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摘便の看護|看護的観点からみる問題、その手順と方法、注意点について

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摘便看護

摘便は入院・外来問わず、臨床では日常的に行う基本的な看護技術です。便秘には内服による緩下剤での排便コントロールが理想ですが、どうしても効果が得られなかった場合や患者からの希望が強い場合には、直接掻き出すことが必要となります。また、高齢者の多い入院病棟や介護の現場では、「3日に1回、浣腸後に摘便」とルーチンに行われることも多いのが実状です。

安易に行われがちな摘便ですが、出血やショック・穿孔などの危険も伴う処置です。これらの危険性を認識した上で適応を検討し、必要な際には患者の安全・安楽が得られるよう正しい知識を身に付けてから行いましょう。

 

1、摘便の目的と適応

排泄は人間の最も基本的な生理的な欲求であり、患者の安楽を得るために必要不可欠な処置です。便秘は、患者にとって大変な苦痛をもたらします。

どうしても肛門部に硬い便が溜まってしまった場合、自然に排便することが難しくなります。水分が吸収されて硬くなった便が肛門部を塞ぐことで、一層便が硬くなって栓をしてしまい、便秘を悪化させます。便秘が高度になると、嘔気・嘔吐や食思不振、イレウスを起こすことがあります。主に以下のような症状の見られる患者に対して行ないます。

 

・緩下剤の内服でも自然排泄が得られない患者

・高齢・衰弱、もしくは術後の創傷等で腹圧がかけられない患者

・認知症や精神疾患により、自身で排便のできない患者

・脊椎損傷や二分脊椎等の疾患による直腸機能障害のある患者

・バリウム検査後に排便のない患者

 

2、摘便の注意点

 

■出血の危険性

摘便は指を挿入して便を掻き出す際に、直腸粘膜を傷つけて出血を起こすことがあります。摘便の範囲は肛門から4㎝までとし、無理に搔き出さないようにします。

下記の患者には、処置の際に出血を引き起こすリスクが高くなるので、適応を含めてよく検討し、実施の際には注意深く行う必要があります。

 

・痔核のある患者

・血液疾患・肝機能障害等により出血傾向のある患者

・肛門や直腸に病変のある患者

 

特に、肛門部に腫瘍性病変があるために便秘を起こしている場合には、腫瘍を傷つけることで大出血を起こす危険性があります。実施の際は慎重に行い、医師とすぐに連絡がとれるようにしておく必要があります。

 

■穿孔

摘便により、直腸穿孔を起こすことがあります。特に摘便の前に浣腸(GE)を行った場合に多いのですが、トイレ内で立位の状態で摘便を行うと、腸の走行により穿孔を起こしやすくなります。摘便は、どうしても仰臥位しかとれない患者を除き、左側臥位で行います。

 

■血圧低下

摘便により排便が促されて大量の排便があった場合には、急激に血圧の低下を起こすことがあります。実施する前には、必ず血圧を始めとしたバイタルサインの観察をしておきましょう。実施後も、出血の有無と合わせて血圧変動に注意しましょう。

 

■プライバシーへの配慮

摘便は陰部の露出する処置であり、臭気を伴うことから周囲に対するプライバシーの配慮が必要です。必ずカーテンやドアを閉めてプライバシーに留意し、掛け物で不要な露出を避けます。処置のあとには換気を行い、臭気へも配慮します。

 

3、摘便の方法

摘便の際には以下のものが必要物品となります。

 

・ディスポーザブル手袋

・ディスポーザブルエプロン

・潤滑剤

・ペーパー(トイレットペーパー、未滅菌の紙ガーゼ)

・オムツ(平オムツ、場合により替えのテープ式オムツ)

・便器

・尿器(男性の場合)

・ビニール袋

 

以下、摘便のおおまかな手順になります。

 

①患者に摘便の必要性を説明し、同意を得る

ベッドサイドに行き、患者の名前を確認します。そして、摘便の必要性と大まかな流れを説明し、同意を得ます。同意が得られたら物品を取りに行きましょう。その間に排尿を済ませてもらうと、処置をスムーズに行うことができます。

 

②処置シーツ・オムツを敷く

ベッド周囲にカーテンを引いてから、バスタオルなどの薄い掛けものを掛けます。エプロンと手袋を二枚重ねで装着してから、臀部の下へ処置用シーツと平オムツを敷きます。(もともとオムツを使用している場合には、平オムツは不要です。)

 

③服をおろし、体位を整える

掛けものの下で服と下着を膝まで下ろし、臀部を露出します。左側臥位をとり、膝を軽く抱えるようにします。1人でできない患者の場合は、服を下ろしてから側臥位をとります。前(腹側)に掛物をして露出を最小限にし、プライバシーの保護に努めます。

 

④必要物品を配置する

ペーパーとビニール袋、替えのオムツが必要な場合は、手の届くところに置きます。ペーパーの内1枚に潤滑剤を出しておきます。寝具を汚さずに済むように、触れてしまいそうな物はよけておきます。

 

⑤利き手の示指に、潤滑剤をつける

ペーパーに出した潤滑剤を、利き手の示指に十分に付けます。反対の手で臀部を抑えます。

 

⑥患者に声をかけながら、指を挿入する

ゆっくり息を吐き肛門に力を入れないよう声をかけながら、潤滑剤を付けた指で肛門周囲を軽くマッサージします。患者の呼気に合わせながら、ゆっくりと指を回転させながら挿入します。指を回しながら挿入すると、少しずつ肛門を広げられるため、患者の苦痛を抑えることが可能です。

 

⑦便塊を掻き出す

患者にゆっくり呼吸するように促し、肛門に近い便塊を掻き出してペーパーに出します。指の腹を直腸壁に沿わせながら進め、挿入する深さは4㎝までとします。手袋についた便をペーパーやオムツの端で拭きながら行うと、肛門周囲の皮膚を汚さずに済みます。

便塊は触れるのに掻き出せない場合には、利き手と反対の手で下腹部を時計周りにマッサージしながら行うと、便が肛門付近へ下りやすくなります。便塊が大きい場合は無理にそのまま出そうとせず、指先で潰してから掻き出します。便の性状や色、出血の有無を確認しながら、便塊を全て出します。

 

⑧便器を挿入する

肛門付近の便を掻き出すことで、患者自身が便意を催す場合があります。その際は仰臥位にして便器を差し込み、排便を促します。男性の場合は、尿器を当てておくと安心です。

便器を当てることが難しい場合には、オムツをしっかりあて、腹部マッサージも加えると自然に排便しやすくなります。

 

⑨片付け

肛門部をペーパーで拭きとり、便器を外します。オムツの場合は、使用したオムツを換し、ビニール袋に捨てます。新しいオムツを当てます。患者の衣服を整え、体位を安楽な体位に戻します。その後、使用した物品を片付けてからカーテンを開け、窓を開けて換気します。

 

⑩状態観察と説明

患者の状態を観察し、気分不快や腹痛の有無を確認します。患者には肛門部の便が出たことでしばらく排便が続くかもしれないこと、出血や気分が悪くなったらすぐにナースコールを押すよう説明し、退室する。

 

まとめ

摘便は臨床で日常的に行われ、便を出すには一番確実な方法です。しかし、出血や穿孔など、時には命に関わる大きな危険も伴う処置です。患者の苦痛を極力減らし、安全かつ効果的に処置をしましょう。プライバシーを保護することも忘れずに。

 

参考文献

看護技術がみえる vol.2 臨床看護技術

MEDIC MEDIA(平成25年 第1版)


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