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ルンバールの検査手順と副作用(頭痛など)発現時の看護ケア

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ルンバール

ルンバールはありふれた検査の一つですが、数多くある検査の中でも合併症のリスクが高く、軽度なものはもちろん、死に至るような重篤な合併症のリスクも高いため、安直な考えで看護を行ってはいけません。

 

合併症を予防する、患者さんの症状を緩和させるためには、まずルンバールについてや、介助の方法について詳しく知る必要があります。当ページでは、適応疾患や禁忌、合併症、検査、穿刺手順など、さまざまな情報を詳しく紹介していますので、ルンバールの看護に自信のない方は、ぜひ参考になさってください。

 

 

1、ルンバールとは?

ルンバールは、腰椎部で行う脳髄液採取または検査のことであり、一般的には「腰椎穿刺(ようついせんし)」と言います。背中から腰椎と腰椎の間に針を刺し、脊髄くも膜下腔に存在する髄液を採取する手技であり、主に髄膜炎、脳腫瘍、くも膜下出血などの診断・検査に行います。

 

穿刺後に髄液の圧力を計り、糖や細胞数、蛋白などの各種データを測定するために5~6ml程度の髄液を採取しますが、この手技は難しいものではなく、15分~20分程度で終わる簡単なものです。

 

しかしながら、侵襲を伴う検査であるため、軽視してはならず、穿刺箇所や穿刺深度により合併症を発症することもあります。また、髄液を採取することで、髄膜や神経、静脈が下方に牽引され、鈍い頭痛を伴うことがあるため、注意深く観察し、状況に応じた適切な看護が求められます。

 

 

2、ルンバールの適応

ルンバールが適応となるのは主に脳疾患や神経疾患です。これらの疾患の発症時には、髄液の値(圧・蛋白・糖など)が変化するために、髄液を採取し検査することで、病気の判別を行います。なお、一般的に適応となるのは以下の疾患です。

 

・髄膜炎

・くも膜下出血

・クモ膜下腔閉塞

・脳腫瘍

・特発性頭蓋内圧亢進症

・ギランバレー症候群

・多発性硬化症

・神経梅毒

・神経ペーチェット病

 

また、上記の疾患の判別だけでなく、場合によっては抗癌剤の髄注や脊髄造影のための造影剤注入の際にも行われます。

 

 

3、ルンバールの禁忌

ルンバールを行うにあたって、以下の4つの禁忌が存在します。

 

・頭蓋内圧亢進が著しい場合

(脳ヘルニア(大後頭孔ヘルニア)をきたすような頭蓋内圧亢進のみ禁忌)

・著しい出血傾向のある場合

・穿刺部位に感染巣がある場合

・脊髄の動静脈奇形がある場合

 

中でも気をつけなければいけないのが、頭蓋内圧が亢進している場合。腫瘍や出血、膿瘍などによって頭蓋骨の中が圧迫された状態を「頭蓋内圧亢進」と言い、髄液を採取することで、脳圧が一気に下がり、大後頭孔を通って脳が外に飛び出す「脳ヘルニア」を発症する可能性があります。

 

ただし、髄膜炎などで頭蓋内圧が亢進している場合でも、腫瘍や出血、膿瘍などが原因で脳ヘルニア(大後頭孔ヘルニア)をきたす“可能性がない”場合には禁忌とはなりません。

 

 

4、ルンバールの合併症

ルンバールの合併症は以下の通りです。

 

・低髄液圧症候群

・脳ヘルニア

・局所の神経根損傷と背部痛

・感染症

・出血性合併症

・類上皮腫

 

ルンバールの合併症は多岐に渡り、特に怖いのが脳ヘルニアと感染症です。脳ヘルニアは上記で説明したように事前に細心の注意を払って穿刺実施の選択を行い、完全無菌操作を徹底して感染症の予防に努めます。

 

これら合併症のうち、最も発症リスクが高いのが「低髄液圧症候群」です。穿刺による髄液の漏出や、採取による髄液圧の低下により頭痛や吐き気といった症状が発現します。なお、これを完全に予防する手立ては現在のところありません。

 

 

4-1、術後の頭痛

手術後の合併症として、最も多くの症例があるのが頭痛です。上記で挙げた合併症の一つである低髄液圧症候群や非血管性頭蓋内疾患、穿刺角度の不一致、針穴から髄液が漏れるなど、さまざまな原因があり、約20%の患者が術後に激しい頭の痛みを伴います。

 

これは術後まもなくから72時間以内に発症することが多いものの、通常は数日で改善されます。また、頭痛と言っても発現部位や症状は人それぞれであり、起立時に悪化する頭痛、後頭部痛、頚部痛、目の奥の痛みなど多岐に渡ります。

 

特に起立時の頭痛の割合が高いため、術後まもなくから約2時間程度は仰臥位で安静状態を維持するよう指導します。手術は約20分で完結しますが、術後の起立を防ぐために、術前にお手洗いを済ますよう指導するなど、頭痛の緩和に貢献できるよう看護を行ってください。

 

なお、術後における頭痛緩和の対処は以下の通りです。

 

・仰臥位での安静状態の維持

仰臥位とは、いわゆる仰向けの状態ですが、枕を用いて頭を拳上すると頭痛が激しくなる場合が多いため、枕を用いず、腰と同等の高さを保ったまま安静を保持します。

 

・鎮痛薬の投与

疑いのある病気に対する禁忌になりえない鎮痛薬を用いて頭痛の緩和を図ります。

 

・水分補給

血液中の水分を十分補給することにより、骨髄液が速く補充され、頭痛の緩和を図ることができます。飲水による水分摂取も効果的ですが、即効性を考慮する場合、穿刺後すぐに1リットル程度の水分を点滴で補充する方がより効果的です。

 

・自血パッチの使用

腰椎硬膜外腔に患者の凝固静脈血を数mL注入することにより、頭痛の緩和を図りますが、通常、激しい頭痛が長期的に持続する場合にのみ適応となります。

 

 

また、頭痛予防の対処は以下の通りです。

 

・ルンバール時の適切な体位

背中を丸めて膝を抱え、ベッドに鉛直に立て、背中がのめり込まない体位が適切。体位が適切でないと穿刺箇所や深度に影響を及ぼす可能性があることから、しっかりと調整・確認しておきましょう。

 

・穿刺針の変更

穿刺針は1mm以下の太さのものを使用しますが、ルンバールを多く経験している患者の中で、術後に頭痛を起こすことが多い患者には、穿刺針をより細いものに変更することを検討します。穿刺針を細くすることで、髄液の漏出量が減る、又はなくなる可能性があるため、医師との相談のもと変更を検討します。

 

・穿刺技術の向上

術後の頭痛発生には医師の穿刺技術が大きく関係します。看護師には直接関係のない事項であるものの、体位や穿刺箇所・深度など、細かくチェックしておきましょう。

 

・採取髄液の減量

一般的にルンバールで採取する髄液量は20mlで、4本の試験管にそれぞれ5mlずつ採取します。この基準量よりも多く採取している場合には減量しましょう。小児は成人よりも髄液量や産出量が少ないため、発育具合によっても検討する必要があります。

 

 

5、ルンバールの検査

脳の病気は主にCTやMRIなどの検査を行いますが、その際に異常がない場合、精密検査として髄液の成分値(蛋白・IgG・糖・CLなど)を詳しく調べ、病気の判別を行います。

 

髄液の化学的検査①

総蛋白(mg/dl) IgG(mg/dl) 糖(mg/dl) CL(mEq/l)
基準値 10~40 0.8~4.1 50~80 120~125
ウイルス性髄膜炎 ± ±~↓
細菌性髄膜炎 ↑↑ ↓↓ ↓↓
真菌性髄膜炎 ↑↑ ↓↓
結核性髄膜炎 ↑↑ ↓↓
クモ膜下出血 ↑↑↑ ±
クモ膜下腔閉塞 ↑↑↑ ±~↑ ± ±~↓
ギランバレー症候群 ↑↑ ± ±
脳腫瘍 ±~↑ ±~↑ ±~↓ ±
多発性硬化症 ±~↑ ↑↑ ± ±
神経梅毒 ± ±
神経ペーチェット病 ↑↑ ± ±

 

また、外観や液圧、細胞数など、あらゆるデータを基に該当疾患の判別を行います。以下はルンバール適応の主となる「髄膜炎」と「くも膜下出血」の性状データです。

 

髄液の検査結果②

正常 ウイルス性髄膜炎 細菌性髄膜炎 くも膜下出血
外観 水様透明 水様透明 水様透明~混濁 血性~黄
液圧 70~180mmH2O ↑↑ ↑↑ ↑↑↑
細胞数 0~5/mm3(おもにリンパ球) ↑↑(おもにリンパ球) ↑↑↑(おもに多核球) ↑(おもにリンパ球)

 

 

5-1、液圧(初圧)

ルンバール時には髄液の採取だけでなく、髄液圧(初圧)の測定も同時に行います。くも膜下腔に穿刺針を刺入した後、穿刺針と圧棒を連結させて初圧を測定し、髄液採取後に再度測定します。(終圧測定)

 

この測定結果により、初圧が高い場合には「髄膜炎」、「くも膜下出血」、「脳腫瘍」、「脳血管障害」、「脳膿瘍」などの病気を疑い、測定に不備がある、または測定値が不明瞭の場合には、“※クエッケンシュテット兆候(試験)”を行い、詳細に検査します。

 

※クエッケンシュテット兆候(試験)とは
頭蓋内の静脈とクモ膜下腔、それに脊柱管内のクモ膜下腔が正常に交通しているかどうかをみる試験で、左右の頸静脈を軽く圧迫すると、正常であれば100~300mmH2O程度の上昇がみられ、くも膜下腔に閉塞があると50mmH2O以下となり、これにより詳細な病気判別が可能となります。ただし、初圧が高いときには脳圧亢進を避けるために通常は行いません。

 

 

6、ルンバールの手順

ルンバールは20分程度で完結するものの、合併症のリスクが高いため、看護師は各手順の中で、説明や観察など、適切な看護ケアが求められます。

 

穿刺を行うのは医師であるため、穿刺に際する全責任は医師にありますが、患者さんの安楽を支援できるのは看護師だけ。それゆえ、適切な看護ケアが行えるよう、手順やポイントをしっかりと把握しておきましょう。

 

 

≪準備≫

・検査の必要性・リスクなどについて説明する

ルンバールは比較的容易な検査ですが、侵襲を伴うものであるため、検査内容や合併症などルンバールに際する詳細を説明し同意・了承を得ます。

 

・術前3時間は禁食する

穿刺後に嘔気・嘔吐が起こることがあるため、術前3時間程度(医療機関によっては延長)、食事を摂らないようにします。

 

・排尿・排便を済ませてもらう

穿刺自体は20分程度で完結するものの、穿刺後は頭痛などの合併症の予防・緩和のために、安静状態を維持する必要があるため、穿刺前に排尿・排便を済ませてもらいます。

 

 

≪穿刺時≫

①必要物品を揃える

スパイナル針(穿刺用)、注射針(18G、局麻用23G)、注射器(局麻用、5ml)、局所麻酔薬、エクステンションチューブ、防水シーツ、定規、滅菌試験管、滅菌ガーゼ、イソジン綿球、穴あき覆布、滅菌手袋、マスク(医師用)、手袋、マスク(自分用)、圧迫固定用テープ、絆創膏

 

②体位の調節

側臥位をとって両膝を抱え、エビのように前屈してもらう。この際、介助者(看護師)は、患者の前面に立ち、患者の膝・首を抱えて腰椎骨間腔を広くすること。

 

③.防水シーツを敷く

シーツの汚染を防止するために、体幹部の下に防水シーツを敷きます。

 

④穿刺部位の消毒

汚染による細菌感染を防ぐために、医師が穿刺部位に消毒を行う。消毒液が乾燥するまでに、マスクや滅菌手袋、帽子を着用します。

 

⑤局所麻酔を行う

穿刺は痛みを伴うため、まず滅菌ドレープで患者の体を覆った後、医師により局所麻酔を行います。この際、看護師は安全に行えるよう腹側で患者の体位を固定すると共に、麻酔時・麻酔後の患者の変化(意識レベルの変化、呼吸・心停止・痙攣・悪心・嘔吐・ショック症状の有無)を観察します。

 

⑥穿刺針を刺入する

医師が穿刺針を第3~4腰椎間(または第4~5腰椎間)に刺入しますが、この際、患者に刺入する旨を声掛けし、患者の意識状態や痛みの有無を観察します。また、看護師は髄液が適切に流出していることを確認します。

 

⑦髄液を採取する

医師が穿刺針と圧棒を連結させて髄液圧(初圧)を測定。初圧の正常値は70-180mmH2Oであり、これにより概略的に病気の判別を行います。採取した髄液は試験管に入れ、量や性状などを記録。また、初圧測定後、終圧も測定した後、抜針します。

 

⑧圧迫止血を行う

髄液の漏出や出血を防ぐために、しっかりと刺入部位を圧迫し、止血を行います。

 

⑨安静時間を確認する

穿刺後は頭痛などの合併症のリスクがつきまとうため絶対安静が不可欠。医師に安静時間を確認し、患者へ安静の必要性や合併症などについて説明します。

 

 

≪穿刺後≫

・安静を維持する

穿刺後は頭痛や吐き気などの症状が出現しやすいため、仰臥位で2時間~3時間程度(場合によってはそれ以上)、安静を維持します。この際、頭部を腰の高さと水平にするために、枕を使わず仰臥位の状態で安静にしてもらいます。

 

・合併症の有無・程度を確認する

低髄液圧症候群、局所の神経根損傷と背部痛、感染症、出血性合併症、類上皮腫など、穿刺後に起こりうる合併症の有無と程度を確認・観察します。少しでも異常がある場合には、直ちに医師に報告し処置を講じます。また、激しい頭痛の発現時には、水分の投与など、状況に応じて処置を行います。

 

・バイタルサインなど確認する

血圧、脈拍、呼吸状態といったバイタルサイン、そのほか表情や顔色など、多岐に渡る項目を観察し、異常があれば直ちに医師に報告します。

 

 

まとめ

ルンバールは合併症が起こりやすい検査の一つであり、時には重篤な病気を発症し、死に至ることもあります。それゆえ、穿刺前・穿刺時・穿刺後と、すべての過程において細心の注意を払って患者の状態を観察し、異常時にはすぐに対処できる体制を整えておく必要があります。

 

患者さんの安楽を援助できるのは医師ではなく看護師です。20分程度で終わる簡単な検査だからと言って軽視するのではなく、しっかりと観察し、適切な看護ケアを行ってください。

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