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シバリングの看護|予防・処置上のポイントと、術中・術後の対応

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シバリング看護

シバリングは身体が体温を保つために起こす生理現象ですが、放置すると低酸素症や心筋虚血といった症状を引き起こすことにもつながりかねません。発生した際には速やかな処置を施す必要がありますが、その際にチェックすべき患者の状態や、避けるべき看護技術など、注意点を踏まえた上で対応することが重要です。

医療現場の中でシバリングが起こり得る場面として術後が挙げられることから、術中・術後におけるシバリング防止につながる看護のポイントも挙げてみましょう。

 

1、シバリングとは

シバリングは、寒冷環境下や発熱時に生じる震えで、日本語では悪寒戦慄とも呼びます。体温を保つために、筋肉を動かすことで熱を発生させる生理現象で、具体的には発熱した時に身体がガタガタと震えたり、寒くて口が震えている状態は、シバリングが起きていると言い表されます。予防としては、筋弛緩薬などの薬剤も用いられます。

 

2、シバリングの原因

シバリングが起こる要因としては前述したように、体温を保つために筋肉を動かして熱を発生させるというメカニズムが挙げられており、発熱した時などに発生します。

シバリングはその他、手術後の体温低下に伴う症状としても発現し、麻酔薬が残存している際に中枢神経系に作用して、上位の運動神経を抑制することから脊髄反射が亢進して起こるということも、要因として考えられています。

 

3、シバリングの危険性

心肺機能が低下している人や、高齢者にとっては、シバリングが発生すると特に危険な状態になり得ます。シバリングが発生した際には、酸素消費量が増加して混合静脈血の酸素含有量が低下することや、二酸化炭素や乳酸の産生量が増加することが指摘されており、分時換気量が増加しないと混合性アシドーシスに陥る可能性があります。

そして交感神経系が緊張を起こして、血圧や心拍数は上昇しますし、心筋酸素需給のバランスの乱れが生じると、心筋虚血や心室性不整脈を引き起こしかねない状態にもなります。

 

4、シバリング発生時の処置

シバリング発生時の処置法としては保温のほか、酸素投与と加温が挙げられています。加温は温風式加温装置などが用いられ、平均体温の上昇を試みる一方で、効果的な薬物としてペチジンなどの投与も行われます。

 

5、シバリングにおける看護のポイント

それでは、シバリングと関連する看護のトピックスについて、予防策や発生時の処置法などからポイントを紹介したいと思います。シバリング発生時に避けるべき看護技術もありますので、注意が必要です。

 

■シバリングの予防

シバリングが起こるケースとして、核心温と比べて末梢温が低い際に熱生産を目的として発生することが挙げられています。シバリングを防ぐため、患者の体温管理を手掛ける際には、核心温と末梢温が引き離されることのないように注意してあたることが、ポイントです。

 

■クーリングは悪化の原因に

発熱時における看護技術の1つであるクーリングについては、シバリングの憎悪につながる危険性が指摘されています。仮に安楽を目的としてクーリングを行う場合、体温上昇時には避け、解熱時に行うことが肝心です。

看護師が悩む発熱時のクーリングの効果と実施の可否について

 

■シバリングを抑制する薬物を使用する際の注意点

シバリングを抑制する薬物のペチジンを使用する際には、呼吸抑制や意識レベル低下、嘔気の出現に注意する必要があります。そのため、使用にあたっては、そのような状況が引き起こされていないかどうか、しっかりと患者の状態を観察することが重要です。

 

5-1、シバリング防止のための看護対応―術中・術後

前述したように、シバリングの発生が見られる場面の1つとして術後が挙げられます。全身麻酔の合併症と術前・術後における観察項目・看護計画におけるポイントの中でも、覚醒時のシバリングを防ぐために、手術中に体温変化を観察することが含まれています。

ここでは他に、術後のシバリング発生を防ぐ対策として、看護に関する研究結果から導き出された方法を2つ紹介したいと思います。

 

■手術時の装置を使った加温のタイミングと設定温度

手術時の温風式加温装置を使った加温法については、加温を始めるタイミングや設定温度の重要さを指摘する意見もあります。例として腹臥位で腰椎手術を受ける患者に対して、加温は腹臥位固定直後に始め、温度設定も統一する方法を採用した研究1)では、対象者に等しくシバリングの発生がなかったという結果が出されています。

 

■帝王切開手術後のベッドまでの移動方法

帝王切開手術後に手術室から病棟のベッドに移動する際の患者を対象とした研究2)では、保温されているベッドに手術台から直接移り、ベッド上で保温された寝衣を着て手術室を退室した患者に関しては、シバリングの発生率はなかったそうです。これに対し、手術台から保温されていないストレッチャーに乗った後に寝衣を着て、手術室出入り口でベッドに移動して退室した患者の中には、シバリングを発生する例が見られたということです。

このような患者には特異的な体温変動はなかったにもかかわらず、寒さを訴えるケースもあり、ベッドが変わる度に寒さを感じるという傾向も見受けられています。

このようなことから手術中の保温管理とは別に、ベッドの変更回数が多いことも、シバリングの発生要因になると考えられ、手術後は手術台から最小限の移動で保温されたベッドに移ることが効果的である、とも言える結果が導き出されています。

 

まとめ

医療の現場において患者のシバリングや発熱に対応したり、防止を図る機会は多様に設けられていると言えますが、その際には患者と身近に接する看護師ならではの細かい配慮や注意力が、大きな武器になると考えられます。

それは、今回紹介したシバリング予防の際の体温管理や対処のための薬物使用における十分な配慮や観察の必要性、およびシバリング防止につながり得る術中・術後の細部に渡った対策の研究結果などからも、うかがえるのではないでしょうか。

配慮の行き届いた看護対応や注意力、さらにシバリングの危険性や発生原因に関する知識や情報なども万全に備えた上で対処していくことが、突然の震えに襲われた患者の不安感を取り除き、容態の悪化を防ぐポイントとなるでしょう。

 

参考文献

1)水上結生、三浦恵美、田中怜史「腰椎手術における体温管理の評価―ベアーハガーによる加温方法統一の結果―」2014『第45回日本看護学会―急性期看護―学術集会抄録集』

2)葛川真里絵、井畑あゆみ「帝王切開手術後のシバリング発生減少への取り組み」2016『第47回日本看護学会―急性期看護―学術集会抄録集』


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