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【2023年最新】腹部膨満感の看護|原因と観察や看護計画・ガス抜き法

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腹部膨満感の看護

腸内ガスの貯留(便秘イレウス)、腹水の貯留(肝硬変)、卵巣腫瘍など、様々な原因で出現する腹部膨満感。腹部が張ってくるようになったのは、上記の疾患が原因かもしれません。腹部膨満感を呈していると、腹部が圧迫され苦痛を感じるため、なるべく早く苦痛を緩和する必要があります。腹部膨満感を生じる原因ごとの治療法を知り、適切な看護ケアが行えるようここでしっかり復習しましょう!

 

1、腹部膨満感とは

腹部膨満感とは、その名の通り腹部が部分的、あるいは全体的に張った感じがすることです。腸内にたまったガス、便、炎症や栄養低下によってたまった腹水、腫大した臓器によって腹部が張った感じをもたらされます。

 

2、腹部膨満感の3つの原因と、原因別の治療と対策

腹部膨満感は、腸内ガスの貯留(便秘イレウス)、腹水の貯留(肝硬変)、卵巣腫瘍やその他の腫瘍などによって生じます。原因疾患と対処法を以下に示します。

腹部膨満感のメカニズムは、その原因によって異なります。

 

2-1、腸内ガスの貯留

人間は食事をとると、消化する過程でガスが発生させ、体外へ排ガスとして出しています。ところが、便秘やイレウス、過敏性大腸炎など、消化管の運動機能が低下すると肛門から外へと排泄できず、また腸内に炎症があれば腸管から吸収され呼気として排泄できなくなるため腸内に次々とガスが貯留していきます。この結果、腹部膨満感を起こしてしまうのです。

 

■便秘

便秘には2種類あり、腸管癒着や腫瘍などによる狭窄のために生じる器質性便秘(通過障害)と、特に原因がなく生じる機能性便秘に分けられます。機能性便秘はさらに3つの種類に分けることができます。

直腸性(習慣性)便秘 弛緩性便秘 けいれん性便秘
原因 ・度重なる排便刺激の無視

・下剤・浣腸剤の誤用・乱用

・大腸の緊張低下・運動の鈍化

・オピオイド鎮痛薬、抗精神病薬等の薬剤による蠕動運動抑制

・腹筋力の衰えのため排便時に十分な腹圧が得られない

副交感神経の過緊張等により、腸管の緊張が過度に増加したため、腸管の分節運動が強くなり、便の移送が妨げられる

・ストレス

治療 ・規則的な排便習慣の確立 ・食物繊維の多い食事

・適度な運動

・機械的下剤、刺激性下剤、自律神経作用薬の使用

・主に機械的下剤の使用

出典:看護師・看護学生のためのレビューブック第17版(株式会社メディックメディア|岡庭豊|平成27年3月19日)

 

腸内の水分吸収を促進させ排便を促すために、食前に飲水するよう説明し、毎日の生活の中で都合の良い時間に排便できるように習慣化させることが大切です。

薬剤に頼り過ぎず、食事療法や運動などの日常生活習慣を見直す必要があります。

 

■イレウス

何らかの原因により、腸管内容物の通過が障害された状態のことをいいます。

イレウスの症状と対策は「術後イレウス(腸閉塞)の看護|早期診断のための観察と発症患者への看護ケア」をご覧ください。

 

■過敏性大腸炎

腸管に器質的な病変は見られませんが、便通異常や腹痛が続く大腸の機能性疾患のことをさします。精神的・肉体的ストレスや性格が関与していると言われており、思春期の女性や30歳代の男性に好発する代表的な心身症の一つでもあります。便秘と下痢を繰り返し、腹痛を訴えますが、腹痛は排便により軽快するため、体重減少や血便は見られないのが特徴です。まずは精神的ケアを行い、下痢型・便秘型に応じた薬物療法を行い排便をコントロールします。

 

2-2 腹水貯留(肝硬変)

腹水が貯留することでも、腹部膨満感が生じます。腹水の原因となるものには、次のようなものがあります。

・肝硬変
心不全
・低蛋白血症
低栄養状態
・腹膜炎
・悪性腫瘍

この中で特に代表的なものが肝硬変になります。

肝硬変により腹水が貯留すると、腹部膨満感が出現します。肝硬変とは、あらゆる慢性進行性肝疾患の終末像で、肝全体にびまん性の偽小葉結節を形成した病変をさします。肝硬変になると合成機能が低下し、低アルブミン血症を起こすことで腹水を生じます。肝硬変の治療は代償期か非代償期かによって異なりますが、非代償期に生じる腹水や浮腫に対しては、安静、飲水制限、食塩制限食、利尿薬投与で様子を見ます。

出典:肝硬変(香杏舎銀座クリニック)

 

2-3、卵巣腫瘍

卵巣腫瘍はその組織成分により、表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍の3つに分けられ、近年はライフスタイルの変化の影響で増加傾向が続いている疾患です。卵巣腫瘍は一般に無症状であることが多いですが、腫瘍が大きくなるに伴い腹部膨満感を訴えます。また、卵巣がんなどの悪性腫瘍の場合、腹水の貯留を認めます。腫瘍による腹部圧迫症状や腹水に対しての苦痛を緩和するとともに、開腹手術・腹腔鏡下手術により病巣を切除します。

 

2-4、腹部の腫瘍

卵巣腫瘍以外の腹部の腫瘤でも、腹部膨満感が生じます。
腹部膨満感の原因となる腫瘤には、胃がん大腸がん膵臓がん、肝腫大(癌や肝炎など)、胆嚢腫大、脾腫、腹部大動脈瘤、臍ヘルニア、子宮筋腫などがあります。

 

2-5、その他の原因

腹部膨満感の原因には、妊娠や肥満などもあります。妊娠で胎児が成長すると、子宮が拡張して臓器を押し上げるので、腹部膨満感が生じます。また、肥満では脂肪が内臓を圧迫するので、腹部膨満感が出てくることがあります。

 

3、腹部膨満感の症状

■腸内ガス貯留が原因の場合

便やガスが貯留していくにつれ、日ごとに腹部膨満感が強くなっていきます。機械的イレウスでは、閉塞部位より口側の腸管内にガスが貯留していくので閉塞部の上側が張っていきます。機械的イレウスの中でも、単純性イレウスは緩徐に発症するのに比べ、絞扼性イレウスの場合は急激に発症し吐き気や腹痛を伴い重篤化するため注意が必要です。

 

■腹水貯留(肝硬変)が原因の場合

肝硬変が原因の場合、腹水貯留だけでなく全身状態が悪化します。合成作用低下によって浮腫出現、プロトロンビン時間延長、低コレステロール血症、出血傾向を呈し、また異化作用低下により、黄疸、皮膚掻痒感、クモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房などの症状を合併します。

出典:肝硬変の症状って?(医療法人社団奥野消化器内科クリニック)

 

■卵巣腫瘍が原因の場合

初期では無症状ですが、腫瘍が大きくなると周辺臓器を圧迫するため、下腹部の膨満感、腰痛、下腹部痛、排尿・排便障害を訴えます。

 

4、腹部膨満感の観察項目・アセスメント

腹部膨満感の患者の看護をする時には、適切な観察項目やアセスメント方法を知っておきましょう。
腹部膨満感の確認方法・アセスメントは問診→視診→聴診→打診→触診の順で行います。

 

■問診
問診では自覚症状や随伴症状、症状はいつからなのか、その程度、既往歴などを聞いておきましょう。
また、排便・排ガスの状況も確認してください。

 

■視診
腹部全体を見て、明らかな異常がないかどうかを観察します。

 

■聴診
聴診では腸蠕動音の有無を確認します。腸蠕動音が聞こえないなら、イレウスの可能性が考えられますし、聞こえるけれど減弱しているなら便秘の可能性が考えられます。

 

■打診
腹部を打診して鼓音ならば、腸内にガスが溜まっています。濁音なら腹水の可能性が考えられます。

 

■触診
便秘の場合は左下腹部が張っていたり、左下腹部で貯留した便に触れることがあります。また、腹水かどうかは側腹部に手のひらを当て、もう片方の側腹部を軽くたたくようにして、波動が生じるかどうかを観察すれば判別できます。

この触診は腹部膨満感か腹水かの判別・確認方法として有効ですので、必ず覚えておきましょう。

これらの観察項目・フィジカルアセスメントを実践して、患者さんの看護問題を挙げていき、それに応じた看護目標と看護計画を立案するようにしましょう。

 

5、腹部膨満感の看護計画

■看護目標:腹部膨満感が軽快したと感じられる

観察項目

・腹部膨満感の箇所

嘔気

・いつから腹部膨満感が生じたか

・排便パターン

・食生活

・ストレスの有無

・腹部膨満感以外の合併症状(腰痛、腹痛排尿障害浮腫黄疸、クモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房)

・検査データ(ALB、コレステロール値、プロトロンビン時間、ビリルビン値、γ-GTP、ALP、AST、TP)

ケア項目

■腸内ガス貯留の場合

・禁忌でなければガス抜き実施

・イレウスチューブの管理

電解質バランスに応じた輸液投与

痙攣性イレウスでは腹部マッサージを行わない

■腹水貯留(肝硬変の場合)

・代償期では安静、低タンパク食に制限し、指示に応じて肝庇護薬、胃薬、グリチルリチン製剤を投与する

・非代償期では安静、飲水制限、食塩制限食、利尿薬投与を行う

■卵巣腫瘍の場合

・病状の進行度や予後の不安に対する精神的援助を行う

・腫瘍による腹部圧迫症状や腹水に対しての苦痛を緩和する

・閉経前に両側卵巣を摘出した場合は卵巣欠落症状が出現するため援助を行う

指導項目

・排便習慣の確立と、食事指導を行う

・ストレスをためこまないよう生活の見直しを一緒に行う

・不快な症状が出現した場合はナースコールするよう説明する

 

6、安全にガス抜きをするためのポイント

腸内にガス貯留している場合、ガス抜きすると楽になることがあります。

■必要物品

・潤滑剤

・ネラトンカテーテル

・水を入れたコップ

・おしりふき

・おむつ

■実施手順

1、手洗い後、ネラトンカテーテルの先に潤滑剤を塗布する

2、患者を左側臥位にしたのち、肛門からカテーテルを挿入する

3、カテーテルの反対側をコップの水の中につける(排ガスがあれば水の中にぽこぽことした音が聴取できる)

4、カテーテルを抜き、衣服を整える

5、実施後、腹部が楽になったか観察する

実施手順とポイントについては、以下の動画を参照してください。

出典:医療的ケア研修用テキストDVD9ガス抜き(NPO法人e-MADO(イーマド) 病気のこどもの総合ケアネット)

 

まとめ

腹部膨満感といっても、原因は様々です。また腹部膨満感がある患者は、その他の症状も合併していることがあるため腹部膨満感以外の不快症状が出現していないか確認する必要があります。腹部膨満感は緩徐に発症するものから急激に発症するものもあるため、状態悪化に気を付け、兆候を見落とさないようにしましょう。

 

参考文献

腹部膨満感のメカニズム(大幸薬品)

看護師・看護学生のためのレビューブック第17版(株式会社メディックメディア|岡庭豊|平成27年3月19日)

腹部膨満感 | 北村医院

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