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【蜂窩織炎の看護まとめ】看護計画、症状、原因、抗生剤、診断

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蜂窩織炎

蜂窩織炎は誰にでも起こりうる一般的な感染症であり、多くの場合、抗生物質を用いた安静治療によって完治するため、看護においては軽視しがちです。

しかしながら、合併症の併発率が高く、バイタルサインが激しく変動する場合もあるため、看護師は蜂窩織炎を発症している患者に対して、適切な看護ケアを行っていかなければいけません。

蜂窩織炎は非常に奥が深い病気であるため、適切な看護ができるよう、当サイトに記載の各事項をしっかりと読み、蜂窩織炎に関する知識を深めていってください。特に臨床経験がない、または少ない方(看護学生など)は、最後までしっかりとお読みください。

 

 

1、蜂窩織炎とは

蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、傷口などから細菌が入り込み、皮膚の深いところから皮下脂肪組織にかけて炎症を起こす化膿性の細胞感染症であり、蜂巣炎(ほうそうえん)またはフレグモーネと呼ばれることもあります。

細胞の周りにある細胞間質を広い範囲に融解しながら細胞そのものを壊死させるため、重度化すると生命に危険をもたらすことがあります。

多くの場合、四肢に発症し、うち9割は膝下に発症しますが、顔や背中、手足の指の先端、口内にも発症することもあり、部位別に異なる名称がつけられています。

 

手足の先端:ひょう疽(ひょうそ)

口内:口底蜂窩織炎(こうていほうかしきえん)

眼の周り:眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)

表皮全般:伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)

 

なお、蜂窩織炎は発症部位によって様々な固有名称が与えられているため、以下に紹介しておきます。

 

該当部位 名称
手指・足指 ひょう疽、化膿性爪囲炎、手指ひょう疽、爪囲炎、爪下膿瘍、爪床炎、趾ひょう疽
四肢のその他の部位 下肢蜂巣炎、下腿蜂巣炎、肩蜂巣炎、股関節部蜂巣炎、手蜂巣炎、上腕蜂巣炎、前腕蜂巣炎、足蜂巣炎、腋窩蜂巣炎、膝部蜂巣炎、足関節部蜂巣炎、足背蜂巣炎、大腿部蜂巣炎、肘部蜂巣炎、手関節部蜂巣炎
顔面 顔面蜂巣炎、下顎部蜂巣炎、頬部蜂巣炎
体幹 会陰部蜂巣炎、胸壁蜂巣炎、体幹蜂巣炎、殿部蜂巣炎、背部蜂巣炎、腹壁蜂巣炎、臍部蜂巣炎、鼡径部蜂巣炎

 

 

1-1、他人に感染するのか

蜂窩織炎は皮膚の深いところに発症し、細菌による炎症性の病気であるため、他人に感染することはありません。しかしながら、蜂窩織炎は水虫の延長線上で発症することがあるため、水虫が原因であれば、水虫自体が感染することはあります。

また、蜂窩織炎は細菌が原因となっているため、感染の可能性は限りなく0ですが、衛生面においては、気を使う必要があります。

なお、蜂窩織炎の1つである「丹毒」は、通常の蜂窩織炎よりも皮下の浅いところで炎症を起こしますが、これも同様に他人に伝染することはありません。

 

 

1-2、合併症

蜂窩織炎にはさまざまな合併症が存在します。これらの多くは蜂窩織炎の症状が進行し、重症化することで併発し、時には死に至ることもあるため、重症化させないために早期治療が不可欠です。以下に蜂窩織炎の代表的な合併症を紹介します。

 

敗血症、菌血症、敗血症性ショック

髄膜炎、筋膜炎

リンパ管炎、リンパ節炎

皮膚の膿瘍

海綿静脈洞血栓症

(眼窩蜂窩織炎のみ)

頭蓋内続発症

(眼窩蜂窩織炎のみ)

 

これらの合併症は、蜂窩織炎の重症化に伴い併発しますが、軽度・中度においても併発のリスクはあるため、バイタルサインや治療経過をしっかりと観察し、早期発見・早期治療していく必要があります。

 

 

1-3、再発の可能性

蜂窩織炎は細菌が皮下深くに住み着いて繁殖を繰り返し、炎症を起こしているため、完治しなければ際限なく発症します。

また、完治した後でも、傷などからは容易に細菌が入り込むため、日常における衛生管理に問題がある場合にも繰り返し再発します。

特に免疫力が低下している時には容易に発症するため、怪我や虫刺されなど傷を防ぐこと、常に清潔状態を保つことが大切です。

 

 

2、蜂窩織炎の症状

蜂窩織炎を発症すると様々な症状が出現しますが、これは人によって、また症状の進行具合によって異なります。一般的には以下に挙げるような症状が出現します。

 

部位症状 皮膚の赤み、腫れ、疼痛、圧痛、熱感、浮腫
全身症状 発熱、寒気、疲労感、吐き気、嘔吐、頭痛、心拍数の上昇、低血圧、錯乱

 

これらの症状、またはその他の症状が強く発現し、なおかつ細菌による感染が拡大すると、「敗血症」「髄膜炎」「筋膜炎」「リンパ管炎」「リンパ節炎」などの合併症の併発を疑います。

 

 

3、蜂窩織炎の診断

蜂窩織炎の診断は基本的に所見によって行われます。

所見では、患部の温度(熱い)、色調(赤色)、状態(オレンジの皮様)の他、リンパ節腫脹などから判断します。皮膚や創傷から培養を行っても原因菌を特定できることは稀であるため、培養は通常、適応になりません。

それゆえ、鑑別が難しい場合には、血液検査をもって、白血球数やCRP(炎症検査項目)で鑑別します。白血球が増え、CRPが上昇していれば蜂窩織炎と診断し、そうでない場合には、他の感染症を疑います。

 

なお、蜂窩織炎と似た症状を持つ壊死性筋膜炎は、致死率が高いことから、確実に鑑別しなければなりません。しかしながら、初期段階においては特に、蜂窩織炎と壊死性筋膜炎が難しいのが現状であるため、細部までしっかりと対照鑑別し、誤診を防がなければいけません。以下に一般的な鑑別基準を紹介しておきます。

 

  蜂窩織炎 壊死性筋膜
全身症状 寒気、疲労感、吐き気、嘔吐、頭痛、心拍数の上昇、血圧低下、錯乱 寒気、疲労感、吐き気、嘔吐、頭痛、心拍数の上昇、血圧低下、錯乱、激しい筋肉痛・関節痛
患部症状 皮膚の赤み、腫れ、疼痛、圧痛、熱感、浮腫 皮膚の赤み、腫れ、疼痛、圧痛、熱感、浮腫、紫斑、水庖、血庖、壊死
発熱 38~39℃ 39℃~
患部の痛度 中度の痛み 激しい痛み
患部の色調 オレンジ、赤 茶、黒

 

壊死性筋膜炎は蜂窩織炎とほぼ同様の症状を示し、痛みなどは比較が非常に困難であることから、最終的には患部の色調をもって鑑別します。患部が茶色または黒色(壊死状態)に変化すれば、壊死性筋膜炎を疑い、同病の治療を優先的に行っていきます。

 

 

4、蜂窩織炎の原因

蜂窩織炎は、傷口から黄色ブドウ球菌や連鎖球菌といった細菌が入り込むことで起こる「自然原因」と、乳がんや子宮頸がんなどの術後に発現しやすいリンパ浮腫による「病的原因」の2つが主な原因となっています。

 

自然原因

やけど、外傷(刺し傷、ひっかき傷など)、人咬傷、犬・猫咬傷、虫刺され、皮膚炎など、傷口から細菌が侵入し発症します。傷からの細菌侵入のみならず、汚染水により、毛穴や汗腺経路で細菌が侵入することがあり、この場合には免疫力の低下している高齢者に発現傾向があります。

 

病的原因

乳がん、子宮頸がん、子宮体がんなど術後におけるリンパ浮腫。または、日頃から”むくみ”がみられる人は、リンパの流れが悪く、細菌・ウイルスに対する防衛機能低下により、蜂窩織炎を引き起こす可能性があります。

また、脂肪吸引、薬物の皮下注射によっても発症することがあり、さらに子どもの場合はインフルエンザ菌、糖尿病患者の場合には緑膿菌などによっても引き起こされる場合があります。

 

 

5、蜂窩織炎の治療

蜂窩織炎の治療は抗生剤を用いて行い、通常は1~2週間の継続投与を行います。蜂窩織炎は原因菌を完全に死滅させなければ再発するため、場合によっては1か月以上の継続投与を敢行します。

多くの場合、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が原因となっていますが、嫌気性菌やインフルエンザ菌の場合や、人咬傷、犬・猫咬傷など特殊症例においては、通常と異なる抗生物質を用いて治療を行います。

ただし、特に初期段階においては原因菌の特定が非常に難しいため、蜂窩織炎の主な原因となる黄色ブドウ球菌、連鎖球菌を死滅させる抗生物質の投与から始め、症状の改善がみられない、または悪化傾向にある場合には、他の原因菌を疑い、抗生物質の変更を行っていきます。

 

抗生物質による治療

原因菌 抗生物質
黄色ブドウ球菌・連鎖球菌 静脈:セファメゾン、ロセフィン経口:ケフレックス、サマセフ、アニフラジン
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 静脈:バンコマイシン経口:サイボックス
嫌気性菌 ・ユナシンS・メロペンまたはチュナム・ダラシン+シプロキサンまたはクラビット・フラジール+シプロキサンまたはクラビット

 

特殊症例 抗生物質
頬部蜂窩織炎 ロセフィン、またはメロペン
人咬傷 オーグメンチ
犬・猫咬傷 オーグメンチ
海水内での傷 クラフォラン、またはシプロキサン
真水内での傷 シプロキサン
肉屋・魚屋での傷 サワシリン、またはペニシリンG

 

 

安静治療

原因菌、症例ごとの抗生物質投与と並行して、以下のような安静治療を行います。

 

1 、 患肢挙上と安静

2、 生食ガーゼで膿を吸収

3、ストッキング、皮膚ケアなどによる浮腫の抑制

4、飲酒、マッサージ、運動、入浴の禁止

 

 

6、蜂窩織炎の予防

蜂窩織炎は主に傷口から細菌が侵入することにより発症するため、傷をつけない、または清潔状態に保つことが何より大切です。また、免疫力が低下していればいるほど感染が起こりやすく重症化しやすいため、免疫力を高める努力も必要です。

 

外傷防止

蜂窩織炎の原因となる傷の多くは虫刺されやケガによるものです。これらは常日頃から起こりうるものであるため、防ぎようがないのも事実ですが、ブドウ球菌や連鎖球菌といった細菌を皮下に侵入させないために、外傷の予防はもちろん、清潔状態を保つことが必要不可欠です。

また、水虫による蜂窩織炎の発症率は年々増加しており、これも大きな原因となっているため、特に梅雨や夏場における清潔維持、水虫の早期治療が大切です。

 

免疫力の向上

特に乳児・幼児、高齢者など、免疫力が低い、または低下している人は蜂窩織炎の発症率が高く、場合によっては毛穴や汗腺からの細菌の侵入を許してしまいます。それゆえ、バランスのとれた食事、十分な睡眠、規則正しい生活を心がけると共に、風邪など他の病気を素早く治すことが大切です。

病気を発症していると、細菌やウイルスと闘い、免疫力が低下するため、蜂窩織炎といった感染症にかかりやすくなります。これは乳児・幼児、高齢者はもちろん、免疫力のある成人も対象であるため、免疫力を向上させるための生活環境改善に加え、発症している病気を早急に治療していきましょう。

 

 

7、蜂窩織炎の看護計画

蜂窩織炎は感染症であるため、薬物投与による治療を行っていきますが、看護の際にはバイタルサインの確認や、局部における観察をもって、合併症・その他感染症の発現を早期に発見しなければいけません。

重度化もしくは合併症により死に至るケースもあるため、薬物投与による安静治療だからといって適切な看護を怠ってはいけません。以下に蜂窩織炎の看護における重要なポイントを紹介します。

 

抗生物質による副作用の出現

治療を始める前に抗生物質のアレルギーの可能性を考慮し、最善となる抗生物質を用い治療を行いますが、早期に原因菌を特定するのは難しいのが実情です。それゆえ、効果が合らわれない場合には異なる抗生物質を使用することになり、この時に抗生物質の交換、継続投与によるアレルギー、消化器系(特に下痢)などの副作用症状が現れることがあるため、副作用を早期発見・早期対処しなければいけません。

 

疼痛の管理

炎症部位は熱を帯び、自発痛・圧痛がみられることが多く、中には該当部位を動かすことができないほどの痛みに襲われることがあります。それゆえ、疼痛による負担・ストレスを緩和させるべく、局部の冷却や非ステロイド系鎮痛剤の投与を行います。痛みを我慢している患者さんもいるため、なるべく我慢させず早めに対処していきましょう。

全身・局部の安静

早期改善・治療において局部の安静は不可欠です。局部を疲労させないようにするのはもちろん、局部の挙上も必要です。また、発熱、寒気、疲労感、吐き気、嘔吐、頭痛、心拍数の上昇、低血圧、錯乱など、さまざまな全身症状が発現し、この場合には免疫力が低下傾向にあるため、局部だけでなく全身を安静にすることが必要です。

 

栄養管理

さまざまな全身症状による食欲低下、開口障害・嚥下痛などにより、食事摂取困難となる場合があります。この場合には食事形態の変更や輸液による補正を行なうことで改善を図っていきます。免疫力が低下している状態では、蜂窩織炎の早期治療は難しいため、適切な食事を阻害している原因を早期解決していくことが大切です。同時に良質な睡眠にも配慮してください。

 

精神的サポート

入院の適応時には感染が拡大していることから、激しい疼痛が伴います。また、眼窩蜂窩織炎など顔面の腫脹による審美性の問題により、不安やストレスが大きくのしかかることがあります。それゆえ、治療ケアだけでなく、治療に際する十分な説明はもちろん、励ましなどコミュニケーションを通して不安の軽減を図ることも大切です。

 

合併症の早期発見

蜂窩織炎の合併症には、敗血症、髄膜炎、筋膜炎、リンパ管炎、リンパ節炎、皮膚の膿瘍など多岐に渡り、多くは蜂窩織炎の重症化によって併発します。症状が改善されない、または悪化傾向がみられる場合には、適切な検査を行い、同時進行で治療を行っていきますが、悪化傾向を早期発見することで重症化を防ぐことができるため、観察が何より重要となります。バイタルサインや局部の状況などの経過をしっかり把握しておかなければいけません。

 

他の感染症の有無

免疫力低下時には蜂窩織炎だけでなく、さまざまな感染症を引き起こし、蜂窩織炎と併発することがあります。この場合には気づきにくく悪化させてしまうケースが多々あるため、局部の状態だけでなく、呼吸器系、消化器系など、全身における感染症の有無にも配慮しておきましょう。

また、蜂窩織炎の診断は所見が主であり曖昧のため、蜂窩織炎とは異なる感染症だったということも稀にあります。蜂窩織炎だと思い込まず、経過をしっかりと把握した上で、改善がみられない、または悪化傾向にある場合には早急に医師と相談し、適切な検査のもと該当の感染症を特定し、早期治療を図ってください。

 

 

まとめ

蜂窩織炎は一般的な病気であり、抗生物質を用いた安静療養により、ほぼ100%完治する感染症です。それゆえ、多くの看護師は蜂窩織炎に対して安易な考えを持っているのが実情です。

しかしながら、蜂窩織炎は合併症の発症率が高く、誤診による他の感染症の悪化を招くことも少なからずあるため、患部の状態だけでなく、バイタルサインの変化や、全身症状など細かく観察し、患者の負担軽減と早期改善をサポートしていってください。

また、乳児や幼児、高齢者は十分な免疫力を有していないため再発の可能性が高いと言えます。それゆえ、当人または家族に対する再発防止の指導も看護師の重要な役割であるため、入院看護だけでなく退院のことも考えたケアを行っていきましょう。

 

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