私たちの身体の機能を維持する上で重要なホルモン。ホルモンは重要なもので、身体の中ではたくさんのホルモンが働いていることは知っているけれど、詳しいことはよく分からないし、ホルモンの種類を覚えられないという人も多いのではないでしょうか。
ホルモンとは何か?、そしてホルモンの一覧表、看護師が知っておくべきホルモンの覚え方などをまとめました。ホルモンについて、いまいち自信がない人はぜひ参考にしてください。
1、ホルモンとは
1-1、ホルモンの働き・役割
ホルモンとは、私たちの身体の健康維持のためにいろいろな機能を調節する化学物質で、生体の恒常性の維持に役立っています。
生体恒常性(ホメオスタシス)は自律神経系・内分泌系・免疫系の3つが密接に関わり合い、バランスを保つことで維持できています。ホルモンは内分泌系の情報伝達物質なのです。
ホルモンの主な役割は次のようなものがあります。
・生命維持
・活動性の維持
・生体の成長や成熟の促進
・生殖機能の維持
ホルモンは「50mプールいっぱいの水にスプーン1杯程度」という極微量で効果を発揮します。つまり、ホルモンは絶妙な量のバランスで身体の機能を維持しているのです。
そのため、ホルモンの分泌量が多かったり少なかったりすると、身体には様々な症状が現れ、病気になってしまいます。
2-2、ホルモンの特徴
ホルモンの特徴を見ていきましょう。
■ホルモンの種類
ホルモンはその化学構造の違いによって、3種類に分類することができます。
・ペプチドホルモン=アミノ酸がつながったもの
・ステロイドホルモン=コレステロールから作られるもの
・アミノ酸誘導体=アミン(チロシンの誘導体)
ペプチドホルモンには、成長ホルモンやインスリンがあります。
ステロイドホルモンはコルチゾールなどの副腎皮質ホルモンやエストロゲン、テストステロンです。
アミノ酸誘導体はアドレナリンやノルアドレナリン、甲状腺ホルモンがあります。
■ホルモンの分泌のタイプ
ホルモンの多くは内分泌腺で作られています。
内分泌腺には、下垂体前葉・後葉、甲状腺、上皮小体、副腎皮質・副腎髄質、膵臓ランゲルハンス島、卵巣、精巣があります。
これらの内分泌腺で作られたホルモンが血管内に放出され、血流に乗り、離れた標的細胞に到達して働きます。
ただ、ホルモンには内分泌腺以外で作られるものもありますし、離れた場所の標的細胞ではなく、すぐ隣の細胞で働いたり(傍分泌)、ホルモンが作られた細胞で働く(自己分泌)場合もあることがわかっています。
また、内分泌腺から分泌されたとしても、ホルモンが別の場所で作られ、軸索輸送で内分泌腺に運ばれて、そこから分泌されるなど様々なタイプがあります。
■ホルモンと受容体
ホルモンは体内のどこでも働けるわけではありません。
ホルモンは標的器官(標的細胞)でないと、その役割を果たすことができないのです。
ホルモンが働くためには受容体が必要であり、受容体と結合することで初めてその機能を発揮することができます。ホルモンは標的器官の受容体以外とは結合することができません。
2、ホルモンの一覧(分泌部位・作用部位・名前・作用)
引用:主な内分泌臓器とホルモン|ホルモンとは|患者さまへ|東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科
現在の時点で100種類の以上のホルモンが見つかっていますが、看護師が覚えるべきホルモンは限られています。
まずは、ホルモンの分泌部位と名前を一覧表にしてまとめました。
分泌部位 | ホルモンの名前 | |
視床下部 | ・成長ホルモン放出ホルモン
・甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン ・副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン ・性腺刺激ホルモン放出ホルモン ・成長ホルモン抑制ホルモン(ソマトスタチン) ・プロラクチン抑制ホルモン(ドパミン) |
|
下垂体 | 前葉 | ・ 成長ホルモン(GH)
・プロラクチン(RPL) ・副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) ・甲状腺刺激ホルモン(TSH) ・性腺刺激ホルモン ①卵胞刺激ホルモン(FSH) ②黄体形成ホルモン(LH) |
後葉 | ・バゾプレシン (ADH)
・オキシトシン |
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甲状腺 | ・甲状腺ホルモン(サイロキシン・チロキシン) | |
上皮小体(副甲状腺) | ・副甲状腺ホルモン(パラソルモン) | |
膵ランゲルハンス島 | A細胞 | ・グルカゴン |
B細胞 | ・インスリン | |
副腎 | 髄質 | ・アドレナリン ・ノルアドレナリン |
皮質 | ・アルドステロン(電解質コルチコイド) ・コルチゾール(糖質コルチコイド)・アンドロゲン(性ホルモン) |
|
生殖腺 | 精巣 | ・テストステロン |
卵巣 | ・エストロゲン(卵胞ホルモン)
・プロゲステロン(黄体ホルモン) |
2-1、視床下部のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
成長ホルモン放出ホルモン | 成長ホルモンの分泌を刺激 |
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン | 甲状腺刺激ホルモンとプロラクチンの分泌を刺激 |
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン | 副腎皮質刺激ホルモンの分泌を刺激 |
性腺刺激ホルモン放出ホルモン | 黄体形成ホルモン(LH)と 卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を刺激 |
成長ホルモン抑制ホルモン(ソマトスタチン) | 成長ホルモンの分泌を抑制 |
プロラクチン抑制ホルモン(ドパミン) | プロラクチンの分泌を抑制 |
2-2、下垂体前葉のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
成長ホルモン(GH) | 成長を促進、概日リズム、同化作用 |
プロラクチン(RPL) | 乳汁生成と分泌、排卵の抑制 |
甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 甲状腺ホルモンの分泌を刺激 |
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) | 副腎皮質ホルモンの分泌を刺激 |
卵胞刺激ホルモン(FSH) | ・女性:卵胞の発育を促進、エストロゲンの分泌を刺激
・男性:精子の産生を刺激 |
黄体形成ホルモン(LH) | ・女性:排卵、エストロゲン・プロゲステロンの分泌を刺激
・男性:テストステロンの分泌 |
2-3、下垂体後葉のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
バゾプレシン (ADH) | 腎臓での水の再吸収の促進(抗利尿作用) |
オキシトシン | 分娩の促進、乳汁排出の促進 |
2-4、甲状腺のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
甲状腺ホルモン | エネルギー代謝促進、発育・成熟の促進 |
2-5、上皮小体(副甲状腺)のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
副甲状腺ホルモン(パラソルモン) | 血中カルシウム濃度の調節 |
2-6、膵ランゲルハンス島のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
グルカゴン(A細胞から) | グリコーゲンの糖化、糖新生、血糖値上昇 |
インスリン(B細胞から) | 糖代謝の調節、血糖値の低下 |
2-7、副腎髄質のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
アドレナリン | 血圧上昇、心拍数上昇、血糖値上昇 |
ノルアドレナリン | 血圧上昇 |
2-8、副腎皮質のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
アルドステロン(電解質コルチコイド) | Na+の再吸収の促進 |
コルチゾール(糖質コルチコイド) | 抗炎症作用、糖新生 |
アンドロゲン(性ホルモン) | 男性の第二次性徴を促進、女性でも分泌される |
2-9、精巣のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
テストステロン | 男性生殖器の成熟、第二次性徴 |
2-10、卵巣のホルモン一覧
ホルモンの名前 | 働き・作用 |
エストロゲン(卵胞ホルモン) | 排卵誘発、子宮粘膜増殖、骨吸収の抑制、動脈硬化の抑制 |
プロゲステロン(黄体ホルモン) | 子宮粘膜増殖の停止、基礎体温の上昇、妊娠の維持、妊娠中の排卵抑制 |
3、看護師におすすめ!ホルモンの覚え方
ここまで説明してきたホルモンを覚えておけば、看護師の国家試験はもちろん、看護師の臨床現場でも困ることはありません。
ただ、ホルモンは名前がカタカナで文字数が多い、しかも似たような名前もある。作用もややこしい。
だから、覚えられない!という悩みを抱えている看護師も少なくないでしょう。
そんなあなたのために、ホルモンの覚え方を伝授します。
3-1、きちんと理解する
まずは、ホルモンについてきちんと理解しましょう。
・ホルモンの名前
・分泌部位
・標的器官(作用部位)
・作用
これらを1つ1つきちんと理解する必要があります。
分泌部位はその名称だけでなく、身体の中のどこにあるのかも覚えておきましょう。
3-2、声に出しながらひたすら書く
次に、声に出しながらホルモンの名前・分泌部位・標的器官・作用をひたすら書きましょう。
声に出して書くことで、手の動き・口の動き・視覚・聴覚と4つの面からあなたの脳にホルモンの情報を叩きこむことができます。
はっきり言えば、この作業は面倒くさいです。
時間も労力もかかります。
でも、これをやらないと、ホルモンを覚えることはできません。
「語呂合わせで覚えれば簡単!」と思うかもしれません。
でも、語呂合わせはホルモンの頭文字を並べただけのものですよね。
頭文字が分かっても、その次がわからなければ意味はありません。
だから、語呂合わせの前に、しっかり覚える必要があるんです。
語呂合わせを覚えることに必死になっても、ホルモンは覚えられません。
一番簡単で、一番確実なホルモンの覚え方は理解してから、声に出してひたすら書いて、脳に叩き込むことです。
3-3、保険として語呂合わせ
ホルモンの覚え方の最後は、語呂合わせです。
この語呂合わせはあくまでも「保険」です。
しっかり覚えたのに、「うっかり忘れちゃった!」という時のための保険として、語呂合わせを利用しましょう。
有名なものをご紹介します。
■視床下部のホルモンの覚え方
語呂合わせ=師匠は制服で成功したプロ!
師匠(ししょう)→視床下部
制(せい)→性腺刺激ホルモン放出ホルモン
服(ふく)→副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
成(せい)→成長ホルモン放出ホルモン(抑制ホルモン)
功(こう)→甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
プロ(ぷろ)→プロラクチン抑制ホルモン
■下垂体前葉のホルモンの覚え方
語呂合わせ=コープが卵黄を複製!?
コー(こう)→甲状腺刺激ホルモン
プ(ぷ)→プロラクチン
卵(らん)→卵胞刺激ホルモン
黄(おう)→黄体形成ホルモン
複(ふく)→副腎皮質刺激ホルモン
製(せい)→成長ホルモン
■血糖値を上昇させるホルモンの覚え方
語呂合わせ=あのサイコロをグルグルして成長
あ(あ)→アドレナリン
の(の)→ノルアドレナリン
サイ(さい)→サイロキシン
コロ(ころ)→糖質コルチコイド
グル(ぐる)→グルカゴン
成長(せいちょう)→成長ホルモン
語呂合わせでの覚え方のコツは、いかに「しっくり来るか」です。
だから、「私はこのホルモンが覚えられない」というものがあったら、自分で語呂合わせを考えてみると良いですよ。
語呂合わせを考えるだけでも、意外とホルモンの名前を覚えられます。
まとめ
ホルモンとは何かという基礎知識やホルモンの一覧、看護師におすすめのホルモンの覚え方をまとめました。
ホルモンは国家試験のために覚えたという人も多いと思いますが、臨床現場でもたびたび耳にしますし、その名前・作用を理解できていないと、良い看護ができないことも少なくありません。
これを機会に、もう一度ホルモンについて覚え直しましょう。
参考文献
・内分泌の不思議 ホルモンは生命のメッセンジャー|ホルモンとは|患者さまへ|東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科
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