公務員の身分で働く看護師のことを公務員看護師と言います。公務員看護師は、給料が高めで安定性が抜群なので、とても人気が高い仕事です。
公務員看護師の職場や試験内容、給料・年収、退職金、メリットをまとめました。
1、公務員看護師とは
公務員は国や地方自治体の職員として働く人のことですが、看護師も公務員として働くことができます。
国立の療養所や厚生労働省、刑務所、公立病院などで働くと、看護師は公務員の身分になります。
公務員は人気第1位の職業です。また、看護師もその安定性から、人気上位の職業です。公務員看護師は、公務員+看護師という人気の職業を掛け合わせたような仕事ですので、たくさんのメリットがあるのです。
2、公務員看護師の職場|国家公務員と地方公務員
公務員看護師は、国家公務員または地方公務員として働くことになり、それぞれいろいろな職場があります。
2-1、国家公務員の看護師の職場
国家公務員として働くには、国立ハンセン病療養所、刑務所、厚生労働省、自衛隊、宮内庁病院に就職しなくてはいけません。
■国立ハンセン病療養所
国立ハンセン病療養所は、厚生労働省管轄の医療施設で、ハンセン病患者が療養生活を送っています。国立ハンセン病療養所は全国に13ヶ所あり、認知症ケアや緩和ケアなどに力を入れています。
■刑務所
刑務所は法務省管轄の機関で、一般刑務所と医療刑務所があります。一般刑務所では受刑者の健康管理を行い、医療刑務所では一般的な病棟と同じような仕事を行います。
■厚生労働省
厚生労働省の内部部局で働く看護師は、医政局看護科や健康局がん対策健康増進課、地方の厚生局などで、看護系技官として看護に関する行政の政策や制度の推進・整備等を行います。
この厚生労働省の内部部局で働く場合、医療行為・看護行為は行わず、デスクワークをします。
■自衛隊
看護師が自衛隊で働くと、特別職国家公務員になります。
自衛隊で働くためには、防衛医科大学校看護学科で学び、看護師の資格を取って、そのまま自衛隊に入隊するのが一般的ですが、中途採用枠もあります。自衛隊の看護師は、自衛隊病院で働くケースと自衛隊の駐屯地に常駐するケースの2つがあります。
■宮内庁病院
宮内庁病院は宮内庁管轄の国立病院で、天皇や皇族、宮内庁や皇宮警察本部の職員とその家族、職員から紹介を受けた人だけが受診できます。
よく誤解されやすいのですが、国立病院機構や国立大学付属病院、国立高度専門医療研究センターで働いても、国家公務員になりません。給料や待遇等は公務員に準じたものになりますが、これらの医療施設は法人化されていて、職員の扱いは非公務員となっています。
2-2、地方公務員の看護師の職場
地方公務員の職場は、公立病院、公立の看護学校や保育園、保健所や保健センター、公立の地域包括センター・障害者福祉施設などがあります。
■公立病院や診療所
都道府県や市町村など地方自治体直轄の病院で働くと、地方公務員になります。県立病院や市立病院、市民病院などです。厚生労働省の医療施設動態調査(平成 28 年 5 月末概数)によると、公立病院と診療所の数は、次の通りです。
病院 | 診療所 | |
都道府県 | 200 | 257 |
市町村 | 635 | 2996 |
公立病院はたくさんあり、求人もたくさん出ていますので、確実に公務員になりたい人におすすめの職場です。ただ、1つ注意したいのは、地方独立行政法人かどうかという点です。公立病院が法人化して、地方独立行政法人になるところが増えてきています。
地方独立行政法人の病院の職員は、公務員に準ずる給料・待遇になるものの、非公務員なのです。
■公立の看護学校
看護教員になるには、次の2つのどちらかの条件を満たす必要があります。
①5年以上の臨床経験があり、看護教員の養成課程を修了した人
②大卒以上の学歴で、看護職として専門分野の教育内容のうち1つの業務に3年以上従事し、大学で教育に関する科目を4単位以上履修した人
参考:看護師学校養成所における看護教員に関する規定、保健師助産師看護師学校養成所指定規則
■公立保育園
公立保育園では、園児たちの健康管理や感染管理、病気やケガの対応などを行います。
■保健所や保健センター
保健所や保健センターでは、基本的に保健師の求人が多いのですが、時々看護師の求人も出ています。保健所や保健センターでは、地域住民の健康管理をしたり、行政の各保健サービスを提供する仕事をします。
■地域包括センターや障害者福祉施設
公立の地域包括センターや障害者福祉施設も地方公務員の職場ですが、最近は自治体直轄ではなく、自治体が社会福祉法人などに業務委託をしているケースが増えていますので、公立のところは少なくなり、求人もとても少ないです。
3、公務員看護師の試験内容
一般的に公務員になるためには、難関の公務員試験を突破しなければいけませんが、看護師の場合は一般の公務員試験を受けるわけではありません。
公立病院の看護師の試験内容は、書類選考、筆記試験、小論文(作文)、面接、健康診断になります。これは、総合病院や大学病院の採用試験の内容とほぼ同じです。看護師の場合、公務員だからといって、特別に難しい試験を受けなければいけないわけではないのです。
職場によっては、筆記試験はないこともあります。筆記試験というと、「難しいのかな?」と心配になる人もいると思いますが、一般常識や適性を問うものですので、そこまで難しい試験ではありません。
4、公務員看護師の給料・年収
公務員看護師の給料・年収を詳しく説明していきます。
<3年課程卒の新卒看護師の給料>
基本給 | 税込給与総額 | |
看護師の平均 | 197,689円 | 262,074円 |
国家公務員 | 193,894円 | 260,184円 |
地方公務員 | 197,666円 | 258,481円 |
<勤続10年の看護師の給料>
基本給 | 税込給与総額 | |
看護師の平均 | 244,392円 | 318,010円 |
国家公務員 | 257,555円 | 336,161円 |
地方公務員 | 264,551円 | 332,909円 |
これは、日本看護協会の2013年 病院における看護職員需給状況調査からのデータです。国家公務員には国立病院機構なども含まれていますが、国立病院機構の職員の給料は国家公務員に準じていますので、ここでは国家公務員の給料として紹介しています。
国家公務員のボーナスは約4ヶ月分です。地方公務員は自治体によって多少異なりますが、国家公務員とほぼ同じですので、4ヶ月分程度と考えてよいでしょう。
そうすると、公務員看護師の年収は10年働くと次のようになります。
・国家公務員=506万4152円
・地方公務員=505万3112円
平成28年賃金構造基本統計調査によると、看護師の平均年収は480万8500円(勤続年数8年)ですので、公務員看護師は給料・年収が一般の看護師よりも高いと言えますね。
5、公務員看護師の退職金
公務員看護師の退職金は、勤続年数によって異なります。
国家公務員の退職金は、次のように計算されます。
・退職手当額=退職日の俸給月給×退職理由別・勤続年数別支給率
|
地方公務員の退職金の計算は、以下の通りです。
・退職手当額 = 基本額 + 調整額
・基本額 = 退職日給料月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率 ・調整額 = 調整月額のうちその額が多いものから 60 月分の額を合計した額 |
一例として国家公務員の看護師が勤続10年で自己退職したとき、定年退職したときの退職金をご紹介します。
・自己退職=193万1662円
・定年退職=257万5550円 |
国家公務員として35年働いて、定年退職すると、退職日の基本給(棒給)の62.7ヶ月分が、地方公務員として35年働いて定年退職すると、退職日の基本給(棒給)の59.28ヶ月分+調整額が支給されます。
一般の看護師に比べると、公務員の退職金はどのくらい高いのかはデータがないので不明ですが、35年間働いた後の定年退職の支給率を見ると、公務員の退職金は高いといえるのではないでしょうか。
6、公務員看護師になる4つのメリット
6-1、高収入
公務員になると、高収入を得ることができます。先ほどの給料・年収の項目でも説明した通り、公務員看護師の給料・年収は高めです。
しかも、昇給率も高いのです。新卒看護師の時は一般の新卒看護師の給料とほとんど変わりませんが、10年後は公務員看護師のほうが給料が高くなっています。
これは、公務員の昇給率が高いからです。公務員は長く勤めれば勤めるほど、着実に給料がアップしていきます。
6-2、安定性が抜群
公務員は、安定性が抜群です。公務員の人気の理由は、なんといってもその安定性ですよね。
看護師も安定していますが、最近では病院の倒産・閉院も珍しくありませんので、突然無職になってしまう可能性もあります。
でも、公務員ならよほどの法律違反を犯さない限り、無職になることはありません。公務員+看護師は、現代の日本で最も安定性のある仕事と言えるかもしれません。
6-3、休日が多い
公務員看護師は休日が多めです。看護師の職場は年間休日が110日前後のことが多いですが、公務員になると125~130日もあるのです。4週8休+祝日、夏季休暇、年末年始休暇が休日ですから、しっかり休むことができ、オンオフの切り替えをしながら働けます。
6-4、福利厚生が充実
公務員看護師は、福利厚生が整っています。公務員は育児休暇が最長3年取れます。時短勤務制度も使えるところが多いですね。
また、住宅手当などの各種手当が充実していますし、退職金や年金もほかの職場に比べるとたっぷりもらえます。公務員の職場は、長く働ける環境が整っているのです。
まとめ
公務員看護師の職場や試験内容、給料・年収、退職金、4つのメリットをまとめました。「私も公務員になりたい!」と思った人も多いかもしれません。
ただ、公務員看護師は狭き門ですので、厳密な公務員の職場だけでなく、国立病院機構など公務員と同じような給料・待遇の職場も転職先の候補に入れてみると良いと思います。
公務員待遇の職場で探してみてください。
参考文献
地方公務員の退職手当制度について(総務省|2007年12月21日)
国家公務員の退職手当(内閣官房|内閣人事局|2002年9月)