失業すると収入がなくなってしまうため、雇用保険の被保険者に対して、国から生活補助として基本手当(失業保険)を受け取ることができ、さらに再就職先が決まった際には、お祝い金として再就職手当が給付されます。
再就職手当の給付には、さまざまな条件があり、やや複雑な過程を踏まなければいけないため、難しく感じるかもしれませんが、意外にも支給される金額は大きいため、もらえるものはもらっておきましょう。
1、再就職手当の受給条件
再就職手当を受け取るためには、以下に挙げる8つ全ての条件を満たしている必要があります。まずは、ご自身が条件を満たしているかご確認ください。
①雇用保険に加入する労働条件で働いていること
すべての事業主(病院など)が労働者(看護師など)に対して雇用保険の加入を義務づけているため、アルバイト・パート・非常勤・常勤に関わらず、通常すべての方が当条件に当てはまっています。
②求職者登録(受給手続き)が完了していること
再就職手当を受け取るためには、ハローワークにて求職者登録を済ませておかなければいけません。まずは、最寄りのハローワークの窓口で登録を済ませておきましょう。
③待機期間(登録後7日間)経過した後に就業すること
ハローワークでは、求職者登録日から7日間の待機期間が設けられています。この期間に再就職が決定すると、再就職手当を受け取ることができないため、待機期間が満了した後に、再就職する必要があります。
④支給残日数が3分の1以上残っていること
失業時に受給できる基本手当(雇用保険)は前雇用先での就業年数や年齢によって異なりますが、再就職時にこの支給日数が3分の1以上残った状態であることが条件です。なお、基本手当の残日数によって、以下のように再就職手当の受給額が変わります。
3分の1以上・・・支給残日数×基本手当(日額)×50%
3分の2以上・・・支給残日数×基本手当(日額)×60% |
⑤再就職先が離職前の会社や関連事業主に雇用されたものでないこと
離職前の就業先に再就職した場合や、密接な関わり合いを持つ就業先で再就職する場合には、再就職手当を受け取ることができません。
⑥1年を超えて勤務することが確実であること
6か月契約の派遣社員で更新の予定がない場合や、条件付き雇用(ノルマ達成の有無で雇用の継続が左右されるなど)の場合は、条件に当てはまりません。
⑦過去3年以内に、以下の手当を受けていないこと
再就職日の前3年以内に、1,再就職手当、2,常用就職支度手当、3,早期就職者支援金、の3つの手当の受給歴があれば、今回分の再就職手当を受け取ることができません。
⑧再就職手当の支給申請をして、その後すぐに離職していないこと
再就職手当の不正受給を防ぐために、再就職後すぐに離職した方は、再就職手当の受給資格がなくなります。
※自己都合で離職された方
ハローワークでは、倒産や解雇などの理由により離職を余儀なくされた方に対しては、就職の経路問わず、再就職に対して手当を支給していますが、自己都合など自主的に離職した方に対しては、待機期間(③を参照)終了後1か月以内は、ハローワークまたは厚生労働省に認可されている職業紹介事業者から再就職しなければ、再就職手当を受け取ることができません。ただし、この期間(1か月)が過ぎれば、知人の紹介や新聞広告の応募などから再就職した場合も受け取ることができます。 |
2、再就職手当の支給額
上記の8つのすべての条件に満たしていれば、受給資格者として再就職手当を受け取ることができますが、受け取ることができる金額は人それぞれです。受給条件④で軽く触れましたが、再就職手当の支給額は下表のように、基本手当(雇用保険)の所定給付日数・支給残日数・基本手当日額が大きく関わっていますので、下表の計算式を一度頭に入れておいてください。
所定給付
日数 |
支給残日数 | 再就職手当の額 | |
支給率
50%の場合 |
支給率
60%の場合 |
||
90日 | 30日以上 | 60日以上 | 基本手当日額
× 支給残日数 × 50%または60% |
120日 | 40日以上 | 80日以上 | |
150日 | 50日以上 | 100日以上 | |
180日 | 60日以上 | 120日以上 | |
210日 | 70日以上 | 140日以上 | |
240日 | 80日以上 | 160日以上 | |
270日 | 90日以上 | 180日以上 | |
300日 | 100日以上 | 200日以上 | |
330日 | 110日以上 | 220日以上 | |
360日 | 120日以上 | 240日以上 |
このように、再就職手当の金額を導き出すためには、基本手当(雇用保険)について知っておく必要がありますので、下記にて基本手当の所定給付日数と基本手当日額についてご説明します。
なお、基本手当とは、失業者に対して支給される生活支援金のことであり、「失業保険」とも呼ばれています。基本手当には離職の理由ごとに以下のような資格条件があります。
1,自己理由・・・離職の日以前2年間に12か月以上の被保険者期間がある
2,そのほか・・・離職の日以前1年間に6か月以上の被保険者期間がある (倒産・解雇、傷病・障害、妊娠・出産など、やむを得ない理由による離職) |
2-1、基本手当の所定給付日数
所定給付日数は、離職の理由や就業年数によって以下のように決定されます。
■自己都合退職した場合の所定給付日数
自己都合により退職した場合には、年齢に関わらず雇用保険の加入期間のみで決定されます。なお、雇用保険の加入期間は、1か月ごとに区切り、それぞれの期間の中に労働した日数が11日以上ある期間を1か月とします。よって、前雇用先で1か月に11日以上働いていた方は、単純にこれまでの労働年数を雇用保険の加入期間として解釈して結構です。
雇用保険の
加入期間 |
10年未満 | 10年以上
20年未満 |
20年以上 |
所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
■会社都合で離職した場合の所定給付日数
倒産や解雇といった会社都合での離職を余儀なくされた方は、年齢と雇用保険の加入期間によって基本手当の所定給付日数が決定されます。
退職時の
年齢 |
雇用保険の加入期間 | ||||
1年未満 | 1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上
35歳未満 |
90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上
45歳未満 |
90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上
60歳未満 |
90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
■障害者など就職困難な方の給付日数
身体的・知的・精神的な障害を持っている方、刑法などの規定により保護観察をつけられている方、社会的事情により著しく就職が阻害されている方など、就職困難な方は以下のように長期的な所定給付日数が定められています。
退職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | |
1年未満 | 1年以上 | |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上
65歳未満 |
150日 | 360日 |
2-2、基本手当日額の算出方法
基本手当における基本手当日額は、「過去6か月間にもらった賃金の総額を180で割った金額」から下表の所定の計算式を用いて算出します。まずは、お持ちの離職票や給与明細から近6か月の総支給額の合計を求め180で割り、賃金日額を出した上で、下表と照らし合わせてください。なお、実際の求め方は非常に複雑ですので、下表は簡易的に“目安”にしてあります。
賃金日額(円) | 給付率 | 基本手当日額(円) |
2,300 | 80% | 1,840 |
3,000 | 2,400 | |
4,000 | 3,200 | |
4,600 | 50%~80% | 3,680 |
5,000 | 3,915 | |
6,000 | 4,443 | |
7,000 | 4,886 | |
8,000 | 5,244 | |
9,000 | 5,517 | |
10,000 | 5,705 | |
11,000 | 5,808 | |
11,660 | 5,830 | |
12,000(※1) | 50% | 6,000 |
12,790(※1) | 6,395 | |
13,000(※2) | 6,500 | |
14,000(※2) | 7,000 | |
14,210(※2) | 7,105 | |
15,000(※3) | 7,500 | |
15,620(※3) | 7,810 | |
※1「30歳未満の上限」、※2「30歳以上45歳未満の上限」、※3「45歳以上60歳未満の上限」 |
2-3、基本手当の算出例
「2-1、基本手当の所定給付日数」、「2-2、基本手当日額の算出方法」でそれぞれ日数と日額を算出しますが、ここで計算の一例を挙げたいと思います。
【条件】
①年齢(28歳)、②就業期間(4年)、③離職理由(自己都合)、④給与(6か月総額1,08,000)
【算出結果】 年齢(28歳)・就業期間(4年)・離職理由(自己都合)で所定給付日数は90日。 給与(6か月総額1,08,000)÷180=賃金日額(6,000)×給付率(80%)で、基本手当日額は4,443円。 |
このように、再就職手当の算出に必要な“所定給付日数”と“基本手当日額”を導くことができます。
2-4、再就職手当の算出方法
ここから本番となりますが、上記で算出した“所定給付日数”と“基本手当日数”を用いて、再就職手当の金額を求めていきます。再就職手当は、所定給付日数が3分の1以上残っている場合のみ受け取ることができ、残日数が3分の1以上あれば「残日数×基本手当(日額)×50%」、残日数が3分の2以上あれば「残日数×基本手当×60%」となり、再就職が早ければ早いほど支給額が多くなります。
所定給付
日数 |
支給残日数 | |
支給率
50%の場合 |
支給率
60%の場合 |
|
90日 | 30日以上 | 60日以上 |
120日 | 40日以上 | 80日以上 |
150日 | 50日以上 | 100日以上 |
180日 | 60日以上 | 120日以上 |
210日 | 70日以上 | 140日以上 |
240日 | 80日以上 | 160日以上 |
270日 | 90日以上 | 180日以上 |
300日 | 100日以上 | 200日以上 |
330日 | 110日以上 | 220日以上 |
360日 | 120日以上 | 240日以上 |
また、再就職手当の金額は下表のように、「基本手当日額」×「支給日数」×50%または60%という計算式で求めることができます。
所定給付
日数 |
支給残日数 | 再就職手当の額 | |
支給率
50%の場合 |
支給率
60%の場合 |
||
90日 | 30日以上 | 60日以上 | 基本手当日額
× 支給残日数 × 50%または60% |
120日 | 40日以上 | 80日以上 | |
150日 | 50日以上 | 100日以上 | |
180日 | 60日以上 | 120日以上 | |
210日 | 70日以上 | 140日以上 | |
240日 | 80日以上 | 160日以上 | |
270日 | 90日以上 | 180日以上 | |
300日 | 100日以上 | 200日以上 | |
330日 | 110日以上 | 220日以上 | |
360日 | 120日以上 | 240日以上 |
よって、「2-3、基本手当の算出例」で挙げた例(所定給付日数90日、基本手当日額4,443円)により、支給残日数が45日であれば、
基本日額4,443円×支給残日数45日×50%=99,967円 |
となり、99,967円の再就職手当を受け取ることができます。
3、再就職手当の支給時期
再就職手当は、すぐに支給されるわけではなく、再就職が決定し、さらにハローワークが在職の有無を確認し、手続きを済ませた後に支給されるため、おおむね再就職した日から5週~8週間程度で支給されます。
再就職決定→(約1か月)→在職確認→(約1週間~1か月)→支給 |
という流れになり、ハローワークが在職の確認をする時期、手続きにかかる時間などによって、支給日が異なります。