各患者にとって最適な看護とは何かを突き詰めると、一生を通しても習得するのは非常に困難であるゆえ、看護師は“生涯を通して勉学に励む”必要があります。それゆえ、看護関連の本を読むことは非常に重要で、スキルアップを図る上で欠かせません。
しかしながら、出版されている本の数は非常に多く、どれを読めば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで当ページでは、看護学生や現役看護師(特に新人看護師)必読の“役に立つ”本や雑誌を厳選し、一挙にご紹介します。
1、本や雑誌を読むことの必要性
おすすめの本・雑誌を紹介する前に、読むことの必要性についてお話したいと思います。今では、看護師を目指す看護学生に向けた教本や領域ごとに患者への対応や手技が書かれたものなど、看護関連の本・雑誌は多く出版されていますが、なぜそれらを読む必要があるのでしょうか。
まず、ネット上にも看護関係の情報は数多く存在します。しかしながら、信憑性に乏しいものも多々あり、どれが正解なのか判断するのは至難の業で、時に情報が乱雑していることで、“疑問解決”のために情報を検索しているにも関わらず、さらに混乱することもしばしばあるでしょう。
しかしながら、本や雑誌はネット上にある情報より信憑性が高く、中でも“大系書”や“教科書”として使用されているものは最も信憑性が高い文献です。“大系書”や“教科書”だけでなく、看護師の目線で執筆されている一般本や雑誌においても、文献としては信憑性が高く、基本的には書かれている情報を自身の知識としてそのまま習得することが可能です。
つまり、看護関連の本や雑誌を読むことで、情報の正誤に惑わされることなく、素早く自身の知識を習得することができるのです。ネット上の情報とは異なり、購入費が必要となりますが、正確な知識を早期に習得できるという点で、多忙を極める看護学生または看護師にとって、看護における専門的な本・雑誌を読むことは非常に有意義で、スキルアップを図る上で必要不可欠なツールなのです。
2、代表的な出版社
続いて、看護関連の書籍を発行している主な出版社をご紹介します。代表的な出版社は「メディックメディア」、「照林社」、「日総研」、「医学書院」の4社であり、4社とも看護関連の書籍出版を主とした、いわゆる専門的な出版社です。各社がどのような特色を持っているのか、以下にてみていきましょう。
■メディックメディア
1979年に創業した同社は、医師・看護師・栄養士・PT/OT(理学・作業療法士)・介護士・社会福祉士など各医療従事者に向けた数多くの専門書籍を発行している出版社です。
中でも医学生・医師に向けた医学書籍は定評があり、内科・外科のエッセンスとなる「year note」は医学部6年生のほとんどが所有しているほど。看護においても“わかりやすく、そして整理・凝縮して構成する”というコンセプトをもとに、「看護師・看護学生のためのレビューブック」をはじめ、数多くの看護系専門誌を出版しています。
■照林社
小学館グループの医学・看護専門図書出版社である同社は、他の出版社よりも規模が小さいものの、「プチナース」や「エキスパートナース」などの月刊誌、「看護学生クイックノート」・「基準看護計画」など内容の濃い実用的な書籍を数多く出版しています。学問的でなく実用的な書籍をお探しの方にとって同社は第一選択の出版社となり得るでしょう。
■日総研
同社は、看護・介護系の書籍の編集・発行に特化した出版社であり、書籍だけでなく年間1500回を超えるセミナーや通信教育など、さまざまな事業を展開しています。
■医学書院
医学・看護関連の専門書籍・雑誌の大手出版社。編集・コンテンツ作成における実績が豊富で、年12回発行の月刊誌や「病期・病態・重症度からみた 疾患別看護過程+病態関連図」、「看護診断ハンドブック」など、専門性の高い書籍を数多く発行しています。
他の出版社よりも専門性の高いコンテンツを問い上げていることから、内容はやや困難であるものの、根拠を深く知ることができるため、1つの領域・ジャンルにおいて深く学びたい方にとって第一選択の出版社と言えるでしょう。
3、看護関連のおすすめ本・雑誌
それでは、以下にて「看護学生向け(全般)」「看護技術」「看護過程」「看護記録」など、各ジャンルのおすすめの本・雑誌を一挙にご紹介します。
【看護学生向け(全般)】
看護学生プレトレーニング(メヂカルフレンド社)
看護学校入学前の看護関連における基礎知識の習得・受験用に役立つ一冊。①計算と数字(割合/比/濃度の計算/速度の計算)、②看護に生かす理科(人体を構成する臓器・器官/人体のはたらきを知るための化学の知識/安全・安楽に生かす物理の知識)、③言葉と文章(漢字・語句/敬語と言葉づかい/文章のルール/文章読解)を収録。独学で無理なく基礎知識が学べるよう、ドリル&ワークブック形式で書かれているため、優しく自然な流れで学習でき、達成感も味わうことができる。 |
看護学生クイックノート 第2版(照林社)
①解剖生理(心臓の構造と血液の流れ・心臓に栄養と酸素を送る冠状動脈など)、②アセスメント(尿の観察・便の観察など)、③看護技術の数値(バイタルサイン測定・フィジカルアセスメント・環境調整など)、④検査値(血球検査・生化学検査(電解質:栄養状態:腎機能:胆汁色素:糖代謝:炎症マーカー:脂質:肝機能:血液ガス)など)、⑤看護でよく聞く言葉、⑥略語、が収録されている。簡潔かつ持ち運びに便利で、実習に役立つ一冊。 |
看護師・看護学生のためのレビューブック(メディックメディア)
過去10年分の看護師国家試験、出題内容を1冊に収録。「INTRO」→「症状」→「検査診・断」→「治療」→「看護の流れ」で、頭の中で整理のしやすい構成かつ、イラスト・図表・動画クリップにより理解がしやすい。国家試験対策はもちろん、在学中の勉強にも役に立つ一冊。年毎に新刊が出版されているため、必ず新刊を購入すること。 |
【看護技術】
看護技術がみえる vol.1 基礎看護技術(メディックメディア)
1200点を超えるイラストと1000点を超える写真で、日常生活における援助・看護技術について分かりやすく解説されたビジュアルテキスト。文章のみでは理解しにくいという方にうってつけ。第2版として「看護技術がみえるvol.2臨床看護技術」がある。 |
完全版 ビジュアル臨床看護技術ガイド(照林社)
①感染予防(3項目)、②バイタルサイン測定・採血・モニタリング(7項目)、③与薬・注射・点滴(12項目)、④呼吸管理・人口呼吸管理(9項目)、⑤救命救急処置(4項目)、⑥ドレーン・術後管理(6項目)、⑦摂食・栄養ケア(3項目)、⑧保清・皮膚・排泄ケア(4項目)、移動・移送・その他のケア(3項目)の計51項目における看護技術を手順に従って写真で分かりやすく解説されている。 |
【看護過程】
病期・病態・重症度からみた 疾患別看護過程+病態関連図 第2版(医学書院)
本書は、初版として出版された「病期・病態・重症度からみた疾患別看護過程+病態関連図」の第2版。初版を踏襲し、全科106疾患の病態生理・症状・診断・合併症・治療・使用薬剤などについてイラストを用いて詳しく説明されている。そこから、患者の全体像を把握するために必要となるアセスメント・看護診断・看護計画・看護介入・評価など、一連の看護過程の疾患別に基礎を学ぶことができる、看護学生・新人看護師“必読”の一冊。 |
看護診断ハンドブック 第10版(医学書院)
NANDA-Iが採択している看護診断および原著者が臨床で使えると考えている看護診断の基本情報(定義・診断指標・関連因子)と、NOC(看護成果),NIC(看護介入)、さらに実際の看護介入を示した書。似たような看護診断の使い分けや臨床での使用の仕方などを原著者が解説している点が特徴。看護診断名と定義を知るだけでなく,臨床でいかに活用し,看護介入につなげるのかまでがわかる。 |
基準看護計画 第2版: 臨床でよく遭遇する看護診断、潜在的合併症と基準看護計画(照林社)
臨床でよく遭遇する48の看護診断を取り上げ、①健康知覚-健康管理パターン、②栄養-代謝パターン、③排泄パターン、④活動-運動パターン、⑤睡眠-休息パターン、⑥認知-知覚パターン、⑦自己知覚-自己概念パターン、⑧役割-関係パターン、⑨性-生殖パターン、⑩コーピング-ストレス耐性パターン、⑪価値-信念パターン、を基に対象・状態別に75の基準看護計画としてまとめられている。病態生理や指標など豊富な資料により、根拠に基づいたアセスメントができる。 |
【看護記録】
看護の現場ですぐに役立つ看護記録の書き方(秀和システム)
①看護記録の基本をマスターする、②看護記録の基本、③看護記録の書き方、④事例から学ぶ看護記録の書き方、⑤看護記録の注意点など、看護記録の基礎を包括的に学ぶことができ、これから看護記録の作成を行う看護学生や新人ナースにとって非常に有益となる入門書。 |
見てわかる看護記録―アセスメント、監査でも困らない!(日総研出版)
「看護記録とは」、「記録の目的と意義」など、看護記録の概念の説明に加え、患者の看護上の問題を解決へと導くための一連の作業システム「POS」、「SOAP」の書き方など、看護記録に際して必要となる要素が豊富に解説されている。 |
【読み物】
看護の力(岩波書店)
看護の原点とは何か、どのように看護を提供することが患者にとって益となるのかを、著者:「川嶋みどり」の視点から書かれている。また、同者が60年に渡って実践してきた看護の知識・技術を、事例を踏まえて詳しく解説されているため、客観的な視点から看護について学ぶことができる。看護師を目指している方はもちろん、看護師として就業している方も、“看護とは何か”を再確認できる一冊。 |
看護覚え書―看護であること看護でないこと(現代社)
本書は半世紀以上前にフローレンス・ナイチンゲールによって書かれた「Notes on Nursing」の完訳本。衛生看護に焦点を当てて、“看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさ、などを適切に整え、食事内容を適切に選択し 適切に与えること。患者の生命力の消耗を最小にするように整えること。”というナイチンゲールの看護の思想について深く述べられており、看護の原点に立ち返るという意味でも非常に有益となる一冊。 |
【雑誌(月刊誌)】
プチナース(照林社)
看護系メディアの発行に特化した出版社「照林社」による“看護学生向け”の看護学習誌。臨床実習(看護技術)やアセスメントにおける観察のポイントのほか、看護師国家試験の問題など、包括的にまとめられている。毎月10日発行、年2回の増刊号が発行され、定期購買(15216円)のほか、単行(1028円)での購入も可能。 |
エキスパートナース(照林社)
看護の動向や話題のテーマ、症状ごとの看護ケア・観察のポイント、急変時の対策、検査値への理解、薬品・器具の取り扱いなど、“現役看護師”が行う看護をさまざまなテーマが取り上げられている。毎月20日発行、年3回の増刊号が発行され、定期購買(18522円)のほか、単行(1132円)での購入も可能。 |
月刊ナーシング(学研メディカル秀潤社)
「臨床実践に強くなれるプロの看護総合情報誌」をコンセプトに日々の看護ケアや看護技術、疾患別フィジカルアセスメントなど、実践的かつ分かりやすく解説されている。毎月20日発行、年2回の増刊号、定期購買は増刊号含め18105円、単行は1234円または1235円で購入可能。 |
看護管理(医学書院)
社会の変化を的確にとらえながら、看護管理者として直面するさまざまな問題について解決策を探る月刊誌。看護師長を中心に主任から部長まで幅広い読者層に役立つ情報が掲載されている。なお、「看護教育」「看護研究」「精神看護」など専門性の高いジャンルの月刊誌が同社から発行されており、一般的な看護の枠を超えて専門的な看護について深く学びたい方に同社の月刊誌をお勧めする。 |
まとめ
看護関連の本・雑誌は実に多く出版されており、どれを選べば良いのか迷うこともしばしばあるでしょう。そんな時は、当ページで紹介した本・雑誌を選択してみてはいかがでしょうか。
中には5000円を超える高額なものもありますが、詳細かつ丁寧にまとめられていますので、早期にスキルアップを図りたいという方は、ぜひ読んでおきましょう。また、紹介した本・雑誌はどれも1度だけの読み物ではなく、何年にも渡って参考にできる書籍ですので、2度3度と目を通すことを強くお勧めします。