューブのことで、NGチューブや胃管、胃チューブ、胃ゾンデ、マーゲンゾンデ、ストマックチューブ(STチューブ)と呼ばれることもあります。

サイズは10~18Fr(3Fr =1mm)を使うのが一般的ですが、目的・用途、患者の体格よって、使用するマーゲンチューブのサイズは異なります。

マーゲンチューブの看護とは

出典:ファイコンフィーディングチューブS マーゲンタイプ | 富士システムズ株式会社

素材はシリコン製やポリ塩化ビニル製のものが多く、先端はX線不透過の線が入っているものが一般的で、レントゲンでマーゲンチューブが胃に入っているかどうかを確認できるようになっています。

 

2、マーゲンチューブの種類

マーゲンチューブの種類は、主に減圧・排液目的のものと経管栄養目的のものに分けることができます。また、各医療機器メーカーによって特徴や呼び方などが少しずつ異なります。

 

■減圧・排液目的

減圧・排液目的のマーゲンチューブは、排液腔と空気腔の二重構造になっていて、空気腔があるために、吸引してもマーゲンチューブの先端が胃壁にくっつかないようになっています。

また、減圧・排液目的のマーゲンチューブは、逆流防止弁がついているものがあります。基本的に14~16Frなど太めのものを選びます。

 

■経管栄養目的

経管栄養目的は長期間留置することがありますので、患者への負担を減らせるように柔らかい素材のものが多く、ガイドワイヤー(スタイレット)がないと挿入できないものが多いです。経管栄養目的の場合は、12Fr以下の細いものを用います。

 

3、マーゲンチューブの目的

マーゲンチューブを挿入目的は、胃の洗浄と経管栄養の投与、胃液の検査、術後合併症の予防の4つがあります。

 

■胃の洗浄

マーゲンチューブを挿入する目的の1つ目は、胃の洗浄です。これは、救急外来や救命救急センターで行われることが多いのですが、睡眠薬などの薬物を大量服用した患者には、マーゲンチューブを挿入して、胃洗浄を行います。

その後、吸着作用のある活性炭を注入することもあります。

 

■経管栄養の投与

経口摂取ができない患者さんには、マーゲンチューブを挿入して、経管栄養を投与します。また、薬剤を水に溶いて、胃に注入することもできます。

 

■胃液の検査

胃液の検査や胃の内容物を採取する時にも、マーゲンチューブを挿入し、シリンジなどで吸引して採取します。

 

■術後合併症の予防・早期発見

消化器外科の術後は、マーゲンチューブが挿入されていることが多く、マーゲンチューブが挿入されていることで、術後合併症の予防や異常の早期発見につながります。

・排液の観察による術後出血の早期発見

・減圧することで吻合部への圧を減らし、縫合不全を予防する

・減圧することで、麻痺性イレウスによる嘔吐を予防

マーゲンチューブを入れることで、これらの術後合併症の予防や早期発見ができるのです。

 

4、マーゲンチューブの看護技術

マーゲンチューブの挿入方法、交換時期やタイミング、固定方法の注意点を確認していきましょう。

 

4-1、マーゲンチューブの挿入方法

マーゲンチューブを挿入するのは、医師が行う病院・施設もありますが、看護師が行うところもありますので、看護師はマーゲンチューブの挿入・挿入介助ができるように、必要物品と挿入方法を知っておく必要があります。

 

■必要物品

・マーゲンチューブ

・カテーテルチップ型シリンジ(50ml)

・キシロカインゼリー(潤滑剤)

・固定用テープ

・ディスポーサプル手袋、マスク、エプロン

・処置用シーツ

・ガーグルベースン

・聴診器

 

■挿入方法

①患者にマーゲンチューブを挿入することを説明する

②患者に座位、または仰臥位になってもらう

③マーゲンチューブの先端にキシロカインゼリーを塗布する

④嘔吐を誘発した時に備えて、処置用シーツを引き、患者にはガーグルベースンを持っていてもらう

⑤患者に顎を引いてもらう。顎を引くことで、食道が開き、挿入しやすくなる

⑥鼻腔から鼻腔底部に沿わせながら、ゆっくり挿入する

⑦咽頭に達したら、意識のある患者には嚥下してもらい、嚥下のタイミングに合わせて、挿入を進める

⑧成人の場合は45~65cm程度挿入すると、胃に達する。

⑨胃内にマーゲンチューブがあるかを確認したら、固定する

 

胃内にマーゲンチューブがあるかどうかを確認するのは、とても大切なことです。確認方法は、次の3つがあります。

・カテーテルチップで胃の内容物を吸引する

・カテーテルチップで空気を注入し、胃に聴診器を当てて「ゴボッ」という音が聞こえる

・レントゲンで胃内にマーゲンチューブがあること確認する

これをきちんと確認しないと、気管にマーゲンチューブが入っていて、経管栄養を落としたら、呼吸状態が一気に悪化したという事態になりかねません。

必ずマーゲンチューブは胃内に入っているかを確認してください。看護師が挿入する場合は、ダブルチェックだけではなく、最終確認は医師にしてもらったほうが良いでしょう。

 

4-2、マーゲンチューブの交換時期

マーゲンチューブは、特に交換時期が定められているわけではありませんので、「○日間で交換しなければいけない」という決まりはありません。頻回に交換していると、患者にも負担がかかります。

ただ、マーゲンチューブが原因で鼻翼に潰瘍ができたり、チューブが閉塞したり、明らかに汚染している場合は、交換するようにしましょう。

また、マーゲンチューブによっては、メーカーから「留置期間は2週間以内」と決められているものがありますので、その場合はその期間で交換するようにしてください。

 

4-3、マーゲンチューブの固定方法

マーゲンチューブの固定方法は、鼻翼で固定してから、頬に沿わせて頬でもう一度固定するのが一般的です。鼻翼での固定は、7cm程度の長さのテープの中央に切り込みを入れて、それを巻き付けるようにして、留めると良いでしょう。

頬での固定は、頬に直接チューブを当てて、その上からテープで固定するのではなく、テープでチューブを包み込むようにして固定するようにしてください。頬に直接チューブを当てて固定すると、固定力が弱いですし、頬に潰瘍ができるリスクがあります。

また、自己抜去の可能性が高い患者には、粘着力の高いテープでしっかりと固定する必要がありますが、皮膚トラブルの原因になったり、鼻翼に潰瘍ができることがありますので、注意が必要です。

必要であれば、頬に沿わせてから耳の後ろを通して固定、さらに病衣の中を通すなどの工夫をするようにしましょう。

 

まとめ

マーゲンチューブの基礎知識や種類、目的、看護技術(挿入・交換・固定方法)をまとめましたが、いかがでしたか?

マーゲンチューブが挿入されている患者は多く、看護師にとって、マーゲンチューブの患者の看護をすることは日常的で当たり前のことになっていると思います。

ただ、マーゲンチューブは間違って気管に入ってしまえば、医療事故につながるものですし、鼻翼に潰瘍を作ると、患者に苦痛を与えることになりますので、もう一度、マーゲンチューブの目的や看護技術を見直しておくようにしましょう。

導尿の看護|目的と男女別手順、間欠的・持続的導尿の種類、看護計画・問題

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導尿看護

導尿は、急性期・慢性期、科を問わずに求められる基本的な看護技術です。また、尿閉の解除や検査・処置のために一時的に行うものから、長期的に留置するものまであります。ここでは確実におさえておきたい持続的導尿(膀胱留置カテーテルの挿入)手技をまとめました。

 

1、導尿とは

導尿とは、主になんらかの理由によって排尿できなくなってしまった患者に対し、尿道口からカテーテルを挿入して尿を排出する方法です。導尿には、感染予防のための清潔操作に加え、苦痛や羞恥心に対する患者への配慮が求められます。

 

2、導尿の目的

導尿は、主に自排尿が得られなくなってしまった患者に対し、尿を排出する目的で行います。また、検査や全身管理のために行うこともあります。下に、導尿を行う目的とそれぞれの適応をまとめました。

 

<導尿の目的と適応>

目的 適応
尿閉の解除 前立腺肥大症、神経因性膀胱、膀胱タンポナーデによる尿閉時
残尿測定 残尿(排尿後に出しきれなかった量)測定時
無菌的採尿 外陰部の細菌混入を防いで(主に女性)無菌尿を採取するとき
創部の安静と汚染防止 オペ後や褥瘡による創が尿によって汚染されるのを防ぐ
水分出納の管理 術中・術後・心不全など、厳格な尿量測定が必要なとき
安静 術後・重症者など、ベッド上安静が必要なとき
薬剤注入 膀胱癌に対する膀胱内BCG注入療法時
排尿時膀胱尿道造影 膀胱尿管逆流症に対し、排尿時の膀胱・尿道造影時
膀胱洗浄 血尿による尿路閉塞時

 

2-1、前立腺肥大症による尿閉

上の表では9つの目的を挙げましたが、主に導尿を必要とするのは「尿が出せなくなったとき」です。尿が出せなくなる理由として多いのは、前立腺肥大症と神経因性膀胱です。男性は加齢により、前立腺が肥大します。個人差はありますが、これは生理的な現象なので努力によってどうにかなるものではありません。いきなり尿が出なくなる尿閉になるのではなく、いくつかの症状が先に現れます。

 

<前立腺肥大の症状>

・尿の勢いがない

・尿が出るまでに時間がかかる

・一度に出しきれず、チョロチョロと尿が出る

・残尿感がある(出しきれた感じがしない)

・尿が漏れる

 

こういった症状がまず現れ、年単位で進行します。そして、市販の風邪薬を服用したときや、アルコール摂取などの要因が加わることで、突然尿閉を起こします。前立腺肥大の内服薬は、服用しても急に排尿できるようにはなりません。このように突然起こった尿閉は数日で軽快することが多いので、内服治療をしながら数日はカテーテルによる尿、もしくは一時的にカテーテルを留置し、頃合を見て抜去します。

 

2-2、神経因性膀胱による尿閉

近年多いのが、神経因性膀胱です。膀胱内に尿を溜めて排尿するためには、脳・脊髄・末梢神経の機能が保たれていなければなりません。近年、生活習慣病が増加するに連れ、脳血管疾患(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)や糖尿病による神経障害によって神経因性膀胱になる患者が増加しています。この場合はカテーテルを留置し、この先ずっとカテーテルによる排尿管理が必要となります。発症後に内服治療をすることで改善し、カテーテルを抜去できることもありますが、中には出しきれずに膀胱内に貯留してしまう人もいます。これらの残尿は、膀胱炎や腎盂腎炎を引き起こす原因にもなります。そのため、残尿の多い患者もカテーテルでの排尿管理が必要となります。

また、子宮癌などの骨盤内の術後など、治療が終了しても排尿障害だけ残ってしまう患者もいます。このような場合には、本人が1日数回の導尿を行う必要があります。

 

3、導尿の種類

導尿には大きく分けて2つの方法があり、目的やADLに応じて使い分けます。

3-1、間欠的導尿(一時的導尿)

カテーテルを挿入し、尿を出したらすぐに抜いてしまうもので、一時的な処置や検査の場合に採用される方法です。留置してくる必要がないため、バルーンのないネラトンカテーテルを使用することが一般的です。また、本来は持続的導尿が必要な場合でも、患者自身や家族が手技を覚えることで、間欠導尿で管理している人もいます。不快感や移動動作のじゃまにならないことから、自宅で行う人も増えています。1日数回、決まった時間に行うことで、尿を出しきることができます。

 

3-2、持続的導尿(バルーンカテーテル)

24時間カテーテルを挿入したままにする方法です。常にカテーテルを挿入している状態のため、行動範囲の狭い患者や寝たきりの患者に多く行います。しかし、足に小さい蓄尿バッグを取り付けたり、キャップをして一定時間で開放するように工夫すれば、いままで通りの社会生活を送り、移動を楽にすることもできます。この場合には、夜間のみ蓄尿バッグを取り付けることになります。持続的導尿の場合はカテーテルが抜けないようにする必要があるため、蒸留水でバルーンを膨らませて膀胱内に留置(固定)します。カテーテルは4週間ごとの交換が基本ですが、汚染具合によっては閉塞してしまうことがあるため、適宜膀胱洗浄や交換が必要となります。バルーンカテーテルは患者や家族は挿入しません。交換は医療機関を受診するか、訪問看護師が自宅で行います。

 

4、導尿の手順

4-1、男性の場合

➀患者へ導尿の必要性、手技について説明する

導尿する目的、留置するのであればその必要性について説明し、患者の同意を得ます。

➁部屋の準備をする

プライバシーの保護、羞恥心への配慮を行います。カーテンを閉め、照明は明るくして陰部がしっかり見えるようにします。看護師はディスポーザブルエプロンを着用します。

③掛け物をかけてから、寝衣と下着を下す

タオルケットなどの掛け物を腹部にかけます。その下で寝衣と下着を下ろし、羞恥心をできるだけ感じないように配慮します。

➃陰部を露出する

掛け物で腹部から片足を覆い、もう1枚で反対の下肢を覆い、露出する範囲を極力狭くします。

➄処置用のシーツを下に敷く

消毒をすると陰部をつたって寝衣・寝具を汚染してしまうため、ディスポーザブルの処置用シーツを敷きます。

➅カテーテルキットを開く

ワゴンの上などで、滅菌されたカテーテルキットを開きます。

⑦カテーテルキットを移動する

足を少し開いた状態にして、清潔操作になるため動かないように患者に声をかけます。キットに付属している滅菌処置シーツを足の上に敷き、清潔エリアを確保します。その上(足の間)にキットを乗せます。

➇手袋を装着する

キットに付属している滅菌手袋を装着します。以後は処置が終わるまで清潔操作が必要になるので、物品の配置や掛物などを先に整えておきます。

⑨物品の準備をする

綿球に消毒液を垂らし、トレーの空いている場所に潤滑剤を垂らします。蓄尿バッグのクレンメが閉じていることを確認します。

➉バルーンの確認をする

清潔エリア内でカテーテルを包装から出してバルーンに蒸留水を入れ、バルーンの破損がないか確認します。(膨らみが均一で、漏れがないものが正常)確認できたら一度蒸留水をシリンジに戻し、カテーテルにそのまま接続しておきます。

⑪患者に声をかけ、外尿道口を露出する

患者に声をかけてから左手で陰茎を把持し、外尿道口を広げます。陰茎は真っ直ぐ上(天井の方)に向けます。

⑫消毒をする

付属の鑷子で綿球を持ち、外尿道口の中心から円を描くように消毒します。綿球は1回ごとに交換し、2~3回行います。

⑬カテーテルに潤滑剤を塗布する

左手は陰茎を把持したまま、カテーテルの先端10㎝に潤滑剤を塗布します。鑷子は使用せず、手袋をした手で直接カテーテルを持ちます。

⑭カテーテルを挿入する

患者にカテーテルを挿入していくことを伝え、口で深呼吸をするように促します。(若干引っ張り気味に)陰茎を上に向けたまま、カテーテルを15㎝ほど挿入します。尿の流出を認めたら、さらに2~3㎝奥へ挿入します。

⑮バルーンを膨らませる

左手を離し、カテーテルが抜けないように注意しながら蒸留水を注入します。シリンジを押すときに抵抗を感じるようであれば、蒸留水をシリンジ内に戻してさらに奥へ挿入し、もう一度蒸留水を注入します。

⑯バルーンが抜けないか確認する

軽くバルーンを引っ張り、抜けないことを確認します。引っ張ったあとは、2~3㎝奥へ進めておきます。消毒液を付属のガーゼで拭き取ってから、カテーテルを固定します。皮膚に1枚土台のテープを貼ってから、2枚目のテープでカテーテルを包むようにし、陰茎を頭側に向けて土台に貼り付けます。

⑰蓄尿バッグをとりつける

蓄尿バッグを、膀胱より低い位置かつ床に付かないところ(ベッド柵など)に取り付けます。院内規定によっては、バッグに挿入日を記入します。

⑱片付け、記入

患者の寝衣・寝具を整え、処置が終わったことを伝えます。蓄尿バッグを上げないこと、移動する際にはカテーテルを引っ張らないように説明する。その後、カテーテルの種類・太さ・挿入した時間・流出してきた尿の性状などを記録します。

 

4-2、女性の場合

男性の手技と違う⑪~⑭のみ説明します。

⑪外尿道口を確認する

女性は上から尿道・膣・肛門となっています。しっかり足を開き、小陰唇を開き、尿道がわかるように明るく照らします。

⑫消毒をする

付属の鑷子で綿球を持ち、上から下に向けて左右1回、最後に真ん中を消毒します。綿球は1回ごとに交換して行います。

⑬カテーテルに潤滑剤を塗布する

左手で小陰唇をしっかり開いたまま、右手でカテーテルの先から10㎝ほどのところを持ち、先端4~5㎝に潤滑剤を塗布します。このときは鑷子を使用せず、手袋をした手で直接カテーテルを持ちます。

⑭カテーテルを挿入する

患者にカテーテルを挿入していくことを伝え、口で深呼吸をするように促します。しっかり小陰唇を開いて、カテーテルを4~5㎝ほど挿入します。尿の流出を認めたら、さらに2~3㎝奥へ挿入し、バルーンを膨らませます。

 

上記の手技を勤医協中央病院看護技術マニュアル2012 版  膀胱留置カテーテル にて詳しく説明されているので、参考にするとよいでしょう。また、前立腺肥大の顕著な男性や高齢女性といった挿入の困難な場合のコツは、ねじこwebがおすすめです。こちらは写真ではなくイラストですが、大変わかりやすいので参考になります。

 

5、導尿(バルーンカテーテル)の看護問題

バルーンカテーテルが長期にわたると、カテーテルからの感染を起こす可能性があります。感染を起こさないこと、感染徴候に早期に気づくことが、バルーンカテーテルを留置している患者への看護になります。

 

6、導尿(バルーンカテーテル)の看護計画

O-P)

➀尿の流出状態、色、性状、量

➁カテーテル挿入部の状態、漏れの有無

③バイタルサイン(熱型)

➃患者の自覚症状(違和感、疼痛)

➄カテーテルの状態、蓄尿バッグの位置

 

T-P)

➀訪室する時は毎回尿の流出と蓄尿バッグの位置・カテーテルの状態を観察する

➁蓄尿バッグを、患者が足を下す方向(床頭台側)に下げる

③移動時にすぐ呼べるよう、ナースコールを手元に置く

➃4週間ごと交換する

➄漏れ・汚染が顕著な場合は、交換もしくは医師の指示により膀胱洗浄を行う

 

E-P)

➀カテーテルの必要性を説明する

➁カテーテルによる感染の可能性を説明する

③バッグは常に膀胱より下にすること、カテーテルを引っ張らないことを説明する

➃退院後も定期的な交換が必要であることを患者・家族に説明し、退院後の施設や外来、訪問看護師等に引き継ぐ

 

まとめ

導尿は、臨床でよく行う基本的な手技です。清潔操作や感染対策を怠るとカテーテルからの感染症を起こし、場合によっては腎盂腎炎や敗血症を引き起こすこともあります。挿入に伴う羞恥心や苦痛をできる限り小さくするような配慮と、挿入後は感染管理に努めることが看護に求められます。

臨床看護|基礎看護技術の本・雑誌ガイド、臨床看護の本質と総論

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臨床看護

臨床看護とは、どんな看護なのか具体的に知っていますか?臨床看護とは、病棟や外来などの臨床現場で実践する看護のことです。

臨床看護の基礎知識や臨床看護を学ぶためのおすすめの本や雑誌、臨床看護総論についてまとめました。これから臨床に出ていく看護学生も現在臨床で働いていて、もう一度基礎を見直したい看護師の方もぜひ参考にしてください。

 

1、臨床看護とは

臨床看護とは、病棟や外来で患者に接して行う看護のことです。医療施設での看護と言っても良いでしょう。

「臨床」という言葉は、医学や看護学の分野においては「現場」や「現場を重視する立場」という意味を持っています。

そのため、臨床看護は「現場で実際に行う看護」という意味になり、看護学においての現場は病院が主になりますので、病棟や外来で行う看護が臨床看護になるのです。また、病棟や外来で働く看護師を臨床看護師と呼ぶことがあります。

臨床看護の中には、急性期看護や慢性期看護、がん看護、ターミナルケア、クリティカルケアなどが含まれます。また、小児看護や母性看護なども臨床看護になります。

逆に、臨床看護に含まれないものは、地域看護や在宅看護などです。地域看護や在宅看護は、病院内で行う看護ではありませんので、臨床看護には含まれないのです。また、老年看護も臨床看護には含まれません。

そのため、病院で行う看護が臨床看護であり、保育園や訪問看護(在宅)、健診センター、介護施設、デイサービス等で行う看護は臨床看護ではないのです。

 

2、臨床看護の本・雑誌

臨床看護について勉強するためには、臨床看護の本や雑誌を購入することをおすすめします。臨床看護については、職場でその都度先輩看護師から教えてもらうことができますし、インターネット上にも様々な臨床看護に関する情報が溢れています。

そのため、わざわざお金を出して臨床看護の本や雑誌を購入することにためらいを持ったり、もったいないと思う人もいるかもしれません。

でも、本や雑誌は大学の教授など臨床看護学の専門家が執筆しているものです。先輩看護師の指導やインターネット上の情報は、間違っている可能性がありますが、本や雑誌はエビデンスに基づいて書かれていますので、信ぴょう性があるのです。

そのため、臨床で働く看護師は、1冊は臨床看護の本か雑誌を購入しておくと、安心だと思います。

ここでは、臨床看護のおすすめの本を3冊ご紹介します。

 

2-1、臨床看護の本質

臨床看護の本質

出典:臨床看護の本質―患者援助の技術 | アーネスティン・ウィーデンバック, 外口 玉子, 池田 明子 |本 | 通販 | Amazon

「臨床看護の本質―患者援助の技術」は、1984年に現代社から出版された本で、著者のアーネスティン・ウィーデンバック(1900~1996)はアメリカの看護学者です。

臨床看護に固有な技術を明らかにするために、看護婦―患者の関係の中で行われている援助の技術に焦点を当てて展開されています。

臨床現場で用いる看護技術の説明というよりは、臨床看護を学問として捉え、臨床看護を実践していく上での考え方や哲学の基礎を築くための本と言えるでしょう。

「そもそも臨床看護とは何か?」と根本的なところから考えていきたい看護師におすすめの一冊です。

 

2-2、基礎・臨床看護技術

基礎・臨床看護技術

出典:根拠と事故防止からみた基礎・臨床看護技術 | 任 和子, 秋山 智弥, 京都大学医学部附属病院看護部 |本 | 通販 | Amazon

任和子、秋山智弥、京都大学医学部附属病院看護部著「根拠と事故防止から見た基礎・臨床看護技術」は、医学書院から2014年に出版された本です。

この基礎・臨床看護技術の特徴は3つあります。1つ目は、臨床で働いている看護師と学生を指導している看護教員が話し合い、両者ともに納得できる水準にしていることです。

2つ目が根拠と事故防止の観点から手順の根拠を説明していること、3つ目が写真をふんだんに取り入れているだけでなく、動画で説明していることです。170本の動画をインターネット上で公開しているので、いつでもどこでも閲覧できて、適切な技術を身につけることができます。

臨床現場で必要な看護技術が網羅されていますので、臨床看護師は必携の一冊と言えるかもしれません。

 

2-3、完全版ビジュアル臨床看護技術ガイド

臨床看護技術ガイド

出典:完全版 ビジュアル臨床看護技術ガイド | NTT東関東病院 看護部, 坂本 すが, 井手尾 千代美, 木下 佳子 |本 | 通販 | Amazon

この完全版ビジュアル臨床看護技術ガイドは、NTT東関東病院の看護部が執筆し、日本看護協会会長とNTT東関東病院の看護部長が監修し、急性・重症患者看護専門看護師と集中ケア認定看護師の資格を持つNTT東関東病院の副看護部長が編集した1冊で、2015年に照林社から出版されています。

この本では新人看護職員研修ガイドラインの範囲をほぼカバーする51項目の看護技術が解説されていて、写真と共に解説しているので、とてもわかりやすく、新人看護師はこの本を1冊持っておくことをおすすめします。

 

3、臨床看護総論

臨床看護総論とは、看護師の養成課程の教育内容の1つです。現在の看護師の養成課程は保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則で定められていて、その中の基礎看護学の教育内容は、「看護学概論」、「看護技術」と並んで「臨床看護総論」が提示されています。

そのため、看護師になるためには臨床看護総論を学ばなくてはいけないのです。臨床看護総論の大まかな内容は、次のようなものになります。

  • 健康障害を持つ患者と家族のニーズと看護
  • 健康レベルの概念について
  • 健康状態の経過に伴う患者への看護
  • 主要な症状を示す患者への看護
  • 検査や治療を受ける患者への看護
  • 医療機器の原理や医療機器を必要とする患者への看護

これらは臨床現場で看護師として働く上で基本中の基本となるものであり、必要不可欠なものです。また、看護の基礎的知識や技術が、実際に患者へ看護を実践する中でどのように統合されているのかを理解して、応用力を養うためにはとても大切なものになります。

臨床看護総論は、看護学生が臨床実習に出る前にも必要ですし、看護師が働いていく中でもう一度、看護の基礎を振り返るためにも必要なものになります。

臨床看護師が臨床看護総論をもう一度学び直すためには、次の2冊の本がおすすめです。

 

■臨床看護総論―基礎看護学<4>(系統看護学講座専門分野)

臨床看護総論

出典:臨床看護総論―基礎看護学〈4〉 (系統看護学講座 専門分野) | 香春 知永 |本 | 通販 | Amazon

医学書院から出版されたこの本は、臨床看護総論の教科書としては定番の本で、健康障害を持つ対象者を理解し、状態に応じた看護を認識するための内容になっています。

 

■臨床看護総論(新体系看護学全書)

臨床看護総論

出典:臨床看護総論 (新体系看護学全書) | 宮脇 美保子 |本 | 通販 | Amazon

メヂカルフレンド社から出版されたこの本は、臨床という場の理解や患者と家族という対象者の理解に焦点を当てた内容になっています。

 

まとめ

臨床看護の基礎知識やおすすめの本・雑誌、臨床看護総論についてまとめました。臨床看護は病院で働く看護師が実践する看護のことです。

臨床現場では、基礎となる部分は変わらないものの、どんどん新しい知識や技術が導入されていきますので、本や雑誌を購入する時には、できるだけ最新版のものを購入するようにしましょう。


大動脈弁狭窄症の看護|観察項目、看護計画、手術後のポイント

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大動脈弁狭窄症

大動脈弁狭窄症は大動脈弁が狭窄することで、左心室肥大が起こり、さらに狭心症状や心不全の症状が現れますので、死に至るとても危険な病気です。

大動脈弁狭窄症の基礎知識や手術、看護の観察項目や看護計画、術後の看護のポイントをまとめました。今後の看護の参考にしてください。

 

1、大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁狭窄症とは心臓の大動脈弁の開放が制限されて、狭くなってしまった状態のことです。大動脈弁が狭くなることで、左心室から血液が十分に送り出すことができなくなってしまうのです。

大動脈弁狭窄症とは

出典:心臓内科 | 医療法人社団 誠馨会 新東京病院

大動脈弁狭窄症を発症すると、左心室から血液を十分に送り出すことができないため、大動脈弁を血液が通り抜ける時に乱流(ジェット)が起こるために、心雑音が聴取されます。

また、左心室から大動脈弁を血液が通り抜ける時に抵抗が生じますので、左心室に負荷がかかり、左心室肥大が生じるようになります。

大動脈弁狭窄症

出典:大動脈弁狭窄症|慶應義塾大学病院 KOMPAS

ただ、発症当初は明らかな自覚症状はなく、病状が進行して、自覚症状が出てから初めて発見されることが多いのです。

<大動脈弁狭窄症の自覚症状>

・狭心症

・失神やめまい

・両足のむくみ(心不全症状)

狭心症は左心室肥大によって心筋が増加したことによる相対的な心筋虚血や心拍出量の低下などによって起こります。

失神やめまいは、心拍出量が低下したことや左心室圧が上昇したことでの末梢動脈拡張によって、脳血流量が低下して起こります。両足のむくみは心拍出量の低下による心不全から起こる症状です。

これらの症状が現れるまで病状が進行すると、大動脈弁が石灰化して癒着を起こし、弁尖の動きが制限され、左心室から大動脈へ血液が送られにくくなってしまいます。

 

1-1、大動脈弁狭窄症の原因

大動脈弁狭窄症の原因は、先天性のもの、リウマチ熱によるもの加齢によるものの3つがあります。

先天性の大動脈弁狭窄症は、本来なら3枚あるはずの大動脈弁が2枚しかない先天性2尖弁がほとんどになります。

また、リウマチ熱(β‐溶血性レンサ球菌感染症)の後遺症で大動脈弁狭窄症になることもあります。ただ、このリウマチ性大動脈弁狭窄症は頻度は少なく、さらに近年はリウマチ熱自体が少なくなってきていますので、大動脈弁狭窄症の原因の中では珍しものになっています。

3つ目の原因が加齢によるものです。加齢によって動脈硬化が進み、弁が狭くなったり、石灰化することで、大動脈弁狭窄症を発症します。この加齢による大動脈弁狭窄症は、大動脈弁狭窄症の80%以上を占めています。

 

2、大動脈弁狭窄症の手術

大動脈弁狭窄症の治療は、基本的に手術を行います。現在の時点で自覚症状がなくても、数年以内に症状が出てくる可能性が高いため、主治医と手術の時期を検討してくことになります。

大動脈弁狭窄症の手術は、大動脈弁置換術です。開胸して、人工心肺装置を使用して心停止をさせた状態で、狭窄している大動脈弁を切り取って、人工の大動脈弁を縫い付ける手術になります。

大動脈弁の手術

出典:大動脈弁の手術 – 診療科・部門案内 – 藤沢市民病院

大動脈弁置換術は、大動脈弁狭窄症の根本的な治療法になりますが、開胸をして、人工心肺装置を使うという大がかりな手術になり、患者の体力が必要になります。

そのため、高齢の患者や合併症がある患者などは、大動脈弁置換術後に死亡したり、重大な合併症が起こるリスクがあるため、手術ができないことがあるのです。

そのような現状を打破するために、TAVI(Transcatheter Aortic Valve Implantation)という治療法が開発され、日本では2013年から保険適用となっています。

大動脈弁の手術

出典:心臓内科 | 医療法人社団 誠馨会 新東京病院

TAVIは経カテーテル大動脈弁植込み術のことで、開胸せずに、また心停止させずに大動脈弁を人工のものに取り替えることができるという治療法です。開胸せずに、鼠径や胸壁から心臓に直接人工の弁を挿入して、バルンを膨らませて植込みを行います。

そのため、大動脈弁置換術を行えない高齢や合併症がある患者でも治療が可能になっています。

 

3、大動脈弁狭窄症の看護観察項目

大動脈弁狭窄症の患者を看護する時には、次の3つの症状が出ているか、悪化していないかを観察する必要があります。

・心不全症状

・狭心症の症状

・失神発作

この3つの症状は、大動脈弁狭窄症の代表的な症状ですので、患者の看護をする時には、この3つの症状を観察するようにしましょう。具体的な観察項目をご紹介します。

 

■心不全症状

・バイタルサイン(血圧、心拍数、SpO2)

・頸静脈の怒張の有無

・呼吸困難感の有無

・起坐呼吸の有無

・嘔気、嘔吐

・食欲不振

・倦怠感

・尿量やIn/Outバランス

・体重

・浮腫

・肝腫大

・腹水

 

■狭心症の症状

・バイタルサイン

・胸部症状(圧迫感、疼痛、灼熱感、締め付けられる感じ)

・意識レベル

・症状が出た時の心電図の変化

 

■失神発作

・意識レベル

・瞳孔不同の有無

・四肢冷感の有無

・チアノーゼの有無

・末梢動脈の触知

・めまいやふらつきの有無

 

4、大動脈弁狭窄症の看護計画

手術が適応となる大動脈弁狭窄症の患者の術前は、状態が不安定ですので、心負荷を軽減しながら、症状が悪化しないような看護計画を立案する必要があります。

看護目標 大動脈狭窄症の症状が軽減できる
OP(観察項目) 上記を参照
TP(ケア項目) ・狭心症状が出た時は、速やかに12誘導心電図を測定する

・安静度に合わせた日常生活援助を行う

・安楽な体位の工夫

・指示された薬剤を確実に投与する

・指示された酸素投与を確実に行う

・不安の傾聴

EP(教育項目) ・心負荷軽減のために安静度を守ることを説明する

・水分や塩分制限、薬剤投与の必要性などを説明する

・自覚症状が現れた時には、すぐに報告するように伝える

 

5、大動脈弁狭窄症の手術後の看護

大動脈弁狭窄症の手術後は、狭窄した大動脈弁を人工弁に取り換えていますので、大動脈弁への抵抗は正常に戻ります。ただ、左心室肥大はすぐには戻らずに残った状態になっています。

そのため、左心室の内腔が小さくなり、またきちんと伸展しにくい状態(コンプランスの低下)が続いていますので、十分な前負荷と心拍出量を維持しなければいけません。

このことを念頭に置いて、大動脈弁狭窄症の手術後の合併症と術後の看護をする時の観察項目を確認していきましょう。

 

■心拍出量の低下

大動脈弁狭窄症の手術後は、心拍出量が低下する危険がありますので、次のことを観察するようにしましょう。

・血圧

・肺動脈楔入圧(PAWP)

・中心動脈圧(CVP)

・ショック症状の有無

ショック症状は、体温低下や皮膚の湿潤、末梢冷感、頻脈、チアノーゼ、尿量低下などがあります。

また、大動脈弁狭窄症の術後は十分な前負荷を維持する必要がありますので、PAWPとCVPは高めに保つ必要があります。そのため、PAWPやCVPは正常値にこだわらず、医師の指示どおりの値を保つようにしてください。

 

■不整脈

大動脈弁置換術の術後は、手術による刺激伝導系の損傷や人工心肺使用による心筋浮腫、電解質異常などで、不整脈が起こるリスクが高くなります。

そのため、継時的に心電図モニターをチェックし、血液データで電解質の異常がないか、また不整脈が出現したことでの血圧の低下、尿量減少、胸部症状などがないかを観察してください。

 

■血栓

大動脈弁狭窄症の術後は、人工弁を入れたことや術中に人工心肺を使用したことで、血栓が発生しやすくなっています。

血栓ができると脳梗塞を引き起こすリスクがありますので、次のことを観察してください。

・意識レベル

・麻酔からの覚醒状況

・四肢のしびれ

・知覚の変化

・頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔吐、血圧上昇)

・末梢動脈の触知

・浮腫

・末梢の冷感

これらの中で異常が見られた場合は、すぐに医師に報告をしましょう。

 

■出血

大動脈弁狭窄症の手術では、人工心肺を使いますので、ヘパリンを使用しますし、血液が異物に触れることで、凝固系に異常が生じることがあります。

そのため、術後は出血しやすいですので、看護師は出血が起こっていないかどうかを観察しなければいけません。

特に、血圧が高くなると、出血のリスクが高くなりますので、血圧は低め(100mmHg前後)に維持することが基本になります。そのため、継時的に血圧を測定し、血圧を医師の指示通りに維持するようにしてください。術後に痛みがある場合は、痛みが血圧を上げることもありますので注意が必要です。

また、ドレーンからの排液量や性状も観察して、出血があった場合は、いち早く気づけるようにしましょう。

 

■術後感染

大動脈弁狭窄症の術後は、異物である人工弁を体内に入れますし、手術の負担が大きいため免疫力が下がりますので、感染するリスクが高くなります。

血液データでのWBCやCRPをチェックするだけでなく、ドレーンの排液量や性状、挿入部の感染兆候などを観察して、感染予防に努めてください。

 

まとめ

大動脈弁狭窄症の基礎知識や手術、看護の観察項目や看護計画、術後の看護のポイントをまとめました。

大動脈弁狭窄症は、手術が適応になる場合、全身状態が不安定で、突然心停止に至る可能性もありますので、大動脈弁狭窄症の患者の看護をする時には、異常の早期発見に努めるようにしましょう。

虫垂炎(アッペ)の看護計画|痛みの原因と看護観察項目、手術後看護

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虫垂炎看護

虫垂炎(アッペ)は一般的に盲腸と呼ばれることもあり、突然の腹痛により発覚することが多い病気です。老若男女関係なく誰にでも起こりうる可能性があり、近年の生活習慣の乱れから症例は上昇傾向にあります。ここではその虫垂炎について詳しく説明していきたいと思います。

 

1、虫垂炎(アッペ)とは

小腸から大腸へ変わる部分の辺りに盲腸があります。その盲腸の後ろ内側から垂れ下がっている管です。虫垂には、個人差があり形や長さ、位置などが違いますが、一般的に長さは6~8cm前後で径は6mm前後です。その虫垂が何らかの影響で炎症し化膿した状態であると虫垂炎といいます。おなかが急に痛くなり、緊急手術となる頻度の最も高い病気の1つです。

 

2、虫垂炎の原因

原因は、不明なことが多いです。何らかの異物(便、食物など)が虫垂に溜まることで延焼して起きると言われています。疫学上も年齢や男女の比率も変わらなく、20~30代で若干、発症率が上がりますが小児から高齢者まで幅広いのが特徴です。

 

3、虫垂炎の痛み

虫垂炎の痛みは、変化していきます。初期の段階では、50%程度の方に心窩部痛がでると言われています。のちに痛みの場所が虫垂のある右下腹部に移っていきます。これは、細菌感染した虫垂に炎症が起きることで腸管の内腔圧があがり関連痛として心窩部痛が出てきます。徐々に炎症が強くなることで虫垂の痛みが強くなるために右下腹部の方に痛みが変化してきます。右下腹部を押すと圧痛が起き鈍痛が発生します。そして、さらに炎症が強くなり虫垂以外の場所に波及すると腹部全体が痛む状態になる腹膜炎になります。

 

4、虫垂炎で用いる検査法(圧痛点)

■マックバーニー点:感度50-94%、特異度70-86%

右上前腸骨棘と臍を結ぶ線を3等分し、右から3分の1にある点に圧痛があるか調べる。もっとも一般的な方法です。

■ランツ点

左上前腸骨棘(ちょうこつきょく)と右上前腸骨棘(左右の腰骨)を結ぶ線を3等分し、3等分したうち右から1つ目の点の辺りに存在します。臍がわかりづらい場合や、極度の肥満、妊婦に用いられやすい方法です。

このほかにもキュンメル点、モンロー点などがあります。最後に腹部に炎症が波及していないか調べるための反跳痛も確認する必要があります。

 

4-1、虫垂炎の看護観察項目

虫垂炎の炎症の程度により観察項目が変化していきます。

 

■カタル性(粘膜層の軽い炎症)

症状:感冒症状や悪心・嘔吐、食思低下、心窩部痛

看護:虫垂炎の症状か不明の場合が多く対症的な対応となることが多い。

→軽度の炎症のために内服薬の選択も視野に入りますが何度も繰り返している場合は、手術も考えられます。しかし、この段階は、他の疾患の方が強く疑われるので発見しにくいです。

 

熱型観察、疼痛コントロール、嘔吐による誤嚥防止、悪心に対する薬剤の使用の検討や安楽な体位(膝を曲げて腹部周囲の筋緊張を和らげる)への調整、食事形態の変更などで経過をみることがほとんどです。この時に発見された場合は抗生剤の内服にて保存治療することが多いですが、20~30%は再発するといわれています。

 

■蜂窩織炎性(全層の化膿性炎症)

症状:腹痛(マックバーニー、ランツ点などの部位で疼痛が強くなっています)、悪心、嘔吐、発熱、全身倦怠感、排ガス・排便の消失傾向

看護:腹痛が強くなり疼痛コントロールが必要な状態です。

→抗菌薬の点滴での管理になりますが炎症が広くなっている場合や、体力の低下など進行が止められない状態の場合は、手術も考えられます。

 

他にも、炎症があるために欠食対応になることが多いですが重症度が低いために食事の許可があったとしても無理に食事摂取はさせないほうがいいです。悪心・嘔吐を助長させるだけではなく、穿孔した場合に腹膜炎になるリスクが高まります。また、この時期に受診される方がほとんどの場合が多いです。症状によって軽症と思われ内服薬の抗菌薬のみで帰ることもありますが基本的には抗生剤の点滴投与となります。抗生剤は、広範囲に効果がある抗菌薬が使用されます。

 

■壊疽性(虫垂壁全層の壊死)

症状:腹部全体の痛み、悪心、嘔吐、グル音の低下、排ガス・排便の消失、発熱

看護:対症療法が基本として、グル音の確認、排ガスや排便があるかの確認が必須となります。また、とてもきつい疼痛もともうために傾聴や精神状態の観察も大切です。

穿孔性:最終的に虫垂が破れると腹膜炎になることもあります。穿孔してしまうと便汁や食物が腹腔内に広がるために手術が基本となります。

症状:腹部緊満、腹痛、悪心、嘔吐、発熱、食欲不振

看護:疼痛が和らぐ体位調整、悪心や嘔吐に対しての薬剤や鎮痛薬目的での薬剤管理や手術が基本となる為に手術への不安を和らげることが必要です。

 

この穿孔するまでの期間は、最短で2日間で進行してしまいます。虫垂炎は進行が早いので注意が必要です。

 

4-2、虫垂炎の検査

主に三種類の検査方法があります。

■触診:腹部触診で虫垂、回盲部の位置を圧迫した時や、直腸触診で直腸の右周辺を圧迫した時に腹痛を生じます(圧痛)。

■X線検査:盲腸の拡張や虫垂内にガス像が見られます。

■腹部超音波検査:腫れて大きくなった虫垂の像、虫垂壁が肥厚、糞石などがみられます。

 

CT検査により他疾患との鑑別ができます。虫垂炎の重症度判定には、腹部エコーや腹部CTが有効です。これらの所見は、虫垂壁肥厚、腫大、周囲脂肪組織濃度の上昇、膿瘍形成、腹水、糞石などが確認することができます。

 

4-3、虫垂の重症度スコア

重症度を測るためには以下の項目をチェックするといいでしょう。

 

■RLQへの疼痛移動:1点、

■食欲不振:1点、

■吐き気嘔吐:1点、

■RLQ圧痛:2点、

■反跳痛:1点、

■発熱:1点、

■白血球増加:2点、

■左方移動:1点

→4点未満では虫垂炎は考えにくいために画像診断不要

 

5、虫垂炎の手術後看護

虫垂炎の手術療法には主に2種類あります。

 

■開腹手術

腹部全体に炎症がおきているもの、広範囲に膿瘍形成があり取り除く必要がある場合や癒着がひどい場合の選択肢となります。

術後:腹部を切開しているために疼痛コントロールが必要です。また、麻酔は全身麻酔を行うことになりますので、イレウス、悪心・嘔吐。安静度制限が守れるかが大切となります。ほかにも、出血状況やドレーンが挿入されていた場合は、排液の性状や色、固定されているかを注意深く観察していく必要があります。血栓症が起きていないか、鎮静が強くなりすぎていないかを注意して観察します。

入院期間は、大体7~10日程度になることが多いです。

 

■腹腔鏡下

虫垂を切除、観察するための穴を複数あけます。そこに、ガスを注入し腹部を膨満させて視野を確保します。麻酔は、腰椎麻酔を使用します。腰椎麻酔の範囲によっては、横隔膜まで麻酔がかかる場合もあり注意が必要です。腹腔内にガスを充満させるのでその塞栓症も注意が必要です。

開腹手術に比べて重症の場合は、術後感染する可能性が高くなります。術後の輸液管理をしっかりと行い、早期離床、食事再開時の栄養管理に注意が必要です。しかし、腹腔鏡下内視鏡の場合は、早い場合は5日程度のところもあるために指導を行うことができないまま退院することもあり得ます。しっかりと退院後の生活に影響を最小限にするために退院時まで指導をしっかりとおこなうことが大切です。

 

まとめ

虫垂は免疫細胞の供給を担う器官です。小腸・大腸の組織は非常に薄いために栄養分を吸収するのに非常に適していますが、それと引き換えに細菌が入りやすい環境にもなっています。この細菌を除去する能力を持つのが虫垂ということが判明したため安易な虫垂切除が減少する可能性があります。しかし、虫垂が原因と考えられる潰瘍性大腸炎の場合は、虫垂切除がこれから行われていくものと考えられます。

 

参考文献

東戸塚記念病院|虫垂炎手術を受けられる方へ

急性虫垂炎に対する腹腔鏡下手術と開腹手術の比較検討

病気がみえる|vol.1 消化器 改訂第5版 2015年3月出版

潰瘍性大腸炎における虫垂の役割

急性虫垂炎:虫垂切除か「抗菌薬ファースト」か?

無気肺の看護|原因や看護問題、看護目標・計画と看護のポイント

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無気肺看護

無気肺とは気管支が痰などで閉塞することで、その先の肺胞に空気が入らなくなってしまった状態です。無気肺が起こると、呼吸状態が悪化したり、肺炎を起こしやすくなります。

無気肺の基礎知識や原因、看護問題、看護目標と看護計画、看護のポイントをまとめました。無気肺のリスクがある患者の看護をする時の参考にしてください。

 

1、無気肺とは

無気肺とは何らかの原因で気管支が狭窄、または閉塞することで、それより先の部分の肺胞に空気が入らなくなってしまった状態のことです。

無気肺とは

出典:羊土社:臨床医学系書籍|Dr.ブランチのケースカンファレンスLIVE case5 Occam’s razor and Hickham’s dictum

無気肺が起こると、閉塞した気管支より先にある肺胞に空気が入らない、つまりその部分の肺胞が使われないことになります。そのため、ガス交換ができる肺胞が少なくなり、呼吸障害が起こるのです。

無気肺が起こった部位や範囲にもよりますが、胸部X線では発見が難しいような微小無気肺など小さな範囲での無気肺は、自覚症状がほとんどないこともあります。

ただ、広範囲にわたって無気肺が起こると、肺の大部分でガス交換ができなくなるわけですから、SpO2の低下や呼吸困難、胸痛などの症状が現れます。また、喘鳴や咳嗽、喀痰などの症状が現れることも多くなります。

 

2、無気肺の原因

無気肺は、気管支が閉塞することで起こります。気管支が閉塞する原因は、気管支に異物が入って詰まることもありますが、気管からの分泌物、つまり痰が詰まって起こることがほとんどです。

ただ、痰の分泌が増加しても、きちんと痰を喀出できていれば、気管支に痰が詰まって無気肺を起こすことはありません。

無気肺を起こしやすいのは、次のようなケースです。

・長期臥床

・人工呼吸器の使用

・手術後

この3つのケースでは、無気肺を起こすリスクが高くなります。

 

■長期臥床

長期臥床をしている患者は、無気肺を起こしやすくなります。同一体位を長時間続けてると、体を動かすことができないので、気道分泌物が動かずに貯留し、気管支を閉塞させてしまうのです。

 

特に、長期臥床の場合は、背側に無気肺が起こりやすくなります。仰臥位で寝ていると、重力の関係で、背側に気道分泌物が移動していき、そこで気管支を詰まらせてしまいます。

また、長期臥床をしていると横隔膜の動きが制限されますので、下葉へのエア入りが悪くなるため、無気肺を起こすリスクが高くなります。

 

■人工呼吸器の使用

人工呼吸器を使用している患者も無気肺を起こすリスクが高くなります。普通に呼吸をしている時は陰圧換気ですので、横隔膜が動いて、肺の隅々まで空気を入れることができます。

でも、人工呼吸器は陽圧換気になりますので、横隔膜はほとんど動きません。そうすると、肺の上葉部分は空気が入ってしっかり膨らむのですが、下葉部分は横隔膜が動かないため、あまり空気が入らず、無気肺を起こしやすいのです。

また、人工呼吸器を使用する時には、挿管チューブや気管カニューレを挿入しなければいけません。つまり、気管に異物を挿入することになります。

気管に異物を挿入すると、気管の繊毛運動が妨げられますし、気管の粘膜が刺激されて気道分泌物が増加しますので、気管支に痰が貯留しやすく、無気肺のリスクが高くなります。

 

■手術後

全身麻酔による手術は、麻酔によって咳嗽反射を抑えていますので、呼吸抑制が起こっています。そうすると気管支内に気道分泌物が貯留してしまうので、無気肺を起こしやすいのです。

また、術中・術後はADLが制限され長期臥床を強いられることがありますし、人工呼吸器を使用して呼吸管理をすることも多いので、さらに無気肺のリスクが上がります。

手術後の疼痛で、咳嗽ができずに痰が喀出できないこともあるので、貯留した痰が気管支を塞いでしまうこともあります。

そのため、手術後は無気肺のリスクが非常に高いと言えるでしょう。

 

長期臥床、人工呼吸器の使用、手術後の3つのケースに加えて、喫煙歴があると、さらに無気肺のリスクは高くなります。喫煙していた患者は肺機能が低下しているため、痰を喀出する力が低下しているので、無気肺になりやすいのです。

無気肺は呼吸困難などの症状が現れますが、無気肺の状態が長く続くと肺炎を合併するようになります。気道分泌物が気管支内に長時間貯留することで、細菌が繁殖して、肺炎を発症するのです。

手術後の無気肺は術後3日以内に発症し、肺炎はそれから少し遅れて術後1週間以内に発症しやすいとされています。

 

3、無気肺の看護問題

無気肺を発症すると、無気肺を起こした部分の肺はガス交換に使えないことになります。そのため、看護介入をして、無気肺を改善させる必要があります。

無気肺の原因の多くは、気道分泌物を排出できないことで気管支が閉塞することですので、そのことを看護問題として、看護計画を立案します。

術後の問題として立案する時には、術後の合併症の潜在的な問題として共同問題で立案する時もありますし、非効果的気道浄化を看護問題として立案することもあります。

 

4、無気肺の看護目標と看護計画

無気肺の看護目標と看護計画の一例を紹介します。

看護目標 ・痰を排出し、無気肺を解消できる

・SpO2を維持できる

OP(観察項目) ・バイタルサイン(SpO2、呼吸回数)

・呼吸状態(肺雑音、喘鳴、咳嗽、異常呼吸、胸郭の動き)

・痰の喀出状態

・痰の性状、量

・呼吸困難感の有無

・チアノーゼの有無

・検査データ(血液ガス、血液、胸部X-P)

・In/Outバランス(脱水症状、皮膚や粘膜の乾燥の有無)

・室内の環境

・麻酔からの覚醒状況

・疼痛の有無

TP(ケア項目) ・痰の喀出を促す

・必要時、痰の吸引を行う

・呼吸理学療法

・腹式呼吸を促す

・気道の湿潤化を行う

・適切な除痛を行う

・安静度に応じて早期離床を促す

EP(教育項目) ・呼吸困難感や胸痛がある時には、すぐに知らせるように伝える

・痰の喀出の重要性を説明する

・咳嗽のコントロール方法を指導する

・痰を喀出しやすくするために水分摂取を促す

 

5、無気肺の看護のポイント

無気肺の患者の看護は、痰の排出を促すことと肺の隅々にまで空気を入れて肺を膨らませることがポイントになります。

 

■呼吸理学療法

無気肺の患者には、呼吸理学療法で痰の排出を促しましょう。特に、体位ドレナージは有効です。通常の除圧目的の体位交換は20~30度の側臥位をとりますが、体位ドレナージの場合は、20~30度ではあまり意味がありません。

 

最低でも45度以上、できれば90度に近い角度で側臥位をとります。また、腹臥位や半腹臥位(シムス位)も有効です。

また、胸郭の運動を他動的に介助する呼吸介助法(スクイージング)も痰の喀出のためには有効な方法です。

 

■腹式呼吸

腹式呼吸を促すことで、肺全体に空気を取り入れることができるので、無気肺の予防・改善につながります。

手術前からトリフローなどを用いて、肺を十分に膨らませる練習をしておくようにしましょう。術後は創部に手を当てて腹式呼吸をすることで、疼痛を軽減しながら肺を膨らませることができます。

 

■疼痛コントロール

手術後の患者さんは、創部の疼痛があることで、呼吸が浅くなったり、咳嗽による痰の喀出ができなくなり、無気肺を起こしやすくなります。

そのため、術後は疼痛コントロールをして、患者の苦痛を軽減し、腹式呼吸や痰の喀出を促していく必要があります。

 

■早期離床を促す

横隔膜の動きを促進するためにも、早期離床を促すようにしましょう。安静度の指示のため、離床ができない場合は、指示の範囲内でできるだけギャッジアップをするだけでも、横隔膜が下がり、肺が広がりやすくなります。

 

まとめ

無気肺の基礎知識と原因、看護問題、看護目標・計画、看護のポイントをまとめました。無気肺は術後や人工呼吸器管理中に頻繁に起こる合併症ですが、看護の力で予防・改善できるものですので、しっかりアセスメントして、ケアに活かすようにしましょう。

狭心症の看護計画|看護問題・観察項目とそのケア、薬と注意点

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狭心症看護

狭心症は心筋への血流が一時的に途切れることで起こるもので、胸の痛みなどの症状があります。狭心症の原因の診断、治療方法は、症状によって異なるので、適切な観察と判断が必要になります。また、重症化すると心筋梗塞の恐れもあるので注意が必要です。適切な看護に活かすために、狭心症について詳しく説明していきます。

 

1、狭心症とは

狭心症は虚血性心疾患の一つです。心臓は全身に血液を運ぶポンプの役割を担っていますが、心臓には心臓を動かすための心筋と呼ばれる筋肉があり、心筋に血液を運ぶ冠動脈という動脈があります。この冠動脈によって運ばれた血液によって、心臓の心筋は酸素と栄養素を得ています。

動脈硬化などが原因によって冠動脈が細くなり、必要な心筋への血液供給量が不足すると、胸部圧迫感という胸をギュッと締め付けられるような痛みが出現します。狭心症の発作はこのように生じ、痛みの程度は心筋への血液供給の不足レベルによります。

狭心症とは

(出典元:なすびの医学STUDY王国

 

狭心症の発作の症状には、胃の痛みや不快感、左肩や頸部の痛み、歯痛などの放散痛が胸以外に現れることもあります。

狭心症には、誘因、経過、発生機序によって3つに分類され、狭心症を起こす原因である動脈硬化の進行度や経過から安定狭心症である労作性狭心症と安静時狭心症(冠攣縮性狭心症)、急性冠症候群の不安定狭心症、微小血管狭心症の4つの種類に分けられます。

 

狭心症の症状

(出典元:KOMPAS

 

1-1、狭心症の種類

■労作性狭心症(器質性狭心症)

階段を上がったり、重いものを持ったり、坂道を歩くというような時に発作が起こるものを労作性狭心症といいます。労作性狭心症は、運動負荷(労作)すると痛みが生じ、安静にすると楽になるという特徴があります。安静にすると楽になることから、発作時間は1〜5分ほどであることが多く、数秒ということもあります。これは、運動負荷(労作)することで、心臓から全身への血液供給を増やさなければならなくなり、そのために心筋の働きが増えるため心筋への血液供給量も増えます。この時に、動脈硬化によって冠動脈にプラークが生じて狭窄があると、十分な血液が供給できず、心筋虚血状態となり狭心症発作が起こります。

 

■安静時狭心症(冠攣縮性狭心症)

眠っている時の明け方や、安静にしている時発作が起こるものを安静時狭心症といいます。さらに、心電図上ST上昇を伴うものを異型狭心症といいます。動脈硬化の進行度や痛みの場所は労作性狭心症と同じですが、発生機序は冠動脈が一過性に痙攣を起こして収縮することで心筋への血液供給が途絶えることによって生じます。冠動脈の攣縮は動脈硬化が原因とされ生活習慣病による症状の一つです。

 

■不安定狭心症

狭心症の発作が頻回に起こり、労作時にも安静時にも起こることが多くなることを不安定狭心症、または急性冠症候群といいます。 このような状態は心筋梗塞になる危険があります。

 

■微小血管狭心症

ごく小さな冠動脈での血流不足が起こることで、今日新書発作を起こすものをいいます。このタイプは検査しても原因となるものは見つかりにくく、治療も発作時のみにしか行われません。しかし、大きな発作になりにくいために経過観察となることが多いのが特徴です。

 

2、狭心症の治療と薬

狭心症の治療方法は、発作の原因となっている種類によって異なります。

 

2-1、労作性狭心症の治療

労作性狭心症は、労作時に一時的に起こる場合もありますが、生活習慣が引き金になっていることも考えられるため、予防や継続的な改善については生活習慣病の改善が必要です。

労作性狭心症は、体を動かしている時に発作が起こるものなので、発作が起きた時はすぐに安静にすることが大切です。そして、座った状態でニトログリセリンの舌下錠かスプレーを使用します。ニトログリセリンは即効性が高く、冠動脈が拡張すると痛みが治まります。

 

2-2、安静時狭心症の治療

安静時狭心症は、冠動脈の動脈硬化やコレステロールの血管壁への付着による血管の収縮不足や狭窄による血流不良が主な原因となっています。動脈硬化やコレステロールの血管壁への付着は、喫煙、食生活、アルコールの過剰摂取などの生活習慣が原因で、高脂血症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病が引き金になっていることが大半です。安静時狭心症の発作時もニトログリセリンを使用することで症状は落ち着きます。

 

2-3、狭心症の治療薬

狭心症の治療は生活習慣病の改善を行うことが根本の治療にはなりますが、発作時にはニトログリセリンなどの硝酸薬を用いて血管を拡張させる薬剤が使われ、他にカルシウム拮抗薬、交感神経ベータ遮断薬も使用されます。

 

■硝酸薬

硝酸薬は、血管平滑筋を弛緩させて静脈を拡張させ、静脈還流を減らし働きすぎている心筋の負担を減らします。これにより、心臓の左室壁の緊張力を低下させて心筋への血液供給量を減少させる働きをします。また逆に、動脈拡張作用があり、心筋への血流を増やす作用も期待できます。

 

■カルシウム拮抗薬

心筋を収縮させている物質であるカルシウムを拮抗させて、血管を拡張し、心筋の収縮力を弱める働きをします。異形狭心症に対する有効率は85〜95%と高くなっています。

 

■交感神経ベータ遮断薬

交感神経のベータ受容体に作用してカテコールアミンの作用を遮断します。これによって、心拍数が上がることや心筋の収縮力が上がることを抑える働きをします。

 

また、細くなっている冠動脈を広げるために、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)血管の内部にステントという金属を入れる血管拡張術や、他に冠動脈を作るバイパス術(CABG)という手術治療もすることがあります。狭心症の発作はニトログリセリンの使用によって収まりますが、それでも痛みが治らない時には、心筋梗塞の恐れがあるので注意が必要です。

 

3、狭心症の看護計画

狭心症の看護は、発作時の対応や治療への援助があります。看護問題をいくつか例をあげて看護計画を立案します。

 

3-1、看護計画

取り上げた看護問題に対する看護計画を立案します。

 

看護問題:狭心症発作時の症状による疼痛

看護目標:発作時の苦痛を軽減できる

 

■観察項目(OP)

・バイタルサイン(血圧変動、脈拍増加、リズム不整、脈拍欠損の有無)

・心電図(STの低下や上昇の有無、薬使用後の変化)

・自覚症状(痛みの部位、程度、種類、持続時間、薬使用後の変化、安静保持後の変化)

・発作時の状況

 

■ケア項目(TP)

・安静、安楽な対位の保持

・衣服を緩める

・医師の指示を元に、薬剤を投与

・発作時はドクターコールする

・発作中は患者に寄り添い、不安を取り除く

・発作時には心電図に記録を取り、発作時間、薬剤の使用時間、症状の改善時間などを記録する。

 

■教育項目(EP)

・発作時はすぐにナースコールするように指導する

・発作時の安静な姿勢の取り方を指導する

・発作時の使用薬剤の使用方法、注意点について説明する

・喫煙習慣、寒暖差による発作の誘引、食生活、運動方法など生活習慣の改善方法を指導する

 

また、心筋梗塞に移行する危険性も考えられる場合、以下の項目を参考にしてみてください。

 

■観察項目(OP)

・バイタルサイン(血圧変動、脈拍増加、リズム不整、脈拍欠損の有無)

・心電図(STの上昇の有無、薬使用後の変化)

・自覚症状(痛みの部位、程度、種類、持続時間、薬使用後の変化、安静保持後の変化)・発作時の状況

・発作の頻度

・心筋逸脱酵素(CPK、GOT、LDHなど)の上昇

ケア項目(TP)

・バイタルサインや、発作の持続時間などから判断し、心筋梗塞が疑われるときには速やかに医師に報告する

・必要時、救急カートの準備、ルート確保、酸素吸入の準備

 

4、狭心症を看護するときの注意点

狭心症を看護するときの注意点

(出典元:町医者の「家庭の医学」 みやけ内科・循環器科

 

狭心症の発作時は、ニトログリセリンの使用によって3分以内にはほぼ症状は緩和されますが、効果がない場合は、4〜5分の間隔で投与を繰り返します。15分以上繰り返して投与しても効果がない場合は無効と判定でき、医師に速やかに報告する必要があります。

発症後30分以上経過しても改善されない場合は心筋梗塞が疑われるため、特にこれまでに発作を頻発していたり、発作が起こりニトログリセリンの投与を行なっても効果が得られないときは、早期に医師へ報告する必要があります。

 

4-1、投与時の注意

ニトログリセリンは緑内障患者には眼圧上昇、亜硝酸エステル系薬物アレルギーのある患者にはアレルギー性ショック、低血圧の患者には低血圧症候群が発生するなど、使用すると副作用が出現する可能性があるので注意が必要です。

発作時には必ず心電図モニターを装着し、心電図上に異常がないかを観察する必要があります。心電図の変化によっては狭心症の診断や、心筋梗塞の早期発見につながることもあるので、しっかりと理解して観察し、ケアをすることが重要なのです。

 

まとめ

狭心症の発作は、安静にしたり、薬剤の使用によって比較的早期に症状が改善できることが多いものですが、狭心症の発作の裏には危険な心筋梗塞が関わっていることもあるのでしっかりと看護することが重要です。

また、心筋梗塞にならないように、併せて狭心症発作を繰り返さないように指導することも、看護師の大切な役目です。観察項目を頭にしっかり入れて、適切な観察をして看護していきましょう。

 

熱性痙攣の看護|症状や看護問題、目標・観察と小児に対する看護

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熱性痙攣看護

熱性痙攣(けいれん)は、乳幼児期に38℃以上の発熱が原因で起こる発作性疾患のことです。熱性痙攣を起こした時には、正しい観察と対応をすることが大切になります。

熱性痙攣の基礎知識や症状、看護問題、看護目標・計画、観察や対応のポイントをまとめました。小児看護をする時の参考にしてください。

 

1、熱性痙攣(けいれん)とは

熱性痙攣(けいれん)とは、乳幼児期(生後6ヶ月~5歳)に起こる38℃以上の発熱に伴う発作性の疾患のことです。ただし、他に髄膜炎や脳炎などの中枢神経感染症や代謝異常など明らかな発作の原因がなく、てんかんの既往がない場合に限られます。

乳幼児の脳はまだ未熟ですので、高熱という刺激に過剰に反応して熱性痙攣を起こしますが、成長して脳が成熟すると、高熱を出しても過剰な反応を起こしにくくなります。そのため、熱性痙攣は基本的に5歳ごろまでしか起こらず、8歳以上になると起こさなくなるのです。

熱性痙攣の原因となる疾患は、インフルエンザや風邪、ヘルパンギーナ、突発性発疹などで、これらの疾患で発熱したことをきっかけとして、熱性痙攣を起こします。特に、39℃以上の高熱の時に起こりやすく、発熱後12時間以内に体温が急上昇する時に発症するリスクが高くなります。

また、熱性痙攣は遺伝的な要素が強く、両親や兄弟の中に子どもの頃に熱性痙攣の既往がある人がいると、熱性痙攣を起こすリスクが高くなると言われています。

熱性痙攣は日本人の5~6%が起こしたことがある病気です。1)また、初めて熱性痙攣を起こす年齢は3歳未満が約80%を占めていて、3歳以上で初めて熱性痙攣を起こすのはあまり多くありません。

 

2、熱性痙攣の症状

熱性痙攣の症状は、次のようなものがあります。

・全身の強直間代性けいれん

・意識消失

・チアノーゼの出現

この3つが熱性痙攣の特徴です。強直間代性けいれんとは「強直=こわばる」、「間代=ガクガクする」ですので、四肢が硬直してこわばり、その後にガクガクと震えるような痙攣です。この時に、眼球が上転し、白目をむくことが多くなります。

また、熱性痙攣が起こっている時には、呼びかけに反応がなく、意識を消失していて、顔にチアノーゼが現れるようになります。

明らかな熱性痙攣の症状ではないのものの、意識がぼんやりとしていて、数分間一点を見つめるような症状も熱性痙攣の1つと考えられています。

これらの症状はたいてい5分以内に消失し、その後は元の意識状態に戻るか、グッスリと眠り込むようになります。

熱性痙攣は単純型熱性痙攣と複雑型熱性痙攣に分けることができます。次の3項目のうち1つでも当てはまると複雑型熱性痙攣に分類されます。

  • 焦点性発作(部分発作)の要素がある
  • 発作が15分以上持続する
  • 1回の発熱で24時間以内に複数回の発作がある

これに1つでも当てはまれば複雑型熱性痙攣になり、当てはまらないと単純型熱性痙攣になります。

単純型熱性痙攣は脳に後遺症を残すことはなく、てんかんの発症率は一般と差はないものの、複雑型熱性痙攣はてんかんへ移行するリスクが高くなります。

 

3、熱性痙攣の小児に対する看護

熱性痙攣は乳幼児が起こしますので、小児科の看護師さんは熱性痙攣を起こした子どもへの看護をきちんと把握しておく必要があります。

 

3-1、熱性痙攣の看護問題

熱性痙攣を起こした子どもの看護問題は、次の3つがあります。

・けいれん発作による危険

・高熱

・家族の不安

この3つの看護問題を1つ1つ確認していきましょう。

 

■けいれん発作による危険

熱性痙攣を起こすと、全身の強直間代性発作が症状として現れます。また、意識も消失します。発作が起こっている時には、口から泡が出たり、嘔吐したりすることがあり、吐物で窒息する可能性があります。

また、ベッドからの転落やベッド柵への衝突などで怪我を負う危険もあります。

 

■高熱

熱性痙攣は38℃以上の発熱がきっかけで起こります。特に、39℃以上の高熱や熱が急激に上がった時に起こりやすいのです。

熱性痙攣が起こるほどの高熱は、放置しておくと、体力の消耗につながりますので、看護介入が必要になります。

 

■家族の不安

子どもが熱性痙攣を起こすと、家族は「死ぬのではないか?」、「重病ではないか?」と不安になります。

また、強直間代性発作を起こしている時に、子どもを揺さぶったり、舌を噛んではいけないからと割り箸やフォークなどを口に入れようとするなど、間違った対処法を実践しようとすることもあります。

 

3-2、熱性痙攣の看護目標と看護計画

熱性痙攣の看護目標と看護計画を、先ほどの看護問題をもとにして立案してみましょう。

看護目標 ・けいれん発作中の安全を確保できる

・適切な時期に解熱できる

・家族の不安を軽減し、正しい知識を持ってもらう

OP(観察項目) ・けいれん発作の状況

・けいれん発作の持続時間

・バイタルサイン

・前駆症状(振戦や不安、頭痛等)の有無

・けいれんの型

・眼球移動の有無

・嘔吐の有無

・チアノーゼの有無

・意識状態や麻痺の有無

・食事や水分摂取量

・発作後の様子

TP(ケア項目) ・けいれん時の安全確保

・体位の工夫

・気道の確保

・医師の指示に基づく与薬

・発熱時のクーリング

・家族や患児への精神的な支援

・家族からの情報収集

・ベッド柵を上げておく

・必要であれば、ベッド柵の患児の間にクッションを置いて、ぶつからないようにする

EP(教育項目) ・振戦や不安、頭痛などの前駆症状があれば、すぐに知らせてもらう

・発作予防や発作時の対処の指導

・熱性痙攣についての正しい知識の指導

 

3-3、熱性痙攣の看護観察のポイント

熱性痙攣を起こした患児の看護をする時には、看護師は熱性痙攣の症状をきちんと観察しておく必要があります。複雑型熱性痙攣の場合は脳波等の検査の必要がありますし、熱性痙攣ではなく、脳炎や髄膜炎による痙攣の可能性があります。

そのため、看護師は「ただの熱性痙攣だろう」と判断せずに、どのような痙攣だったのかを観察しておかなくてはいけないのです。

<熱性痙攣の観察ポイント>

・痙攣発作の持続時間

・発作はいつ頃、どこで、どんな時に起きたか

・嘔吐はあるか

・全身性か部分性か

・痙攣の部位、左右対称か

・けいれんの型

・眼球移動の有無

・意識の有無

・嘔吐の有無

・チアノーゼの有無

このようなことを観察し、速やかに医師に報告するようにしましょう。

 

3-4、熱性痙攣の看護対応

熱性痙攣を起こした患児には、ただ観察していれば良いというわけではありません。観察も重要ですが、きちんと対応して、患児の安全を確保しなければいけません。

 

■横向きに寝かせる

熱性痙攣を起こしていたら、衣服やオムツを緩めて、横向きに寝かせるようにしましょう。熱性痙攣を起こすと、嘔吐して、窒息してしまう可能性があります。

そのため、まずは顔を横向きにして、衣服を緩めて寝かせるようにしましょう。この時に、痙攣していると、ベッドから転落したり、ベッド柵にぶつかったりする可能性がありますので、安全確保にも努めてください。

 

■口の中に物を入れない

一昔前は痙攣を起こしている場合は、舌をかまないように口の中に割り箸やフォークを入れるという対応が一般的でしたが、この対応方法は間違いですので、口の中に何も入れてはいけません。

熱性痙攣を起こしていても、舌をかみ切って死ぬことはありません。それよりも口に入れたものを誤飲したり、口の中を傷つける可能性がありますので、口の中には何も入れてはいけないのです。

 

■余計な刺激を与えない

熱性痙攣を起こすとビックリして、意識確認をしようと大声で名前を呼んだり、体をゆすろうとすることもあるかもしれません。

でも、余計な刺激を与えると、痙攣を長引かせる可能性がありますので、横向きにして安全を確保したら、痙攣が終わるまでは余計な刺激を与えずに、観察を続けなければいけません。

 

■痙攣止めの後に解熱剤の順番を守る

医師の指示で、痙攣止めと解熱剤の座薬が出されている場合は、痙攣止めの座薬を使って、その後に解熱剤を使うようにしましょう。

解熱剤で熱を下げると、薬の効果が切れて、また熱が上がる時にまた熱性痙攣を起こしやすくなります。必ず痙攣止めの座薬を使ってから、30分後に解熱剤の座薬を使うようにしなければいけません。

 

まとめ

熱性痙攣の基礎知識や症状、看護問題、看護目標・計画、観察、対応のポイントをまとめました。乳幼児の熱性痙攣は、珍しい疾患ではありませんが、正しい知識を持って、適切な観察・対応を行えるようにしましょう。

 

参考文献

1)白クマ先生の子ども診療所|日本医師会

急性硬膜下血腫の看護|原因と症状、看護問題と看護計画とそのケア

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急性硬膜下血腫看護

頭部外傷には大きく分けて頭蓋骨骨折、局所性損傷、びまん性脳損傷があります。急性硬膜下血腫はこの中の局所性損傷に分類されます。更に、硬膜下血腫には急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫があり、急激な転機をたどるのが急性硬膜下血腫です。ここでは急性硬膜下血腫について原因や症状を知り、看護計画・ケアに繋げていきましょう。

 

1、急性硬膜下血腫とは

急性硬膜下血腫とはくも膜と硬膜の間に生じる血腫で、硬膜とくも膜の間には強固な結合組織がないため血液が脳表に広く広がるのが特徴です。 硬膜は頭蓋骨のすぐ内側にあって、脳を覆っている結合性の強い膜です。この「硬膜」と脳の表面(くも膜)の間に出血が生じゼリー状に固まったもの(血腫と言いますね)が脳を圧迫するのが急性硬膜下血腫です。多くの場合、大脳の表面に発生しますが左右の大脳半球の間にある小脳表面に発生することもあります。受傷直後から一時性能脳損傷による意識障害が生じ、多くは意識半清明期を経て昏睡に至ります。

急性硬膜下血腫とは
引用元:CLINICAL REHABILITATION(2013年3月)

 

2、原因

急性硬膜下血腫の原因のほとんどは、頭部外傷によるものです。最も多く発生するのは、頭部外傷により脳表に脳挫傷が起こり、その部分の血管が損傷して出血、短時間で硬膜下に血腫を形成するものです。その他外力によって脳表の静脈や動脈が損傷して出血することもあります。受傷機転は交通外傷、殴打や転落によるもので、あらゆる年齢層に見られます。また、抗血栓薬を内服されている方など外傷とは関係なく発症することもあります。診断はCTにて行い脳表を覆うような三日月型の高吸収域として描出されます。出血は硬膜下に広がるため、短時間で血腫が形成されて片側の大脳半球全体を覆います。

急性硬膜下血腫の原因

3、症状

硬膜下血腫は強い外傷で起こることが多いため、血腫による脳への圧排により頭蓋骨の内側の圧が高まり(これを頭蓋内圧亢進といいます)、意識障害、めまい、頭痛、嘔気・嘔吐、運動麻痺や感覚障害、失語などが認められます。また、血腫の増大に伴って徐々に脳が圧排され受傷当初にははっきりしなかった意識障害が徐々に出現してくることもあります。その他高次脳機能障害が引き起こされることもあります。血腫の状態が脳ヘルニアにまで進行すると、深部にある生命維持中枢である脳幹が侵され呼吸障害を引き起こして最終的には死に至ります。

 

4、看護上の要点

急性硬膜下血腫の患者さんを看るにあたって、起こりうる看護問題をあらかじめ予測、確認しておきましょう。そうすることで、異常の早期発見・対応が可能となり、全身状態の悪化を最小限に抑えることができます。

 

4-1、バイタルサインの把握

医療者間で共通したフィジカルアセスメント、病態の理解をしましょう。バイタルサインを正しく測定、異常の有無がないかを観察していきます。尿量や出血の程度やIN-OUTバランスなどの循環管理も必要となります。あらかじめ外傷時の状況、受傷時の状態とその後の経過、既往歴の聴取を行い、患者さんを知っておくことが大切です。既往歴から発作を起こす病気や頭蓋内感染のリスクを高める疾患、全身管理で問題となる疾患を知ることができます。

 

4-2、意識状態の観察、レベル低下の早期発見

JCSやGCSを使用して意識障害の有無を観察・判定します。神経症状は判断が難しいこともありますが、患者さんが入眠しているだけなのか、意識レベルが低下しているのか、理解しているけれどできないのか等様々な症状を正確に判定していかなくてはなりません。特に指示が入る時と入らない時で「ムラ」がある場合は、正常なのか異常なのかを正しくアセスメントする必要があります。

 

4-3、瞳孔不同、呼吸障害

瞳孔の大きさや左右差、視野、眼球の位置と運動をチェックしましょう。また、呼吸状態の変化にも十分注意が必要です。モニターがついていても、呼吸の回数や胸の上がり方、どのような呼吸の仕方をしているかを実際に目で見て確認します。(正常な呼吸・努力呼吸・陥没呼吸などあらかじめ呼吸についても知識として身につけておく必要があります。)

 

4-4、急変時の処置

患者さんが急変した時にすぐ対応できるよう準備をしておきます。

■救急カート:挿管チューブ、酸素マスク
■呼吸器
■アンビューバッグ
■必要となる可能性のある薬剤

 

4-5、合併症について

手術が行われる患者さんに対して術前から術後に起こりうる合併症を予測しましょう。周手術期は迅速な対応が求められます。このため術前から術後に起こりうる合併症について以下のことをチェックしておきましょう。

■年齢・既往・術前の状態
■全身麻酔による影響や術後出血
■神経症状、感染の兆候の有無など全身状態の変化

 

4-6、全身状態の把握

患者情報を把握した上で術後の看護をしていく必要があります。オペ記録から術式や術中の様子がわかりますので、自分が受け持つ患者さんの状態をきちんと情報収集しましょう。

■どのような手術をしたのか
■手術中の全身状態・創部の状態
■術中の水分バランス・出血量

 

4-7、頭蓋内圧亢進症状を早期に発見する

頭蓋内圧亢進とは、頭蓋内圧(Intracranial Pressure: ICP )が正常上限を超えた状態を言います。(20cmH2O以上を超えること)

頭蓋内圧上昇→脳灌流圧低下→脳灌流圧を維持するために全身血圧が上昇→
脈拍低下→拍動が強くなる

これらは頭蓋内圧亢進症状として重要なバイタル変化になります。頭蓋内圧亢進による以下の症状に注意しましょう。

■頭蓋内圧亢進症状
・頭痛:早朝頭痛(Morning headache)が有名
・嘔吐:悪心を伴わない嘔吐(嘔吐中枢の刺激による)
・視力障害・うっ血乳頭:かすみ、閃光(光視症)
・外転神経麻痺
・意識障害
・Cushing現象(血圧上昇+徐脈)

■頭蓋内圧亢進の原因としては、
・頭蓋内占拠性病変:出血、腫瘤
・脳浮腫・脳腫脹
・髄液の通過障害:水頭症
・静脈の閉塞:脳静脈洞血栓症など
・突発性頭蓋内圧亢進症:腹圧亢進(肥満など)、中心静脈圧亢進(右心不全・気胸など)が誘因となることがあります。

 

頭蓋内圧亢進が進むと脳幹を損傷する脳ヘルニアに至り、血圧低下、自発呼吸の停止、対光反射の消失や瞳孔の散大、徐皮質硬直・徐脳硬直が引き起こされます。初期の頭蓋内圧亢進症状である頭痛・嘔吐、脳ヘルニアの初期徴候としての瞳孔不同・片麻痺が観察のポイントとなります。また、呼吸や血圧、心拍数の変化にも注意が必要です。
下図左側では、上が徐皮質硬直、下が徐脳硬直で、徐皮質硬直では上肢は屈曲、下肢は内転して足が足底方向に伸びています。一方、徐脳硬直では上肢は伸展・回内し手は屈曲しています。また、脳ヘルニアによる呼吸異常については、チェーンストークス呼吸は間脳障害・脳ヘルニアの初期徴候、失調性呼吸は延髄呼吸中枢に障害が及んでいることを示し、呼吸停止の恐れが高いのが特徴です。

頭蓋内圧亢進の原因

頭蓋内圧亢進の原因

引用元:Home Decore Inspiration
引用元:救急隊員のための基礎講座

 

5、看護問題とケアプラン

患者さんをケアする上でどんな点に気をつけなければならないかを理解し、個々の患者さんにあったケアを看護計画として立案、観察していきましょう。患者さんの状態に応じて観察項目やケア項目を増減していく必要があります。

 

■看護目標:頭蓋内圧亢進・脳ヘルニア等症状・異常の早期発見・対処ができる

 

5−1、観察項目:OP

①.バイタルサイン
②.呼吸状態
③.意識レベルの評価
④.瞳孔の大きさ、瞳孔不同・対光反射の有無
⑤.頭痛、嘔気・嘔吐の有無
⑥.麻痺の有無・程度
⑦.知覚障害・失語・見当識障害の有無・部位と程度
⑧.痙攣の有無
⑨.ICP(脳圧モニター)のチェック
⑩.創部の状態(出血の有無・程度、感染兆候など):外減圧術を行なった場合は、開頭した骨片を元に戻さず、皮下組織と皮膚のみで閉頭しているため、乾燥を防ぐ・感染予防等の処置がとられています。
⑪.ドレーンからの排液の性状・量
⑫.血液データ
⑬.尿量・水分バランスのチェック
⑭.CT・MRI検査の結果

Japan Coma Scale (JCS : 3-3-9度方式) Glasgow Coma Scale

急性硬膜下血腫の看護

急性硬膜下血腫の看護
引用元: Minds(マインズ)ガイドラインセンター
Glasgow Coma Scale Made Easy – MedicTests.com

 

5−2、ケア:TP

①.異常の早期発見
バイタルサイン、意識レベル等、全身状態の観察・評価を行い、「おかしい」、「いつもと違う」など、データ上の変化だけでなく自分が観察していてちょっと違うと感じた時はすぐに医師に報告する。
②.血圧管理
③.呼吸管理
④.循環管理
⑤.良肢位の保持
⑥.関節の拘縮・変形の予防
⑦.安静度に合わせて褥瘡予防のため体位交換を定期的に行う
⑧.点滴やドレーンの管理

 

5−3、実施:EP

①.患者・家族への病状の説明
②.患者に意識がある場合は苦痛等あれば遠慮なく伝えてもらうよう説明する
③.家族へは質問があれば医師や看護師から説明できることを伝える
④.不安を傾聴する
⑤.処置を行う際は、始める前に患者さんに説明・声がけする
⑥.ベッドやベッド周囲の環境整備

 

まとめ

頭蓋内出血は、出血によるショックは少ないですが意識障害を伴うことが多く、問題なのは出血の脳に対する圧迫で、圧迫症状は出血量・速度・部位によって異なります。急性期における患者の状態は複雑で多様であるため、場合によっては即時に適切な治療が行われないと、生命の危険度が高い状態となります。頭部外傷の術後には新たな頭蓋内血腫が出現したり、増大したりすることがあります。このため、常に緊張感を持って観察していくことが必要となります。急性硬膜下血腫は、血腫の増大による急激な脳への圧迫により脳幹の機能不全をきたし、呼吸障害、脳死へ至ることが多いということを念頭に全身状態をしっかり観察し異常の早期発見に努めていきましょう。

参考文献

頭部外傷分類
重症頭部外傷の急性期管理(2012年11月)

腹部大動脈瘤(AAA)の看護計画|原因と治療法(ステント)、観察項目と手術後

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腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤(AAA:abdominal aortic aneurysm)とは、加齢や動脈硬化によってもろくなった血管壁に血圧などの要因が加わって、腹部大動脈に瘤(こぶ)を作ることです。瘤が大きくなり破裂した場合、大出血を起こして死に至る危険があります。

 

1、腹部大動脈瘤(AAA)とは

本来血管は、弾力に富んでいるホースのようなもので、全身へ血液を循環させます。しかし、これが加齢や動脈硬化によって脆くなり、もともと構造的に弱い部分に圧力がかかると、少しずつ血管が風船のように膨れて瘤(こぶ)を作ってしまいます。これを腹部大動脈瘤(AAA:abdominal aortic aneurysm)といいます。

心臓から全身に血液を送り出す大動脈は、心臓から身体の中心部を通って腹部まで延び、そこからは両下肢に枝分かれしていきます。血流量が多く、高い圧のかかる場所が故に瘤ができやすく、ひとたび破裂すると大出血を起こし、生死にかかわる重篤な状態となります。

 

2、腹部大動脈瘤の原因

人間は年を経ると血管が硬くなり、動脈硬化を起こしてしまいます。80歳を超えてくると、脂質異常のない人でも胸部単純レントゲンに大動脈が写って見えるくらい、金属パイプのような動脈硬化を起こす人が出てきます。

加齢は避けられないものですが、腹部大動脈瘤の直接の要因は、生活習慣病に伴う動脈硬化と高血圧です。若い人でも脂質に富んだ食事を摂り、運動をしない生活を送っていれば、高齢者よりも高度な動脈硬化を起こします。そこに喫煙や塩分過多の食事による高血圧が加わると、これらが引き金となって破裂に至ります。60歳以上の高血圧患者の25人に1人(4.1%)が、腹部大動脈瘤を保有しているというデータもあるのです。

 

3、腹部大動脈瘤の治療

3-1、人工血管置換術

腹部大動脈瘤が破裂すると、死亡率は80~90%に及び、救急車で搬送しても病院までたどり着くことが難しいと言われています。そのため、腹部大動脈瘤は破裂してから治療にあたるのではなく、破裂を未然に防ぐ処置が必要です。

正常の腹部大動脈は20㎜程の太さがありますが、50㎜を超えると破裂のリスクが高くなります。一度できた動脈瘤を小さくする内服薬はありませんから、手術で瘤への血流を遮断する必要があります。動脈瘤は新しい血流が遮断されると、血栓化して次第に縮小していきます。以前は腹部大動脈瘤の治療は、全身麻酔下で開胸して人工血管に置き換える方法しかありませんでした。現在も人工血管置換術は行われていますが、ステントグラフトの開発によって、侵襲を格段に低くすることが可能になりました。

 

3-2、ステントグラフト内挿術

ステントグラフトというのは、人工血管に金属のバネを巻き付けたもので、これを鼠径動脈から挿入して疾患部位に置いてくることで、バネの力と血圧によって血管に固定されます。開腹手術による人工血管置換術よりも侵襲は小さく、手術時間も短くなります。どちらの治療を選択するかは、患者の意思と瘤の部位や形状・動脈の厚さなどの構造的な状態によって検討します。ステントグラフト内挿術については、腹部大動脈の解剖と合わせて詳細な情報を載せてある医療機関のサイトがありますので、下部の参考文献を参照してください。

 

3-3、ステントグラフト内挿術の術後合併症

ステントグラフト内挿術は、開腹手術による人工血管置換術に比べ、鼠径部に数センチの傷をつけるだけで済むので、非常に低侵襲と言えます。その分離床も早くから開始することができますし、長期臥床による肺合併症のリスクも低くなります。

しかし、手術中にステントグラフトが操作困難と判断した場合は、開腹手術に移行する可能性もあります。また、破裂寸前だった動脈瘤が自然に破裂したり、もともともろい動脈の壁がステントグラフトの挿入によって傷つき、瘤が破裂することもあります。

また、動脈瘤の内部にはほとんどの場合、既に血栓が作られています。これがカテーテル操作によって術中に流れ出てしまうことによって、各種動脈を閉塞する可能性があります。動脈閉塞の場所によって脳梗塞、腎不全、麻痺、下肢虚血を起こすことがあり、場合によっては腹部動脈瘤の手術をすることで生死に関わる合併症をきたすこともあります。

 

■ステントグラフト内挿術による合併症

①動脈瘤の術中破裂、死亡

②エンドリーク(漏れ)の残存

➂ステントグラフトの閉塞や狭窄

④ステントグラフトによる動脈壁の損傷、閉塞

⑤ステントグラフトの移動や破壊

⑥塞栓症

⑦イレウス

⑧発熱、炎症

⑨呼吸器関連合併症(全身麻酔科にて試行した場合)

➉造影剤による腎機能障害

 

ステントグラフト内挿術も万能ではなく、開胸による人工血管置換術よりも歴史は浅く、標準的治療とはなっていません。しかし、今後は症例が増えるとともに治療成績も安定し、適応が拡大されていくでしょう。

 

4、腹部大動脈瘤の看護問題

腹部大動脈瘤の看護は術前の安静から患者教育、術後の観察まで多岐にわたります。以下に主な看護問題を列挙してみましょう。

 

■腹部大動脈瘤の看護問題

①自覚症状がないため、破裂による生命の危険を認識できない場合がある

②動脈瘤発生部位・大きさによっては圧迫や閉塞による疼痛が出現する可能性がある

③動脈瘤破裂の危険性があり、安静が必要である

④動脈瘤破裂に対する恐怖心によって、心身の安静を保てない可能性がある

⑤手術操作による大動脈瘤壁内の血栓が移動し、末梢動脈・脳動脈に塞栓を起こす可能性がある

⑥動脈瘤破裂や手術に伴う生命の危険や予後に対し、家族が強い不安を抱く可能性がある

 

5、腹部大動脈瘤とステントグラフト内挿術の術後看護計画

看護問題:手術操作による大動脈瘤壁内の血栓が移動し、末梢動脈・脳動脈に塞栓を起こす可能性がある

看護目標:動脈塞栓症の早期発見と対処により、循環動態を良好に保つことができる

看護計画:

O-P)

1.バイタルサイン

2.カテーテル挿入部の止血状態、感染徴候の有無

3.両下肢の拍動の有無と程度

4.両下肢の皮膚色、チアノーゼの有無

5.両下肢の冷感の有無・程度

6.四肢の動き、歩行状態

7.しびれや知覚鈍麻の有無・程度

8.意識障害の有無と程度

9.採血データ(PT-APTT、PT-INR、D-ダイマーetc.)

 

T-P)

1.両足背動脈の触知できる部分に×印をつけておく

2.両下肢の保温

3.安静度に応じてADL介助

 

E-P)

1.術後起こりうる動脈塞栓について説明する

2.禁煙指導

3.血圧指導(必要時栄養指導)

4.今後の定期フォローの予定

(通常は術後1か月後・6か月後、12か月後、その後は年1回CTにて評価する)

 

まとめ

腹部大動脈瘤の治療は、ステントグラフト内挿術によって以前より格段に侵襲が少なく、1週間程度の入院期間で済むようになりました。しかし、術前の動脈瘤破裂や術後合併症を起こす可能性はゼロではありません。術後塞栓を起こした場合は、早期に発見して可逆性のあるうちに治療を行う必要があり、看護師の観察力にかかっていると言っても過言ではありません。術後は特に患者観察を念入りに行うことが求められます。

 

参考サイト

大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(京都大学医学部附属病院|循環器内科)

ステントグラフト内挿術(日本心臓血管外科学会|東京医科大学血管外科|島崎太郎・重松宏)

腹部大動脈瘤に対する「ステントグラフト内挿術」をはじめました(社会医療法人|愛仁会|高槻病院|心臓血管外科)

侵襲の少ない血管内治療(社会医療法人|愛仁会|高槻病院|心臓血管外科)


食道癌の看護計画|食道癌のステージにおける看護問題と観察ポイント

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食道癌看護

食道癌は消化管に発生する癌の中で、大腸癌に次いで頻度の高い癌で、比較的進行が早い傾向があると言われています。食道癌は胃・大腸がんに比べ命に影響を及ぼす可能性がより高い癌であり、早期発見と治療が望まれます。

ここでは食道癌について説明します。実際のケアに生かせるようしっかりと学習していきましょう。

 

1、食道癌とは

食道とは咽頭から胃をつなぐ長さ約25cm、太さ2~3cm、厚さ4mmの管状の臓器で、食べ物を輸送する働きをしています。

食道の内側は粘膜で覆われており、粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層で構成されています。

食道癌は、この粘膜の表面にある重層扁平上皮に発生することが多く、日本では食道癌の90%以上が扁平上皮癌で、その約1/4が食道の下部に発生しています。

欧米では、癌細胞が腺腔を形成する腺癌が増加しており、欧米の食道癌の60~70%を占めています。

食道癌は初期症状がないことが多く、癌が進行するにつれ食道がしみたり、つかえるような感覚や体重減少、胸痛や背部痛、咳、血痰、声がかすれる(嗄声)などの症状が出現します。

 

2、食道癌のステージ

ステージ(病期)とは癌の進行度を表すもので、癌の壁深達度(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)によりステージが決定されます。

 

■食道癌のTNM分類

T

(深達度)

T1a

T1b

T2

T3

T4

癌が粘膜内にとどまっている

癌が粘膜下層にとどまっている

癌が固有筋層にとどまっている

癌が外膜にまで達している

癌が外膜をを越え、周辺組織に広がっている

N

(リンパ節転移)

N0

N1

N2

N3

N4

リンパ節転移なし

第1群リンパ節(原発巣に最も近いリンパ節)に転移している

第2群リンパ節(より広範囲のリンパ節)に転移している

第3群リンパ節(遠いリンパ節)に転移している

第4群リンパ節(さらに遠いリンパ節)に転移している

M

(遠隔転移)

M0

M1

遠隔転移がない

遠隔転移がある

 

■食道癌のステージ

    NM因子

T因子

N0 N1 N2 N3 N4 M1
T1a 0 IVa IVb
T1b IVa IVb
T2 IVa IVb
T3 IVa IVb
T4 IVa IVa IVa IVa IVb

 

3、食道癌の治療

食道癌の治療はステージによって決定され、治療には内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法があります。

食道癌の看護

国立がん研究センターがん情報サービス【食道がん】より引用

 

4、食道癌患者の看護問題

食道癌は進行するにつれ、食欲不振や嚥下時疼痛、嚥下障害などの症状が出現します。誤嚥による合併症や経口摂取困難による低栄養状態を引き起こす可能性があります。

また、手術侵襲が大きいため術後合併症(無気肺、肺水腫、肺炎などによる呼吸不全など)を起こしやすく、循環動態が不安定になる場合があります。放射線療法や化学療法を受ける場合は、副作用を引き起こすことが考えられます。

いずれの場合も、患者は疾患や治療、予後などに不安を抱いている事が多く、患者の精神的ストレスが増強している事が予測されます。

 

5、食道癌患者における観察ポイント

食道癌患者における観察のポイントとして、合併症の有無、呼吸·循環の状態、副作用の有無、精神的状態などが挙げられます。

 

■合併症の有無

嚥下の状態、栄養状態、呼吸器への影響などに注意し観察を行いましょう。合併症の早期発見·予防に努めましょう。

 

■呼吸·循環状態

術後、循環動態が不安定になりやすいため、呼吸状態、循環状態の観察が重要となり、合わせて呼吸·循環の管理が必要となります。

 

■副作用の有無

放射線療法や化学療法では、粘膜障害や悪心·嘔吐、下痢などの副作用が発現する場合があります。症状·兆候の有無に注意し観察していきましょう。

 

■精神的状態

患者は様々な心理的過程にあり、患者によって疾患や治療に対する受け止め方は異なります。患者や家族が病気をどのように受け止めているか、また精神的ストレスの有無により、治療や患者のQOLに影響を与える可能性がありますので、個々の患者が置かれている環境を含め、患者の精神的状態を把握することが重要なポイントとなります。

 

まとめ

食道癌は早期発見・早期治療が重要となりますが、初期症状がないことが多く気づかないうちに病状が進行しているケースもあります。病状の進行に伴う合併症や、術後合併症、治療に伴う副作用などに注意し観察・ケアをしていくことが大切です。また、患者の精神的状態にも配慮し、患者に寄り添ったケアを提供していきましょう。

自衛隊看護師|自衛隊の看護学校とその倍率、仕事内容と給料は?

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自衛隊看護師

みなさんも災害派遣や海外支援など、自衛隊看護師の活躍を目にしたことが一度はあるでしょう。国家公務員で待遇が良いというイメージを持ち、実際に自衛隊看護師を目指している人も少なくありません。

では実際に、自衛隊看護師になるためにはどうしたらよいのでしょう。

ここでは自衛隊看護師になるための方法や自衛隊看護師の業務内容について解説しています。自衛隊看護師を目指そうと思っている方やこれから看護師を目指そうと考えている方は是非参考にしてみてください。

 

1、自衛隊看護師とは

自衛隊看護師とは自衛隊中央病院や自衛隊地区病院、部隊等で看護業務に携わる看護師のことを言います。

一般での募集は応募資格として、看護師免許の他に保健師または助産師免許が必要で、年齢制限も設けられており36歳未満でなければ応募することができません。

 

2、自衛隊看護師になるには

自衛隊看護師になるには、自衛隊に入隊し教育を受ける方法と看護師免許を取得してから自衛隊に入隊する方法があり、自衛隊の看護教育には、准看護学生課程と防衛大医科大学校 看護学科学生があります。

 

2-1、自衛隊の看護学校

2)准看護学生課程

まずは一般隊員として自衛隊に入隊し、教育や訓練を受けます。教育修了後、准看護課程を受験し、合格すると准看護学生となります。2年間の准看護師課程を過ごし、准看護師資格試験を受験します。准看護師課程で優秀な成績を残した場合は、救急救命士課程(1年)に進むことができ、国家試験に合格すると救急救命士免許を取得することができます。

 

2)防衛大医科大学校 看護学科

高校卒業後、防衛大医科大学校 看護学科を受験します。

防衛大医科大学校には、保健師·看護師である幹部自衛官を養成する看護学科(自衛官コース)と、防衛大医科大学病院で勤務する保健師·看護師を養成する看護学科(技官コース)があります。いずれも、修業年数は4年で保健師および看護師資格の取得を目指した学業に励むことになりますが、自衛官コースには訓練があります。

防衛大医科大学校 看護学科では入学金·授業料が無料で、毎月給料または手当が支給されます。また国家試験の合格率は100%で、卒業後は特別国家公務員としての身分が保障されています。

ただし、両コースとも卒業後6年未満で離職する場合は、卒業までに要した費用を返還しなければいけません。

 

2-2、自衛隊看護学校の倍率

防衛大医科大学校 看護学科は非常に人気が高く、例年、高倍率となっています。実際の入試結果は以下の通りです。

自衛隊看護

看護大学・専門学校受験ナビより引用

 

3、自衛隊看護師の仕事内容

自衛隊看護師の仕事は、基本的に一般の看護師とほぼ同じです。患者の多くは防衛省の職員とその家族で、病院勤務以外に舞台での勤務、災害派遣や国際緊急援助活動、国際平和維持活動があります。

 

■部隊勤務

各部隊の衛生体の一員として勤務し、主に訓練中の負傷者への処置等を行います。

 

■災害派遣

災害が起きた際に避難所を回り、処置をしたり避難所で生活している被災者の健康管理を行います。巡回診療などの医療活動のほかに、被災者の心のケアも自衛隊看護師の重要な役割となります。

 

■国際緊急援助支援

海外で災害等が発生した場合に医療チームとして派遣され、被災国への医療援助などを行います。

 

■国際平和維持活動

国際テロや地域紛争などの問題解決のため紛争地での診療補助などを行います。医療の提供を通した国際問題の解決への貢献が望まれます。

 

4、自衛隊看護師の給料

自衛隊看護師の給料は階級によって変わります。階級は看護師としての経験や年齢によって決まります。

実際の給料は、一般のナースと大差はなく、入隊当初の年収は300~350万程度、平均は400~450万程度となっています。ただし、年齢とともに確実に昇給するため、勤務年収によっては年収が500万を超える場合もあります。

また、一般の看護師と比較して、各種手当が充実しているため、これを含めると好待遇と言えるでしょう。

 

まとめ

自衛隊看護師は災害派遣や海外での支援業務など、特殊な業務を与えられることがありますが、基本的には一般の看護師と業務に大きな違いはありません。看護師として活躍するフィールドが異なっても、看護の基本は変わりませんので、日々の学習を忘れずに、患者の立場にたった看護が提供を心がけていきましょう。

アルコール依存症の看護|治療・診断・離脱症状とその看護計画

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アルコール依存症

慢性的にアルコールを常用することによって依存形成し、健康や患者家族、社会的にも影響を及ぼしてしまうことをアルコール依存症といいます。患者は病気意識がないことが多く、入院に抵抗を感じたり、感情が不安定なため、看護するのにも困難を要します。ぜひ今回お話しする看護のポイントを実践に役立ててください。

 

1、アルコール依存症とは

慢性的にアルコールを常用し依存形成された状態のことをアルコール依存症といいます。国際疾病分類(ICD10)では、「精神作用物質(アルコール、アヘン、大麻)使用による精神及び行動の障害」に分類され、以下の6項目のうち、3項目以上が過去1年間のある期間に存在した場合にアルコール依存症と診断されます。

 

・飲酒することへの強い願望または強迫感

・飲酒の開始と終了時期、飲酒量を制御できない

・飲酒をやめたり、飲酒量を減らしたときの離脱症候群の出現、離脱症状を軽減するための飲酒

・耐性による飲酒量の増大

・飲酒以外の楽しみや興味の喪失、飲酒時間と酔いざまし時間の増大

・飲酒に関連する疾患やトラブルなど有害な結果が生じていることを無視した飲酒の継続

 

アルコール依存症になると、精神依存と身体的依存状態になり、常に飲酒していたいという願望が生まれ、体内アルコール濃度が下がると離脱症状を起こし、それを抑えるためにまた飲酒することを繰り返してしまうようになります。

 

2、アルコール依存症の治療

アルコール依存症の治療は、断酒が原則です。何十年断酒していたとしても、ほんの一口の飲酒で依存状態に戻ってしまうこともあるので大変危険だからです。また、治療過程によって治療内容も変わるので、患者が今どの段階にあるのかということを考えながら治療を行っていきます。

導入機 ・アルコール関連障害(肝障害、家庭内不和、精神症状など)に対処。

・本人の病気への理解、治療への動機づけを得る。

解毒期 ・1~2週間入院し、離脱症状栄養障害に対する治療を得る。
積極的治療期 ・アルコール関連障害の治療。

・精神依存への対処(集団精神療法自助グループへの参加、抗酒薬の投与、作業療法

継続的治療期 断酒の継続とストレス対処行動の獲得。

・家族関係の回復、生活の安定化を目指す。

出典:医療情報科学研究所|看護師国家試験のためのなぜ?どうして?チェキラ第6版|メディックメディア(580 平成27年7月10日)

 

中心となるのは集団精神療法で、患者が主体となって自分の飲酒経験の振り返りや経験の共有を図り、再度アルコールに手を出してしまわないよう本人を支援していきます。また、退院後も患者がアルコールに手を出さないように、本人を支える家族の力も大切であることを看護師は伝えていかなければいけません。アルコール依存症の治療は外来通院でもできますが、入院治療し、アルコールを断つことによって症状は急速に良くなることが多いため、現在は入院治療が主流です。治療で使われる主な薬剤としては、抗酒薬、抗不安薬、抗精神病薬などがあります。

 

・抗酒薬(シアナミド、ジスルフィラム):服用すると少量の飲酒で悪酔いするため飲酒をあきらめる効果がある

・抗不安薬(ジアゼパム):離脱症状を抑えることができる

・抗精神病薬(ハロペリドール):意識消失、幻覚の出現がある場合に適応

 

3、アルコール依存症に起こりやすい離脱症状とは

離脱症状とは、反復使用によって身体依存が形成された後、その薬物使用を中断することによって出現する特定の病的症状をいい、症状の出現時期により早期離脱症候群と後期離脱症候群に分けられます。

アルコール依存症に起こりやすい離脱症状

出典:川野雅資:精神看護学Ⅱ:ヌーヴェルヒロカワ(342図Ⅺ-2アルコール離脱症候群の時間的経過 平成22年2月26日)

 

3-1、早期離脱症候群

飲酒中断後7時間ごろより始まり、20時間ごろをピークに出現し、48時間から72時間(2~3日)ほど続きます。症状として、発汗、寝汗、心悸亢進、頻脈、血圧上昇などの自律神経症状、消化器症状(吐き気、食欲不振、下痢)などの症状が出現し、それらについで、手指や身体の振戦、けいれん発作も出現します。精神症状としては、イライラ感、不安、焦燥感、抑うつ、不眠、悪夢などの症状に次いで、一過性の幻覚や錯覚、抑うつ状態や希死念慮が現れることも珍しくありません。

 

3-2、後期離脱症候群

早期離脱症候群に次いで起こり、飲酒中断後46時間から72時間ごろに出現し、3~4日続く症状です。発熱、発汗、頻脈などの自律神経系亢進症状とともに、粗大な振戦、精神運動興奮、意識障害、幻覚などを呈する振戦せん妄が出現し始めます。幻覚に多いと言われているのが、多数の小動物や小人、虫が壁や床をうごめいているものが見える幻覚で、それらが体を這い上がってくるような感覚をともなうこともあります。幻覚は夜間や暗い部屋の中で増強し、明るい部屋では軽減するという特徴もあるため時間帯により患者の状態をよく把握しなければいけません。振戦せん妄が現れる時期は、脱水や低栄養状態、電解質異常、低血糖などの合併症から死に至る場合もあるため、身体状態の管理が重要です。

 

4、アルコール依存症の看護問題と看護計画

アルコール依存症の患者の看護計画は、患者がどの依存状態にあるのかで区別して考えると良いです。強い依存状態、依存から少し離れた状態、自立に向かう状態の3つに分け、計画立案、評価を行います。

 

4-1、強い依存状態

この状態の患者は、見捨てられ不安が強く、その不安を依存行動によって充足しようとします。自立する思いはないため他者に決定をゆだねる傾向にあります。

 

■依存:見捨てられ不安、低い自己評価に関連した

看護目標:患者が感情を行動や言葉で医療者に表現することができる

観察項目:

・表情、言動

・患者が認知している現実

・他患者、家族との対人関係、依存行動

・患者の自己評価

 

ケアプラン:

・患者を見捨てず一人の成熟した人間として受け入れることのメッセージを送る

・一貫した態度で接する

・行動の裏にある感情を表出できるように関わる

・病棟のルールの中で患者ができることを一緒に考える

 

指導項目:

・感情を患者が受け入れられる方法で表現することを提案する

・感情がどのように表現されているか観察したことを伝え、感情と行動の関連性を患者が考えることができるよう援助する

 

4-2、依存から少し離れた状態

この状態の患者は、患者―看護師間において見捨てられ不安を持っており、感情を表出できます。自立したいという思いはあるので自己決定を部分的に行うことができます。

 

■依存:日常生活のスキル、生活変化や危機に対する対処行動が不十分であることに関連した

看護目標:生活変化や危機に対処するスキルが培われる

観察項目:

・表情、言動

・患者が認知している現実

・他患者との対人関係

・レクリエーションの参加状況

 

ケアプラン:

・現在の能力でできそうな活動を患者と計画する

・うまくいかなかったことも、努力したことを認める

・依存的行動には応じない

・計画を達成できた場合、肯定的なフィードバックを送る

・欲求充足の望ましい行動を一緒に考える

 

指導項目:

・集団への参加を促し、他患者と感情を共有できる機会を提供する

・苦手な場面のロールプレイングを行う

 

4-3、自立に向かう状態

■依存:つい頼ってしまう感情を処理できないことに関連した

看護目標:今後の生活への具体的な感情や行動が表出できる

観察項目:

・様々な場面での患者の表情、言動

・患者が認知している現実

・今後の生活に対する不安

・今後の生活に対する目標

・レクリエーションの参加状況と他患者との関係

 

ケアプラン:

・今後の生活の具体的な計画を一緒に考える

・今後の生活の準備を患者が自力で行うことを支持する

・患者の行動の振り返りを行う

・今後の生活で起こり得ることを予測し、どのように対処していくか一緒に考える

 

指導項目:

・今後の生活で起こり得る場面をロールプレイングで練習する

・活用できる社会資源を紹介する

 

まとめ

適量は健康に良いといわれているお酒も、量を間違えれば依存症に陥る怖い飲み物に変わります。症状が良くなっても、「ちょっとだけならいいかな。」と手を出してしまうと依存状態に逆戻りしてしまうため、患者が退院後に二度と依存状態に戻らないよう、家族と協力しサポートしていきましょう。

 

参考文献

川野雅資:精神看護学Ⅱ:ヌーヴェルヒロカワ(342-347 平成22年2月26日)

吉松和哉、小泉典章、川野雅資:精神看護学Ⅰ:ヌーヴェルヒロカワ(5-6 平成22年2月20日)

医療情報科学研究所|看護師国家試験のためのなぜ?どうして?チェキラ第6版|メディックメディア(580-583 平成27年7月10日)

動脈ライン(Aライン)|挿入部位の方法と目的、0点、波形など看護ポイント

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動脈Aライン

動脈ライン(Aライン)は、集中治療における重傷者のモニタリングを目的として行われる、観血的血圧測定の一つの方法です。患者の状態を随時モニタリングができ、必要な時に患者に苦痛を与えることなく患者の血液サンプルを得ることもできます。特に動脈血から得られる血液ガスからは、酸塩基平均値、アシドーシス・アルカローシス、代償反応という全身状態の把握に必要な情報を得ることができます。

 

1、動脈ライン(Aライン)とは

動脈ラインは、動脈に直接針を挿入、そして留置して血圧を測定します。動脈にAラインが挿入してある場合は、採血システムの種類であれば、直接そのラインから動脈血を採取し、動脈血のガスの分析ができます。看護師として、医師が行うAラインからの採取の介助、直接穿刺による動脈血の採取の介助が手技のメインでありましたが、保健師助産師看護師法の一部改正によって、平成27年の10月1日より、動脈血ガス分析関連として、特定行為にあたる直接動脈穿刺による採血またAラインの確保が条件付きで看護師も行えるようになりました。

特定行為とは、診察補助のうち、看護師が手順書で行う場合、実践的な理解力、思考力および判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要される行為のことを意味します。「特定行為研修」の受講をした看護師のみ、特定行為を行えるようになりました。下記の表は特定行為の一部の例です。

 

特定行為区分 特定行為
呼吸器 (気道確保に係るもの)関連 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チュー ブの位置の調整
呼吸器(人工呼吸療法に係る もの)関連

 

侵襲的陽圧換気の設定の変更

非侵襲的陽圧換気の設定の変更

人工呼吸管理がなされている者に対する 鎮静薬の投与量の調整

人工呼吸器からの離脱

呼吸器(長期呼吸療法に係る もの)関連 気管カニューレの交換
循環器関連 一時的ペースメーカの操作及び管理

一時的ペースメーカリードの抜去

経皮的心肺補助装置の操作及び管理

大動脈内バルーンパンピングからの離脱 を行うときの補助頻度の調整

心囊ドレーン管理関連 心嚢ドレーンの抜去
胸腔ドレーン関連 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及 び設定の変更

胸腔ドレーンの抜去

動脈血液ガス分析関連 直接動脈穿刺法による採血 橈骨動脈ラインの確保 透析管理関連 急性血液浄化療法における血液透析器又 は血液透析濾過器の操作及び管理

引用元:厚生労働省令第33号(平成27年3月13日)

 

このほかにも、中心静脈カテーテルの抜去など、医師のみが行っていた行為も記載されています。すべての現場での運用はまだまだこれからですが、Aラインに関する看護技術や知識がさらに必要になったことは間違いがありません。

 

2、Aラインの目的

Aラインの目的は、動脈にカテーテルを留置することで、持続的な血圧や脈などの血行動態の把握が可能になります。また、血液ガス分析のための動脈血の採取が迅速に行えます。このほかにも、悪性腫瘍に対する抗がん剤の注入や、血液透析のルートとしてなど治療目的で挿入されることもあります。Aラインから動脈血を採取し、血液ガスの分析はよく行われる検査の一つです。血液ガスの分析の注意点として、採決後は数分以内に検査しないとPaO2血が低下することです。必ず迅速に測定する必要があります。

 

3、挿入部位

挿入部位の選択は、医師にもよりますが、血圧が保たれ橈骨動脈において脈圧がしっかり触れていれば①橈骨動脈②上腕動脈③大腿動脈の順に選択されます。

 

①橈骨動脈:手関節の掌側で橈骨茎状突起の内側近位部

動脈ラインの挿入部位

出典:The New England Journal of Medicine

 

②大腿動脈:恥骨結合と上前腸骨棘との間で、大腿静脈の外側で大腿神経の内側

③上腕動脈:肘窩内側で内側上顆の外側、上腕二頭筋腱内側

 

4、看護手順とポイント

①Aラインに組こまれているシリンジで、Aライン内のヘパリン生理食塩益を一時的に引く。(※引いた後は、血液が逆流しないように患者側をoffすることを忘れない。)

②採血用シリンジに専用ニードルを接続し、指示された採決量まで内筒を引いておく。

③Aラインの採血用のソケットを開け、アルコール綿で消毒する。採血用シリンジを接続する。(※カチッと音がするまで押してはめる。血液ガス専用のシリンジを挿入すると、自動的に血液がシリンジ内に逆流し、採血できる。)

④採血用シリンジの接続を外して、ソケットを再度アルコール綿で消毒し、キャップをもとに戻す。(※Aライン内のシリンジで引いたヘパリン入り生理食液は、動脈血内に戻す。)

⑤採血した血液は回転混和しながら運搬、検査部にすぐ渡すか、血液ガス分析装置にセットする。(回転混和することで、ヘパリンを行きわたらせ、凝血を防ぐため。)

 

5、看護のポイント

動脈穿刺中は、血流が多く出血が起こりやすいリスクがあります。痛み・刺激に対して、患者の身体が動くことや、ショック状態に陥る場合もあります。看護師は、患者のバイタルサインだけでなく、患者の言動、顔色、体動などにも注意して常に観察しましょう。

 

Aライン留置における起こりやすい合併症 看護のポイント
一時的な末梢循環不全 末梢不全を起こさないように、2時間以上は圧迫止血を行わないことが重要です。そのために、圧迫開始時刻を記入するなど対策が必要です。看護師は、末梢循環不全の徴候がないかを観察しましょう。(脈圧・手先のしびれ・冷や汗・冷感など)
血種また出血 迫止血を確実に行いましょう。少なくとも5分間は圧迫を継続し、止血を確認後、圧迫止血用絆創膏で圧迫止血を継続しましょう。
感染 Aラインが留置されていた期間が、長ければ長いほど感染のリスクが高まります。挿入部や周囲の発赤や腫脹そして疼痛などの観察も重要です。
大出血
敗血症 挿入部の観察だけでなく、バイタルサインの観察や血液データから全身に感染が起きていないか早期に発見に努めましょう。
慢性的循環不全
偽動脈瘤の形成
血栓症
動静脈瘻
空気血栓 不注意によって活栓が解放されたままであったり、圧モニタリングラインの偶発的な外れや採血や投薬またフラッシュの際に残存気泡が血液に入り、細い血管を塞ぐリスクがあります。部位としては、脳や心臓などに多く発症するため、注意が必要です。脳の症状である、意識レベルの低下や見当識障害。そして、心臓に関する症状の胸痛や冷感、四肢の循環障害なども観察しましょう。

 

5-1、Aライン0点

Aラインの0点とは、圧トランスデューサペントポート(液体―大気接点)の位置を圧力測定する心房/心室と同じ高さにすることです。同じ高さにすることで、正確に血圧をモニタリングできるからです。例えば、心臓のモニタリングにおいては右心房の位置でゼロにします。これは、中腋窩と第4肋間腔の交点(Phlebostatic axis)にあります。閉塞型ルアーキャップを外し、三方活栓のハンドルを回して、圧トランスデューサーのペントポートを大気開放し、読みがゼロとなるように血圧監視装置を調節してください。

 

5-2、波形

循環管理に関するモニターを理解し、アセスメントし患者管理に生かすことは大切なことです。最初からすべてを理解するのは、不安になってしまうと思います。まず、正常な波形を理解し、そこから知識を深めていきましょう。正常な動脈圧の波形はFig.1に示された部分から成り立っています。例えば、大動脈弁疾患がある場合、波形に変化が出ます。穏やかな上行脚や重複切痕の不明瞭化などです。

動脈ラインのポイント

出典:丸石製薬株式会社 循環モニターの評価法

 

波形から、心臓の収縮期と拡張期圧が測定できます。これらのデータから、平均動脈圧、心収縮力や動脈のコンプライアンスも推測できます。Fig.2では、心臓の一回拍出量の評価の方法が示してあります。収縮期の面積から一回拍出量が推測でき、リアルタイムモニタリングからの情報は、患者を看護するうえでも有効です。

動脈ラインのポイント

出典:丸石製薬株式会社 循環モニターの評価法

 

まとめ

Aラインの管理は、患者の身体状況を正確に知るために重要です。もちろんモニターを読めることも大事ですが、穿刺部位の固定、O点調整や採血時の手技などの技術を創造していくことがまず大事になります。なぜ、Aラインの留置が治療上に必要なのか、その目的を理解すること。そして、技術の根拠を理解していくことが安全性の向上につながります。一つ一つの手段を大切にし、Aラインの安全性また効率性が高い管理ができるように心がけましょう。

 

参考文献

厚生労働省令第33号(2016/03/13)

The New England Journal of Medicine (2006/04/13)

丸石製薬株式会社 循環モニターの評価法(大阪市立総合医療センター麻酔科 三浦由紀子、奥谷 龍 2011)

点滴の看護技術|静脈内注射の看護観察項目と成人滴下数計算、小児滴下数計算

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点滴静脈内注射

注射とは、経皮的に行う薬剤の投与方法です。消毒滅菌された注射針と注射器あるいは注射セットなどを用いて薬剤を皮内・皮下・筋肉内・血管内に注入し速やかに患部への薬剤効果を期待するものです。注射は患者さんにとって必要であるけれど苦痛を伴うものであることを私たち医療者は念頭に、正確かつ安全に施行していかなければなりません。

 

1、点滴静脈内注射とは

静脈内注射には1回のみの薬液注入と、持続注入(点滴静脈内注射)とがあります。点滴静脈内注射は大量の薬液を静脈内に持続的に注入する方法です。
末梢静脈→右心→肺循環→左心→体循環という経路をたどり全身に薬物が行き渡るのに要する時間は5〜10分と迅速です。薬効作用は早く薬物の投与方法では最も効果的ですが、生命に危険のある副作用を引き起こす可能性も高いので十分な注意が必要です。

 

1−2、静脈内注射の目的

患者さんの状態により輸液速度を調節します。通常1分間60滴位の緩徐な輸液が長時間行われますが、出血やショックのある患者さんに対しては急速輸液が行われます。

①解質の補正や血中濃度の以上を速やかに正常化しなければならない時
②脱水時の補液
③出血時の補液
④栄養補給
⑤治療薬剤の持続投与など

 

2、点滴静脈内注射の実施

2−1、準備

手洗いを行い、注射指示書に基づき患者氏名、薬剤・薬液、時間を確認しながら輸液の準備をしていきます。持続点滴なのか、終了後に抜針なのか、持続であれば1日何本投与するのか、投与量も確認しましょう。
①5Rをもとに看護師同士ダブルチェックを行いながらミキシングや薬剤の溶解を行う。
②必要物品を用意する。

・注射針:主に18G〜24Gの留置針または21〜23Gの翼状針。(輸血や血液製剤の注入を行う場合はなるべく太い留置針が望ましい。)
・駆血帯
・固定用のテープ
・点滴スタンド
・輸液セット
・アルコール綿
・針捨てボックス
・必要に応じて延長チューブなど

③輸液セットを開け、点滴チューブの針をゴム栓に垂直に刺す。
④点滴ボトルを逆さにして点滴筒の1/2〜1/3程薬剤を貯めてから輸液セット全体に薬剤を満たす。(翼状針を使用して1回のみの静脈内注射を行う場合は、針先端まで薬剤を満たしておく。)

 

2−2、ルート確保と輸液投与の実施

①ベッドサイドへ行き、患者氏名、薬剤、時間を再度確認し点滴を行なう旨を説明します。
②注射部位より中枢側に駆血帯をしめ、静脈の浮き出るのを待って、穿刺しやすい静脈を決めアルコール綿で消毒します。
□主に注射針は18〜23Gを用いますが、細い静脈には24Gを選択するなど患者の血管の状態によって使い分けましょう。
③注射針の切り口を上方に向け、静脈を伸展するように皮膚を軽く押さえ、皮膚面に対して15°〜20°位の角度で皮膚を穿刺、次いで静脈を穿刺します。静脈内に入ると血液の逆流が確認できます。(針が静脈内に入る時、針先の抵抗の減弱を感じられます。)
④駆血帯を緩め留置カテーテルを進めながら穿刺針を抜きます。
⑤点滴をつなげてゆっくり開始し、穿刺部の腫れ・疼痛の有無を確認します。
⑥留置カテーテルと点滴チューブの接続を確認し固定用テープでしっかり固定します。(固定方法は各施設のマニュアルに従って行いましょう。)
⑦注入速度を調節し、しばらく患者の一般状態を観察します。

点滴静脈内注射

点滴静脈内注射

引用元:株式会社京都科学
MEDICATION ADMINISTRATION

点滴静脈内注射
引用元:Pinterest • The world’s catalog of ideas

 

3、点滴静脈内注射時の観察

点滴中の患者さんの観察は、点滴スタンド→点滴ボトル→点滴ライン→患者さんの順に指差し確認を行い、患者さん自身の状態や点滴刺入部まできちんと確認することが大切です。

 

3−1、点滴中の観察:OP

①バイタルサイン
②意識レベルの変化の有無・程度
③発汗などの皮膚状態の変化
④刺入部及びその周辺の皮膚状態
⑤点滴の残量、滴下速度の確認(輸液ポンプを使用している場合は、流量は正しいか、積算量・予定量の確認をしておきましょう。)
⑥IN-OUTバランスのチェック
⑦点滴に対する不安や苦痛の有無
⑧安楽な体位が取れているか
⑨点滴ラインの屈曲やねじれ、接続部の緩み・漏れの有無
⑩固定テープが剥がれてきていないかの確認
⑪ナースコールや点滴スタンドの位置は適切か

*点滴終了後に抜針する患者さんで、翼状針を使用する患者さんに関しては、点滴終了までベッドから動けなくなりますので、点滴前にトイレを済ませていただく等の配慮が必要です。

 

4、点滴の滴下数の計算方法

輸液セットには成人用・小児用ルートの2種類あります。滴下数は1mlの輸液を落とすのに何滴必要かを示すものです。計算式を理解して正しい計算ができるようにしておきましょう。

 

4−1、成人輸液ライン(1ml≒20滴/ml)

1分間あたりの滴下数=(指示輸液総量)÷(指示輸液時間)×20(輸液セット1mlあたりの滴下数)

輸液の指示は時間(hr)で指示が出されていることが多いので、単位を分に直してから計算します。
例えば、「2時間かけて」という指示であれば60×2=120分、「24時間で」という指示であれば、60×24=1440分となります。
これらを理解した上で実際に計算してみると・・・

「500mlの点滴を12時間かけて輸液」
1分あたりの滴下数=500ml÷(12時間×60分)×20滴
=500ml÷720分×20滴
≒13〜14滴/分
となります。

 

4−2、小児輸液ライン(1ml≒60滴)

小児輸液ラインにおける計算式も成人と同じです。輸液セットの1mlあたりの滴下数が成人と違い60滴になりますので、この部分の数字を変えて計算します。

「500mlの点滴を24時間かけて輸液」
1分あたりの滴下数=500ml÷(24時間×60分)
=500ml÷1440分×60滴
≒20滴/分

 

4−3、10秒あたりの滴下数の計算

実際に滴下数を調節するにあたっては、5秒もしくは10秒で何滴落とすかを計算した方が管理しやすいですね。1分間の滴下数を6で割ると、およその10秒あたりの滴下数が計算できますが、ここでは10秒あたりの滴下数の計算式もご紹介ししておきます。

■計算方法
①1時間に投与する量を計算します。(総輸液量÷輸液時間)
②成人用ルートの場合は「18」で割ります。
「500mlの点滴を12時間かけて輸液する」
10秒あたりの滴下数=500ml÷12時間÷18
≒2滴
③小児用ルートの場合は「6」で割ります。
「500mlの点滴を24時間かけて輸液する」
10秒あたりの滴下数=500ml÷24時間÷6
≒3滴

※小児の輸液においては、輸液ポンプを使用することが多いと思いますが、輸液速度が遅い場合にはポンプを使用することで逆流、ルートの詰まり防止ができると同時に正確な輸液が行えるというメリットがあります。状況に合わせて自然滴下か輸液ポンプを選択するようにすると良いでしょう。

 

5、静脈内点滴の合併症

点滴静脈内注射は、救命救急や栄養補給などに対して速やかかつ確実に薬剤の組織移行が行われるため大変効果的な治療法となります。しかし、薬剤の性質や種類によっては様々な副作用が出現する可能性があるため合併症が起こった時にすぐ対応できる看護技術を身につけておく必要があります。ここでは血管外漏出と静脈炎の対応について見ていきます。

 

5−1、静脈炎・血管外漏出とは

静脈炎とは、静脈壁内膜の炎症です。点滴の刺入部より上部の血管に沿って発赤や疼痛が出現します。これに対し、輸液が血管内に注入されず血管外(多くは皮下組織)に漏れることを血管外漏出と言います。医療現場ではよく「点滴が漏れた」と言いますね。血管外漏出の症状は静脈炎の症状と似ており、早期に気づくことで患者さんへの苦痛軽減や症状悪化の防止になります。

 

5−2、静脈炎・血管外漏出の症状と観察ポイント

①血管外漏出が起こると、点滴刺入部やその周辺に次のような症状を認めます。

・疼痛
・発赤
・腫脹
・硬結
・点滴の落ちが悪い
・逆血がない

漏出初期には注射部位及びその周辺の発赤や疼痛、腫脹が見られ、薬剤によっては数時間から数日後に炎症が進行、水疱形成や硬結・潰瘍・壊死に至ることもあります。
②静脈炎においては、血管壁の肥厚や血管収縮による血流低下を認め血栓が起こりやすくなって点滴の詰まりや血管外漏出の原因になります。
③静脈内に留置された針は、しっかり固定されていれば挿入部位の四肢を動かしても簡単に抜けることや点滴が漏れてしまうことはほとんどありませんが、血管がもろい、あるいは細いような時には漏れに対する注意が必要です。
④輸液ポンプを使用している場合には、刺入している血管が破れても、しばらくの間はアラームがなることなく薬液を押し続けるので皮下に貯留する薬液の量は自然滴下の場合より多くなってしまいます。このため、点滴部位の観察はとても重要です。

 

5−3、血管外漏出した時の対処

血管外に点滴が漏れてしまった時には速やかに対処し皮膚状態の悪化を最小限に抑える必要があります。
①直ちに輸液を中止して抜針する
②必要があれば患部の冷湿布の貼用・患肢の挙上をする
③薬剤や皮膚障害の程度により必要な処置が異なるため医師に報告、指示を仰ぐ
④患部の皮膚状態の観察・処置を継続して行う
⑤再度留置針を挿入しなければならない時は反対の手にするなど同一部位や同じ血管は避ける

静脈内点滴の合併症
引用元:BD

 

まとめ

点滴静脈内注射を行う患者さんは長時間同じ体位を取ることを強いられるので、そのための配慮や点滴部位の観察がとりわけ重要になります。点滴の実施中は、輸液ルートを上から下まできちんと見ること、機械任せにせず自分の目で確かめることが大切です。持続点滴をしている患者さんに対しては、定期的に1日に何度かチェックを行う習慣をつけることで正確な輸液投与や皮膚トラブルの防止をしていきましょう。また、点滴が漏れてしまった時に早期に対処できる技術や知識を身につけておくことも重要です。

 

参考文献

血管外漏出とは – キッセイ薬品工業株式会社(2016年6月改訂)
国立がん研究センター がん情報サービス(2006年10月01日掲載)

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