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縫合不全の看護|原因、予防、症状と看護計画(OP・TP・EP)、観察項目

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医療は日進月歩していますが、まったく合併症の存在しない手術はありません。消化管をつなぐ消化器外科領域の手術では、術後合併症の1つである縫合不全は頻度が高く、大腸の手術では5%程度の率で起こるとさえ言われています。今回は縫合不全について学び、早期発見と対処につなげるための看護計画を立案していきます。

 

1、縫合不全とは

縫合不全とは、消化管の吻合部の癒合がうまく起こらずに破たんし、消化液が腹腔内に漏れることをいいます。術後1週間頃までに起こりやすいとされています。

 

2、縫合不全の原因

縫合不全というと、患者・患者家族は「執刀医の技術不足によるもの=失敗」と誤解しがちです。しかし、縫合不全は患者側の理由や術式によって可能性の高いものもあります。縫合不全の原因となるものを挙げてみましょう。

 

■縫合不全の原因

➀患者の全身状態によるもの:高齢・低栄養・糖尿病・肝硬変・抗生物質の長期投与

ステロイドの必要な自己免疫性疾患(膠原病など)

➁局所的な問題によるもの :血流不全(虚血)・浮腫・炎症・感染

➂術式によるもの     :消化液の作用等により縫合不全を起こしやすい術式・部位

(1)食道切除・再建術

(2)幽門側胃切除術

(3)胃全摘術

(4)膵頭十二指腸切除術

(5)胆道手術

(6)結腸切除・低位前方切除術

➃手技的なもの      :術者の手技(吻合部の緊張の強さなど)

 

外傷による手足の皮膚の縫合と違い、消化管の縫合は消化液が関与してくる分、縫合不全を起こしやすくなります。また、ヘルニア嵌頓や腸穿孔などの緊急手術の場合には、虚血や炎症・感染(すでに腸内容物が腹腔内へ漏れている・十分な浣腸による準備ができない)など、縫合不全の起こる条件がそろってしまうことも多々あります。

これらの条件が重なって縫合不全は起こるもので、単に術者の技量による問題だけではありません。患者や患者家族へは、緊急時こそ術後合併症への説明を十分に行う必要があります。

 

3、縫合不全の症状・治療

3-1、縫合不全の症状

縫合不全が起こると、消化液が腹腔内に漏れて溜まり、そこへ白血球が集まることで膿瘍(うみ)を形成します。これが熱源となり、腹痛の原因となります。創部からの浸出液が多い場合も、消化液が漏れていることが考えられます。縫合不全のときに起こる症状・感染徴候は下の通りです。

 

■縫合不全の症状

➀腹痛

➁熱発

➂採血データによる炎症反応(WBC↑、CRP↑、AMY↑)

➃創部からの浸出液

➄腹壁の緊張

➅ドレーンからの排液量増加、性状の変化

 

これらの症状が見られたら縫合不全を疑い、画像による確認を行います。(毛髪ほどの小さな縫合不全の場合はCTや透視下では判断できないものもあります。)

 

■画像データによる所見

CT  → free air、膿瘍

透視 → 造影剤の消化管外への漏出

 

3-2、縫合不全への対応

3-1における症状と画像所見が得られた場合、縫合不全に対応しなくてはなりません。縫合不全は、場合によっては腹膜炎から敗血症を起こし、死に至るケースもあります。

創部からの浸出液やドレーン留置中の場合に膿瘍などが見られた場合、すぐに医師へ報告し、必要な検査・処置を行います。まず、食べたものや消化液が腹腔内に漏れている状態なので、絶食にして中心静脈栄養へ切り替え、抗生剤を投与します。

ドレナージ効果の悪い場合は、持続吸引機を接続して積極的に漏れているもの(胃液・膵液・腸液・胆汁・便汁・膿瘍)を体外に排出します。また、持続吸引でもドレナージ効果の悪い場合や、既にドレーンを抜去してしまったあとの縫合不全に関しては、再度開腹して膿瘍など腹腔内に溜まったものを生理食塩水で洗浄し、新たにドレーンを留置することもあります。(生理食塩水を用いたドレーン洗浄は、縫合不全を悪化させるとも言われており、状況に応じて行います。)

 

■縫合不全への対応

➀絶食、中心静脈栄養(TPN)

➁中心静脈カテーテルの留置

➂抗生剤投与

➃ドレーンの持続吸引(場合により生食洗浄)

➄リオペによる洗浄・ドレーン再留置

 

4、縫合不全の予防

縫合不全は、2、縫合不全の原因でお伝えしたように、起こしやすい部位や術式があります。また、緊急時などは特に縫合不全を起こしやすい条件(感染・浮腫・虚血など)がそろっているため、前もって術中に溜まりやすい部位へドレーンを留置してくることがあります。

術前に時間のある予定手術の場合には、患者の栄養状態や糖尿病のコントロールなど、全身状態をよくしておくことも、縫合不全の予防となります。栄養状態の悪い患者には栄養科と連携し、経腸栄養(EN)で蛋白質などを補っておくこともあります。

 

5、縫合不全における看護計画

今回は、術後全症例の看護において縫合不全に対する予防や観察を身に付けるため、まだ縫合不全が起こっていない場合の、早期発見と早期治療に向けた看護計画の立案をしていきます。

 

5-1、看護問題

外科手術に関連した、縫合不全の恐れがある

 

5-2、看護目標

・術後縫合不全が起きない

・縫合不全による感染徴候がみられない

 

5-3、看護計画

■OP(観察項目)

①(留置中の場合)ドレーンからの排液量(通常100ml/日以下)

②(留置中の場合)ドレーンからの排液の性状が、通常の色の変化を経ているか

淡血性(薄い赤)→淡々血性(オレンジ)→淡黄色(黄色)→淡々黄色(薄い黄色)

腹腔ドレーンのアセスメントのポイント【排液の量・色】参照)

③ドレーンの屈曲や閉塞の有無

④ドレーン周囲の皮膚の状態(発赤・腫脹・びらん)

⑤ガーゼ汚染(創部汚染)の量・性状・臭い

⑥疼痛の程度とその部位

⑦バイタルサイン(特に熱型)

⑧血液データ(WBC、CRP、AMYなど)による感染徴候の有無

⑨画像データ

⑩食事摂取量

⑪1日の水分出納(IN/OUT)

 

■TP(ケア項目)

①(ドレーン留置中の場合)抜けないようにしっかりテープ固定し、適宜張り替える

②創部・ドレーン挿入部の皮膚の保清(必要時は皮膚保護剤の使用)、ガーゼ交換

③術後指示があるまで絶飲食とする

④ドレーンからの排液量や性状や、バイタルサインに変調がある場合、医師へ報告する

⑤医師の指示により、適切な薬剤・輸液投与を行う

⑥創部の緊張をとり、ドレナージ効果を高めるため、できるだけファウラー位をとる

⑦患者の状態と医師の指示により、少しずつ食事形態を上げていく

⑧ドレーン挿入中は行動制限が伴うため、必要に応じトイレや保清の介助を行う

⑨検査等の移動時には必ず付き添い、ドレーンや点滴ラインの抜去を防ぐ

 

■EP(教育項目)

①術後合併症の1つとして、縫合不全があることを説明する

②もし縫合不全を起こした場合にどのような症状が現れ、どのような処置や対処(絶食になるなど)をするか、事前に説明しておく

③痛みが強い場合、ガーゼ汚染がひどい場合には縫合不全の可能性があるため、すぐ訴えるよう指導する

④ドレーンの必要性を説明し、体動により抜けないように指導する

 

まとめ

術後合併症は、あらかじめ予測できるものも存在します。その中でも縫合不全は、緊急手術や術式、基礎疾患として糖尿病やステロイドの長期投与の必要な自己免疫性疾患などがあると、ある程度予期される合併症となります。

術前より患者・患者家族へ縫合不全の起こる可能性を十分に説明し、縫合不全が起こったときにはどのような症状が出るのか、またどのような処置や対応をするのか、看護師も事前にイメージしておくと、症状の現れたときにも冷静に・速やかに行動することができます。

 

参考文献

腹腔ドレーンのアセスメントのポイント【排液の量・色】|齋藤 恭子|2015/12/23

中心静脈栄養(TPN) / 経腸栄養(EN)|株式会社大塚製薬工場


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