アスピリンは消炎鎮痛作用のほかに抗血栓作用を持っている薬剤で、循環器内科や神経内科ではよく使われる薬剤の1つです。
アスピリンはよく使用される薬剤ですが、使用時は副作用に注意し、適切な看護ができるようにしなければいけません。
アスピリンの作用・副作用、看護のポイントを説明していきますので、実際に看護をする時の参考にしてください。
1、アスピリンとは
アスピリンとはアセチルサリチル酸のことで、消炎鎮痛作用や抗血栓作用を持つ薬剤です。
日本ではドイツの製薬会社「バイエル」が名付けたアスピリンという名称が一般的で、薬局方でもアスピリンが正式名称になっています。
アスピリンは消炎鎮痛作用と抗血栓作用という2つの効果を持ちますが、用量・血中濃度によってどちらの効果を期待できるかは異なります。
1-1、アスピリンの消炎鎮痛作用
アスピリンは非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)に分類される薬剤で、炎症を抑え、腫れ・痛み・発赤・発熱を軽減させる作用があります。
体内でプロスタグランジンという物質が合成されると、炎症や発熱が起こりますが、アスピリンはプロスタグランジンの合成酵素であるシクロオキシゲナーゼを阻害する作用があります。
そのため、アスピリンを服用すると、炎症や発熱を抑えることができるのです。
関節リウマチ、リウマチ熱、変形性関節症、術後疼痛、歯痛、痛風による疼痛、頭痛、月経痛などの疾患・症状に用いられることが多いです。
消炎鎮痛作用でアスピリンを使用する場合、血中濃度は25~50μg/mlが必要ですので、服用量0.5~1.5g/回、1.0~4.5g/日を服用します。
1-2、アスピリンの抗血栓作用
アスピリンには抗血栓作用もあります。
アスピリンは血小板の凝集や血管壁の収縮を促すトロンボキサンの作用を抑制する作用があります。
そのため、血小板の凝集が抑制され、血栓ができにくくなるのです。
抗血栓作用では、次の疾患の治療に用いられます。
・狭心症
・心筋梗塞
・虚血性脳血管障害(脳梗塞、一過性脳虚血発作)
・冠動脈バイパス術後の血栓・塞栓予防
・川崎病
抗血栓作用でアスピリンを使用する場合、血中濃度は1~2μg/mlが必要ですので、成人は1日1回100mg(症状により300mgまで)を服用します。
以下のページでそれぞれの疾患の看護を説明していますので、参考にしてください。
・狭心症の看護計画|看護問題・観察項目とそのケア、薬と注意点
・心筋梗塞の看護計画|看護過程、診断、看護問題、看護目標、観察項目
・一過性脳虚血発作(TIA)の看護|原因・症状からみる3つの看護ポイント
・冠動脈バイパス術(CABG)の看護|適応と合併症、術前・術後のケア
・川崎病の看護計画|原因と症状、看護過程、アセスメント、看護問題
2、アスピリンの副作用
2-1、消化管潰瘍
アスピリンを服用していると消化管潰瘍ができやすくなります。
アスピリンはプロスタグランジンの合成を抑制しますが、プロスタグランジンの合成が抑制されると、胃の血流量が減少します。
引用:鎮痛剤やピロリ菌で発症?胃潰瘍が起こる原因と症状、痛み方を解説 | NHK健康チャンネル
胃の血流量が減少すると、胃液の分泌量が減りますので、胃潰瘍ができやすくなります。
2-2、アスピリン喘息
アスピリンは喘息発作を誘発することがあります。
アスピリン喘息はアスピリンでの過敏反応で起こる喘息発作であり、アスピリンを服用してから通常1時間以内に、まずは鼻閉・鼻汁の症状が出て、さらに咳や息苦しさの症状が現れます。
場合によっては、嘔気や腹痛、下痢などの症状も併発します。
アスピリン喘息は喘息の既往がない人でも発症します。
また、発症は男性よりも女性の方がやや多く、20代後半から50代前半に発症することが多いです。
2-3、出血傾向
アスピリンには抗血栓作用、つまり血小板の凝集を抑制する作用があります。
そのことで、血栓ができにくくなり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、TIAなどを予防することができます。
ただ、血小板が凝集しにくくなるということは、出血しやすくなる、止血しにくくなるということです。そのため、脳出血や消化管出血などのリスクが上がります。
2-4、その他のアスピリンの副作用
アスピリンには消化管潰瘍、アスピリン喘息、出血傾向のほかにも副作用があります。
・アナフィラキシーショック(アスピリン不耐症)
・肝機能障害、黄疸
・皮膚障害(中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、はく脱性皮膚炎など)
・腎障害
このほか、発疹や蕁麻疹、嘔気、食欲不振などの副作用が出ることもあります。
3、アスピリンの看護の4つのポイント
アスピリンを服用する患者、または服用中の患者を看護する時には、次の4つのポイントに注意して看護を行っていきましょう。
3-1、禁忌患者か否かの確認
まずは、アスピリンの禁忌か否かを確認してください。
■アスピリン喘息・アスピリン(サリチル酸系製剤)過敏症の既往歴がないか
以前にアスピリンを服用して、アスピリン喘息や何らかの過敏症、副作用が出現した患者がアスピリンを服用すると、またアスピリン喘息や過敏症の症状を引き起こすリスクがあります。
喘息既往がある人は、アスピリン喘息を発症するリスクが高いので、喘息の既往の有無は必ず確認しておきましょう。
■消化性潰瘍がないか
胃潰瘍など消化性潰瘍ができている患者がアスピリンを服用すると、消化性潰瘍が悪化することがあります。
■出血傾向がないか
既に出血傾向がある患者がアスピリンを服用すると、出血傾向が助長されることになります。
血小板数(Plt)、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンポプラスチン時間(APTT)、フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)などを確認して、出血傾向の有無をチェックしておきましょう。
■その他
妊娠中の女性(出産予定日12週以内は禁忌)の女性や小児への投与は慎重に行わなければいけません。
水痘やインフルエンザなどウイルス性疾患の小児がアスピリンを服用すると、稀にライ症候群を発症することがあります。
3-2、出血傾向の有無の観察
アスピリンの看護のポイントの2つ目は、出血傾向の有無の確認です。
アスピリンは血栓予防効果がありますが、出血傾向を増長させることがあります。
・脳出血
・肺出血
・消化管出血
・鼻出血
・眼底出血
これらの症状が出ていないかを確認しましょう。
また、出血傾向の症状である皮下出血、歯ぐきからの出血、ライン刺入部からの出血などを観察してください。
3-3、呼吸状態の観察
アスピリン服用患者は、アスピリン喘息を起こすことがあります。
過去にはアスピリンを服用していて副作用が出なかった人でも、突然アスピリン喘息を起こすこともあります。
アスピリン喘息は、多くの場合、服用から1時間以内に症状が現れ、急速に症状が悪化することもありますので、服用後は呼吸状態を観察するようにしましょう。
3-4、服薬指導
アスピリンの看護のポイント、最後は服薬指導です。
アスピリンは内服薬であり、退院後も患者は服用を続けることになるケースがほとんどです。
そのため、患者への正しい服薬指導をすることは看護師の重要な役割の1つです。
・用法や用量
・飲み忘れた時の対処
・副作用について
これらを家族を巻き込んで、しっかりと理解を得られるようにして下さい。
特に、出血傾向の副作用については、指導が必要です。
脳出血や消化管出血などのリスクを伝えておくと、もし脳出血や消化管出血が起こった時は早期受診につながり、重症化を防ぐことができます。
しかし、リスクだけを伝えると、患者はアスピリンが怖い薬と思い込み、自己判断で服用を中止してしまうこともあるのです。
だから、適切な情報提供、正しい服薬指導を行うようにしましょう。
まとめ
アスピリンの作用や副作用、看護の4つのポイントをまとめました。
アスピリンは2つの作用があり、作用によって用法・用量は異なりますので、きちんと覚えておく必要があります。
また、副作用がないかどうか、正しく服用できているか、アスピリンに対して患者の理解度どうかなどを観察して、適切な看護ができるようにしておきましょう。
参考文献
・堀川達弥「専門医のためのアレルギー学講座 2.薬剤性アナフィラキシーの診断と治療」アレルギー56(7)2007年
・バイアスピリン錠100mg 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
・重篤副作用疾患別対応マニュアル「非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作」厚生労働省
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