1、PTGBDとは
PTGBD(経皮経肝的胆嚢ドレナージ)は、主に急性胆嚢炎や総胆管下部の閉塞による黄疸に対して行われるドレナージ術のことです。
急性胆嚢炎は、胆嚢から出た胆汁を運ぶ役割を持つ胆嚢管に胆石が詰まることで発生するため、貯留した胆汁を体外に排出するためにカテーテル(チューブ)を胆嚢内に留置し、人工的に胆汁を排出させます。
閉塞性黄疸では、減黄減圧処置として同様にカテーテルを留置して胆汁を体外に排出させますが、もともと出血傾向のある症例や高度の腹水を認める症例では、出血やカテーテル逸脱の危険が高いため禁忌となります。
2、PTGBDの合併症
カテーテルを留置することで迅速かつ円滑に胆汁を排出することができるPTGBDですが、穿刺やカテーテルの挿入・留置、麻酔薬の使用などにより、起こりうる合併症は多岐に渡ります。
- 胆道出血
胆道出血の多くは門脈性出血で、主に穿刺による胆道の損傷に伴う出血です。カテーテルを通して大量の出血がみられる場合や、それに伴う貧血症状がみられる場合には胆道出血を疑い、早急に血液造影を行います。
- 腹腔内出血
腹腔内出血は、主に穿刺による腹腔内の臓器損傷に伴う出血で、特に術後24時間以内に起こることが多く、大量出血による血圧低下・頻脈・皮膚蒼白・ショック症状(冷感など)・腹痛などの症状が発現するため、術後24時間はバイタルサインや全身状態の注意深い観察が不可欠です。
- 胆汁性腹膜炎
主に留置しているカテーテル逸脱による感染が原因で、胆汁性腹膜炎の発症時には、カテーテル挿入部痛・胆汁量の減少・緑色混濁化を認めます。
- アレルギーショック
術中に用いる麻酔薬(キシロカインなど)によるアレルギーショックは、徐脈・頻脈・呼吸抑制・中毒症状・意識障害などさまざまな症状を呈します。これらの症状がみられ、アレルギーショックと認められれば、ショック症状にはエピネフリン、呼吸困難には気管挿管など症状に合わせて対処します。術中の患者の変化を見逃さないよう、入念に観察してください。
- 気胸・胸水
経胸膜的穿刺により生じ、胸痛・背部痛・呼吸困難・咳などの症状がみられれば、気胸(術中)または胸水(術後)を疑います。
3、PTGBDの看護・観察項目
上述のように、PTGBDによる合併症は多岐に渡り、時に重篤化することもあるため、入念な観察が非常に大切です。以下に挙げる観察項目(主に術後)を確認し、異常の早期発見・対処できるよう努めてください。
- 排液の性状・量
排液は正常胆汁であれば茶褐色透明ですが、腹膜炎など感染があれば緑色混濁、胆道出血など出血傾向があれば血液の混じった(多量)排液が排出されます。また、正常に排液が排出されているか確認し、排出量が少なければカテーテルの逸脱・閉塞・屈曲などが考えられます。異常があればすぐに担当医に報告してください。
- 刺入部の確認
刺入部がカテーテルの刺激や感染により、発赤・腫脹などがみられるか、また痛みがないか確認し、発症時には消毒や抗菌薬の塗布などの処置を行います。感染を起こさないために、まずは刺入部周辺を清潔に保ってください。
- 皮膚色の変化(減黄目的の場合)
黄疸に対するPTGBDの場合には、皮膚の色が正常に戻っているか確認してください。変化がみられなければ減黄されていない可能性があります。
- カテーテル留置の確認
カテーテルが逸脱・閉塞・屈曲していると、胆汁は正常に排出されないため、まずは排出される胆汁量を確認してください。また、体動や不注意抜去について患者にしっかり説明し、事故がないよう努めてください。
まとめ
PTGBDは胆汁排出において非常に有効な手技であるものの、合併症の発症率はそれほど低くはなく、発見が遅れると時に重篤化することがあります。
PTGBDの術後管理で最も重要なのが、合併症の早期発見であるため、患者のバイタルサインや全身状態、胆汁排液の性状・量・出血の有無など、さまざまな点において入念に観察し、異常の早期発見に努めてください。