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HBs抗原とは?基礎知識や判定方法(検査方法)や基準値を解説

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看護師など医療従事者にとって、患者がHBs抗原陽性かどうかは非常に重要な情報です。ただ、「HBs抗原って何だっけ?詳しくは知らない」という人も少なくないと思います。

HBs抗原とは何か?という基礎知識から判定方法・検査方法、判定の基準値をまとめましたので、ここでもう一度HBs抗原について学んでいきましょう。

 

1、HBs抗原とは

HBs抗原とは、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するたんぱく質のことです。

引用:B型肝炎 一般社団法人日本血液製剤協会

B型肝炎ウイルス粒子は直径42nmの球状ウイルスで、エンベロープと呼ばれる外殻とコア粒子の二重構造をしています。このエンベロープを構成しているたんぱく質がHBs抗原です。

B型肝炎ウイルス粒子は、核酸を含み感染性がある完全粒子のほかに、核酸がない小型球形粒子と管状粒子の3種類がありますが、HBs抗原は3種類のB型肝炎ウイルス粒子すべてに外殻に存在します。

HBs抗原が血液内にあるということは、血液内にB型肝炎ウイルスがいるということです。血液内にB型肝炎ウイルスがいるということは、肝臓でB型肝炎ウイルスが増殖していて、B型肝炎ウイルスに感染しているということになります。

「HBs抗原陽性=B型肝炎ウイルスに感染」ということになりますので、B型肝炎ウイルス感染の有無を調べるためには、まずはHBs抗原が陽性かどうかを検査します。

 

1-1、B型肝炎ウイルスとは

B型肝炎ウイルスとは、B型肝炎の原因となるウイルスです。B型感染ウイルス感染者は世界で20億人、持続感染者は3.5億人で、1年で50~70万人がB型肝炎ウイルスに関連した疾患で死亡しています1。日本では毎年10,000~11,000人の新規感染者がいる2と推測されています。

引用:西日本産業衛生会 健康コラム/B型肝炎のはなし

B型肝炎ウイルスに感染しても、多くは不顕性感染のままで治癒します。急性肝炎を発症してもほとんどは治癒しますが、0.5~2%は劇症肝炎を発症します。

B型肝炎ウイルスの感染が6ヶ月以上続くことを持続感染と呼びますが、持続感染のうち約10%が慢性肝炎を発症し、そのうちの一部は肝硬変・肝がんを発症してしまいます。

肝硬変の看護は「肝硬変の看護計画|原因、症状、観察項目から見る看護過程、看護問題」で、肝がんの看護は「肝臓癌(肝細胞癌)の看護|早急なヒアリングと目視判断で有疾患の正確な特定を」で詳しく説明しています。

<B型肝炎ウイルス感染>

・不顕性感染→70%

・急性肝炎→20%(劇症肝炎は0.5~2%)

・持続感染→10%(肝硬変は1%)

劇症肝炎に移行すると、死亡率は70%と非常に高くなっています。

 

1-2、HBs抗原とHBc抗原・HBe抗原の違い

HBs抗原と似たようなものにHBc抗原やHBe抗原があります。

HBs抗原はB型肝炎ウイルスの外殻を構成するたんぱく質です。

引用:1.B型肝炎ウイルスの増殖|佐賀大学 医学部 病因病態科学講座 生体防御学分野

HBc抗原はB型肝炎ウイルスの構成するたんぱく質ですが、B型肝炎ウイルスのコア粒子の表面に存在していますので、通常は検出されません。

HBe抗原もB型肝炎ウイルスのコア粒子を構成するたんぱく質です。ただ、肝臓の中でB型肝炎ウイルスが増殖する時にHBe抗原が過剰に作られるため、一部が血液中に流出します。HBe抗原は肝臓内でB型肝炎ウイルスが活発に増殖している時には血液中に流れ出しますが、増殖が穏やかになると、HBe抗原は血液中に流れ出す形では作られなくなります。

抗原の種類 検査で分かること
HBs抗原 B型肝炎ウイルスに感染しているかどうか
HBc抗原 通常は検出されない
HBe抗原 B型肝炎ウイルスが活発に増殖しているかどうか、感染性が強いかどうか

HBs抗原・HBc抗原・HBe抗原はすべてB型肝炎ウイルスを構成しているたんぱく質ですが、それぞれ性質や検査で分かることが違ってきます。

 

1-3、HBs抗原とHBs抗体の違い

HBs抗原と似たような名前のものにHBs抗体があります。HBs抗原とHBs抗体で混乱することも多いと思います。

まずは「抗原」と「抗体」の違いを確認しておきましょう。

抗原は体内に侵入した異物であり、抗体は抗原が体内に侵入したことで作られた物質であり、抗原を攻撃する性質を持つものです。

HBs抗原はB型肝炎ウイルスを構成するたんぱく質であり、「異物」になります。

そして、HBs抗体はHBs抗原が体内に侵入したことで作られ、HBs抗原に対抗する為の物質ということになります。

HBs抗体はB型肝炎ウイルスの感染を防ぐ働きがありますので、HBs抗体が検出された人は過去にB型肝炎ウイルスに感染したけれど、現在は治癒していて、B型肝炎ウイルスへの免疫があることになりまます。

抗原・抗体 検査でわかること
HBs抗原 B型肝炎ウイルスに感染しているかどうか
HBc抗原 B型肝炎に以前感染していた
B型肝炎の免疫がある

HBs抗原とHBs抗体はB型肝炎ウイルス感染に関連しているという共通項はありますが、性質は真逆と言っても良いものなので、混同しないように注意が必要です。

 

2、HBs抗原の判定方法・検査方法

HBs抗原が陽性かどうかの判定方法は、血液検査(血清)になります。

ただ、血液検査にも判定方法にはいろいろな種類があります。

<HBs抗原の判定方法>

・化学発光免疫測定法(CLIA)

・化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)

・電気化学発行免疫測定法(ECLIA)

・酵素免疫測定法(EIA)

・ラテックス凝集法(LA)

・磁性化粒子凝集法(MAT)

・イムノクロマトグラフィー法(ICA)

・人口担体凝集法(PA)

HBs抗原の判定方法はたくさんありますが、高感度な方法を用いるのが望ましいとされています。

上記の判定方法の中でHBs抗原の検出感度が高いのは、化学発光免疫測定法(CLIA)や化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、電気化学発行免疫測定法(ECLIA)になります。

血液検査について、もっと詳しく知りたい人は「看護師が行う血液検査の目的や内容など、よく使う7つの項目」を参考にしてください。

 

3、HBs抗原の基準値

HBs抗原の判定の基準値は検査方法によって違います。

<HBs抗原の陰性の基準値>

・CLIA法=0.05IU/ml未満

・MAT法=8倍未満

この基準値を下回れば、HBs抗原は陰性。基準値を上回れば、HBs抗原は陽性となりB型感染ウイルスに感染しているということになります。

 

3-1、陰性でもB型ウイルスに感染している可能性がある

ただ、1つ注意しなければいけないことは、HBs陰性だからといって、B型肝炎ウイルスへの感染を完全には否定できないということです。

B型肝炎ウイルスに感染してから、HBs抗原が陽性になるまでは2~3ヶ月かかります。そのため、感染直後・初期段階では、HBs抗原が陰性になることがあります。

また、肝硬変や肝細胞癌に移行していると、HBs抗原の産生量が少なくなるので、HBs抗原が陰性になることがあるのです。

さらに、急性肝炎で重症化すると、炎症の極期では一過性にHBs抗原が陰性になるケースがあります。

<HBs抗原が陰性になるケース>

・感染直後や感染初期段階

・肝硬変や肝細胞癌に移行した場合

・急性肝炎での炎症の極期

このようにB型肝炎ウイルスに感染していても、HBs抗原が陰性になるケースがありますので、陰性だとしても症状などによっては再検査を考慮する必要が出てきます。

 

まとめ

HBs抗原とは何かという基礎知識やHBs抗原・HBc抗原・HBe抗原との違い、HBs抗体との違いや判定方法・基準値などをまとめました。

B型肝炎ウイルスは感染力が強いウイルスで、日本でも年間1万人以上の人が新規に感染しています。患者さんの看護をする時には、HBs抗原が陽性か陰性かを確認しておくと、より適切な感染予防対策ができます。ただ、HBs抗原が陰性だとしても、きちんと感染予防は行ってください。

感染看護に興味がある人は「感染の看護|経路、予防、徴候、スタンダードプリコーションと看護計画」、「感染症認定看護師の役割と入学・資格取得に際する試験対策」も一緒に読んでおくことをおすすめします。

 

参考文献

1)B型肝炎とは|NIID 国立感染症研究所

2)わが国における急性B型肝炎の現状|NIID 国立感染症研究所

B型肝炎ウイルス検査|大阪大学大学院医学系研究科・医学部

B型肝炎|一般社団法人神奈川県臨床検査技師会

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