あなたはスキンケアに力を入れて看護していますか?入院中の患者さんはスキントラブルが起こりやすいです。看護師は正しいスキンケアの知識を持ち、スキントラブルを未然に防ぎ、改善するようにケアをしていく必要があります。
スキンケアの基礎知識や看護目標・看護計画とスキンケアの手順・方法、スキンケアに関する看護師の資格などを説明していきます。
1、スキンケアとは
出典:皮脂欠乏性湿疹 (ひしけつぼうせいしっしん)とは | 済生会
スキンケアとは、皮膚の生理機能を維持・向上させるためのケアです。日本褥瘡学会では、スキンケアを次のように定義しています。
日本褥瘡学会ではスキンケアを以下のように定義しています。
「皮膚の生理機能を良好に維持する、あるいは向上させるために行うケアの総称である。具体的には、皮膚から刺激物、異物、感染源などを取り除く洗浄、皮膚と刺激物、異物、感染源などを遮断したり、皮膚への光熱刺激や物理的刺激を小さくしたりする被覆、角質層の水分を保持する保湿、皮膚の浸軟を防ぐ水分の除去などをいう」
出典:日本褥瘡学会編:スキンケア.褥瘡ガイドブック 第2版 褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)準拠.照林社,東京, 2015
スキンケアの意味は皮膚を正常に保ち、より良くするためのケアと言えるでしょう。
入院中の患者さんに多い皮膚トラブルは次のようなものがあります。
・乾燥
・掻痒 ・感染 ・浸軟 ・浮腫 ・皮下出血 ・剥離 |
看護師はこれらの皮膚トラブルを予防し軽減させるために、皮膚トラブルの原因となる物質を取り除いたり遮断して、皮膚への刺激を小さくするための保湿・保護をしていく必要があります。それが、スキンケアの看護の目的です。
高齢の患者さんは加齢によって皮膚のターンオーバーの周期が長くなります。そのため、バリア機能が低下し、ドライスキン・菲薄化していき皮膚トラブルが起こりやすくなります。高齢の患者さんは皮膚の光沢が見られます。皮膚の光沢の原因は、皮膚が薄くなり、平たん化することです。バリア機能が低下している証拠でもありますので、看護師は患者さんへのスキンケアに力を入れていく必要があります。
2、スキンケアの看護目標・看護計画
患者さんの皮膚トラブルが起こったら、看護問題として「皮膚統合性障害」が挙がります。
もし、スキントラブルが起こるリスクが高いのであれば、「皮膚統合性障害リスク状態」が看護問題になります。
入院中の患者さんは、オムツによる皮膚トラブル、皮膚の感染、浮腫、カテーテルやルート固定部の皮膚トラブル、長期臥床による褥瘡などが発生しやすくなります。
どのようなスキントラブルが発生したのかによって、スキンケアの看護目標・看護計画の詳細は変わります。
特に、短期目標に関しては、そのスキントラブルの状態で、「スキントラブルが消失する」に設定できるか、「○×○cmに縮小する」のようにスキントラブルが軽減することに目標を設定するかを考慮しましょう。
■看護目標:臀部の発赤が消失する
OP(観察項目) | ・検査データ(総タンパク、アルブミン、RBC、WBC、Plt、凝固因子など) ・皮膚の状態(乾燥・湿潤、熱感・発赤の有無、傷の有無) ・触覚、圧痛、痛覚、振動覚、温度覚 ・圧迫の有無 ・ADL ・安静度(体動制限) ・臥床時間 ・栄養状態 ・排泄状況 |
TP(ケア計画) | ・陰部洗浄などの清潔ケアを行う ・下痢の場合はオムツをこまめに交換する ・離床の促進 ・患者の衣類の調整 ・シーツのしわを伸ばす ・栄養の調整 ・体位交換 ・必要時ポータブルトイレなどを利用する ・エアマットを利用する |
EP(教育計画) | ・離床の重要性を説明する ・体位交換の必要性を説明する ・栄養摂取の必要性を説明する |
あくまでもこれは標準的なスキンケアの看護目標・看護計画です。
どのようなスキントラブルがあり、どのようなスキンケアが必要なのかによって、具体的な看護目標・看護計画は変わります。
ストマやウロストミーがある患者さん、悪性リンパ腫などで放射線療法をしている患者さん、オムツトラブルや皮膚疾患、下痢の患者さんなどケースバイケースで看護目標・看護計画を立てていきましょう。
もし、看護目標や看護計画、スキンケアの具体的な方法で困ったら、看護コンサルテーションを利用してみるのも良いと思います。
3、スキンケアの手順・方法
スキンケアの基本は洗浄・保湿・保護の3つです。
ストマやウロストミーの患者さんには、これらの手順・方法を伝えて、セルフケアできるように指導しましょう。
■洗浄
洗浄は皮膚に付着している異物や刺激物、感染源などを取り除くことを目的とします。ただ、ごしごし洗ってしまうと、皮膚の摩擦が起こり、皮膚への刺激になりますし、皮脂を落とし過ぎてしまいますので、ヒトの皮膚のpHに近い弱酸性の洗浄剤を用いて、よく泡立てて洗浄します。
よく泡立てることで、摩擦を減らすだけでなく、汚れが落ちやすくなります。さらに泡切れが良く、皮膚に洗浄剤が残りにくくなります。ナイロンタオルなどは使わずに、手で優しくなでるように洗いましょう。
■保湿
皮膚を洗浄して、しっかり水分をふき取った後は保湿をしましょう。洗浄後は皮膚のバリア機能を保つ皮脂も除去されていますので、保湿剤を塗布することで、皮膚のバリア機能を維持します。
皮膚が乾燥している高齢者やスキントラブルのリスクがある患者さんには、1日2回は保湿剤を塗布することをおすすめします。リスクが高いなら、さらに保湿の回数を増やして下さい。
保湿剤を塗る時には皮膚への摩擦がないように伸びが良いものを選択しましょう。
■保護
スキンケアでは、機械的な刺激・物理的な刺激・科学的な刺激から皮膚を保護する必要があります。
・寝具のしわを伸ばし、衣服やおむつで皮膚の圧迫がないようにする ・テープ等は粘着性の低いものを選択する ・テープを剥がす時には剥離剤などを用いる ・皮膚の損傷部位にはドレッシング材を用いる |
これらの方法で皮膚を保護してスキンケアを行いましょう。
4、スキンケアに関する看護師の資格
スキンケアは診療科問わず、看護師にとって必要なスキルになります。
スキンケアを深めたい人、専門にしたい看護師はスキンケアに関する資格を取得して、キャリアアップしていきましょう。
4-1、臨床スキンケア看護師
日本創傷・オストミー・失禁管理学会が認定している資格です。
皮膚のトラブルを抱えるであろう対象者に対して看護師が行う専門職としての予防的ケア実践を強化するために作られた資格です。
<臨床スキンケア看護師>
・受講資格:看護師免許を持ち、臨床経験が3年以上、日本創傷・オストミー・失禁管理学会の正会員で学術大会に1回以上参加 |
4-2、皮膚・排泄ケア認定看護師
皮膚・排泄ケアの認定看護師は日本看護協会が認定している資格です。感染管理認定看護師や緩和ケア認定看護師など19分野(B課程)のうちの1つになります。
皮膚・排泄ケア認定看護師は、たくさんある認定分野の中でも最も古くからある資格で、スキンケアに関する看護師資格の最高位とも言える資格です。
褥瘡のトータルマネジメントやストーマケア、創傷の治療(壊死組織の除去や陰圧閉鎖療法)の知識・技術を持つスキンケアの専門家です。
<皮膚・排泄ケア認定看護師>
・受講資格:実務経験5年以上(うち認定分野の経験3年以上) |
4-3、皮膚疾患ケア看護師
皮膚疾患ケア看護師は日本皮膚科学会が認定している資格で、平成30年4月から発足した新しいスキンケア関連の資格です。
<皮膚疾患ケア看護師>
・受講資格:看護師免許を持つ常勤、または週27時間以上の勤務がある非常勤。皮膚科スペシャリティーナース講習会に2回以上参加。皮膚疾患ケア指導患者名簿に記載できる20例があり、20例のうち皮膚疾患ケア指導記録の記載ができる |
まとめ
適切なスキンケアは看護師にとって必要なスキル・知識です。スキンケアをすることで、患者さんのQOLは上がります。
看護師はスキンケアを見直し、患者さんのスキントラブルを予防できるようにケアをしていきましょう。
参考文献
1)日本褥瘡学会編:スキンケア.褥瘡ガイドブック 第2版 褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)準拠.照林社,東京, 2015
・臨床スキンケア看護師認定制度 | 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会
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