看護学生の誰もが壁にぶちあたる関連図。文献や資料をみると複雑に構成されているため、見た目に難しく感じるのも無理はありません。しかしながら、意外にも関連図はそう難しいものではありません。
なぜ、難しく感じるのか、それは関連図の構造や本質を未だ理解できていないからです。ゆえに、それらを理解できれば簡単に効率的に、適切な関連図を作成することができます。
ここでは、関連図とは何かといった基本的な内容から書き方のコツなど、関連図を簡単に書くためのノウハウを紹介しますので、関連図が書けない!と頭を悩ませている方は、ぜひ最後までしっかりお読みいただき参考にしてください。
1、関連図とは
関連図とは、患者の情報の関連を示した図のことを指します。これにより、患者の病気や健康状態、さらには看護問題を視覚的に容易に把握することができます。
なお、関連図には「病態関連図」と「全体関連図」の2つがあります。
・病態関連図
病態関連図は、主に「病気に関する情報」を図にまとめていきます。たとえば、患者が患っている病気や治療法、その病気・治療により発生する症状・副作用、その症状・副作用により起こる生活への障害、その障害に関する看護問題、などです。 |
・全体関連図
全体関連図は、病態関連図に患者の家族背景や生活習慣、入院による変化などを加えたものを図にまとめていきます。つまり、全体関連図は病気だけでなく患者の全ての情報を図に表したものと認識してください。 |
2、なぜ関連図が必要なのか
看護学校の授業の一環としてや看護師の業務の1つとして、関連図を書くことがよくありますが、なぜ病態関連図や全体関連図を書く必要があるのでしょうか。
まず、多くの人は複雑な情報を瞬時に論理的に一つの情報にまとめることができません。また、その情報を記憶し続けることができません。看護師は多くの患者を受け持つ必要があるため、一人の患者の情報を論理的にまとめ、記憶し続けることは不可能なのです。
そこで患者の情報を瞬時に視覚的に把握できる関連図が役に立つのです。関連図は矢印(↑↓←→)を用いて、関連する情報をつなぎ合わせた図であり、最終的には「看護問題」につきあたります。
患者に対してケアを実施する際、看護師が最も懸念しなければいけない点が、この「看護問題」であることから、一人一人の患者に対する生活上の問題を瞬時に把握できる関連図は適切なケアの実施において必要不可欠なのです。
3、病態関連図の書き方
では、ここから病態関連図の書き方を詳しくご説明します。病態関連図は、患者の病気の名前や治療法、その病気や治療により発生する症状や薬の副作用、その症状・副作用により起こる生活への障害、その障害に関する看護問題、その問題に対する看護ケアなど、関連する情報を矢印(↑↓←→)で繋いでいきます。
書いていく順番は以下の通りです。
①病名(診断名)
②病気を発症した原因
③病気の症状と発生原因
④症状に対する治療法
⑤治療法に対する副作用・障害
⑥副作用・障害に対する看護問題
(S:患者の主観的データも記載する)
⑦看護問題に対する看護ケア
図1―病態関連図の構成
分かりやすいように簡易的な図を用いましたが、基本的にはこのような順番で矢印をのばしていくと頭で簡単に整理ができ、書きやすくなると思います。
なお、各項目ごとに矢印は1つである必要はなく、関連するものがあれば2つでも3つでも繋げていきます。
注意が必要なのは「③病気の症状」と「④症状に対する治療」、「⑥看護問題」と「⑦問題に対するケア」の間にある矢印です。この時、必ず「④症状に対する治療」から「③病気の症状」、「⑦問題に対するケア」から「⑥看護問題」に向けて矢印を向けるようにしてください。
3-1、病態関連図を書く際の注意点
病態関連図を書く際に注意しなければいけないことがいくつかあります。
・関係のないことは書かない
関連図というのは、その名の通り“関連”を示す図であるため、関連した情報のみを記載しなければいけません。序盤は書く内容が少ないため軸が逸れる心配はありませんが、後半になり情報量が多くなった時には、情報の大元である「病気」とは関係のない情報を記載してしまいがちです。
その関係のない情報からまた派生させてさまざまな情報を加えてしまうと、“まとまりのない”関連図になってしまうため、どの情報に関しても患者が患っている“病気”に関連した内容でなければいけません。
・配置は気にしなくても良い
関連図は人それぞれ情報の配置が異なります。多くの人は文献や専門書を参考に関連図を書き進めると思いますが、その通りの配置で書く必要はありません。もちろん、情報を整理できない場合には同じ配置で書いても構いませんが、症状や治療法などは各患者によって異なるため、同じ配置にする場合にはかえって書くのが難しくなることがあります。
それゆえ、「図1―病態関連図の構成」のように、頭の中で整理しやすいように分かりやすく書いていくことをお勧めします。
・グループごとに記載すること
関連図に関する文献など専門書の多くは、情報量が非常に多く、矢印が多方面に伸びて、瞬時に情報を把握できないものが多いのが実情です。もちろん、それらの関連図は“専門家”にとっては見やすく分かりやすい図ですが、関連図に慣れていない人にとっては意味が分からないことが多いでしょう。
それゆえ、まずは「症状」や「治療法」、「副作用」、「看護問題」など、グループに分けて書くようにしましょう。乱雑になればなるほど情報を読み取るのが難しくなるため、臨床において役に立たない関連図になってしまいます。複数の疾患を患っている場合には、情報量が多くなり乱雑になりがちですが、できる限りグループ化して頭で整理しつつ、情報を瞬時に読みよりやすいよう記載していきましょう。
4、全体関連図の書き方
全体関連図は、病態に加え、“患者のすべての情報”を図で表します。ゆえに、病態関連図は全体関連図の情報の1つであるということです。
全体関連図で書くことは、
・患者の家族背景
・入院前の生活習慣
・入院による身体・環境の変化 など
これら患者に関する情報を、病態関連図とともに一枚の紙に書いていきます。
図2―全体関連図の構造
家族背景や入院前の生活習慣などは病気とは直接関係していないものの、これらの事柄により生活に障害が起き、QOLの低下を招くことがあります。関連図と言えば「看護問題」を導き出すためのものですが、家族背景や生活習慣など、全体関連図に記載する各事項にも看護介入が必要なことがあります。
基本的には病態関連図のみで終わらすことが多いのですが、特に学生の頃は全体関連図を作成する機会が多々あり、看護師の業務の一環として作成する機会もあるため、病態関連図だけでなく全体関連図も書けるようにしておきましょう。
なお、「看護問題」がない場合は無理に記載する必要はありません。それに応じて「問題に対するケア」も必要ありません。また、「問題に対するケア」から「看護問題」に対して矢印を向けるようにしてください。
4-1、全体関連図を書く際の注意点
基本的には、病態関連図で挙げた「関係のないことは書かない」、「配置は気にしなくても良い」、「グループごとに記載すること」の3つの注意点が主となりますが、
全体関連図の場合、“憶測”で書きがちなので、「家族背景」や「入院前の生活習慣」など、視覚的かつ日常的な観察によって得ることができない情報に関しては、必ず患者や家族から直接聞いた情報を基に書くようにしてください。
5、関連図を効果的に書くポイント
初めての人にとって関連図の作成は難しく、誰しもが壁にぶち当たります。しかしながら、“あること”を理解・把握していれば、思いのほか容易に作成することができます。
その“あること”というのは、「病態」のこと。心不全なら心不全の症状や治療法、障害・副作用など、心不全に関わる情報を有しておくことが何より大切です。「病態の理解度・把握度=関連図の完成度」といっても過言ではなく、何よりもまず病態に関する知識を深めなければいけません。
また、患者のアセスメントも非常に大切です。客観的・主観的に観察やデータ、さらには患者とのコミュニケーションによって、さまざまな情報を収集することにより、“濃い”関連図の作成が可能となります。
さらに、科学的根拠に基づいた具体的な情報でなくてはいけません。科学的根拠に基づいていなければ、最終的にどのように看護を提供すれば良いのか、はたまたどのような看護が適切なのかが見出せなくなってしまいます。それゆえ、必ず科学的根拠に基づいた具体的な情報を記載するようにしてください。
最後に、常に“なぜ”という疑問を持っておくようにしましょう。関連図における矢印はすべて “なぜ”という疑問と関わりを持っています。なぜこの症状が出現するのか、なぜこの治療を行うのか、なぜ副作用や障害が起こるのか、などの疑問を常に持つことで、関連図が容易に作成できるのはもちろん、通常の業務を適切かつ効率的に行うことができるようになります。看護師として適切かつ効率的に看護を提供できるよう、この機会に全ての事柄に関して“なぜ”という疑問を持つようにしましょう。
関連図を効果的に作成する上でのポイントをまとめると、
①病態に関する理解を深めておくこと
②客観的・主観的に患者の情報を取得しておくこと
③科学的根拠に基づいた具体的な情報を記載すること
④“なぜ”という疑問を常に持ち続けておくこと
また、書き始めは混乱することは少ないものの、後半になると混乱し乱雑になってしまいがちなので、まずは配置など気にせず、病態関連図なら病態の情報、全体関連図なら患者の情報を□(四角)などの図を用いず、まずは字だけで書いてみましょう。
その上で、関わりが深い情報を関連付けていけば、不恰好ながら自ずと関連図が完成しますので、そこからさらに配置など整理して作成していけば、混乱することなく書いていけるのではないかと思います。
6、参考になる書籍
最後に、参考になる書籍を紹介します。ネット上や手持ちに資料のみで関連図を書くのが難しい場合には、ぜひ以下の書籍を参考にしましょう。看護学生の方は今回だけでなく、看護師になってからも関連図を作成することがあるため、最低でも1冊は持っておくようにしましょう。
そうすれば、いざという時に役に立ち、さらに時間のある時に読み直すことで、関連図の内容が頭に定着し、図を見ることなく病気から看護問題までの流れを瞬時に見出すことができます。
自分で描ける病態関連図 (プチナース・ブックス)
炎症・腫瘍・梗塞・出血の4つの病理学的変化と疾患の場を組み合わせることで、受持ち患者の病態関連図が描けるようになる、今までにない「病態関連図の描き方」お手本ブック。 |
病態関連図が書ける観察・アセスメントガイド (看護学生必修シリーズ)
看護学生が解剖・病態生理を把握した上で、患者の観察、アセスメント、情報整理を行えるようにポイントをまとめた1冊。系統別に人体の構造と機能、観察ポイントとアセスメントの根拠、関連図、代表的な疾患について順を追ってわかりやすく解説されている。 |
病期・病態・重症度からみた 疾患別看護過程+病態関連図 第2版
初版を踏襲しつつ全科106疾患について、病気がみえる、カルテが読める“イラストでみる病態生理、症状、診断、合併症、治療、薬剤一覧”。病期・病態・重症度 からみたケアのポイントがみえる“看護過程フローチャート、情報収集、アセスメント、ケアプラン、評価”。患者の全体像がみえる“病態関連図”。欲しい情報がすべて揃ったオールインワンの1冊。 |
症状ごとの病態生理と看護ケアを関連図として図式化し、一覧できるように整理。疾患を持った患者にどのような問題があり、病態学的・心理的にどのような影響をもたらすかを認識し、安心して看護ケアを提供するための1冊。 |
まとめ
関連図は構造や本質さえ理解できれば簡単に書くことができます。ただし、“濃い”関連図を書くためには、病態に対する理解や情報の収集が必要不可欠です。
それゆえ、関連図の構造ばかりに捉われず、まずは病態に対する深い知識を習得するとともに、患者から多くの情報を収集するよう努めてください。
関連図を作成していく際に、一度混乱すると訳が分からなくなってしまうため、頭の中で整理しながら文章のみで1つの項目を追求し、最後に関連する項目をつなぎ合わせていきましょう。そうすれば、より簡単に効率的に書くことができます。
どう書けば良いのか、また分からなくなったら再度お越しいただき、参考にしていただければと思います。