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アジソン病の看護|基本情報や症状、看護の5つのポイント

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内分泌系の疾患にはいろいろな種類があり、それぞれ症状が違うので、少しややこしく感じることもあると思います。

今回は内分泌系の疾患の1つであるアジソン病を詳しく説明していきます。アジソン病とはどんな病気か、またアジソン病の症状や看護のポイントをまとめましたので、実際の看護の参考にしてください。

 

1、アジソン病とは

アジソン病とは、後天性の両側性慢性副腎不全です。慢性原発性副腎皮質機能低下症と呼ばれることもあります。

副腎皮質は球状層からミネラルコルチコイド(アルドステロン)、束状層からグルココルチコイド(コルチゾール)、網状層から副腎アンドロゲンが分泌されています。アジソン病は、これらのステロイドホルモンの分泌量が慢性的に低下した状態になります。

引用:副腎機能不全 (ふくじんきのうふぜん) | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会

アジソン病は1年間で660人が発症していて、40~60歳の発症が多いことが分かっています。患者の男女比では男性が多く、厚生労働省の指定難病になっています。

 

1-1、アジソン病の原因

アジソン病の原因には、次のようなものがあります。

・特発性の副腎皮質萎縮

・感染症

・悪性腫瘍の副腎転移

・出血

原因の中で最も多いのは特発性の副腎皮質萎縮で、自己免疫が関連しているとされています。

また、感染症では結核や真菌性後天性免疫不全症症候群(AIDS)により、副腎に肉芽腫ができたり、炎症性壊死で副腎が破壊されることがあります。

2、アジソン病の症状

引用:アジソン病(指定難病83) 難病情報センター

アジソン病は副腎皮質からのステロイドホルモン(ミネラルコルチコイドとグルココルチコイド)の分泌量が低下します。さらに、本来分泌されるはずのステロイドホルモンが分泌されないことで、下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌量が増加します。

そのため、アジソン病では次の3つの症状が現れることになります。

・ミネラルコルチコイド欠乏による症状

・グルココルチコイド欠乏による症状

・副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌増加による症状

アジソン病では初期症状として、「なんとなく元気がない」、「だるい」、「やる気が出ない」等の症状が現れ、それから徐々に進行していきます。

 

■ミネラルコルチコイド欠乏による症状

ミネラルコルチコイドはナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を促す作用があります。

そのミネラルコルチコイドが欠乏することで、低ナトリウム血症・高カリウム血症が起こります。

電解質バランスが崩れることで、次のような症状が現れます。

脱水

・高血漿浸透圧

アシドーシス

・循環血液量の減少

・低血圧

ミネラルコルチコイドが極度に不足すると、循環虚脱によりショック状態になることもあります。

 

■グルココルチコイド欠乏による症状
グルココルチコイドは、糖新生による血糖値の上昇やタンパク質・脂質・電解質などの代謝への関与、炎症反応の抑制などの働きがあります。

このグルココルチコイドが欠乏すると、次のような症状が現れます。

低血糖

低血圧

・易疲労感

・全身倦怠感

・脱力感

・筋力の低下

・食欲不振

・体重減少

・悪心や嘔吐下痢

・うつや不安、無気力などの精神症状

・感染や外傷などのストレスに対する抵抗力の低下

 

■副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌増加による症状

アジソン病では副腎皮質からステロイドホルモンが分泌されなくなるので、「ステロイドホルモンをもっと分泌しろ!」と指令を出す副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌量が増えます。

ACTHはメラニン細胞を刺激し、メラニン色素の産生を促す作用がありますので、顔や肘、膝、爪床、乳首、口腔内などに色素沈着が起こります。

 

3、アジソン病の看護の5つのポイント

アジソン病の患者を受け持つ時に適切な看護ができるように、アジソン病の看護のポイントを確認しておきましょう。

 

3-1、適切な日常生活援助

アジソン病では全身倦怠感や筋力低下、食欲不振、体重減少等の症状があり、日常生活を送るのが困難になります。そのため、看護師は適切な日常生活援助を行うようにしましょう。

 

■食事

・食事を食べるように促す

・食事摂取量を確認する

・本人が食べやすいように食事形態を工夫する

・本人が食べやすいもの、好きなものを用意してもらうように家族に依頼する

・本人と家族に食事の重要性を説明する

アジソン病では食欲不振の症状が出ますので、食事・栄養をしっかり摂れるようなケアを行う必要があります。

 

■排泄

・トイレに近い病室を選ぶ

便秘へのケアを行う

倦怠感が強い場合、トイレに行くのが困難になることもありますので、症状に応じて、トイレに行きやすい病室を選ぶようにしましょう。場合によっては、ポータブルトイレの使用も考慮すると良いでしょう。

運動量や食事量の低下で、アジソン病の患者は便秘に傾くことが多いです。医師に報告して、薬剤で排便コントロールをするほか、腹部マッサージや食物繊維の積極的な摂取を促すなどのケアをしていきましょう。

 

■入浴・清潔ケア

入浴・清潔ケアは必要があれば、介助を行います。しかし、必要最低限の介助にして、できるだけ自立を促すようにしてください。

 

■運動

・安静度に応じた運動

・気分転換を促す散歩

アジソン病では起立性低血圧や筋力低下が見られるため、転倒には十分に注意する必要があります。

 

3-2、精神的なケア

アジソン病は厚生労働省の難病指定を受けている病気です。

また、全身倦怠感や低血圧、低血糖などの幅広い症状が起こり、日常生活を送るのが困難になることもあります。

さらに、一生付き合っていかなければいけない疾患ですから、将来への不安も大きいです。

そのため、アジソン病と診断された患者・家族に対しては、適切な情報提供をして、必要であれば、何度でも医師からの説明の場を設けるように、看護師が調整しましょう。

また、不安のや患者の思いなどを傾聴することも重要です。

 

3-3、ステロイド治療の副作用へのケア

アジソン病の患者には、不足するステロイドを補うためにステロイド薬の内服による治療が行われます。

そのため、ステロイドによる副作用が出ることがあります。

アジソン病患者のステロイド治療での副作用には、脂肪沈着によるメタボリックシンドローム様の症状が多いとされています。

太ってきたことを気にして、食事量を減らしたり、自己判断でステロイド薬を減量したりすることもありますので、ステロイド量を調整して落ち着けば、副作用も落ち着いてくることを伝えるようにしましょう。

また、ステロイド薬の飲み始めには、イライラ感、消化不良、下痢などの症状が出ることがありますので、患者にはそれを説明し、副作用の出現がないかを観察しましょう。

 

3-4、副腎クリーゼへの注意

アジソン病の患者は副腎クリーゼを発症するリスクがあります。

副腎クリーゼとは、グルココルチコイドが絶対的に欠乏することで起こる急性副腎不全のことです。

副腎クリーゼが起こると、血圧低下・循環不全・腎機能停止などの症状が現れ、生命の危機に瀕します。

アジソン病の患者は、次のような場合に副腎クリーゼを起こすリスクがあります。

熱傷感染、外傷などの大きなストレス

・ステロイド薬内服の急な中止

そのため、患者にはやけどやケガ、感染などを起こさないように指導すると共に、看護師もスタンダードプリコーションを徹底するようにしましょう。

また、ステロイド薬を自己判断で中止すると、体内のグルココルチコイドが急激に低下しますので、副腎クリーゼを起こすリスクがあります。

そのため、患者には自己判断でステロイド薬を中止・減量しないように指導しましょう。

 

3-5、服薬指導

アジソン病の患者は副腎の機能が回復することはほぼありませんので、一生治療を続けていく必要があります。

しかし、適切に内服を続けていけば、症状が現れることはなく、日常生活を送ることができます。

そのことをきちんと説明し、服薬を続けていくように指導しましょう。

また、副腎クリーゼのリスクを説明し、自己判断での内服薬を減量・中止しないことをしっかりと患者本人・家族に理解してもらわなければいけません。

発熱などストレス時は副腎クリーゼ予防のために内服量を増やすことがありますので、その指示をきちんと医師・薬剤師に確認し、患者に指導しておく必要があります。

 

まとめ

アジソン病の基本情報や原因、症状、看護のポイントをまとめました。アジソン病はきちんと内服を続けていけば、日常生活を送ることができる病気です。逆に、内服をしなければ、副腎クリーゼを起こし、命の危険がある病気でもあります。

看護師はそのことを患者に説明し、適切なケアをしていくようにしましょう。

 

参考文献

アジソン病(指定難病83) 難病情報センター

柳瀬敏彦「副腎クリーゼ」日本内科学会雑誌第105巻第4号

柳瀬敏彦「副腎不全:診断と治療の進歩」日本内科学会雑誌第97巻第4号

副腎機能不全 (ふくじんきのうふぜん) | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会

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