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結核の看護|症状、検査、治療、看護計画、看護研究

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結核は昔の病気ではありません。現代の日本でも珍しくない感染症ですので、看護師は結核患者に適切な看護を提供できるようにしておく必要があります。

結核の基礎知識や症状、検査、治療、看護計画、看護研究をまとめました。

1、結核とは

結核とは、結核菌に感染することで発症する感染症のことです。結核菌に感染し、体内で結核菌が増殖することで、様々な症状を引き起こします。結核の感染経路は飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)です。

日本人の場合、結核の8割が肺で結核菌が増殖する肺結核になります。肺結核になると、肺で結核菌が炎症を起こして、肺胞が破壊されていきますので、咳や痰などの肺結核特有の症状が現れます。また、肺外結核として、腎臓やリンパ節、骨、脳など結核菌が増殖し、炎症を起こすこともあります。

出典:どうすれば結核とわかるの?(大塚製薬)

 

結核というと、過去の病気というイメージを持っている人が多いですが、現在でも日本では、1日に68人の新規患者が発生し、6人が命を落としている疾患です。

出典:結核について(医療法人 西福岡病院)

 

また、日本はほかの先進国に比べると、患者数が多く、結核後進国と言われています。

出典:結核について(医療法人 西福岡病院)

 

日本では結核患者の入院は排菌の有無にかかわらず、結核病床に入院することが定められています。

2、結核の症状

ここでは日本人の結核の8割を占める肺結核の症状を説明していきます。肺結核を発症すると、次のような症状が現れます。

 

■結核の主な症状

・咳

・痰

・血痰

・体重減少

・倦怠感

・食欲不振

・盗汗(寝汗)

・呼吸困難

・胸痛

 

肺結核の初期症状は風邪のような症状で、咳や微熱、痰などが主な症状になり、なかなか結核と気づかないことがありますが、肺結核の場合は風邪と違って、症状が改善せずに長期間続くという特徴があります。

また、高齢者の場合は、咳や微熱、痰などの肺結核の特徴的な症状が出にくいことがあり、体重減少や食欲不振などの症状が肺結核のサインになることがあります。

3、結核の検査

結核の検査には、感染の有無を調べる検査と発症の有無を調べる検査があります。

感染は体内に結核菌が定着しているものの、増殖はしておらず、体への影響はない状態で、人へ感染させる危険もありません。発症は結核菌が体内で増殖し、炎症を起こしている状態で、人へ感染させる危険があります。

 

3-1、感染の有無を調べる検査

感染の有無を調べる検査にはツベルクリン反応検査とインターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)の2種類があります。

 

■ツベルクリン反応検査

ツベルクリンを前腕に皮内注射して、皮膚が赤く反応するかどうかを48時間後に判定します。BCG接種を受けた人も、皮膚が赤く反応することがあり、結核菌に感染しているかどうかの判断が難しいことがあります。

 

■インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)

血液検査で結核菌の感染の有無を調べる検査です。ツベルクリン反応検査とは異なり、BCGの影響を受けないため、確実に結核菌に感染しているかを検査することが可能です。

 

3-2、発症の有無を調べる検査

発症の有無を調べる検査には、X線撮影検査と喀痰検査があります。

 

■X線撮影検査

肺結核の発症の有無を調べることができます。胸部X線撮影で発症が疑われた場合は、CT検査を行うこともあります。

 

■喀痰検査

結核菌を排菌しているかどうかを調べる検査です。喀痰検査には塗抹検査、培養検査、核酸増幅法検査(遺伝子検査)の3種類があります。

塗抹検査は痰をスライドグラスに塗りつけて、顕微鏡で確認する検査です。

培養検査は結核菌だけを増殖させる培地に痰を塗って培養させ、肉眼で観察する検査ですが、結核菌は増殖スピードが遅いため、最終判定に8週間かかります。ただ、塗抹検査よりも培養検査は10倍以上も検査結果が精密です。

核酸増幅法検査は培養検査と同じ精度の検査結果が数時間で出る検査になります。

4、結核の治療

結核の治療は、基本的に化学療法で行われます。結核の化学療法は、抗生物質を4剤服用して行われます。結核の治療に用いられる抗生物質は、次の5種類です。

 

・リファンピシン(RFP)

・イソニアジド(INH)

・ピラジナミド(PZA)

・エタンブトール(EB)

・ストレプトマイシン(SM)

 

結核治療では、REP+INH+PZAに、EB(またはSM)の4剤で2ヶ月間治療を行い、その後RFP+INHの2剤で4ヶ月間治療します。

この治療法は結核菌を撲滅するという治療目標を達成するための最強の治療法で、6ヶ月間という最短の治療期間で治療目標を達成できるため、世界中で広く普及している治療法になります。

ただ、副作用のためにPZAの服用ができない場合には、RFP+INHにEB(またはSM)の3剤併用で2ヶ月間治療し、REP+INHで7ヶ月間治療を行います。

4剤併用の治療法を決められた通りに、決められた期間きちんと行えば、再発率は5%未満とされていて、非常に効果が高い治療法になります。

ただ、結核の治療は途中で中断し、不完全な状態で終えてしまうと問題になります。半年間、毎日服薬しなければいけないので、途中で中断してしまう人が少なくありません。

でも、途中で中断してしまうと、耐性菌ができるため、次の治療が困難になるのです。

結核の治療が正しく継続して行われるようにWHOではDOTS(ドッツ)を推奨しています。DOTSとは対面服薬指導のことで、患者は医療従事者の目の前で服薬することで、確実に薬を服用することができる方法になります。

日本でのDOTSは、主治医と保健所が連携して、保健師が患者の自宅を訪問して、患者を支援するという方法がとられています。

5、結核の看護計画

結核は排菌が認められたリ、症状が強く全身状態が悪い時には入院になることがありますので、入院になった結核患者の看護計画を説明していきます。

 

■呼吸器合併症を起こすリスクがある

肺結核の患者は咳や痰、呼吸困難が症状に現れますが、きちんと排痰できないと、無気肺などの呼吸器合併症を起こすリスクがあります。

 

看護目標 呼吸器合併症が起こらない
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・呼吸音(肺雑音の有無、エア入りの状態)

・咳嗽や排痰の状態

TP(ケア項目) ・深呼吸を促す

・安静度の範囲内で寝がえりや体動を促す

・水分摂取を促す

・必要時は吸引する

・医師の指示による薬剤を確実に投与する

EP(教育項目) ・無気肺について説明する

・痰がある時には、しっかり排痰するように指導する

 

■他者への感染リスクがある

入院をしている結核患者は、排菌していることが多いので、医療者や面会の人に感染させるリスクがあります。

 

看護目標 他者に感染を広げない
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・喀痰検査の結果

・安静度

TP(ケア項目) ・陰圧室に隔離し、ドアは閉める

・清潔区域と汚染区域をきちんと設定する

・面会時は患者マスクを着用する

・患者に接する時には予防着を着用し、手洗いと手指消毒を行う

・痰が付着したものは感染源にならないように処理する

EP(教育項目) ・咳やくしゃみをする時には口や鼻を覆うように指導する

・痰が付いたティッシュは所定のごみ箱に捨ててもらう

・結核菌の感染経路を説明する

 

■栄養状態が悪化するリスクがある

結核患者は倦怠感や食欲不振があるため、食事がとれずに栄養状態が悪化するリスクがあります。

 

看護目標 体重減少を防ぎ、栄養状態を悪化させない
OP(観察項目) ・食事摂取量

・食欲の有無

・血液検査データ(TP、Alb、電解質等)

・体重

・バイタルサイン

TP(ケア項目) ・体重測定をする

・高カロリー、高たんぱくの食事を用意する

・必要に応じて食事介助をする

・家族から食の嗜好を聞いておく

EP(教育項目) ・必要に応じて、栄養士に相談する

・少しずつ食べるように指導する

 

■退院後に正しく服薬できないリスクがある

入院中は看護師が服薬管理をしていますが、退院後にもきちんと服薬をし続けないといけません。ただ、患者の家族環境や理解度によっては、正しく服薬していけないリスクがあります。

 

看護目標 退院後に自分で服薬管理ができるようになる
OP(観察項目) ・患者の理解度

・家族構成

・家族の理解度、協力度

TP(ケア項目) ・入院中から規則正しく決まった時間に服薬する

・服薬を忘れないようにするにはどうすべきか、患者と相談する

・地域の保健所と連携を取り、退院後すぐにDOTSを始められるように調整する

EP(教育項目) ・服薬の継続の重要性を患者本人や家族に説明する

・服薬中断した時のリスクを説明する

 

■結核という疾患に対しての不安がある

結核は現代ではきちんと治療をすれば治癒可能な病気ですが、まだ「不治の病」というイメージを持っていたり、社会復帰できないのではないかという不安を持っている患者が少なくありません。

 

看護目標 疾患を正しく理解できる
OP(観察項目) ・バイタルサイン

・症状の程度

・患者の理解度

・言動や表情

・食事摂取量

・睡眠状況

TP(ケア項目) ・患者の不安を傾聴する

・必要なら、医師に何度も説明してもらうようにする

EP(教育項目) ・家族と患者に、現在の状況や治療方針、治療期間など正しい情報提供を行う

・不安なこと、心配なことはいつでも言ってもらうように伝える

 

まとめ

結核の基礎知識と症状、検査、治療、看護計画、看護研究をまとめました。結核は珍しい病気ではありませんので、看護師として働いていると、一度は「あの患者から結核菌が検出された」という事態に出くわしたことがあると思います。

今度も、結核患者の看護をする機会はあると思いますので、結核について正しい知識を持って、適切な看護ができるようにしておきましょう。

 

参考文献

結核の基礎知識(改訂第4版)Ⅲ.結核の治療(一般社団法人 日本結核病学会)

結核の基礎知識 (公益財団法人結核予防会結核研究所)

結核について(医療法人 西福岡病院)

結核4 | トピックス|(日本臨床検査薬協会)

Ⅳ.結核医療における看護職の意識と役割|結核第87巻第2号(永田容子、工藤恵子|2012年2月)

結核対策における保健師・看護師の役割―ロンドンのTBナースの活動から|公衆衛生69巻3号(加藤誠也、小林典子、永田容子|2005年3月)

結核患者の治療継続を支援する看護介入プログラム(秋原志穂、藤村一美、 吉田ヤヨイ、笹山久美代、冨田ひとみ、森迫京子、園田恭子|大阪市立大学看護学雑誌 第 6巻|2010年3月)

肺結核に糖尿病を合併する患者の看護—問題点とその対策(豊田シマ子、杉沼としえ|講評「本誌看護研究委員会—合併症との関連を」看護学雑誌30巻7|1966年7月)

職場の結核の疫学的動向 看護師の結核発病リスクの検討(大森正子、星野斉之、山内祐子、内村和宏|2007年2月)


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