検査の1つとして広く実施されているCF。簡易な検査法であることで、看護業務を軽視しがちですが、患者情報を適切に取得し、よく観察しなければ、時として患者に苦痛を与えてしまいます。それゆえ、しっかりとした知識を踏まえた上で、多角的な視点から看護を実践しなければいけません。
ここでは、CFの概要や適応疾患、副作用・合併症、看護手順などについて、包括的かつ詳細にご説明しますので、CFに関して不安があるという看護師の方は最後までしっかりお読みいただき、知識の習得・今後の看護にお役立てください。
1、CFとは
CFとは、”Colono Fiberscopy”の略で、「大腸内視鏡検査」または「下部消化管内視鏡検査」のことを指します。CFは、腹痛や便秘、下痢、血便、下血など、何かしらの大腸疾患の疑いがある場合に施行され、肛門から内視鏡を挿入し、腸内の異常を調べます。
また、大腸疾患の検査だけでなく、止血術、良性ポリープ(大腸線種)・大腸がん(早期)の切除、進行大腸がんなどによる腸閉塞合併症時の経肛門的減圧術などの治療目的でも施行されます。
CFに際しては、医師(内視鏡医)、看護師(内視鏡技師)、看護助手が配置され、各医療従事者がそれぞれの役割を果たし、検査・治療を行います。検査に際しては約15分と短時間の間で終了しますが、洗腸剤の内服の仕方の説明、内視鏡室への案内など、看護師が行う看護業務は多岐に渡ります。
2、CFが適応となる症状・疾患
「1、CFとは」で軽く触れましたが、当項でCFの適応症状・疾患について詳しくご説明します。CFは大腸の内部における内視鏡の検査法であり、検査を通してさまざまな疾患を特定することができます。また、内視鏡により大腸の内部を肉眼的に観察することができるため、大腸疾患の治療時にも施行されます。
■大腸疾患が疑われる症状がある時
腹痛や便秘、下痢、血便、下血など、何かしらの大腸疾患が疑われる場合にCFが施行されます。普段と比べてお腹の調子が悪いなど軽度症状においても大腸疾患の兆候を見逃さないために行われることが多いのが現状です。
≪特定できる大腸疾患≫
大腸がん(直腸がん・結腸がん)、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、アメーバ赤痢、大腸結核、細菌性腸炎、クローン病など |
■治療を目的として施行される時
止血術、良性ポリープ(大腸線種)・大腸がん(早期)の切除、進行大腸がんなどによる腸閉塞合併症時の経肛門的減圧術など、さまざまな治療においてもCFは施行されます。
ポリープや腫瘍の切除においては、高周波電流を用いた内視鏡的大腸ポリープ切除術が行われます。ただし、形状によって対象とはなりません。
これらの疾患の治療を行う際には、大腸の内部を直視下で観察しながら行う必要があるため、CFは非常に有効なのです。
■大腸疾患の早期発見のため
大腸疾患が疑われる症状出現時や治療目的だけでなく、過去に大腸ポリープがあった方、血縁者に胃腸がんを患ったことがある方、40歳以上の方など、大腸疾患(特にポリープや大腸がん)の早期発見のために行われることが多いのが実情です。
このように、さまざまな状況においてCFが適応となりますが、以下のような場合は禁忌となり、CFではなく他の検査法を用いて大腸疾患を特定します。
≪絶対的禁忌≫
ショック、急性心筋梗塞、腹膜炎、急性穿孔、劇症大腸炎など ≪相対的禁忌≫ 不整脈、心筋虚血、同意が得られない患者など |
3、CFにおける副作用・合併症
CFは基本的に簡易かつ安全な検査であるものの、約0.04%で鎮静剤などの使用薬の副作用(主にアレルギー)や検査時における穿孔・出血などの合併症が起こっています。よって、これらの偶発症の可能性を念頭に置いておく必要があります。
■穿孔
穿孔とは腸に穴があくことで、特に腸が脆い高齢者に起こりうる合併症です。治療においてだけでなく、疾患特定のために行う検査でも大腸穿孔を起こすことがあり、穿孔は敗血症などに移行していく危険があるため、穿孔がみられる場合には緊急手術が行われます。
■出血
ポリープや腫瘍の切除に伴い出血することがあります。切除においては高周波電流を用いた内視鏡的大腸ポリープ切除術が実施され、電気を通して焼いた部分が一時的に潰瘍になり、傷痕が残ることから、切除から1日~3日後に出血がみられます。なお、便などにより出血がみられると内視鏡を再度挿入し、直視下で止血処置を行います。また、ポリープや腫瘍の切除に伴う出血だけでなく、組織を採取する時(生検時)においても出血することが稀にあります。
■薬剤アレルギー
前処置における下剤・鎮静剤などに対する薬剤アレルギーもCF時に起こりうる偶発症の1つです。該当薬を服薬歴がない方はもちろん、既往歴がありアレルギー反応を起こしたことがある方で問診時に適切に情報を取得できていない場合などに、薬剤アレルギーを起こす可能性があります。
このように、CFにおける合併症(偶発症)はさまざまあります。特に薬剤においてはアレルギー反応だけでなく、抗凝固剤や抗血小板薬など薬を常用している場合には出血時に重症へと発展する危険性があるため、問診時にはしっかりと患者情報を取得しておく必要があります。問診は医師が行いますが、看護師も患者に再確認するなど、合併症の予防に最大限努めなければいけません。
4、CFに際する看護手順
CFは治療時にも実施されますが、ここでは検査を主とした場合の看護手順をご説明します。上述のようにCFに際して合併症や副作用のリスクはゼロではありません。また、情報の取得不備を避けるため、患者の苦痛を軽減するために、さまざまな点に留意しながら医師の介助、患者の看護を行う必要があります。
≪前処置≫
①問診とCFに関する説明を行う
基本的には医師が問診を行い、CFの方法や必要性、合併症の可能性などを説明し、同意ならびに承諾書を得ます。問診・説明は医師が行いますが、症状、既往歴 飲酒・喫煙歴、既往歴、服薬歴など、看護師も再確認しておきましょう。
②食事制限、下剤の服用
腸内の安静にするために検査前日に食事の制限を行います。これには飲酒も含まれます。特に入院時には看護師が食事制限を監視する必要があります。また、腸内を綺麗にするために、検査当日に約2リットルの下剤を服用します。下剤の服用を確認し、便が水様透明になったことをしっかり確認してください。
③CFに関する再説明を行う
検査に入る前に、看護師が患者に対してCFの方法や必要性、合併症の可能性など再度説明を行うと共に、症状、既往歴 飲酒・喫煙歴、既往歴、服薬歴、さらには食事制限・下剤の服用の確認を行います。特に薬剤に関する情報をしっかり取得しておいてください。
【看護のポイント】
・患者情報(既往歴や服薬歴など)が適切に取得できているか ・前処置において食事制限の説明が正しく行われているか ・下剤により便が完全に水様透明化しているか |
≪検査・術中≫
①検査室へ誘導する
患者のバイタルサインをチェックした後、検査室へ誘導し、検査着に着替えてもらいます。その後、検査を円滑に行うため、苦痛を軽減するために、腸の働きを抑制する薬や鎮静・鎮痛薬を投与します。なお、検査台上で左側臥位をとってもらいます。この時、薬物によるアレルギー反応の有無や体位における苦痛などを確認し、異常時には迅速かつ適切に対処してください。
②内視鏡を挿入する
医師が肛門より内視鏡を挿入します。看護師は医師の補佐として患者に対して声掛けを行い、羞恥心を軽減させる・体の力を抜いてもらう、体位を固定・調整する、患者の状態を確認する(肉眼的ならびにモニターにより)、空気の注入に伴う腹部膨張感の有無の確認などを行います。
③(治療によるCFの場合)
検査の段階でポリープや腫瘍が見つかっても、治療の同意が必要となるため、その時点では治療は行いませんが、同意書を得ている場合は(治療目的のCF)、切除を行います。この時、医師の補佐を勤めるとともに患者の観察を行い、異常時には迅速かつ適切に対処します。
④内視鏡を抜去する
観察が終了したら内視鏡を抜去します。抜去の際も必要に応じて体位変換を行うよう声をかけ介助します。また、検査後は薬物による副作用や検査に伴う合併症などが懸念されるため、安静保持の旨を説明します。
【看護のポイント】
・患者のバイタルサインを正しく観察できているか ・検査台上にて適切な体位をとれているか ・前投与薬によるアレルギー反応が出ていないか ・苦痛、腹部膨張感が伴っていないか ・検査終了後の安静保持の説明が行われているか |
≪検査・術後≫
①安静を保持してもらう
検査のみであれば患者をリカバリー室へ移し安静にしてもらいます。治療後であれば病室へ移し安静にしてもらいます。この時、患者のバイタルサイン・腹部膨張感・腹痛などを観察します。
②検査結果の報告
1時間~2時間ほど暗線にしてもらった後、医師より撮影した画像を見ながら症状の説明を行います。組織を採取した場合には後日結果の報告を行います。この際には看護師が行う業務は特にありません。
③退院の準備
検査のみの場合は当日中に退院してもらいます。その際、CFによる合併症や副作用が懸念されるため、出血や腹痛、吐き気などの症状が現れた際には再度通院してもらうよう伝えます。また、しばらくの間、刺激の強い飲食物の摂取を控えるよう飲食制限の説明を行ってください。なお、ポリープや腫瘍の切除後は入院してもらい、食事制限だけでなくバイタルサインや各症状の観察を行います。
【看護のポイント】
・安静状態が保たれているか ・腹部膨張感や腹痛など異常がみられるか ・異常時の通院、飲食制限などの説明が正しく行われているか |
まとめ
CFは簡易的な検査です。また、看護業務の一連は単調であるため、各所における看護を軽視しがちです。たとえば、患者情報を適切に取得できていないと薬物アレルギーを起こす可能性があります。また、時として患者が苦痛を我慢することで異常の発見が遅れることがあります。
このような状況を避けるために、一連の看護業務を軽視せず、患者が安心・安全・安楽に検査・治療を行えるよう援助しなければいけません。CFにおける看護手順やポイントをしっかり踏まえ、患者にとって最適となる看護が提供できるよう、さまざまな点に留意しておいてください。