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骨髄異形成症候群の看護|治療や予後・生存率とその看護計画について

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骨髄異形成症候群の看護

血液の癌というと、白血病を思い浮かべる方が多いと思います。今回お伝えする骨髄異形成症候群も血液における癌であり、同時に白血病の前段階でもあります。骨髄の働きと骨髄腫瘍性疾患(血液の癌)、そして骨髄異形成症候群とはどのような病気なのかを学び、そこから看護計画を立案していきます。

 

1、骨髄異形成症候群とは

1-1、骨髄の働きと造血のしくみ

骨髄は骨の内側の髄空を埋める組織で、人にとって重要な造血の役割を担っています。造血とは、全ての血球成分(白血球、赤血球、血小板)を産生することを言います。骨髄にある造血幹細胞は、全ての血球成分へと分化する能力を有しており、分化を繰り返しながら次第に成熟して、正常な機能を有する成熟血球を作り出します。また、分化だけではなく、造血幹細胞には自分と同じ細胞を複製する能力があり、自分自身を複製することで血液中における血球の総数を維持しています。

血液の癌と言われる骨髄系の腫瘍は、この造血幹細胞に遺伝子変異を生じ、骨髄系細胞が腫瘍性増殖や形態異常を呈する疾患です。骨髄系腫瘍は、以下の4つに大別されます。

 

■骨髄系腫瘍のWHO分類

➀急性骨髄性白血病 (AML)

②骨髄異形成症候群(MDS)

➂慢性骨髄増殖性疾患(CMPD

➃骨髄異形成/骨髄増殖性疾患(MDS/MPD)

 

1-2、骨髄異形成症候群とは

骨髄異形成症候群は、原因はわかっていませんが50歳以上および高齢者に多く、我が国でも人口の高齢化とともに増加傾向にあります。特有の症状がないため自覚症状に乏しく、健康診断や別の目的で行った採血によって偶然発見されることが多い疾患です。

上の分類において、急性骨髄性白血病は、末梢血で芽球(成熟していない血球)が増えてしまう状態で、「増殖性」の病気です。一方で、骨髄異形成症候群は、骨髄で「形態異常(異形成)」を呈した血球が増えます。この異形の血球は、正常な機能を持たない無効造血(アポトーシス)を行い、更に、正常な造血幹細胞の増殖を抑制させ、血液中の正常な血球を不足させてしまいます。そして、骨髄中の芽球の割合が20%以上になると、急性骨髄性白血病に移行する率が高くなるとされています。つまり、骨髄異形成症候群は白血病の前段階であるといえます。

血液疾患は「難しい」というイメージが強いかと思いますが、骨髄異形成症候群は、➀異常な造血幹細胞のクローン性疾患であること、②無効造血による血球減少が起こること、の2つの特徴を理解すると、病態や症状・観察点がわかるようになるでしょう。

 

1-3、骨髄異形成症候群の症状

骨髄異形成症候群には、特有の症状はありません。しかし、異形成された血球ばかりが増えると、正常の血球の割合が減少しますから、それぞれの血球が働きを担うことができなくなります。身体全体に正常な血液細胞を送り出せなくなるため、さまざまな身体の異常を呈してきますが、それぞれの血球の働きが低下した状態=骨髄異形成症候群の症状、となります。

 

■骨髄異型性症候群の症状

赤血球減少によるもの:貧血(易疲労感、眩暈、動悸、息切れ)

白血球減少によるもの:易感染状態(発熱など)

血小板減少によるもの:出血傾向(皮膚の点状出血、鼻出血)

 

2、骨髄異形成症候群の治療

骨髄異形成症候群の根治的な治療は、造血幹細胞の移植しかありません。しかし、全ての患者が移植適応にあるわけではなく、患者個々の症状や病態・年齢や健康状態(ADL)、更に患者の求めるQOLを考慮して治療方針を決定します。治療法は大別すると3つに分けられ、近年では更に緩和ケアがメインとなる経過観察も、選択肢の一つとして挙げられます。

 

■骨髄異形成症候群の治療

➀同種造血幹細胞移植:骨髄異形成症候群を治癒する唯一の方法だが、ドナー(造血幹細胞の提供者)の有無や年齢・全身状態など適応条件がある

②化学療法     :抗癌剤によって芽球の数を減らし、病状を軽くする目的で行う

➂支持療法     :赤血球輸血、血小板輸血、G-CSF(好中球減少に対し)等、不足している血球を補う対象療法を行う

➃無治療・経過観察 :生活の質を重視した治療で、積極的治療ではなく患者の苦痛を取り除き、患者・家族がその人らしく過ごすための緩和ケアを行う

国立がん研究センターがん情報サービスより抜粋

 

3、骨髄異形成症候群の予後・生存率

骨髄異形成症候群には、消化器癌のようなTNM分類を用いることはできません。そこで、代表的な予後予測システムとして、IPSS(International Prognostic Scoring System : 国際予後判定システム)とIPSS-R(Revised IPSS : 改訂IPSS)があり、これらの予後因子を組み合わせてリスクを判定します。(IPSS・IPSS-Rについては、日本新薬骨髄異形成症候群の予後と予後予測についてが見やすいので参照してください。)合計スコアがどのリスクに当てはまるかによって、リスクを4分類して予後や急性骨髄性白血病に移行する確率などを予測します。

 

■IPSSのスコアによるリスク分類と予後

リスクカテゴリー スコア 生存中央値(年)
全年齢層 60歳以下
低リスク 0 5.7 11.8
中間リスク-1 0-1 3.5 5.2
中間リスク-2 1.5-2 1.2 1.8
高リスク 2.5以上 0.4 0.3

大阪市立大学・大学院医学研究科 血液腫瘍制御学 医学部 臨床検査医学

医学部附属病院 血液内科・造血細胞移植科 骨髄異形成症候群より抜粋

 

4、骨髄異形成症候群の看護計画

骨髄異形成症候群は、根治的治療となるものが同種造血幹細胞移植しかなく、臨床の場では化学療法・支持療法を行っている患者の看護にあたることの方が多くなります。看護師が介入すべき問題としては、症状でもある貧血・易感染状態・出血傾向となります。今回は、この中で易感染状態に的を絞り、看護計画を立案していきます。

 

4-1、看護問題・看護目標

看護問題:#1原疾患による白血球減少に続発した、感染リスク状態

看護目標:感染の徴候がみられない

感染の徴候を早期に発見し、対応する

患者が感染予防のための必要性を理解し、実行できる

 

4-2、看護計画

■O-P

1.血液データ

2.骨髄検査データ

3.IPSSスコア

4.治療内容(G-CFS使用・赤血球輸血・血小板輸血の有無)

5.バイタルサイン

6.水分出納(IN/OUT)

7.食事摂取量

8.感染徴候の有無

(咳嗽・喀痰・頭痛・尿混濁・下痢・腹痛・関節炎・筋肉痛皮膚・粘膜の状態等)

9.患者の疾患に対する理解度

10.家族の理解・支援

 

■T-P

1.環境整備の徹底により、感染源を排除する

2.検査データ・症状により、個室へ移動する

3.医師の指示により、空気清浄器を使用する

4.室温・湿度を調整する

5.排泄後の手洗いを徹底する

6.食事前の手洗いと口腔ケア(出血傾向のひどい場合は口腔清拭)を確認する

7.ADLと安静度に応じた保清の介助を行う

(手洗い・歯磨き・含嗽・シャワー浴・清拭・洗髪・陰部洗浄・爪切り等)

8.食事形態を患者と相談し、食べやすいものへ随時変更する

 

■E-P

1.骨髄異形成症候群による易感染状態にあることを説明する

2.感染予防の必要性を説明する

3.排泄後の手洗い、食事前後の手洗いと口腔ケアを確実に行うよう指導する

4.家族へ、面会や差し入れ・見舞い品(食べ物等)について指導する

 

まとめ

骨髄異形成症候群は、根治治療が造血幹細胞移植の移植しかないこと、高齢の患者が多いことから、積極的治療を行って完治する患者は、あまり多くありません。また3大症状である貧血・易感染状態・出血傾向に対する理解が難しく、患者本人が予防することが難しい側面もあります。看護師は、退院後の生活も見据えた指導など、入院中から関わるようにしていきたいですね。

 

参考文献

骨髄異形成症候群(こつずいいけいせいしょうこうぐん)(国立がん研究センターがん情報サービス|2016/06/17更新)

血液のがん: 骨髄異形成症候群(新潟県立がんセンター新潟病院)


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