麻疹(はしか)や風疹は予防接種がありますので、そこまで感染者数は多くありません。そのため、臨床で麻疹・風疹の患者さんを看る機会は非常に少ないです。しかし、一度流行すると感染者は急増する感染症ですので、看護師は正しい知識を身につけておく必要があります。また、予防接種が重要な感染症ですので、看護師は保護者に予防接種についてきちんと説明できるようにしておきましょう。
麻疹・風疹の予防接種や症状・合併症、発熱時の看護などを説明していきます。
1、麻疹・風疹とは
麻疹・風疹とは、それぞれ麻疹ウイルス・風疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。どちらも、感染力が非常に強いことが特徴です。
麻疹と風疹は同じもの?と思っている人がいるかもしれませんが、麻疹と風疹は違うものです。
1-1、麻疹(はしか)とは
麻疹とは、麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。
感染経路は空気感染・飛沫感染・接触感染で、麻疹の感染力は非常に強いことが特徴です。
麻疹の感染力はどのくらいなのかをわかりやすく説明すると、患者と同じ部屋にいるだけで感染することがあるほどですし、1人の発症者から12~14人に感染させるほどの感染力を持っています。
現在の日本では、ほとんどの人が麻疹ウイルスの抗体を持っていますので、大きな流行はありません。
しかし、2007年~2008年にかけて10~20代を中心に麻疹の流行が見られましたし、2019年にも744人の患者が確認されていますので、現在の日本でもまだ感染するリスクがある感染症です。
1-2、風疹とは
風疹とは風疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。
風疹の感染経路は飛沫感染で、1人の風疹患者から5~7人に感染させるほどの強い感染力を持っています。
2018年~2019年には大流行していて、2018年には約3,000人、2019年には約2,300人の感染者が報告されています。
2、麻疹・風疹の予防接種
麻疹・風疹は予防接種をすることによって、高い確率で感染を防ぐことができます。
麻疹ワクチンは1回の接種で約95%、2回の接種で99%の人が免疫を獲得することができます。
風疹の場合は接種すると95%の人が免疫を獲得できます。
つまり、麻疹・風疹の予防接種は非常に効果が高いワクチンと言えるのです。
現在の日本では麻疹・風疹の予防接種はMRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)になります。
麻疹・風疹ワクチンは定期接種で、2回接種となっています。
・第1期:1歳~2歳未満
・第2期:5~7歳未満(小学校就学前の1年間) |
日本は2007年に国内で「5年間の麻しん排除計画」が策定され、その結果、麻疹の患者数は大きく減少し、WHO西太平洋地域事務局によって、日本は麻しん排除状態であると認定されています。
2-1、風疹の予防接種の重要性
風疹は以前は定期接種ではなく、昭和37年度~平成元年に出生した女性は風疹の予防接種を1回しか受けていません。
また、昭和54年度~平成元年度の男性も風疹の予防接種は1回のみ、昭和53年度以前の男性は1回も受けていないため、その年代の人を中心に風疹が流行することがあります。
風疹の予防接種をすることは、自分自身を感染から守るという意味もありますが、社会全体で予防接種率を高め、集団免疫を作ることで、先天性風疹症候群を予防することができるという効果があります。
妊娠20週ごろまでの妊婦が風疹に感染すると、生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群という障害を持って生まれてくる確率が高くなります。
先天性風疹症候群の症状は、先天性心疾患や難聴、白内障の三大症状のほかに、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅延、精神発達遅延、小眼球など幅広い症状が出ます。
先天性風疹症候群は妊婦が風疹に罹らないように予防接種をするだけでなく、妊婦の家族、そして社会全体が風疹の予防接種率を高めることで予防することができます。
3、麻疹・風疹の症状
3-1、麻疹の症状
引用:はしかってなあに? | 麻疹 はしか | 沖縄県はしかゼロプロジェクト(沖縄県小児保健協会)
麻疹の潜伏期間は約10日です。感染から約10日後に38 ℃前後の発熱や咳、鼻水といった風邪と似た症状が現れます。また、結膜炎の症状が現れたり、倦怠感が出ることもあります。
その後、体温が約1℃下がり、その半日後に39℃以上の高熱と発疹が出現します。発疹は耳の後ろや首、前額部からでて、翌日には顔面や体幹、上腕に出現し、2日後には四肢末端にまで出現します。高熱は発疹が全身に広がるまで続き、発疹出現から3~4日程度で解熱します。
発疹は最初は鮮紅色扁平で、それから隆起して斑丘疹となり、暗赤色となって、退色していきます。合併症がなければ、7~10日後には主症状は回復しますが、体力回復までには1ヶ月程度はかかることも珍しくありません。
3-2、風疹の症状
風疹の潜伏期間は14~21日です。潜伏期間の後に風疹の特徴的所見である発熱、発疹、リンパ節の腫脹が見られます。ただ、発熱は風疹患者の半数程度にしか見られません。また、不顕性感染は15%程度いるとされています。
発疹は淡紅色で小さく、全身に広がるには数日間かかります。また、リンパ節の腫脹は発疹出現の数日前から現れ、3~6週間程度持続します。
風疹は対症療法は行いますが、風疹の発疹には塗り薬は用いず、特別な治療は行いません。
4、麻疹・風疹の合併症
4ー1、麻疹の合併症
麻疹は合併症を起こしやすい感染症です。合併症を起こす確率は全体の30%とも言われています。また、合併症を発症すると、医療設備が整っている先進国でも1,000人に1人の割合で死亡します。麻疹の合併症の代表例を見ていきましょう。
・肺炎:ウイルス性肺炎、細菌性肺炎、巨細胞性肺炎
・中耳炎 ・クループ症候群 ・心筋炎 ・脳炎 ・亜急性硬化症全脳炎(SSPE) |
脳炎は1000人に1人の割合で発症する麻疹の合併症です。しかし、麻疹の合併症で脳炎を発症すると、致死率が高く、非常に危険です。
脳炎を発症した患者の60%は回復しますが、20~40%には中枢神経系の後遺症が残り、致死率は15%とされています。
また、10万人に1人の割合でSSPEを発症することがあります。SSPEは麻疹にり患した後7~10年で発症する中枢神経疾患で、発症から6~9ヶ月で死亡する予後不良疾患です。
4-2、風疹の合併症
風疹の合併症は、脳炎や血小板減少性紫斑病などです。これらの合併症は2,000人~5,000人に1人とそれほど割合は高くありません。
また、風疹の合併症として一番の問題とされるのは、前述した先天性風疹症候群(CRS)です。TORCH症候群の1つです。
CRSの3大症状は難聴・白内障・先天性心疾患です。
5、麻疹・風疹の発熱時の看護
麻疹も風疹も発熱の症状があります。
発熱時のケアは基本的に同じです。
麻疹・風疹の発熱時の看護のポイントを確認しておきましょう。
悪寒戦慄や寒気がある時には部屋を温かくし、毛布や湯たんぽなどを使って保温をして体を温かくしましょう。寒気や悪寒戦慄がなくなったら、熱放散できるように毛布などのかけものを調整し、クーリングなどを行ってください。
医師によって発熱時の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)が処方されている場合は、医師の指示通りに服薬させるようにしましょう。
また、発熱時は水分補給のためのケアも行いましょう。
高熱による脱水になることもあります。水分摂取を促し、ゼリーやアイスクリームなど飲み込みやすいものを用意したり、食欲がある時には消化に良いものを食べさせるようにしてください。
まとめ
麻疹・風疹の予防接種や症状、合併症、発熱時の看護などをまとめました。
麻疹も風疹も予防接種を受けることが非常に重要になります。また、看護師は麻疹や風疹の患者のケアをする時には、感染対策や合併症の予防・早期発見なども心掛けるようにしてください。
参考文献
・風疹の症状は?抗体検査とワクチンで子供を守る|NHKストップ風疹プロジェクト
・MR(麻しん風しん混合)ワクチン|ワクチン.net(ワクチンネット)
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