悩み解決のために欠かせないコンサルテーション。現在では多くの職業で実施され、看護領域でも広く実施されています。
コンサルテーションとは何か、看護師が受けることができる領域、コンサルテーションの効果や依頼の手順などについて、当ページでご説明しますので、コンサルテーションに興味のある方はぜひ最後までしっかりお読みください。
1、コンサルテーションとは
コンサルテーションとは、「内外の資源を活用して問題を解決したり、変化を起こすことができるよう、当事者やグループを手助けしていくプロセス」のことで、「相談」と言い換えてもいいでしょう。
コンサルテーションは専門家(コンサルタント)がその領域の問題を抱えたコンサルティに対して、コンサルティ自身が問題解決できるように援助を行っていきます。
看護の分野では、コンサルティは看護師、患者や家族、ほかの医療者などになり、コンサルテーションの内容は患者の疾患や患者に関することだけでなく、医療者との関係、組織の文化や体制に及ぶこともあり多岐にわたります。
看護の分野でのコンサルテーションを受けるコンサルタント(専門家)は、「この資格がないとコンサルタントになれない」と決まっているわけではありません。ただ、看護ではコンサルタントは専門看護師や認定看護師を意味し、専門看護師や認定看護師がコンサルタントを担うケースが多いです。なぜなら、専門看護師や認定看護師は1つの分野に特化しており、より具体的かつ実践的な看護ケアの方法を情報提供できるからです。
専門看護師の役割に「看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う。(相談)」1)があります。認定看護師の役割には「看護職等に対しコンサルテーションを行う。(相談)」2)があるため、看護の分野でのコンサルタントは専門看護師・認定看護師が適任と言えます。
しかし、専門看護師や認定看護師が従事していない病院・病棟においては、従事する者だけでより効果的な看護ケアの方法を研究しなくてはなりません。
それに伴い、研究評価の妥当性を図るのが困難であり、さらに実践に際しても導入が困難であるため、コンサルテーション(相談)を行うことにより、それまで不明瞭だった問題を解決でき、知識の取得や実践への導入をスムーズに行うことができるのです。
1-1、看護コンサルテーションの4つのモデル
看護コンサルテーションには4つのモデルがあります。
1.クライエント中心のケース・コンサルテーション 2.コンサルティ中心のケース・コンサルテーション 3.コンサルティ中心の管理的コンサルテーション 4.プログラム中心の管理的コンサルテーション |
看護コンサルテーションの場合、コンサルテーションの種類はコンサルティの課題を解決するのか、もしくは職能改善かの2つに大きく大別することができます。
2、コンサルテーションの相談事例
コンサルテーションでは、看護ケアの方法、臨床の現場で体験する出来事(倫理的問題を含む)によるストレスや葛藤、対人関係、自己のキャリアアップなど、さまざまな問題についての支援が行われています。
どのような専門分野に関するコンサルテーションが行われているのか、以下にてその一例をご紹介します。
救急看護 | |
皮膚・排泄ケア | |
集中ケア | |
緩和ケア | |
がん化学療法 | |
がん性疼痛 |
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訪問看護 |
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感染管理 |
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糖尿病看護 |
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※認定看護師、専門領域の一例
このほか、「不妊症看護」「新生児集中ケア」「透析看護」「手術看護」「乳がん看護」「摂食・嚥下障害看護」「小児救急看護」「認知症看護」「脳卒中リハビリテーション看護」「がん放射線療法看護」「慢性呼吸器疾患看護」「慢性心不全看護」など、専門分野の知識を有するコンサルタントがコンサルテーションを行っています。
また、看護師へのコンサルテーションだけでなく、患者や家族にも行われることも多々あります。
3、コンサルテーションの効果・役割
「1、コンサルテーションとは」で述べたように、コンサルティはコンサルテーションを受けることにより、それまで疑問に抱えていた問題を解決することができ、迅速に自身の看護に生かすことができます。
これまで、コンサルテーションに関する効果の検証・研究はあまり行われていなかったものの、ここ10年で多くの検証・研究が行われ、コンサルテーションの効果が実証されています。以下に、実証されたコンサルテーションの効果の一例をご紹介します。
■不明瞭な問題を解決できる
病棟内で統一して実施されているケア方法すべてが正しいとは限らず、本当にそれは患者のためになるのかなど、業務の遂行にあたって円滑化が図れているのかなど、各ケアが適切であるか否かを常に感じながら業務を行っている方は多いことでしょう。
このような状態ではケアに対して不信感が募るばかりか、技術の向上も望めませんが、コンサルテーションを受けることで疑問に感じている問題を迅速に解決することができ、またケアに対する自信や技術の向上を図ることができるのです。
■知識習得に伴う自己洞察力・視野の拡大
知識量が増えれば増えるほど物事を見る目が養われ、また患者への理解が深まり、状況に応じた対処を迅速に行うことができます。また、豊富な知識をもとにケアの応用法を編み出すことができるなど、独自の視点から研究に着手する能力も養われます。
■ストレスの緩和
コミュニケーションに関する不安や状況に応じた対処など、業務の中で多大なストレスを感じることが多い看護師ですが、コンサルテーションを通して同じ境遇に立つ者との語り合いにより共感を得ることができます。また、不安や心配事に関する対処法を教授してもらうことで、今後の業務での精神的負担が軽減され、ストレスの緩和ならびにストレスの溜まらない業務運びを行うことができます。
■周囲への関心・キャリアアップ思考の拡大
コンサルテーションを一度経験すると、疑問に対する迅速な解決、自己洞察力・視野の拡大、ストレスの緩和などコンサルテーションの利点や、相談・教育・指導の有効性に気づき、周囲(他の看護師が行うケア)への関心が高まります。これにより、自身の看護ケアの振り返りや技術向上への姿勢が前向きになり、キャリアアップ思考が拡大されていきます。
また、スタッフへの情報共有をしたり、ケアへの意欲が高まることもコンサルテーションの役割・効果と言えるでしょう。
■自信と安心感の高まり
看護コンサルテーションをすることで、専門家からの適切な指示・アドバイスを受け、問題を解決できたことで、自分が行う看護が保証されます。「これで正しいのかわからない」という不安な中で行う看護は自信喪失につながりますが、コンサルテーション後は看護が保証されますので、自信を持って患者さんに看護が提供できますし、自分の看護は正しいと安心感を得ることができます。
このように、コンサルテーションは何も疑問の解決だけでなく、自身のストレスが緩和できたり、業務に対する姿勢が前向きになったりと、さまざまな効果があり、これらはここ10年の検証・研究で実証されたものです。
特に精神看護領域の効果は凄まじく、専門看護師であれば「精神看護」、認定看護師であれば「緩和ケア」や「認知症看護」と、現在では多くの専門看護師・認定看護師がコンサルテーションを実施しています。
4、看護コンサルテーションのプロセス
看護コンサルテーションのプロセスは次の6つの手順になります。
1.問題の明確化
2.目標と期待する結果の明確化 3.データの収集 4.計画 5.計画の実行と経過・結果の評価 6.フォローアップ |
■1.問題の明確化
まずは、現在起こっている問題は何かを明確にします。コンサルティは問題を抱えていても、それが明確ではなく言語化できていないこともあるので、コンサルタントは何が問題なのかを情報収集し、問題をはっきりと明確にします。
■2.目標と期待する結果の明確化
次にコンサルティの考えを取り入れながら、ゴールを設定します。どうなればこの問題は解決するのかをはっきりと明確にして、コンサルティ・コンサルタントは共有します。
■3.データの収集
次にその問題に関するデータ・情報収集を行います。
■4.計画
データ・情報収集が終わったら、それをもとに問題を解決するための計画を立てます。
■5.計画の実行と経過・結果の評価
計画に沿って問題解決のための計画を実行し、その経過・結果を評価します。
■6.フォローアップ
コンサルティはコンサルテーションによって解決した問題を部署に持ち帰ってそのまま実行しますが、コンサルテーションはそれで終わりというわけではなく、その後もフォローアップで改善・ブラッシュアップしていきます。
5、コンサルテーションの道のり
コンサルテーションは1人でもグループ(病棟)単位でも受けることができます。自身で応募することもできますが、どこで誰が何の領域のコンサルテーションを行っているのか分からないと思いますので、看護師長または院長を通して応募すると良いでしょう。
①自部署の所属長へ報告する
まずは、自部署の所属長(看護師長や院長)にどのような領域のどのような問題について相談したいのか、その旨を報告しましょう。院外のコンサルテーションに関しては、内外ネットワークを通して情報が共有されていますので、まずは報告することから始めましょう。
②依頼書を記入・提出する
報告すると、所属長よりコンサルテーションの依頼書が手渡されます。依頼書には、氏名・電話番号・Email・所属部署・相談内容などの記載項目がありますので、すべて埋めて所属長に提出してください。
③所属長が依頼書を送付する
依頼書の提出後、所属長が記載項目を確認し、依頼したい専門看護師・認定看護師(主に事業所)へ依頼書を送付します。
④依頼者が直接連絡をとる
依頼した専門看護師・認定看護師より返事が返ってきます。それが依頼書を通した返信(再送付)なのか、記載した電話番号・Email・FAX経由なのか分かりませんが、基本的には電話番号・Email・FAXを通して連絡をとります。また、多くは依頼者と専門看護師・認定看護師の間で直接連絡を取り合い、相談内容の確認や相談日の決定など行います。
⑤相談を受ける
人によって、また事業所によってコンサルテーションの実施内容は異なります。一対一の面談の場合や、グループでの面談の場合などさまざまです。グループの場合は特に、あなた以外にも相談したい看護師がいますので、相談内容を事前にしっかりとまとめておきましょう。
基本的にはこのような流れでコンサルテーションを受けることができます。所属病院内に専門看護師や認定看護師がいる場合には時間を割いてもらって直接相談に乗ってもらうのが効率的ですが、いない場合にはぜひコンサルテーション行っている事業所を活用し、疑問を解決へと導いてください。
まとめ
コンサルテーションは、疑問を解決できるだけでなく、自身の看護の振り返りや今後の看護への意欲向上など、受けるメリットは多大にあります。
また、自身が専門看護師や認定看護師の資格を取得して、コンサルタント(コンサルテーションを行う者)として活動する日が来るやもしれません。
それゆえ、専門看護師や認定看護師の資格取得を考えている方は、コンサルティ(コンサルテーションを受ける者)の気持ちを理解するという意味でも、一度受けておくと良いでしょう。
参考文献
・高山望、鷲見尚己、松下通明「支援プロセスから見た看護師に対するコンサルテーションの実際 : 褥瘡予防に向けた業務改善への取組み事例より」看護総合科学研究会誌, 11(2), 3-13
・糸川紅子、赤木郁子、打矢和子、小川雅子、川原明子、新田純子「専門看護師によるコンサルテーションにおける課題の明確化と共有に関する文献検討」日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 第25号 2020
・大野美香、丸谷幸子、舘昌美、伊藤美和、益田美津美、嶌田理佳、明石惠子「コンサルテーション事例から検討した急性・重症患者看護専門看護師の看護の質評価の構成要素」日本クリティカルケア看護学会誌 Vol. 14
・鈴木和子、式守晴子、渡辺裕子「家族看護に関するコンサルテーションのプロセスとその特質」家族看護学研究第 9巻 第 l号 2003年
・川崎優子、内布敦子、荒尾晴惠、成松恵、上泉和子、松本仁美「がん看護領域における外部コンサルテーション技術の構造」UH CNAS,RINCPC Bulletin