看護師としての就業形態は様々なものがあります。日本国内で病院やクリニックで働く方法、国際看護師として海外へ出て働く方法など、自分が看護師としてどうありたいか、どのような場所で働きたいかによって選択することが可能です。近年では、英語を必要とする分野で活躍する人も増えています。ここでは、看護師が英語を必要とする仕事に就くための心構えや方法を見ていきたいと思います。
1、海外で看護師として働くには
海外で看護師として活躍している人はたくさんいます。そのため、国際看護師としての道もいくつか用意されています。では、看護師が海外で働くとしたらどのような方法があるのでしょうか。
①働きたい国の看護師資格を取得し国際看護師として働く
国際看護師とは、外国の看護免許を取得し、現地に定住して働くことです。免許取得のための資格試験はその国の言語で行われるため、何よりもまずその国の言語が話せることが前提となります。また、国によって資格の取得方法が異なるため、どの程度の言語力が必要とされるかや必要な書類等について情報を得ておく必要があります。また、就労ビザの取得も大きな問題の一つです。
②有給看護インターンシップ
留学エージェントが行なっている看護師の有給インターンシッププログラムです。お給料をもらいながら看護師としての経験を積むことができるプログラムのようです。ワーキングホリーデーのため、年齢制限があり、22〜30歳となっています。まずはエージェントに登録し、無料のカウンセリングを受けて必要な英語力や費用について等知りたいことを聞いてみるのが良いでしょう。
③日本国内の病院で行われている海外研修制度を利用する
海外研修制度が整っている病院に就職して海外へ働きに出る方法です。しかし、現実的にはこの制度が整っている病院は少なく、求人も少ないのが現状です。どうしたらよいか迷ったら、転職サイトに登録し相談してみるのも一つの方法です。また、国内の病院には英語教育プログラムを導入して国際的な視野で医療が行えるような働きをしているところもあります。インターネットや転職サイトを使用して情報を集めましょう。
*現在海外研修を行っている病院
病院名 | 特徴・病院サイト |
兵庫医科大学病院 | グローバル教育として海外への短期研修、長期研修を行っており、病院に在籍したまま海外の病院で研修を受けることができる。 |
千葉中央メディカルセンター | 看護部紹介|教育についてのサイトで海外研修についての紹介がされている |
北里大学病院 | UCLAやメイヨークリニックなどの海外の病院と交流があり、海外研修制度を利用して海外の医療を学べる |
飯塚病院 | 海外研修、英語教育プログラムを取り入れている。 |
日本赤十字社 | 紛争や災害で生活が困難とされる地域への海外派遣を行なっている。ボランティアとしてではなく、研修を受けたのち、プロとして現場で活躍できる要員を派遣している。 |
このほかにも海外研修や英語教育を取り入れている病院があるかもしれません。
また、英語力を生かせる看護師の職場には、空港クリニック・トラベルクリニック等があります。日本国内にも外国人の患者さんが多数いることから、外国人向けの検診センターやクリニックでの求人もあります。
④NPOのボランティア活動や国境なき医師団等の海外協力隊に看護師として登録し働く
以下に紹介するものの中には耳にしたことのある団体名がいくつかあると思います。それぞれのホームページから色々な情報を得ることができますので参考にされるとよいでしょう。
□国境なき医師団
緊急性の高い医療ニーズに応えることを目的として活動しています。ボランティア活動ですが給料が支給されます。現在は正看護師の募集を一時中断しています。(2017年8月現在)
□Japan Heart
海外、国内離島で看護師として働く。国際看護長期研修と短期研修があり選択可能です。募集期間、開始月が決まっており、応募〜面接を行い合否判定されます。海外研修の場合、研修費用がかかりますが、国内研修では医療機関から給与が支給されるようです。
□JICA
ジャイカはJapan International Cooperation Agencyの略称で、開発途上国への国際協力を行なっている国際協力機構です。JICAでは、青年海外協力隊・シニア海外協力隊・短期ボランティアに分けて募集され、派遣期間も長期(2年)、短期(1ヶ月—1年未満)となっています。事前研修や派遣前の語学集中訓練を行なっています。TOEIC330点以上が応募時に必要な語学力とされています。
□世界の医療団
フランスを本部に持つ人道医療支援に取り組む国際NGOです。2ヶ月以上の派遣の場合は現地での生活手当や住居維持費等が支給されます。
□ProjectsAbroad(プロジェクトアブロード)
活動期間や開始日を自由に設定でき、1週間からのボランティアが可能です。参加費が必要となります。
⑤看護留学
看護留学は、医療英語を学んだりその国の医療現場を視察したりできる制度です。現地の大学に編入し必要な単位を取得、その後看護師試験に合格すれば現地の病院で働くことも可能です。留学費用が高額にはなりますが、必要な単位や資格を取得するには近道とも言えます。日本での正看護師の資格取得者で臨床経験がある場合、足りない単位を大学に編入して取得後、現地の看護師試験を受けることもできます。看護資格が取得できる留学プログラムを利用するとサポートサービスがついていたりするため心強いと思います。
やはりここでもかなりの英語力が必要とされます。
・IELTS 7.0以上
・TOEFL 550点以上
・TOEIC 800〜970点
2、就労ビザ及び資格試験
海外で働くためには、その国の就労ビザが必要となります。国ごとの雇用や社会情勢により外国人看護師へのビザの発給を制限している場合があります。行こうとしている国の就労ビザについて関連サイトをチェックしておきましょう。
以下に国際看護師として主要国働く際の資格について簡単にご紹介します。
①アメリカで働く場合に必要な試験
NCLEX-RN
National Council of State Boards of Nursing(州看護審議会)が主催する看護師のための試験です。看護師として必要な知識を持ち合わせているかどうかや、医療現場で的確な判断を下すことができるかどうかを重点において出題されます。試験時間は最長6時間で、最低でも75問、正解と不正解を繰り返すと最高265問まで回答しなければなりません。試験はコンピューターを使って行われます。
②CGFNS
日本で看護師資格を持っている、あるいは病院等で働いていてアメリカの看護学科を卒業せずに就労しようとする場合、CGFNS(外国看護学校卒業生審議会)の試験を受ける必要があります。アメリカの大学を卒業している場合にはこの試験は必要ありません。アメリカには多くの州があるため、州によってはこの試験が必要ないところもあります。自分の行こうとする州の看護協会などのホームページをチェックしておきましょう。
次のサイトからNCLEX-RNやCGFNS等についての情報が見られます。
③オーストラリア・ニュージーランドで働く場合に必要な資格
OET
The Occupational English Testの略で、医療に携わる人のために作成された語学力判定試験です。この試験で基準のスコアに合格し、大学や病院での研修を受けることでオーストラリアの看護協会に登録、働くことができるようになります。日本で4年生の大学を卒業しているとオーストラリアの学校に通う必要がありません。研修プログラムを受けるのみで看護師資格を取得することが可能です。
④イギリス
現地の看護資格を取得し、NMC(Nursing and Midwifery Council)への登録が必要となります。
⑤カナダ
カナダ国内の看護学校を卒業する必要があります。現在カナダも就労ビザが取得しにくい状況になっています。ビザ取得のためのスポンサーを探すのが困難なため、看護留学やSkilled Workerという政府が行なっているプログラムへの参加を検討してみると良いのではないでしょうか。
まとめ
私たち看護師が英語を使う仕事に就くためには、①どの国でどんなことを学びたいか、②高い語学力、③ビザの取得、④国際看護師資格の取得、がポイントとなってきます。また、海外で働く際に大切なことは、その国の文化や価値観・宗教を理解すること、自主的に判断し行動できることです。どのような方法で働くにせよ、決して簡単なものではありませんが、経験がその後の自分にとって大きな自信と強みになるでしょう。
参考文献・参考サイト
公益社団法人日本看護協会 Japanese Nursing Association
国境なき医師団日本
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